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2008年3月 3日 (月)

怒りネット通信 第32号

怒りネット通信 第32号
2008年3月3日発行                
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KSK『きずな』
怒りネット通信
2008年3月3日第32号
<怒っているぞ!障害者きりすて全国ネットワーク>
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■もくじ
・怒りネットのこの間の行動
・介助者(ヘルパー)の資格制度はすぐにやめろ!
・資格問題について
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■怒りネットのこの間の行動
古賀典夫
 怒りネットは、1月18日に国会行動を行った他、2月25日の「大行動実行
委員会」の呼びかける厚生労働省行動にも参加しました。
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■1月18日行動報告
 この日は、16人の参加で行動を行いました。最初に参議院前で行動を行いま
した。悲しいことに、ビラの印刷ミスがあり、ビラを撒くことができませんでし
た。
 その代わりに、横断幕を広げ、マイクで訴えを行いました。障害者は、「支援
法」によって苦しい状況におかれてきたことを、また、介助をしている人は介助
労働者の苦しい状況について訴えを行いました。
 その後、議員まわりに出かけました。与党の立場について答えたのは、衛藤晟
一事務所の秘書でした。この事務所で、昨年12月7日に与党プロジェクトチー
ムがまとめた報告書を受取りました。この秘書の説明によれば、この1年は議論
の年とする。そのうえでプロジェクト報告の緊急措置は行うとのことでした。今
年の7月から上限額を、低所得1の人は月1500円、低所得2は3000円と
するなど。そして、来年が3年目となるので本格的な見直しを行う、とのことだ
ったそうです。
 通所施設については、この4月から定員の150%(1日につき)や125%
(3ヶ月平均)の受け入れを可能にする、などを行うとのことだったそうです。
これでは、経営はともかく利用者と労働者は大変になるだけのことだと思います
が。
 ほかの与党事務所は、理事に任せている、とか、国対に任せているのでよく分
からないなどと明確な答えをしようとしませんでした。
 民主党の谷事務所の秘書の話は、次のようでした。
 与党が審議に応じてこないので、審議ができなかった、との答えだったので、
わたしたちの方から、もっと強行に進めて良いのではないか、という趣旨の質問
をしました。これに対しては、「与党は強行採決などを行ってきたが、それと同
じようにはしたくない」とのことでした。
 ただし、12月26日には、与党の反対を押し切って、「支援法」の見直しを
行う例の法案を、厚生労働委員会に付託したとのことでした。委員会に付託して
おかないと、継続審議の手続きが行えないからそうしたのだそうです。
 「当面は、応益負担の問題を緊急の問題として変えることをしたい。その上で、
今国会にも総合福祉法を提出して、その中で皆さんの要望を盛り込みたい」との
ことでした。
 この「総合福祉法」の話を聞いた怒りネットのメンバーは、「いったい何を出
してくるつもりなんだ」とむしろ心配になりました。
 民主党の足立議員本人と話すことができました。足立議員も、与党がのってこ
ないと、審議には入れないとのことだったそうです。
 民主党の中村議員本人とも会いました。議員自身が部屋に誘い、「頑張ります」
とのことだったそうです。
