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2010年1月

2010年1月28日 (木)

怒りネット通信 第42号

怒りネット通信
2010年 1月25日発行 第42号

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もくじ
09年秋冬の運動から判ってきたこと、そして10年へ
10・30障害者自立支援法の廃止を確約させる
9・20自立支援法の撤廃を求める関西集会の報告
通信41号の古賀さんの文章を読んで

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●すべての障害者が地域で生活する保障をかちとろう!
●軍事予算を福祉にまわせ!

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09年秋冬の運動から判ってきたこと そして2010年へ
古賀 典夫

 8月30日の衆議院選挙で、自・公政権が崩壊しました。「障害者自立支援法」(以下「支援法」)に苦しめられ怒ってきたわたしたち「障害者」やその関係者にとって、これは胸のすく思いでした。しかし、民主党政権がどのような動きを行うのか、「臓器移植法」改悪をめぐる国会の動きを経験してしまったわたしたちにとって、新たな政権に対する危惧があったのも正直なところです。
 9月19日には長妻厚生労働大臣が「障害者自立支援法」の廃止を明言しました。そして、障害者自立支援法訴訟においても国側の姿勢が転換します。国側はそれまで、原告の訴えを棄却するよう求めてきましたが、9月24日の広島地裁での公判において、「自立支援法は廃止することになっており、制度も見直す方針なので、訴訟遂行について検討する時間的余裕がほしい」と主張したのでした。その後各地の裁判でも同様の対応が始まりました。

 こうした状況の中で怒りネットは、「障害者」が地域で生活することを、国を初めとする行政が保障する制度を作ることが「支援法」の真の廃止である、という立場から、わたしたちのそのための要求をまとめ突き出していく準備を行います。具体的には後で示しますが、それは、10月30日の日比谷での集会で撒いたビラでも表現しました。
 また、こうした立場から、JDの太田さんやDPIの尾上さんとも意見交換をすることができました。「障害者」の地域生活を国や自治体に保障させる制度を作ること、新自由主義・就労至上主義に反対すべきこと、介護保険制度そのものに反対すべきこと、など基本的なところで一致できたと思います。

★予算をめぐる攻防

 民主党はもともと、「障害者制度改革推進本部」を内閣府につくり、5年間かけて、関係の制度を改革する、としていました。
 10月14日、長妻大臣は、4年間かけて総合福祉法を作り「支援法」を廃止する、という方針を示しました。そして、それまでの経過措置として、10年度から非課税世帯の「障害者」の利用料を無料とする、との方針を示しました。そのために、10年度予算の要求としては、300億円を増やすように要求する、としていました。

 しかし、この時期から緊張は起こっていました。それは、生活保護の母子加算復活をめぐる厚労省と財務省のやり取りです。
 09年中の復活を予備費から支出するかどうかのやりあい、母子加算復活とバーターで就学を支援する加算を切ろうとする財務省と抵抗する厚労省。21日の段階では、28億円の予算をめぐっていったんは両省が決裂する場面も起こります。結局今年度分として60億円の予算がつき、12月から母子加算が復活されるのですが、予算関係の厳しさを示す事件でした。

 「障害者」関係の300億円の予算増額分について、実際にかなり厳しい状況がやってきます。12月に入ると、こうした状況がいろいろなニュースで入ってきます。
 「障害者自立支援法訴訟の勝利をめざす会」(以下、「めざす会」)はこうした状況の下で、12月10日に院内集会を開き、応益負担と「支援法」を廃止する1歩として、非課税世帯の利用料をなくすことを強く要請しました。その後もこのめざす会は、与党、厚労省と12月29日まで折衝を続けてゆきます。このめざす会のがんばりに敬意を表します。
 しかし、25日に決まった政府予算案では、この予算増額は107億円しか認められませんでした。その結果、ホームヘルプや通所や住居としての施設利用の利用料は、非課税世帯で無料になり、また、補装具の1割負担も無料となるようです。食費、水光熱費は変わらないようですが。
 しかし、最も問題なのは、「自立支援医療」の1割負担はまったく変わらないということです。特に、「精神障害者」の通院医療を受けている人のなかには、この非課税世帯の人が多く、その費用負担はまったく変わらないのです。このことは絶対に許せません。
 このことから読み取るべきことは、福祉のために予算の増額を図ろうとすることが極めて困難であるということです。
 民主党は、09年3月に発表した「障がい者政策PT中間報告の中で、OECDの調査を紹介し、GDP比でみると日本の「障害者」関係予算は、「北欧諸国の約1/6、イギリスの約1/3、アメリカの約1/2」と記しています。そして、「障がい者制度改革推進法(案)」の中では、「第十八条 障がい者のための施策に関する国の予算の確保を図るため、我が国の国内総生産に対する障がい者のための施策に関する国の財政支出の比率を指標として、当該確保の目標を定めるものとする。」と記しています。
 こうした観点から、現在、政府の「障害者」関係予算が約1兆円だが、これを1.5倍にしたい、としています。(09年11月16日の「支援法」訴訟の全国訴訟団との話し合いにおける谷議員の発言など)。
 ところが、今回の予算編成では、とてもこんな予算増が実現できないのではないか、という事実が突きつけられました。もちろん、「支援法」の廃止は、「障害程度区分」認定のためのコンピューターシステムや審査会委員への支払いなど、無駄な予算を削減することもできるでしょう。また、地域の学校に通えるようにすれば、削減できる予算もあるはずです。他方、ホームヘルプなど、全国的に増やさなければならない予算もあり、やはり予算獲得の重要性はあります。
 しかし、少し角度を変えれば、無駄をきる、という民主党にしても、民衆の意思を踏みにじる無駄な予算があるのは確かです。たとえば、沖縄の人々が反対している名護新基地の建設関係の予算1553億円が予算案には入っているのです。米軍思いやり予算はこれとは別に2千億円以上計上されています。

