脳死判定基準の原理から
関西市民の会の、守田憲二さん(ホームページ:死体からの臓器摘出に麻酔?の開設者http://www6.plala.or.jp/brainx/)から脳死問題で重要なメールを怒りネット古賀さん宛にいただきました。ホームページに公開して良いという了解をいただきましたので3回に分けて掲載します。
古賀さん、おはようございます。守田です。
7月2日の参議院厚生労働委員会における参考人質疑について質問をいただきました。こちらで調べなければならないこともあり、正確に回答するには長文になりますので、何通かに分けて送信します。
まず、日本移植学会理事長・寺岡の発言の再録からです。寺岡は、厚生省研究班による小児脳死判定基準で「脳死と判定された後に回復した事例はありません」と発言しました。 深昏睡の検査は痛み刺激を与えますが、これも与える痛み刺激の強さについての規定がない検査です。1平方センチあたり何キロの強さで何秒間押しても反応がなければ、深昏睡といえるのか。強く押せば、患者は目覚めるかもしれないが、患者を傷つけるほどの激烈な痛み刺激を与えることはできない。そんなことをする医師はいない。しかし、米国のザック・ダンラップ事件 この資料について解説します。米国、カナダ、英国の脳死判定基準は、無呼吸テストで自発呼吸がないことを確認する動脈血二酸化炭素分圧レベルが異なります。英国は50mmHg、カナダは50mmHgから55mmHg、米国は60mmHgです。このような微妙な炭酸ガス刺激の強度の違いで自発呼吸をする、脳死ではないことがわかるケースがあります。死亡宣告をされたり、されなかったり、臓器摘出をされたり生体解剖として臓器提供は拒否されるケースがあります。では我が国の脳死判定基準を満たした状態は、まったく本当の脳死なのでしょうか? 1~2例目:日本大学付属病院では2例、64.7mmHgと72.2mmHgで自発呼吸をした(脳蘇生治療と脳死判定の再検討、p97) 無呼吸テストを長くし過ぎて動脈血二酸化炭素分圧を80mmHg以上とか上げると、血液が酸性に傾き過ぎる。pH7.2くらいになると、血液中のヘモグロビンから酸素が切り離されにくくなって患者の負担が大きくなりすぎて本当の脳死作成法になるから、これ以上無呼吸テストを長くするわけにもいかない(上記の報告は長くしすぎています。医師が患者を傷つけている)。となると、脳死判定の最重要テストとされる無呼吸テストは、ある程度のところで止めなければならない。これは自発呼吸能力の廃絶を証明できないこととイコールです。 さらに、いったんは無呼吸とされて脳死判定されながら、大阪大学付属病院(日本救急医学会雑誌2巻4号p744~p745、1991年・Pediatrics96巻3号p518~p520、1995年)
以下が私の反論ですが、まず脳死判定の原理、その原理から想定される限界を踏まえなければなりません。
脳死判定は5つの必須検査で構成されます。このうち頭皮上に電極を置いて脳波を測定しても、脳の深部、脳幹部の状態がわからないことは頭蓋内脳波や鼻腔脳波の研究で示されているとおりです。
他の4つ(深昏睡、瞳孔の散大固定、脳幹反射の消失、自発呼吸の消失)は、刺激を加えて反応の有無を調べる原理で共通しますが、このような検査は、果たして反応するに足る十分な刺激を加えているのか判らない、という問題があります。
例えば瞳孔を見る時に光を当てますが、その時に室内の明るさ、当てる光の強さ、照射時間により結果は異なります。そもそも脳死判定基準は、対光反射の有無を検査する際に、室内の明るさについて、当てる光の強さについて、照射時間の長さについての規定がない検査です。室内の明るさは何ルクスにしておくのか、照射する光は何カンデラの懐中電灯を使って、何秒間当てたら十分な刺激を与えたといえるのか?長時間、強い光を当てたら瞳孔が動くかもしれませんが、失明をさせる恐れのある検査はできない。そんなことをする医師はいない。
厚労省基準は、動脈血に溶け込んでいる炭酸ガスの圧力(二酸化炭素分圧)が60mmHg以上になったら無呼吸テストを終了してよいとしていますが、その閾値と設定された60mmHgを越えてから、呼吸をした患者が多数報告されています。値の低いほうから8例を並べると以下のとおりです。
3例目:帝京大学医学部附属市原病院では59歳女性が66.4mmHgで自発呼吸をした(日本救急医学会関東地方会雑誌8巻2号p524~525)
4例目:京都大学付属病院では86mmHgで自発呼吸をした(麻酔37巻10号臨増S66)
5例目:米国ワシントンDCのChildren's National Medical Centerでは、3歳男児が91mmHgで呼吸。同日2回目の無呼吸テストでは71mmHgで呼吸をし、その後数日間は人工呼吸の設定を超えて規則的な自発呼吸を始めた。現在、患児は気管切開と胃ろう造設がなされ慢性病棟で介護されている(Critical care medicine26巻11号p1917-p1919)
6例目:日本医科大学付属病院では、54歳女性がPCO2(肺胞内二酸化炭素分圧)が100mmHgを超えてから自発呼吸をした(人工呼吸器装着時の連続測定でPCO2の最高値は、PaCo2よりも1~5mmHg低いとされる)(救急医学12巻9号S484)