 また民主党の大河原議員本人と会いました。23日に質問を行うので、「支援
法」についても取り上げるとのことでした。
 議員まわりの後に、参議院会館の会議室で報告や自己紹介をしながらの議論を
行いました。ヘルパー資格の問題が論議の中心になりました。
 資格がないために、賃金を安くされているヘルパーは、資格を取るために金を
出すのも困難であり、時間としても難しい。
 障害者の側からは、介助者を獲得することが困難になっていること、自分の状
況に合わせて介助してほしいのであって資格など関係ない、などの話が出されま
した。
 参加者からは、「資格を取って、仕事としてかかわるあり方が、障害者と一緒
に運動を作っていこうとする姿勢を一層なくすことになっているのではないか」
との指摘が行われました。このことについては、みんなそう感じていましたが、
ではどうやっていったら良いのか、ということでなかなか答えが見つからないと
いう思いでした。
 古賀からは、ヘルパーの労働運動を作り出していくことが答えにならないかな
あ、との思いを語らせてもらいました。
 他の参加者から次のような指摘もありました。与党プロジェクトの報告では、
「障害福祉サービスの質の向上、良質な人材の確保と事業者の経営基盤の安定の
ため、平成21年4月に障害福祉サービス費用の額の改定を実施」とあるが、この
表現からすると、介護福祉士が何人いれば、報酬単価をいくらアップする、など
と資格による分断と報酬単価アップがセットで行われる可能性もあるので、注意
が必要である、と。
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■2月25日 厚労省行動
 わたしたちは、この「大行動実行委員会」の交渉と行動を21日にDPIのメー
ルマガジンで知り参加しました。呼びかけから間もない行動であるにもかかわら
ず、各地から多くの障害者が参加していました。厚労省前では遠くは、兵庫県、
宮城県、福島県の方々も発言されていました。
 政府と与党が応益負担の上限をさらに半分にし、介護保険との統合をいったん
あきらめるという状況ではありましたが、みんな決して楽観できる状況にはあり
ません。厚労省前の発言者は、介助が危機的な状況にあることについて厳しく厚
労省を追及する発言を続けました。ヘルパーの方も、その労働条件の大変さや
「弱い者いじめ」をする政府の政策に対しての怒りを語られました。
 田無市の益留さんからは、「65歳以上の「障害者」(部分的には40歳以上
も)介護保険の対象とされており、そのため、介助保障が苦しくなる可能性があ
る。この問題について取り組む必要がある。」との提起がありました。重要な問
題だと思います。
 交渉団の報告で、わたしが印象に残っているのは、厚労省側が「自立支援法と
権利条約は矛盾するところはない」との趣旨の発言を行ったということです。ま
た、「障害程度区分」の見直しについて、厚労省の選んだ団体とのみ検討をして
いる状況が報告されました。「障害者自立支援法の抜本的見直し」と言っても、
社会保障審議会の障害者部会はいまだに解散されたままです。このまま都合の良
い団体とのみ検討し、「障害者団体の声を聞いた」などとされてはたまったもの
ではありません。
 寒い中、3時間以上にわたる行動が展開されました。怒りネットの仲間も発言
し、闘いの進むべき方向についての提起を行いました。
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■資料-2・25厚労省行動でまいたビラ
■通常国会で障害者自立支援法を撤廃させよう!
応益負担を今すぐ廃止せよ!
国は障害者の自立生活に責任をとれ!
 厚労省前をご通行中の皆さん! 厚労省前にお集まりの障害者の皆さん! 介
助者、支援者の皆さん!「障害者自立支援法」を今すぐ廃止するために、共に闘
いましょう!!