 では、わたしたちはどのようにこの状況を突破すべきなのでしょうか。わたしは、09年8月30日に示された民衆の思いを信じ結び合うことではないか、と思うのです。
 あのとき、「障害者」が、沖縄の人々が、高齢者、貧困に苦しむ人々、農民などいろいろな立場のいろいろな地域の人々がこんな政治はだめだ、と行動したのだと思います。そうしたいろいろな人々の思いをまっすぐに推し進めると共に、お互いに励ましあい協力しあう関係を作り上げていくことだと思うのです。たとえば、沖縄に新たな基地ができることや軍事に予算が増やされるような状況になった場合には、「障害者」の未来も暗いものになってしまうことは明らかです。
 2010年は、そうした連帯と行動を作り上げながら、運動を発展させる必要があると思います。

★譲れぬわたしたちの要求

 怒りネットのこれまでの運動と討議の中で要求すべき内容をまとめると以下のようになると思います。これらは、地域で「障害者」が生活していくためには、絶対に実現していかなければならないことです。
 まだ足りない部分など多くあるとは思いますが、皆さんのご意見も是非お願いします。

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●国と自治体は、障害者が地域で生活する権利を保障せよ。その当然の一環として、どの 子も地域の学校へ通うことを保障せよ。

●介助保障について

・国と自治体は、障害者の必要な介助を保障せよ。

・現在のホームヘルプの国庫負担基準を廃止し、障害者の必要な介助に国庫からの支出を確実に行え。財政力の弱い自治体を支援せよ。

・家事、身体、移動などと介助の項目を分ける今の体制を廃止し、利用者の生活に対応した一貫した介助を行うようにせよ。

・通学、通所、通勤などの介助も保障せよ。

・入所施設や病院に入院している障害者にも、外出介助を保障せよ。

・入院中の必要な介助を認めよ。地域生活の介助を行ってきた介助者が入院中の介助も行えるようにするべきだ。

・障害者が推薦すれば、公的な資格を持たない人をもヘルパーとして認めよ。
  このような利用者推薦ヘルパーについては、行政から直接利用者もしくはヘルパーに報酬を払い込むようにすべきである。
  こうした制度がない現在において、生活保護の他人介護加算を、他法他施策優先で打ち切ることは許さない。

●支給決定手続きについて

・「障害者自立支援法」の「障害程度区分」認定制度を直ちに廃止せよ。
  利用者と自治体の職員が直接話し合って決める仕組みに戻すべきである。この話し合いには、福祉利用希望者の信頼するものを参加させること。

●医療関係

・都道府県の障害者の医療費無料制度を、精神障害者も対象として、国の制度とせよ。

・医療観察法をを撤廃せよ。

●通所関係について

・障害者の通所の場は、地域の仲間との連帯感・共同性を持って活動する場である。
  この連帯感と共同性は、人間の生存にとって不可欠なものである。それを土台として表現、創作、生産、交流を行うことである。具体的に何を行うかは、通所の場の利用者と職員など関係者が話し合いながら決めていくべきである。
 
・「障害者自立支援法」のように、労働能力により就労移行支援、「就労継続支援A」同B、生活介護などに分けることに反対する。
  地域の通所の場は、訓練の場とすることに反対。訓練や技術習得は、本人の希望に応じて、教育や雇用政策の中で行うべきである。

●利用料問題と所得保障

・介助など、生きることに不可欠な介助(移動やコミュニケーションを含む)は、利用料を無料とせよ。その上で、生存と社会的文化的に必要とされる消費を行うことのできる保障を、他の貧困者と共に要求する。

●介護保険制度の廃止と高齢者に必要な介助を

  障害者も65歳以上になれば、介護保険が優先適用となる。したがって介護保険の問題は、わたしたち障害者自身の問題である。
  高齢者が地域で必要とする介助は国と自治体が責任を持って保障せよ。

・介護保険制度は撤廃し、一般財源から必要な介助保障を行え。

・高齢者の応益負担も撤廃せよ。

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 2010年を、昨年を上回る変革の年としましょう!

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障害者自立支援法の廃止を確約させる
東京日比谷に全国から1万人
新潟  木村

 10月30日の「さよなら!障害者自立支援法 つくろう!私たちの新法を」全国大フォーラムは、東京日比谷公園を埋め尽くす1万人が参加した。
 来賓として出席した長妻厚労大臣は、自立支援法を廃止し、新しい制度を作ると確約した。政党シンポジウムでも、自立支援法に対する問題点の指摘に異論はなかったが、これに替わる制度については、方向性が語られただけで、具体的な中身やスケジュールは、今後の課題とされた。
 期待を裏切らせないようにしなければならない。
 政党シンポジウムでは、主催者側の4人の発言に続いて、民主、社民、共産の各議員が、1自立支援法の総括、2新法制定の方向性、3新法の作り方の三テーマについて、それぞれ発言した。各発言者の要旨を紹介する。

■来賓あいさつ

【長妻厚労相】政権交代が起こって、政策が変わる。私たちは、皆様に重い負担と苦しみを強い尊厳を傷つけた、この障害者自立支援法を廃止する決断をしている。これは与党 3党の合意文書の中にも盛り込まれている。今後の4年間の政権一期の中で、応能負担の新しい制度を、広く利用者の声に耳を傾けながら、創設していく。

【反貧困ネット・湯浅誠氏】生きていける国にしようと、横断的な枠組みで、活動している。昨年末の派遣村には500人が集まった。来た人の4割は何らかの疾病を抱えている。今の日本の社会は、何かトラブルがあるとそのままどん底まで落ちていってしまう「すべり台社会」だ。この流れを変えることが政権交代のポイント。優先順位を組み替え総合的な福祉施策を作る必要がある。私は内閣府の参与として、これまでと同様に活動を政府の中から作っていく。

