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2008年12月26日 (金)

老齢加算・母子加算廃止に対する広島地裁判決に関する共同声明

 昨日、広島地裁民事第3部は、生活保護を利用する高齢者、母子世帯が国によって廃止された老齢加算ないし母子加算の復活を求めて提起した行政処分取消訴訟において、厚生労働大臣の告示を受けて各自治体が行った保護変更決定の違法性を認めることなく、原告らの請求を棄却する判決を言い渡した。

 生活保護は、憲法25条に基づき、生存権を保障している。老齢加算及び母子加算のいずれの加算とも、高齢者ないし一人親世帯に対して「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するために支給されてきたものである。ところが、厚生労働大臣は、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003(骨太の方針2003)」、「骨太の方針2006」等を受けて、老齢加算及び母子加算の段階的な廃止を進めてきた。生活保護を実施する各自治体は、厚生労働大臣の告示に従って老齢加算及び母子加算を減額する保護変更決定を行ったのである。

 しかし、いま、我が国では、「ワーキングプア」と呼ばれる人たちが増大し、格差と貧困が急速に拡大している。世界金融危機を契機とした大企業による「派遣切り」の嵐が吹き荒れ始めており、労働市場から放り出された人々が、住居を失い、文字通り路頭に迷わされようとしている。最後のセーフティネットである生活保護の役割は非常に重要なものとなっており、「骨太の方針2006」等に基づく社会保障費の削減政策に対して見直しを求める市民の声が日を追う毎に広がっている。世論はいま、生活の底上げを強く求めているのである。

このような状況において、裁判所には、人権保障の最後の砦として、市民の声を踏まえた判断が期待されていた。ところが、昨日の判決は、生活の底上げを求める市民の声に背を向けた。司法の役割を放棄して、厚生労働大臣の裁量を広く認め、原告らの生活実態には一切言及することなく、原告らの請求を棄却した。今回の判決は、生活保護の漏給が多いなかで、低所得世帯が生活に困窮して必死に生活費を切り詰めている実態、とりわけ多くの母子世帯が最低生活費以下の生活を強いられている厳しい実態を正しく認識することなく、低所得世帯との比較による生活保護基準の引き下げを是認するものであり、貧困スパイラルを助長させる極めて不当な判決であると言わざるを得ない。

闘いはこれからである。私たちは、老齢加算及び母子加算の廃止について審理を行っている全国各地の裁判所に対し、市民の声に耳を傾け、人権保障の最後の砦としての役割を全うすることを強く求めるものである。また、私たちは、国に対して、速やかに老齢加算及び母子加算の復活ないしそれに代わる措置を講ずるとともに、社会保障費の削減政策を撤回し、失業対策、多重債務者対策、野宿者対策等、貧困にあえぐ市民生活全般の底上げへと政策転換することを強く求めるものである。そして、私たちは、貧困の実態を直視し、連帯して、すべての市民に対して等しく「健康で文化的な最低限度の生活」が保障される社会の実現を目指し、生活底上げのための活動を継続していくことをここに表明する。

2008年12月26日

NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ(理事 赤石千衣子)
生活保護問題対策全国会議(代表幹事 尾藤廣喜)
全国クレジット・サラ金問題対策協議会(代表幹事 木村達也)
全国生活保護裁判連絡会(共同代表 藤原精吾)
反貧困ネットワーク(代表 宇都宮健児)
ホームレス法的支援者交流会(共同代表 木原万樹子/後閑一博)

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