 おととし10月から全面施行された「自立支援法」のもとで、私たち障害者の
生活は困難を極めています。多くの障害者がこの現実に怒っています。昨年10
月30日には,全国から6500人もの障害者、家族、施設職員やヘルパーなど
が日比谷公園一帯に集まり「自立支援法の全面見直し」を求めて抗議行動を行い
ました。
●「契約制度」で障害者の生活は守れない
 こうした障害者の闘いに押されて与野党の全ての党派が「自立支援法見直し」
を語り始めています。民主党は、1割の自己負担(応益負担)の凍結を軸とする
「見直し案」を国会に提出しています。与党も、プロジェクトチームを作って
「自立支援法見直し案」を打ち出しました。
 民主党は、国会に提出した「見直し案」について、「応益負担廃止法案」だと
宣伝していますが、これは明らかにうそがあります。実際の「見直し案」では
「(障害者の)所得保障が確立するまでの間、応益負担を凍結する」と言うもの
であり、逆にいえば、「所得保障が確立すれば」応益負担でかまわないと言って
いるのも同然です。応益負担とは、福祉制度を利用すればするほど自己負担が増
えるという仕組みです。したがって、障害が重く、制度を利用する割合が多い人
ほどたくさんの自己負担が強いられるという、およそ福祉とは合い入れない制度
なのです。
 障害者福祉は、2003年の「支援非制度」の導入から国が福祉を保障する
「措置制度」から個人個人が民間業者と契約を結ぶ「契約制度」へと大きく変わ
りました。確かに「措置制度」のもとで障害者の施設への隔離が推進されてきた
のも事実です。しかし、一方で、「全身性介護人派遣制度」など、地域自立生活
の保障を一つ一つ勝ち取ってきたのも「障害者福祉は国が保障すべきもの」とい
う考え方を土台にしてきたからです。「契約制度」への転換は、福祉を国が保障
するものから個人が民間業者と契約を結んで買うものへと変質させたのです。だ
からこそ、重度になればなるほど負担が重くのしかかる応益負担などというとん
でもない考え方が当然のように出てくるのです。
 当初、多くの障害者団体が「契約制度になれば福祉サービスを提供する事業者
と利用者である障害者とが対等の立場になる」「サービスを自由に選べる」と考
えていましたが、現実はまったく逆です。障害者が「サービスを選ぶ」どころか、
民間業者が「儲かる障害者を選ぶ」という事態になっています。
 これは、なにも障害者に限ったことではありません。契約・派遣の労働者の権
利は「契約制度」によって守られているでしょうか? 「契約制度」で企業と個
人が対等の立場になれるのならなぜ「ワーキングプア」「ネットカフェ難民」な
どと呼ばれる労働者が大量に生み出されなければならないのか?「契約制度」で
障害者の生活は守れないどころか、命さえ奪われかねないというのが現実ではあ
りませんか!?
 さらに、「自立支援法」では障害者の生活の実態とはまったくかけ離れた「障
害程度区分」を設定し、区分ごとに国庫負担額を決めています。したがって、そ
れ以上の介助などの制度を適用しようとする場合、全額が自治体の負担になりま
す。その結果、介助時間などは事実上国庫負担の範囲に限定されることになり、
充分な介助が受けられない障害者が続出しています。また、ヘルパー派遣業者や
各種の施設に対する報酬単価が引き下げられたり、月払いから日払いに移行した
結果、経営状態が悪化し、職員が減らされたり、時給が下げられたりと、ただで
さえ劣悪な労働条件のもとで働いているヘルパーや施設の労働者はより以上の労
働条件の悪化にさらされています。「自立支援法」は、私たち障害者にとっても、
障害者の生活を支える労働者にとっても、我慢のならない悪法なのです。
 実際、「自立支援法」のもとで、無理心中を含めた障害者殺しが続発していま
す。また、精神障害者に対する事実上に保安処分である「心神喪失等医療観察法」
の下で、佐賀県にある肥前病院の特別病棟に閉じ込められていた精神障害者が自
殺に追い込まれるという事件もおこっています。
●「自立支援法」撤廃へ力を合わせよう!
 臨時国会で政府は、アフガニスタンへの侵略戦争を支援するための「給油新法」
を衆議院での再可決を強行してまで成立させました。さらに政府は民主党をもま
きこんで、自衛隊をいつでも海外派遣できるようにするための恒久法の成立を狙
っています。米軍再編のために3兆円とも言われる巨額の税金を投入しようとし
ています。他方で、高齢者医療をはじめとする医療制度を改悪し、私たちに高額
の自己負担を強制しています。ついに、最低限度の生活を保障するものとしての
生活保護の支給量の削減に手をつけようとしています。「自立支援法」や介護保
険制度なども含めて、年金・医療・福祉といった社会保障全体の破壊に乗り出し
てきているのです。さらに、命に差別と選別を持ち込む臓器移植法の改悪案が継
続審議になっています。「安楽死」を合法化するための尊厳死法を提出しようと
する動きもあります。世の中の役に立たない障害者や高齢者は早く死んでくれと
言わんがばかりの攻撃です。こんな世の中、もうがまんできません!
