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2008年8月13日 (水)

合理的差別ということ

差別禁止法とか条約とかが新たに出てきて、どう考えるべきかという問題になっています。直接そこから離れて、法律的には合理的差別という考え方があるという問題提起をしたいと思います。法律上差別一般を問題にしたものは今のところ千葉の条例しかないと思います。そういう中で差別には合理的理由のあるものと不合理なものがあるということが、法律的には一般的になっています。

僕の解雇撤回裁判を例に取ると、一審神戸地裁は不合理な差別であるから解雇を採り決す判決し、大阪高裁・最高裁は合理的な理由のあるものであるから解雇は正しいとしました。ここで合理的、不合理という基準はどこにあったのでしょうか。神戸地裁は多少能率が落ちても、働くことの出来る職場があったのではないか、というふうに問題を立てました。能率が一般並みでなくても良いという問題の立て方をしたので、それなら原告にも働くことのできる条件があるのではないか、それを検討せずに解雇としたのは間違っているという判決でした。不合理な差別であるという線をそこに引いたのです。

ところが大阪高裁は、「能率の落ちるものを雇用する義務はない」という郵政省の主張を取り入れました。郵政省は『「障害者」の雇用率は達成しているから個別の「精神障害者」を雇用することは義務ではない。ましてや一般並みの労働の出来ないものを雇用する義務はない。そのような義務を課する神戸地裁判決はまちがいである』という主張を展開しました。この時点では「精神障害者」は雇用義務率の対象でもありませんでした。大阪高裁判決はその主張を全面的に取り入れました。そこに合理的差別という線を引いたのです。最高裁がそれを追認したので判例というのは大阪高裁のものとなりました。

一般並みの労働の出来ないものは雇用の義務はない。「障害者」雇用率を達成していれば「障害者」を解雇しても差別ではないという線です。後に「精神障害者」も雇用率に数えられることになりましたが、それは個別の「精神障害者」の解雇を不当とするものではありません。雇用率を達成していれば「障害者」を解雇しても差別ではないという線は引かれているのです。

これが雇用に関する合理的差別と不合理な差別をめぐる争いであり、最高裁判決の引いた線です。みなさんの議論の参考になればと思います。

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