【訴訟原告・家平氏】自立支援法が憲法の生存権・平等権に違反していることを司法の場で明らかにすべく訴訟に立ち上がった。3回の一斉提訴で原告は70人になった。人権を無視した法制度を許さない広い包囲網が自立支援法の廃止と当事者参画の新法づくりを約束させた。訴訟についても、国は話し合いに方向転換した。大きな前進ではあるが、現時点では何も変っていないので、話し合いに応じつつも、訴訟は納得がいくまで継続する。

◆自立支援法の評価・総括

【JD代表・勝又氏】自立支援法の問題点は、第1は応益負担の問題、第2に介護保険との統合を目論んだこと、第3に谷間の障害者を取り残したこと。
 新法制定に「4年以内」という話が出ているが、4年なんて待っていられない。今の法律が続くなら、それに対する手当てを早急にやっていただきたい。障害者総合福祉法ができるのであれば介護保険を飲み込むものにしてほしい。また、きちんとした予算を確保していただきたい。

【DPI日本会議事務局長・尾上氏】自立支援法は障害者の歴史を30年戻す役割を果たした。30年前、国際障害者年当時、障害の社会モデル(障害は社会の側の問題)が言われてきた。ところが自立支援法ではバリバリの医学モデル(障害は障害者個人の問題)に戻した。社会参加も一人ひとりの障害に対応したものではなく、一般就労が一番偉という「一般就労至上主義」になった。
 新法は権利条約の考え方を生かした法律であって欲しい。今度こそ谷間の障害の問題を解決してほしい。障害程度区分は廃止をして障害者本人の希望・ニードに基づいて協議・決定できる支給決定の仕組みと、家の中とか外とか関係なく切れ目のないパーソナルアシスタントという仕組みを作っていきたい。さらに差別禁止法をぜひとも一緒に作りたい。そして「私たち抜きに私たちのことを決めないでほしい」ということが、新しい法律の基本でなければならない。

【全日本ろうあ連盟副理事長・小中氏】手話は、言語である。聞こえる人の音声言語と同じ。コミュニケーション保障は権利であり、応益も応能も関係なく、無料であるべき。

【東洋英和女学院大教授・石渡氏】自立支援法は、応益負担によって「否定される命」を復活させた。また福祉人材の確保・養成に壊滅的な打撃を与えた。唯一評価できる点は逆説的に障害者団体・関係者の団結を強めた点である。
 権利条約の実現で社会を変えることができる。そのためには障害者差別禁止法を作ることが重要。障害者総合福祉法は、介護保険も変えることも視野に入れるべき。

■政党シンポジウム

【民主党・石毛えい子衆院議員】法案が出てきた時まず思ったことは2つ、1つは能力至上主義の復活。せっかく対等平等な社会作りを始めたのに、もう一回分断し支配していく法律だと思った。2つ目は所得補償がきちんとしていないのに応益負担を強いる財政至上主義はおかしい。
 社会保障の魂は社会的排除ではなく社会連帯だという哲学・理念を抜いて、制度設計したことに問題がある。

【社民党・阿部知子衆院議員】なんでウンコやシッコをするのが利益なんだ。また利用者が来た日だけを数えて事業者に報酬を払う日額払いでは、職員に給与も払えなくなるし良いサービスもできなくなる。何でもモノカネの市場原理はひどい。 

【共産党・高橋千鶴子衆院議員】自立支援法の問題点は、障害者が生きていくために不可欠な最低限の支援を、利益として利用料負担を課す憲法違反の応益負担制度である。障害が重い人ほど負担が重くなる。障害を自己責任にした。構造改革路線に基づく考え方で、障害保健福祉政策に対する国の負担を削ることが最大の狙いだった。自立支援法が実態把握もせず机上のプランで当事者の声を聞かず異例のスピードで作られたことも問題。

◆新法づくりの基本的な視点・内容

【石毛議員】民主党は総選挙の前、野党の時代に「障害者制度改革推進法案」を参議院に提出した。この法案は、内閣府に総理大臣をトップとした障害者制度改革推進本部を置き障害当事者が多数参加する制度改革推進委員会を設け、権利条約の中身を実現するもの。この推進本部を立ち上げていくのが当面の課題。障害者自立支援法は廃止し、制度の谷間のない、応能負担を基本とする障害者総合福祉法を作る。課題は多々あるが、自立支援法を総合福祉法に切り替えていく約束は、連立与党として約束する。介護保険との統合は党内確認ができていないので断言はできないが、障害者総合福祉法づくりにまずは全力を傾ける。仮に統合するならば、介護保険の方を総合福祉法に統合していく方向性を求めていく。

【阿部議員】「そよ風のように町に出よう」と日常的言葉で表現できるのが権利条約の趣旨。権利条約は日本も2006年12月13日に署名したがまだ批准していない。権利条約を推進する本部が必要。社民党はマニフェストで、介護保険との統合はしないと明言している。介護保険制度の方も見直さなければならない。

【高橋議員】憲法と障害者権利条約の趣旨に沿って、障害者が人間らしく生きる権利を国の責任で保障する法律とするべきである。自己責任論や、憲法25条に謳われている国や自治体の責任を後退させてはいけない。国や行政が責任を果たすことが重要。権利条約は合理的配慮を強調しており、傷害年金・雇用政策・教育などを条約の水準に引き上げ、障害の定義も条約に照らして見直すべき。
 また、医療福祉財政の抑制・削減の発想から生まれた介護保険との統合は認められない。今心配なのは総合福祉法を作るときの理念の問題。応益負担を止めることが単に経済的な問題ではなく、契約という関係の憲法違反が問われている。自立支援法を廃止して、障害者の総合福祉法を作ることが、介護や保育や医療の考え方も大きく変える出発点にできればいいと思う。