7例目:米国ニュージャージー州のCooper Hospitalでは、髄膜炎の3歳女児は、第2病日に自発呼吸のあったことを除いて脳死判定基準を満たした。無呼吸テスト開始から8分45秒後に息を1回吸った。その時の血液ガス分析結果はpH6.94、PaCO2は112mmHgだった(Journal of child neurology10巻3号p245-p246)
8例目:公立昭和病院では、36歳男性が呼吸刺激薬ドキサプラムを併用した無呼吸テストで119.6mmHgで自発呼吸をした(脳死・脳蘇生研究会誌10巻p64-p66)
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脳死判定基準を満たした状態は、重症の脳不全であることはわかるけれども、年齢が低くなるほど精度が落ちてくる。成人でも、現代では心停止の予告はできない判定になっていると思います。脳死という言葉も、死の型を分類する時に限って使う用語にすべきと思います。
脳死判定基準の原理から、は以上です。
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公立高畠病院(日本小児科学会雑誌99巻9号p1672-p1680、1995年)http://www6.plala.or.jp/brainx/recovery15.htm#126d-eeg-11y では9ヵ月以上経過後に自発呼吸が復活しています。
この大阪大学付属病院、公立高畠病院の脳死からの復活例は、昔のことですから現行の脳死判定基準とは細部が異なりますが、「一時的に脳死判定基準を満たした後に回復してくる患者を、区別できない恐れがある」ことは十分に指摘できるでしょう。
A案支持者が盛んに「無呼吸テストも行った法的脳死判定ならば、正確に判定できる」と宣伝していますが、根拠がないデマ、煽動です。脳波も、神経学的検査も、無呼吸テストも脳の機能の不可逆的停止を原理的に証明できる検査ではない。過去の脳死判定のすべてに、何を判定していたのか?という疑問があります。
何を判定できているのか不明の判定基準 許容される行為と許容されない行為の分別が必要
日本移植学会理事長の寺岡は、厚生省研究班による小児脳死判定基準で「脳死と判定された後に回復した事例はありません」と発言しましたが、そもそも脳死判定基準を満たした状態が何を意味するのか。確定的なことはいえないことを、脳死判定基準の原理から踏まえておかなければならないと思います。
原理的に、何を判定できているのか皆目不明の脳死判定基準を満たした患者を対象に、重大なことを行うこと。死亡宣告をしたり、さらには臓器摘出までも行うことは暴挙というしかないでしょう。http://www6.plala.or.jp/brainx/wrong.htm#D では、患者の親族が足の裏をナイフで切ったり、爪の下の柔らかい部分に痛み刺激を与えることで脳死ではないことを発覚させて、生体解剖を回避しました。臓器摘出時の激烈な痛みで、はじめて深昏睡から覚めて、そのまま生きたまま臓器を切り取られて殺された患者もいるのではないかと想定されます。
人工呼吸器の普及で脳死が認識されたように、自発呼吸能力が廃絶したことの確認、無呼吸テストは「脳死判定の骨格」と言われる最も重要なテストです。息をこらえると、血液に溶け込んでいる酸素が減り二酸化炭素が増えてくる。この状態を呼吸中枢が感知して息を吸い込む動作が起こる。この原理から無呼吸テストは、低酸素と高炭酸ガスの両方の状態を作って、自発的呼吸が出現しないか確かめる必要があります。ところが、脳死判定基準における無呼吸テストは、酸素を投与しつつ人工呼吸器を止める。高炭酸ガス刺激だけ加えているが、低酸素刺激は行っていません。
また、どれだけの炭酸ガス刺激を加えても反応がなかったら「自発呼吸がない」と判断してよいかの科学的根拠もありません。重大な資料を紹介します。カナダの脳死判定基準で脳死とされ、アメリカに臓器提供しようとして、アメリカの脳死判定基準で判定したら息をしたために、家族が臓器提供の同意を撤回したケースです。*Simon D.Levin(McMaster University Medical Center):Brain death sansfrontiers、The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE、318(13)、852-853、1988
37週で出生した2530グラムの女児が、生後41時間後にカナダの脳死判定基準を満たした。動脈血二酸化炭素分圧を54mmHgまで上昇させて、自発呼吸がなかった。米国の移植組織により 心臓の利用が検討され、60時間後に米国の脳死判定基準(無呼吸テスト時に動脈血二酸化炭素分圧を60mmHgまで上昇させる)にもとづいてテストされた。この女児は動脈血二酸化炭素分圧が59mmHgまでは無呼吸だったが、その後64mmHgに上昇するまでsteadilyな(しっかりとした)呼吸をした。臓器提供の同意は、両親により撤回された。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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