 「集団自決は軍が強制したものではない」という教科書における歴史の改ざん
に対して沖縄の人たちは12万人の県民大会を開いて抗議しました。こうした人
たちと連帯して私たちも、昨年10月30日の大行動を引き継いで、こうした運
動をさらに、さらに大きく広げ 、戦争に向かう世の中を根本的にひっくり返し
ていきましょう!
 「自立支援法」を必ず廃止させようではありませんか!
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■介助保障における介助者(ヘルパー)の資格制度はすぐやめろ
金子和弘
 私は37年間にわたり脳性マヒ者の立場から人間として当然に生きられるよう
に自立と解放を目指し生存権、生活権、確立の運動をおし進めると共に、何ら制
度的に確立されていない中で自立生活をし、差別社会に対して様々な問題提起の
運動をしてきました。
 なかでも脳性マヒ等で24時間介助が必要な重度の障害者にとって自立生活を
営んで行くのに大きな問題になるのは介助者の確保でした。
 何十年前までは介助者が見つからず、ご飯も食べられない、トイレにも行けな
い、死と直面する場面もありながらも、色々な健全者に、そして国や行政や社会
に、自分たちの存在を呼びかけながら、頑張っていた私を含め多くの仲間がいま
す。
 そんな中から、国を始め行政が自薦ヘルパーを認め、いろんな人たちか私たち
の介助にかかわってくるようになって喜んでいました。
 ところが2003年に、私たちの反対の声を聞かずに国は強硬に支援費制度を
施行し、そのあげく「資格を持たない、無資格(自薦ヘルパー等)のヘルパーは居
宅介護に従事出来ない」という見解を出し、全く現実を無視した事を押しつけま
した。
 それをそのまま「障害者自立支援法」にまで入れてしまいました。
 その結果、多くの仲間達は、今まで関わりを持ち育ててきた介助者の関係が絶
たれ、そこに入ってきたのは資格を持った事業所から派遣されたビジネス感覚の
ヘルパーであったわけです。そこには利用者の言うことを聞かずに、研修で学ん
だマニュアルどおりに動き、そして寝起きや着替えや食事や排泄まで時間が決め
られ、介助の時間が切れると用事が終わらなくても帰ってしまうヘルパーもいま
す。また同性介助もままならない等、人格を無視し管理されるような状況になり
ました。
 まさに施設の中にいるのと同じ感覚です。それはヘルパー個人が悪いわけでは
なく、そのような制度を作りシステム化した国や厚生労働省の責任です。
 私たちは施設が当事者の人権や人格を無視し、管理する恐ろしさを感じたから
こそ、地域で自然に自分の意志で思うように、人間として生きたいと施設や病院
から出て自立生活をしているのです。
 その事を真っ向から否定したのがこの資格制度であり、あまりにも当事者の人
間としての尊厳を軽く見たものであることは明確であります。
 何故なら人間は色々な人がいて千差万別です。一口に「障害者」と言ってもそ
れは同じです。それぞれに自分の生活があり、食事や移動や入浴やトイレの時間
ややり方は、それぞれに違います。
 自分にあった生活をするために介助者に様々な指示を出し、それをやらせるの
が介助であり、一方的に押しつけられるのは介助ではありません。
 だからこそ私たちは色々な人と関わり、その中から自分に合った人を介助者と
して選んで育ててきたのであって、別に特別な知識とか経験など無くても何の問
題もなく十分やって来たのです。
 それをこの資格制度は、介助を特別なものと社会的に定義づけ、人間対人間と
してのこれまでの関係を壊す結果をもたらしたのです。私たちは強く抗議してき
ました。
 この資格制度は2006年4月から施行された「障害者自立支援法」にも受け継が
れ、さらに厳しくした事は、私たち当事者を差別し、軽視し、愚弄するものにし
か過ぎません。