◆新法の作り方について

【石毛議員】「私たち抜きに私たちのことを決めるな」このことをひと時も忘れてはいけない。そのために障害者制度改革推進本部のなかに作る障害者制度改革推進委員会の半数は障害当事者と当事者に密接に関わる人で構成して制度を作っていくこと。今の障害者基本法の中央障害者政策推進協議会(中障協)とは違う。中障協の障害当事者の人達は、ただ意見を聞かれるだけで決定システムには入っていない。意見が反映できる仕組みを作っていく。そして権利条約批准にあたって障害者差別禁止法を作っていかなければならない。権利を守る仕組みが権利擁護センター。障害者差別禁止法とモニタリングシステムと、権利擁護センター。これを中央・地方に作って実態把握しながら政策を変えていく仕組みを位置づけていく。本部の立ち上げは年内に行いたい。

【阿部議員】エンジンの部分にあたる制度改革推進本部を早急に作らなければいけない。今この制度改革推進本部をどのタイミングで立ち上げられるかどうか勝負だ。介護保険の一番の問題は当事者性がないこと。 障害者運動との最大の違いだ。「自分抜きには決めないで」という当事者性を担保した障害者のための総合福祉法ができたとき、介護保険の考え方も変えていける可能性がある。

【高橋議員】差別や平等を考えたとき、当事者でなければ気づかないことがある。自立支援法では当事者の声を聞く仕組みがなかった。色んな当事者がいるから、施設や保護者の声も繰り返し聞き、制度に反映させる仕組みを作る。「私たちのことを私たち抜きに決めないで」ということが最大のカギ。日本の障害者予算が、GDP比でドイツの3分の1、スウェーデンの7分の1。これは、5兆円に上る軍事費にメスを入れ、大企業に対する行過ぎた減税を正せば充分に確保できる。320億円の政党助成金も止めるべき。

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いまこそ「障害者自立支援法」撤廃をもとめる集い
怒りネット関西事務局・YH

 自公政権が鳩山政権に代わって間もない9月20日、兵庫県西宮市勤労会館で、「いまこそ『障害者自立支援法』の撤廃をもとめる集い」を開催し、100人を超える参加をいただきました。怒りネット関西が呼びかけ、実行委による主催で、06年9月から毎年開催して、今回で4回目の集会でした。
 集会は長い講演等は無しで、参加者からの発言・報告を中心として行い、様々な立場の方から、当事者・現場の怒りや思いが寄せられました。
 以下、主な発言の要旨をまとめます。

◆へルパー:講習では「凛とした介護を」と言われた。映画を観たいとか金魚を飼いたいといったことを聞いてはいけない、ということ。ものすごくしんどい。それでもとにかく一歩踏み込んで、一緒に地域で生きていこうと頑張っているヘルパーは残っている。それと、「自分の意志を表現できなかったら、人として死なんだ」と重度の中途障害者の方が言った。絶対違う、生き切ってこそ人間の尊厳。そういう優生思想が介護の現場に重圧としてかかってる。病気の方や障害者が外に出て、人として生きうるために、ヘルパーが先頭に立って闘っていかなければならない。

◆医療労働者:補正予算の介護報酬の交付金をめぐって、労組内で議論している。利用者さんに跳ね返らないのは救いだが、今回の給付金は介護報酬に関わるものなので、医療現場で介護職にあたる職員には、支給されない。同じグループ内の介護職でも、受けれる人と受けれない人が出てくる。また、来年4月以降は、キャリアパス(人事考査)を受けなければ、この交付金を減額される。介護職を能率で計るようなシステムにしようとしている。医療・介護・福祉現場の労働者が、障害者と団結して、地域に生きる場をつくっていきたい。

◆<全国青い芝の会>の片岡さん(滋賀):脳死・臓器移植法が改悪された。本人の意思表示がなくても「脳死」者からの臓器摘出ができるようになり、また年齢も引き下げられた。<青い芝>はこの法ができる前から「生命の選別」として反対してきた。障害者は社会からいらない人間なんだ、殺してもいい、というものだから反対してきた。今、優生政策が拡大し、福祉が切り捨てられている。介護制度について、<青い芝>は、“介護に資格なんていらない”と言ってきた。人間関係のひとつとして介護に入ってもらってきた。それが、支援費制度や自立支援法になってから、介護が労働として扱われ、いろんな制約ができてしまった。パチンコに行けないとか。「自立」の概念がおかしい。“自分で稼いで自立”というもの。時代錯誤。私たちの声の通った新しい法律をつくっていこう。社会のために人間があるのではなく、人間のために社会がある。障害者も人間なんだって声をあげ、社会を変えていきたい。

◆高齢者の方:今回の選挙で、自立支援法と後期高齢者医療制度は廃止と言われたが、介護保険のことについては誰も言わなかった。介護保険も弱者切り捨ての制度。何もいいことがない。泣き寝入りすることなく、最後まで闘っていきたい。

◆事業者:自立支援法が廃止されることはいいこと。問題は、どういう制度をつくっていくか。介護にいろんな制約あるという話が出たが、要は、その人の生き方をどう守っていくのか、ということ。ヘルパーの仕事は、いろんな生き方があるなぁってことを教えてもらいながら、それを実現するために、制度がそれを保障してなかったら、制度として保障しろということを一緒にやっていかなければならない。自立支援法が廃止される今がチャンス。中身をつくっていくのは、現場にいてる私たちと当事者。闘って、一緒に生きていける社会をつくっていきたい。
           
