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2009年1月25日 (日)

所持金90円、救いの手なく…大阪の元派遣社員孤独死

 大阪市住吉区のマンションで14日、元契約社員の男性(49)が、栄養失調状態で孤独死しているのが見つかった。死後約1か月。男性は職を転々としながら独り暮らしを続けていたが、約2年前に体調を崩してから仕事がなく、区役所に生活相談に訪れていた。命は救えなかったのだろうか。

足跡をたどり、検証した。(社会部 冬木 晶)


 マンションはワンルーム形式で、家賃は月3万9000円だった。その家賃が昨年11月分から滞納されていたため、14日午前、管理会社の社員(55)が訪ねたところ、ベッドで、普段着のまま男性が死亡していた。

 遺体は、極度にやせ細っており、行政解剖で、胃の内容物はほとんどなく、死後約1か月とわかった。糖尿病を患っていた。冷蔵庫は空っぽで、所持金はわずか90円。住吉署は餓死の可能性もあるとみる。

 近所づきあいはなく、同じ階の住民(35)は「どんな人が住んでいたかも知らない」と話した。

◎ 

男性は、徳島県鳴門市の生まれだった。地元の高校を卒業し、母親(81)と兄(52)を残して大阪市に出た。工業用ミシンメーカーに就職。以来、ずっと大阪で暮らしていた。兄は「地元に仕事はなく、弟は大阪で生活するしかなかった」と話す。

 男性は、フリーのプログラマーとして職を転々としていた、という。2003年から勤めていた神戸市の情報処理会社によると、同社でも、プログラマーとして銀行のシステム開発に携わった。「仕事熱心でまじめ」という評判だった。だが、07年3月に体調を崩して退職。同12月から入院生活を送った。

 大阪市によると、男性は退院後の昨年2月、住吉区役所の生活保護窓口を訪れた。「仕事がなく、通院しながらの生活が不安だ」と訴えたが、担当職員は「働く意志がある」と判断。「まだ若いので求職してください。仕事が見つからなければまた来て」と伝え、生活保護申請の必要書類を手渡すにとどめた。 職員は男性の連絡先を聞かず、男性も窓口を再び訪ねることはなかった。

 同区の担当者は「結果は残念だが、対応に問題はなかったと考えている」とするが、市民団体「住吉生活と健康を守る会」の岸晃事務局長(68)は「その日の生活も苦しくて訪ねたはず。その場で生活保護の申請ができるよう職員が積極的に事情を聞くべきだった」と指摘する。

     ◎

 実は、男性は、区役所を訪ねる前月分から家賃を払えなくなっていた。管理会社には「病気で仕事のあてがない」と話していた。結局、5か月分を滞納したが、この時は、実家に無心し、滞納分を支払った。

 しかし、昨年11月から再び家賃が滞った。男性は今度は実家にも明かさなかった。年末に兄に電話をかけてきた。兄は「生活保護を受けたらどうだ」と勧めたが、男性は「元気だから」と答えるだけだった。それから間もなくの死。兄は「私もいま、失業している。弟は、家族に心配をかけたくなかったのだろう」と唇をかんだ。



大友信勝・龍谷大教授(社会福祉学)の話

 「まだ働ける世代には生活保護を相談すること自体、心理的に敷居が高いが、行政側は相談だけにとどめて申請を受け付けない姿勢が強く、せっぱ詰まっていても受給をあきらめる人が多い。不況の中、同様に死に至るケースが続く恐れがある。仕事が見つかるまで積極的に受給を認める一方で、就労支援も行う『利用しやすく出やすい』システムを構築すべきだ」

(2009年1月25日  読売新聞)

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コメント

役所窓口で、仕事を探せと言われた時は、突き放されたような見捨てられたような、悲しい気持ちになったでしょうね。90円を残して、冷蔵庫にも何もなかったと報道されていました。北九州市の「おにぎりが食べたい」と書いて死んだ人と同じ。
重篤な病気でなければ、福祉の手は届かないのでしょうか。働けないというだけの病気ではダメなんでしょうか?働けないことは生きる費用が得られないということなのに。
絶望し、衰弱した動かない体で、死を待つとは、どんなにつらかつたでしょう。かわいそうでたまりません。

投稿: ぶう | 2009年1月26日 (月) 21時11分

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