 これまでの国や行政の話し合いの中で、資格の話になると、ヘルパーの「質」
云々とおっしゃいますが、資格のあるヘルパーがどんな人の介助をもうまくやれ
るとは到底思いませんし、やれません。またこの人たちは、やれないと分かった
ときに資格の講習で学んだ事を押しつけてくる事が多くあります。これは本末転
倒の状況です。
 このように現実的でないことを、いかにも資格を取ると何か素晴らしい介助者
になって何でも出来るような錯覚を与え、資格のない介助者まで差別し、当事者
から切り離していくのは「完全参加と平等」という理念から考えても当然許され
ることでは無いのです。つまり介助はどんな人にも出来る可能性があるのに、国
や行政の都合でそれをつぶしてしまっていることは大きな問題であり、改めるべ
きだと言ってきました。
 現に事件や問題を起こすのはヘルパー資格のある人たちではないのですか。
 そして私たちは自らの意志で24時間、いつでもどこでも介助者を選び使いな
がら生活し、生きているという実感を味わえるようにし、介助者にも資格の有り
無し関わらずしっかりと生活の保障をしていくのが本当の意味での介助保障なの
です。 
 1日でも早く資格制度を廃止して頂くことを願っています。
 ところが最近の国会の厚生労働委員会等で与党、野党、問わず「きめ細かな介
護者資格制度の確立を」とか「介護者育成専門学校の充実を」等と私たちの願う
こととは違う事を議論されている事に強い怒りを感じます。特に、最近は資格の
ある人が少なく一人の介助者のあまりの過酷な負担になって介助の現場から離れ
ていく人か多くなって、そのしわ寄せが障害者にきています。これでは何のため
の資格制度なのか分からないし命に関わる状況が起きています。
 これは絶対に許されるものではありません。即刻、廃しすべきだ訴えたいと思
います。
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■資格問題について
新潟・木村
 私は、新潟市内で桐沢さんの介助に入って十数年になります。桐沢さんの自薦
ヘルパーとして、現在「(社福法人)新潟市社会福祉協議会」(以下社協)の臨時
職員という身分で働いています。今は他に職業を持っていないので専業ヘルパー
です。
 さて、障害者自立支援法との闘いの重大なテーマに資格問題があります。今回
は、この資格問題の重要性について、私の思うところを少し述べてみたいと思い
ます。
◆自薦介助者の確保が困難に
 「『障害者』の介助に入るには資格が必要」。2003年の支援費制度のスタ
ートからそういう「決まり」になりました。怒りネットは、支援費制度への移行
に際しても、今日の障害者自立支援法との闘いでも、厚労省との攻防の重大なテ
ーマのひとつとして、この資格問題に取り組んでいます。介助に資格が必要とい
うことは、その資格を取るための特別の負担がかかります。ヘルパー2級には1
30時間の研修が必要で、費用も数万~10万円近く要します。2003年3月以
前は、当該の「障害者」が認めれば介助者には特別な資格が無くても、役所に申請
すれば「自薦ヘルパー」として働くことができたわけですから、それ以降は、介
助者になろうとするには、時間と費用という大変なハードルができてしまったこ
とになります。「障害者」の立場から言えば、自薦介助者の確保が著しく困難にな
ったわけです。
◆自薦ヘルパーの重要性
 ヘルパーには、事業所が派遣してくれるヘルパーと自薦ヘルパーがあります。
事業所から派遣されてくるヘルパーにも、「常勤ヘルパー」と「登録ヘルパー」
があります。「常勤ヘルパー」は、事業所へ出勤してから訪問先へ行くタイプのヘ
ルパーで、正規職員もいれば臨時職員もいます。また「登録ヘルパー」というの
は特定の利用者のところに直接訪問するタイプ(直行直帰)の臨時職員のヘルパー
です。「常勤ヘルパー」の場合も「登録ヘルパー」の場合も、利用者の決められ