◆怒りネットからの提起(古賀さん):自立支援法を本当に廃止にできるところまできたのは、すごい闘いの成果。と同時に、これから更に闘っていかなければならない。臓器移植法改悪などの優生政策の強まり、また不況の中で障害者だけでなく多くの人々が生きていけなくなっている。「世の中そのものの構造を変えていかないとダメなんだ」っていうことだと思う。自立支援法にかわる制度について、根本は、「障害者が地域で生きていくことを国が保障する」ということを明確にすること。また、介護保険も含めて、介護制度そのものを変えていかなければならない。考え方として、今の“就労至上主義”を変えなければならない。また小規模作業所などにみられる“地域での共同性”ということを、大事にしなければならない。自分たちがやりたいことをガーンと突き出していくような運動をしていかなければならない。それを実現する運動を、全国の多くの人たちとともにやっていこう。

 こうした発言を受けて、さらに会場からの自由討論で、様々な声が出されました。紹介はしきれませんが、みな、現場の切実な思いや訴えでした。
 全体の思いは、自立支援法を廃止に追い込んだ勝利感と、同時に新たな制度にむけて、自分たちの具体的な要求をまとめて、突きつけていかなければならない、というものでした。障害者や障害者に関わる人の思いはひとつだと思います。それを本当に大きくまとめて、障害者の声の通った制度をかちとるために、さらに頑張っていきましょう。

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通信41号の古賀さんの文章を読んで

脳死・臓器移植に反対する市民の会   守田 憲二

●渡航移植禁止の歪曲的宣伝について

 今回の「臓器移植法」改悪にあたり、A案提案者らが「WHOが渡航移植禁止の方向を打ち出す」とキャンペーンしたのは事実で、その歪曲的宣伝は非難されるべきです。しかし脳死臓器摘出・心臓死臓器摘出ともに、日本国内で行なわれてはならならないと同時に、海外でも行なわれてはならないことです。WHOの方針に、今回は渡航移植の禁止が入らないからといって、渡航移植が「このままでよい」とはならない。この点でA案に反対する国会議員は、「97年の臓器移植法を急いで変える必要はない」との受身の対応に留まったと思います。C案提案者でさえ、臓器移植を禁止する法案は考慮の対象外としていた。多様な選挙民の意向を忖度する国会議員には限界もあることが、今年の臓器移植法改悪の過程でわかった。しかし、法律を変えるには国会議員を動かさないといけない。それならば、我々はをどうしたらいいのか? 課題も浮上しました。私は、選挙民の認識を変えるしかないと思う。

●ドナー数の想定について

 7月2日の参考人質疑で日本救急医学会の有賀理事が、「脳死」臓器提供者数について「日本全国ではそれが情報としては100ぐらいであります」と語ったとのこと。この「100」の数字の根拠は、近年の1年間に発生している心停止ドナー数と思われます。「心停止」と称するものの、実際は終末期の判断や生前からの臓器摘出目的の処置を行なうために、脳死の診断をしている症例がほとんどですから、この一部分が法的脳死判定の対象になるとの理解でしょう。

●移植適応患者数の想定について

 臓器移植の適応患者数は、臓器不全患者の重症度や適応疾患を、従来より広げるだけで患者数を増やすことが可能です。最大限に水増ししようとすれば、免疫抑制剤による悪影響が見込まれる感染症患者やガン患者、そして外科手術に耐えないと見込まれる高齢患者などを除いた残りの、臓器不全患者の大多数を移植適応患者と称することができる。日本移植学会の高原副理事長による「透析患者のほぼ全員が移植適応」という趣旨の発言も、この計算でしょう。しかし、増やした移植適応患者に対して、臓器移植が最も望ましい治療法なのか、そうではなくて臓器移植以外の外科的・内科的治療法のほうが優れているのかについての検討はしていない。検討しようにも、腎臓移植では移植患者の生死が把握されているのは半数しかないため、検討の手段がない。ドナー不足との移植関係者の発言は腎臓移植については根拠なき宣伝です。
 私は腎臓移植は、段階的に廃止できると見込んでいます。透析療法に資金を投資すること、そして予防や腎不全の悪化を阻止する医療全般を発展させると、いずれは第三者を巻き込む腎臓移植が廃止できる。腎不全においては「臓器移植に頼らない医療」は、すでに存在している。それを採用するか否かは、医療経済の問題でもあるでしょう。

●ドナー不足扇動が繰り返される構造について

 現時点で長年月におよぶ透析療法により全身状態が悪化されている方、透析を苦痛に感じている方もおられます。その改善には、臓器移植しかない方もおられるでしょう。これは医療が発展し続ける以上、いつまでも発生し続ける臓器移植の推進圧力でもあるでしょう。各種の外科的・内科的治療法の発展によって年々、臓器移植なしでも長期間の生存とQOLが実現できるようになってゆく。しかし元の病気は完全には治らない、人工臓器も本来の臓器機能を完全に代替できない。だから、臓器移植以外の外科的・内科的治療法が発展したらしたで、長年月の生存は実現できるけれどもQOLや医療費の問題が生じてくる。その時点で、数字上はさらにドナー不足が拡大する。この構造は拡大再生産される一方でしょう。
 今後は、透析療法の進歩と同様のことが、人工心臓・補助人工心臓の分野でも拡大してくるでしょう。私たちは、一定程度の有効な人工臓器を実用化している時代にいる。その時代だからこそ発生する問題を認識すべきと思います。国民新党の亀井亜紀子議員が「人の物を取ってはいけません、人を殺してはいけませんこういう倫理というのは、どれだけ50年、100 年たとうとも変わらない倫理だと思うんですね。…」と発言されたとのことです。ドナー不足扇動から抜け出すには、我々は「人の物を取ってはいけません、人を殺してはいけません」を再確認するしかない。医療者には臓器ドナーが極めて少ない数しか発生しないとわかっているのだから、本当に患者を治す現実的な方法を真面目に探してもらうしかないと思います。例えば、「長年にわたり1年間に心停止「死体」ドナーが100例程度、腎臓数にして200個しか発生していない。それで、どうやって年間2万人もの腎不全患者を救おうというのですか」と、腎臓移植医に問い返してみましょう?

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・カンパのお願い

 怒りネットは、09年前半の闘いとしては、「自立支援法」改定の動きの危険性について警報を発しつつ、他方で「臓器移植法」改悪の動きを阻止するために力を注ぎました。残念ながら「移植法」の改悪は行われてしまいましたが、多くの団体との共同行動をも通じて、改めて優生政策との闘いを障害者解放運動の課題としてすえることができたと思います。
 民主党政権成立以降は、障害者が地域で生活していくことを国を初めとする行政が保障する制度を確立することこそが、「自立支援法」の真の廃止であるということを掲げて、自らの主張すべき内容を検討してきました。10月30日の集会で撒いたビラなどでこうした内容を主張してきました。そして、「日本障害者協議会」の太田さんやDPIの尾上さんとも意見交換を行いました。
 しかし09年末に、政府の予算編成という状況の中で明らかになったことは、財政難ということを持って厚生労働大臣の確約さえも崩してしまう、という事態です。ここを突き崩す運動を展開したいと思います。09年前半にビラや申し入れ書など多くの印刷を行いそれらの印刷代がいまだに個人の持ち出しとなったまま、返せていない状況があります。
 怒りネットの財政は、みなさんのカンパによって成り立っています。どうぞ、よろしくお願いします。

●郵便振込口座番号 00180-8-721588
●口座名称     怒っているぞ!障害者きりすて全国ネットワ-ク

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2010年1月27日 (水)

怒りネット通信第41号

怒りネット通信
2009年12月24日発行 第41号
<怒っているぞ!障害者きりすて全国ネットワーク>

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もくじ
・「臓器移植法」との闘いと反優生思想の会へ
・見形さんの提起
・東京体育館にて

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●あらゆる障害者の地域生活を保障することこそ「障害者自立支援法」の撤廃だ!
●命の選別、優生政策に反対しよう!

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「臓器移植法」との闘いと反優生思想の会へ
古賀 典夫

 09前半の怒りネットの最大の闘いは、国会での「臓器移植法」の改悪を阻止
しようとする闘いであった。
 「臓器移植法」改悪案が国会に上程されたのは、05年の夏、衆議院の郵政解
散の直前だった。わたしたちが、「障害者自立支援法」をめぐる国会闘争を展開
していた中であった。上程されたA案は、1997年、法が臓器移植の場合にだ
け「脳死」という概念を設定していたのに対し、「脳死」を一般的な人の死とす
る内容であり、かつ、本人の意思が不明な場合は家族の同意だけで臓器摘出を可
能とするものである。B案は、臓器提供の意思を示せる年齢を12歳以上と規定
し、現行法の運用が15歳以上の意思表示のみを認めているのに対して臓器摘出
年齢を引き下げようとするものであった。これらの法案は衆院解散によって、い
ったんは廃案になるのだが、06年3月31日に再び上程された。これに対して、
「脳死」を人の死とすることに反対してきたグループが集まって、「臓器移植法
改悪に反対する市民ネットワーク」を結成し、毎年数回の国会の議員会館内で集
会を行うなど、活動を展開してきた。「障害者」団体としても、青い芝や全国
「精神病」者集団などが、「臓器移植法」改悪に反対する声明を出してきた。

 「臓器移植法」の改定案は、その後07年に提出されるC案も含め、すべて議
員立法である。国会では、一般的に政府提出法案が優先され、議員立法は後回し
にされる傾向がある。また、「脳死・臓器移植」については、粘り強い闘いが展
開されてきたために、08年度までは、国会審議の焦点とはならなかった。
 しかし09年に入ると、前年の5月に国際移植学会が採択した「イスタンブー
ル宣言」を取り上げ、「渡航移植の禁止の方向が出され、WHOでもそうした方向
が打ち出される」とのキャンペーンを始めた。実は、国際移植学会の出したもの
は、他国の臓器移植機会の減少を招くような事態を禁止するものであって、渡航
移植全般を禁止しようとするものではなかった。WHOでは、臓器売買の禁止が改
めて宣言されようとしていたに過ぎないものであった。ここには、「臓器移植法」
の改悪を進めたい人々の意図的な歪曲的宣伝があった。また、衆議院の解散総選
挙が近いという中で、法案の廃案や自民党の選挙での不利な状況などを予想して
という側面もあったのではないだろうか。そして、通常国会での採決ということ
が現実化してくるのである。

 他方、「障害者」団体にはもうひとつ厳しい状況があった。3月31日に「障
害者自立支援法」の改定案が国会に上程されたのである。この法案については、
すでに『怒りネット通信』の39号で批判したが、利用者に対しても、事業者に
対しても管理を強め、国の福祉水準の下に組み敷こうという狙いがあった。
 この両法案の動きに備えねばならなかったのだが、「臓器移植法」の審議が迫
る中で、4月末には、青い芝と怒りネットが反対声明を出した。
 
●決戦局面へ

 衆議院厚生労働委員会では、06年12月に1度「臓器移植法」に関する参考
人質疑を行った。そして、07年6月にはこの厚労委員会の元に「臓器の移植に
関する法律の一部を改正する法律案審査小委員会」(以下、小委員会)を設置し、
ここで、07年12月、08年6月に2回、09年4月、と参考人質疑を行った。
そして、今年5月22日に、厚労委で小委員会の報告が行われ、27日から法案
の本格審議が開始された。「臓器移植法」の最初の成立の時と同様に、共産党を
除く各党は党議拘束をはずした。
 市民ネットでは、3月から毎月院内集会を行い、議員への働きかけを強めた。
5月12日には、大学教員の集まりである「生命倫理会議」が68名の連名で
「臓器移植法」改悪反対の声明を発表し、記者会見を行った。また、「人工呼吸
器をつけた子の親の会<バクバクの会>」は5月に声明を発表すると共に、記者
会見を行った。