た介護時間枠に、決して穴をあけないように、派遣要員について事業所が責任を
取る代わりに、利用者が人物を選ぶことができません。一方、「自薦ヘルパー」の
ほうは、介助要員を利用者自身で確保しなければならないという大きなリスクを
負うのですが、自分の選んだ人物を介助者にすることができるという大きな利点
があります。
 事業所は、利用契約を結べば支給量の範囲・支給時間枠の範囲でヘルパーを派
遣してくれるわけですが、桐沢さんは、自薦ヘルパーの利用も認めている新潟市
社協と契約し、常勤や登録などのいわば「業務ヘルパー」と、自薦ヘルパーを併
せて利用しています。
 「障害者」にとって、自分で選んだ介助者とそうではない介助者では、使い勝手
が全然違うと思います。理想の介助者は、多分親友でしょう。親しい友人なれば
こそ、相手の心理も、求めているものも理解できると思うし、さらには「障害者」
の社会参加や、権利擁護活動にも問題意識を共有できると思うからです。「障害
者」のQOL(生活の質)という観点からは自薦介助者は不可欠だと思います。「健
常者」たる介助者の側も、「障害者」との継続的で深い交流を通じて、この社会
の仕組みが「健常者」のために作られている現実、誤ったものさし(価値基準)に
よる差別の不合理さ、人間関係の本来のあり方等について深く考えさせられ、共
に生きる社会の実現を目指す主体となることができるからです。
◆学生介助者が「風前のともし火」に
 資格要件ができたおかげで、桐沢さんの介助体制でいえば、いよいよ学生介助
者の獲得が困難になってきています。大学の入学式などで募集ビラを配って介助
者を集めているわけですが、こうしたビラに関心を示して連絡してきた学生でも、
あるいは先輩学生の紹介で桐沢さんのところへ来た学生でも、ヘルパー資格がな
い限り無報酬のボランティアということになります。学生はアルバイトをしない
と生活が大変です。したがって、他でバイトをしなくてもいい程度の報酬がない
と、当人が介助したいと思っていても、その機会がどうしても制限されてしまう
わけです。それでも、ヘルパー研修に挑戦してくれる学生がいるので、今のとこ
ろ学生介助者がゼロという事態にはなっていませんが、年々確実にジリ貧・先細
り状態になっています。
 いわば「風前のともし火」という状態です。
 それでも自薦介助者はどうしても確保しなければなりません。一方で、社協な
どが開催するヘルパー2級研修の終了式に出向いて募集ビラを配らせてもらった
りしています。こちらは関心を示して連絡して来た人は、当然にもヘルパー資格
を持っているので、即ヘルパーとして働けます。ただし主婦層が大半で、学生と
の決定的違いは多くの場合最初から報酬を目的にしていることです。子供のいる
共働きの主婦など、社会人の場合は、一定のまとまった賃金を期待しているので、
毎月の定期性が重要で、しかも夜間はほとんど不可能です。ところが学生の場合、
動機は必ずしも報酬だけではありません。社会貢献だとか、「障害者」問題への
関心など様々です。介助予定が不定期でもOKだし、何よりも夜間を得意として
いる点で、重度の「障害者」には無くてはならない存在です。その学生の獲得が
今困難になっているわけです。
◆「障害者」問題とは、「健常者」自身の問題
 ところで、「障害者」が国の福祉切り捨て攻撃で様々な困難にあっていること
は、「障害者」に直接の責任があるわけではありません。もちろん「障害者」自
身がそうした攻撃と闘うことは当事者としての課題だろうと思いますが、あくま
で国策の犠牲者、被害者だと思うのです。「障害者」の反対語は「健常者」にな
るわけですから、「健常者」の側にこそ「障害者」問題に対する認識の強化、
「障害者」を迫害する社会の変革のために行動する大きな責任があるはずだと思
います。
 私は、桐沢さんと一緒に、介助者の学生たちを誘って、「水戸事件」の民事裁
判の傍聴に長いこと参加してきました。「水戸事件」民事裁判というのは、知的
障害のある従業員たちに対して、性的虐待を含む暴虐な差別・虐待を繰り返して
いたダンボール加工会社の社長(赤須)に対して、元従業員の女性被害者が原告と
なって、謝罪と賠償を求めて約十年にわたって闘い続け、ついに勝利した裁判で
す。裁判傍聴を通じて、「障害者」差別・虐待は、まさに「健常者」の問題であ
ることを痛感しました。こうした差別とまだ充分に闘うことができていない自分
達の現実を恥ずかしく思いました。「健常者」こそが「障害者」問題を自分自身
の問題として、意識的に取り組む努力をしなければならないと思います。
◆介助者は「障害者」とともに闘おう
 介助者にヘルパー資格が必要とされたことによって、大変深刻になっているこ
とは、「障害者」問題を自らの問題と考える介助者が消えつつあるということで
す。
 「障害者」の問題で、厚労省交渉や国会行動、あるいは集会などで上京する場
合、介助者は本来自分の問題として取り組む必要があるはずです。「障害者」の
困難の多くは、「健常者」のために作られているこの社会の仕組みに原因がある
わけですから。「健常者」には「障害者」の痛みや困難を認識する努力が必要だ
と思います。そうでなければ、「健常者」自身が心の貧しい、みすぼらしい存在
になってしまうからです。
 しかし、介助者が「ヘルパー」と呼ばれ、介助が「サービス」などと称される
昨今では「障害者」が集会や闘いに参加する際の介助者は、あくまで時給いくら
の「お仕事」になっている。極端に言えば、何の集会なのか、どういう行動なの
か、全く知らなくてもいいわけです。まあしかし、様々な職業、ただ金だけのた
めに働く人はいないと思うし、報酬のおかげで介助者も集会や闘いに参加でき、
現実には介助者も巻き込まれて、結局自分の問題になってしまうわけだから、そ
れで良いともいえるのですが―。介助者の意識の中にある、こうした相反する二
面性は、介護が商品化していることによって、まさに商品自体が持っている矛盾
の反映でもあるのですが、介助者の意識を、親友と介護ロボットを両端とする天
秤に仮定すると、ヘルパー資格要件によって、介助者の意識がロボット側に大き
く傾斜してしまったことは間違いないように思います。
 以上のように、ヘルパー資格問題は、「障害者」の立場から言えば、自薦介助
者の確保を困難にし、特に「障害者」問題を自分自身の問題と感じることのでき
る介助者を獲得しにくくしました。介助者にとって「障害者」問題は「自分の問
題」なのか、それとも「他人事」なのか。ヘルパー資格問題は、「他人事」にし
か感じられない介助者を確実に増やしていると思います。
 障害者自立支援法は、まさに問題がてんこもりです。応益負担による自己負担
の重さ、無意味で不合理な障害程度区分認定、支給量の制限、ヘルパー資格によ
る報酬減算、規準該当事業所への減算など、国の福祉切り捨て政策によって「障
害者」の生活は決定的に脅かされています。ヘルパー資格問題とは、こうした物
理的・物質的迫害とはちょっと質を異にする攻撃として、闘う主体を分断し破壊
する攻撃としてかけられているように思います。2003年の利用契約制度(支
援費制度)のスタートによって、障害者団体が介護事業に参入することを通して、
「障害者」が事業者と利用者に分断されました。同時にスタートしたヘルパー資
格要件は、「障害者」と「健常者」の溝をいっそう深くしたと思います。
 私たち「健常者」たる介助者は、自分達がしばしば無自覚に「障害者」差別に加
担している現実を省みて、「障害者」と共に、資格要件に反対するなど、障害者
自立支援法と全力で闘わなければならないと思います。          

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