 「障害者」団体も、本格審議入りという中で、次々と声明を発した。5月26
日に「優生思想に基づく「産科医療補償制度」に抗議する障害当事者全国連合」
(現在は、「優生思想に抗議する障害当事者全国連合」と改名。以下「当事者連
合」)と茨城青い芝が、28日にはDPI、6月4日には「自立生活センタークレ
パス」が。
 しかし、厚労委の審議はわずか2回、8時間ちょっとで打ち切られてしまった。
「長期脳死」の子どもたちの存在が指摘されたこと、A案について「脳死」を臓
器移植とかかわりのない場面でも死の基準としてしまうことになるとの指摘、虐
待は子供にだけでなく大人でもありうることの指摘などが行われた。しかし、全
体が「よりよい臓器移植のために」という論理で進められており、強い違和感を
感じた。その中で、自民党の川条議員が、WHOが渡航移植を禁止しようとしてい
るという推進派やマスコミのうそを暴いたことが印象的だった。

●本会議での闘い

 本会議は、6月9日と16日に各法案支持者がそれぞれ意見を述べた。9日に
は、改憲・臓器移植・「尊厳死」を推進してきた自民党の中山太郎議員が、A案
提案者の立場で、「尊厳死」推進の立場からもA案が望ましいとの発言を行った。
そして、18日に採決が行われた。A案推進の議員たちはぎりぎりまで働きかけ
と票読みを行っていた。そして、採決の後にわたしたちは知ることになるのだが、
「A案は、WHOが推奨する臓器移植法案です」などというデマ宣伝を含む文章
を全衆議院議員にまくことまで行っていた。

 これに対してわたしたちは、15日と16日に、「障害者」の統一行動を行っ
た。15日には、青い芝は、広島、滋賀、江戸川、埼玉、茨城から、怒りネット
関西の高見さん、当事者連合の太田さんも参加していただいた。議員回りを行う
と共に、会議室に社民党の保坂議員、公明党の高木議員の秘書を招き、みんなで
議論を行ったりした。翌日には、議員会館に出勤してくる議員や秘書を対象に朝
8時からビラまきを行った。この朝ビラが受け取りが良い。そして、議員回りと
本会議傍聴を行った。
 さらに市民ネットも怒りネットも、18日の採決ぎりぎりまで、議員へのファ
ックスでのアピ-ルや議員回りを行い、説得活動を続けた。怒りネット、青い芝、
クレパスはは18日当日、ビラまきとマイクでのアピールを採決開始直前まで続
けた。

 採決は、A、B、C、Dの順番で行われることになっていた。しかし、A案が賛成
263票、反対167票で可決してしまい、そのほかの案は採決さえされなかっ
た。賛成票の内202人が自民党であった。
 わたしたちは、即座に議員面会所前で怒りのシュプレヒコールをあげ、記者会
見に移った。最初は、市民ネットが発言した。「脳死」と診断されたお子さんと
1年9ヶ月生活されてきた中村暁美さん、ばくばくの会、全国交通事故遺族の会、
全国肝臓病患者連合、大本教。そして、「障害者」団体は青い芝、DPI、当事者
連合、クレパス、怒りネット。それぞれが、怒りと共に参議院での闘いを決意し
ていた。

●参議院での闘い

 直ちに行動を開始した。衆院採決から5日後、DPI、青い芝、怒りネットは、
統一行動の打ち合わせを行い、30日にほかの団体にも呼びかけて共同行動を行
うことを決めた。この日、衆議院のC案に近いE案が参議院に提出された。市民ネ
ットも24日に参議院会館で院内集会を行った。
 26日には、参議院で「臓器移植法」改定案の趣旨説明が行われた。A案の趣
旨説明を行った富丘衆院議員は「全身麻酔を掛けることはありません」などとこ
れまた完全なうそをついた。臓器摘出にかかわる保険点数では麻酔を使用するこ
とが計算されており、また97年法の下での臓器摘出においても、麻酔の使用が
報告されているのだ。また、「長期脳死のお子様は、脳死判定の専門家による無
呼吸テストを含む法的な脳死判定が行われていません」などと、「長期脳死」者
の存在を否定するような発言を行った。これらは後で追及されることになるのだ
が。

 26日、青い芝と怒りネットは、議員回りを行った。この日は、参院厚生労働
委員長の辻議員、同委員会理事の谷議員と会うことができた。この人たちは民主
党で、よく話を聞いてくれた。しいて言えば自分の意見を述べないことが気にな
ったが。また、議員運営委員会理事の秋元議員とも話すことができた。自民党の
彼は「臓器移植は、日本の文化に合わない」と語っていた。ところがこの3人、
7月13日の採決の時には、最後にはA案に賛成したのだ。
 これも後からわかるのだが、与党と民主党の間では、「臓器移植法」改定案だ
けは通過させて国会を解散することで打ち合わせが進んでいたようだ。翌週の3
0日から参考人質疑が厚労委で始まるが、この日の委員会審議冒頭に辻委員長は、
誰を参考人とするかについて委員長一任を要請した。これに反対する議員は誰も
いなかった。その結果、「脳死・臓器移植」推進者が参考人の大部分となり、大
半はA案の推進者であった。衆議院が、賛成、反対のバランスをとって、参考人
を招いていたのとは大違いである。

 そして、翌週の6日(月曜日)からは参考人質疑と見学と質疑を毎日行い、金
曜日には本会議での法案の趣旨説明まで行ってしまうという強行スケジュールが
行われた。これでは、共産党の小池議員が言うように、議事録さえ確認できない
まま議論をすることになってしまった。人の生死のかかった法案は、かくも乱暴
に取り扱われたのだった。

●必死の闘い

 6月30日、青い芝、DPI、当事者連合、クレパス、怒りネットの5団体は、
共同行動を行った。それぞれの団体が出した声明文を持って、参議院の全議員に
働きかけようというものであった。30人を超える仲間が参加した。また、全障
連が29日に、「病」者集団が7月3日に声明を出した。
 6日の週に入ると、審議打ち切りの情報が入り、こうした「障害者」関係団体
がファックスでの説得をも展開する。
 市民ネットは8日に院内集会を開き、宗教者8団体(仏教6団体、神道、キリ
スト教)がそれぞれA案に反対する発言を行った。大本教の方々は、全参院議員
に働きかけると共に、各地で街頭宣伝も行った。
 青い芝、クレパス、怒りネットは、9日に20名弱の人数で傍聴を行い、厚労
の委員たちの中からも「傍聴席を見て」などの声が上がっていた。この厚労委員
会は、「臓器移植法」の改定案の審議については最後のものとなったのだが、傍
聴者の誰もそんな感じを受けずに終わってしまった。何しろ、午後の段階になっ
て初めて、A案を修正したA'案の趣旨説明が行われたのだ。この案は、「脳死」
の定義を97年法の定義に戻し、臓器移植の場合にのみ「脳死」を人の死とする
ものだが、家族の同意だけで臓器摘出が可能である点は、A案と同様だった。
 さらにこの午後の時点で、民主党の谷岡議員からは、次のような発言が行われ
ていたのだ。
 「昨日、私も脳死は人間の科学的な死だというふうに、大学時代から思ってま
いりました。生物の勉強を私もしてまいりました。そして、それに私自身は疑い
を持っておりません。でも、昨日の視察に行かせていただいて、私はあの17歳
の脳死状態下と言われる子を見て、この子は死体じゃないと私は思ってしまいま
した。同時に、18歳の心肺移植をしなければ助からない女の子と話をして、私
はこの子を何としても助けてあげたいと思いました。それは非常に矛盾すること
であります。」

 議論は、まさにこれから尽くされるべきだったのだ。だから、議員を通じてス
ケジュールを聞かされていた者以外は、傍聴者の誰もがこれで審議が打ち切られ
たなどとは思わなかった。この打ち切り方に、わたしたちはいっそう怒りを燃や
して行動を強化した。怒りネットと青い芝は、厚労委員会の審議打ち切りに抗議
するビラをつくり、翌日の朝8時からのビラまきを行い、午前中は本会議の傍聴、
そして午後は夕方まで議員への働きかけを行った。
 招かれた参考人の発言の中からは、後述するようにきわめて危険な発言が行わ
れ、臓器移植そのもののはらむ問題点が示された。他方、議員の「脳死・臓器移
植」問題への批判も衆議院の時以上に行われたと思う。
 
 小池議員は、厚労省研究班の報告において、「無呼吸テスト」も含む「脳死判
定」を行った事例でも、「長期脳死」となった子どもたちがいる事実を突きつけ
ると共に、臓器摘出時に全身麻酔を使っている事実もつきつけ、A案提案者に認
めさせた。社民党の福島みずほ議員も「長期脳死」の子供の状況を取り上げると
共に、「臓器は社会の資産」などとする参考人の発言を批判。民主党の森議員な
どが「A案はWHO推奨」といううそを追及した。国民新党の亀井亜紀子議員は次の
ように述べている。「人の物を取ってはいけません、人を殺してはいけません、
こういう倫理というのは、どれだけ、五十年、百年たとうとも変わらない倫理だ
と思うんですね。・・・今回の法律は、やはり人を殺してはいけない、人の物を
奪ってはいけないというのを臓器提供の場合は例外としましょうと、そういうふ
うに言っているのではないかと思うのです。」
 そして、民主党の円議員は本会議で、A案答弁者のこれまでのうそを明らかに
した。

●本会議採決

 衆議院では、前述のように2度にわたって趣旨説明と意見表明が行われたが、
参議院では1回だけであった。そして、13日には採決が行われ、その後に、民
主党が衆議院で内閣不信任決議、参議院で問責決議を上げて、国会解散にもって
いく、ということが実際には与党と合意しながら決められていた。わたしなどは、
採決の前に解散とならないのか、などと期待したりしたが、国会とはそんなに民
主的な所ではなかった。このことを念頭においておくと、A'案提案者のまったく
不可解な行動がわかるというものである。
 市民ネットも「障害者」団体も最後まで、ファックスを使い、採決直前まで議
員回りを行った。青い芝、DPI、クレパス、怒りネットが横断幕を広げマイク
を使い、アピール行動を行った。

 採決はA'案から行われた。賛成票72票、反対票135票で否決された。次にA案が
採決されて、賛成票138、反対票82で可決された。なんとA'案賛成者のうち55
名がA案に賛成したのだ。この中にはA'案の提案者、趣旨説明を行った議員も含
まれている。つまり、A'案賛成者が鞍替えしなければ、A案は過半数を取れず否
決されていたのだ。上述した辻、谷、秋元議員もこうした鞍替え組である。解散
の政治日程のための取りまとめのための行動だったのだ。またしてもわたしたち
は「国権の最高機関」の最低の姿をみせつけられることになったのだ。

 採決後、中村暁美さんはショックのあまり傍聴席で動けなくなった、とのこと
だ。「国会で何が決められようと、わたしの娘は「脳死状態」と診断されてから
1年9ヶ月の間、生きていました。このことをこれからも語り続けていきます」
と記者会見で語られた。市民ネット、「障害者」団体、生命倫理会議と怒りの発
言が続いた。

 こうして闘ってきたわたしたちは、今改めて闘いを開始している。
 市民ネットは、「臓器移植法を問い直す市民ネットワーク」と改称し、討論集
会、院内集会を行い、さらにシンポジウムも企画している。厚労省への要請と質
問も提出する。
 「障害者」団体も、8月5日に「臓器移植法」との闘いを総括し、今後の活動
について話し合いを行った。そして、「障害者」の仲間を初めとして、もっと優
生思想・政策との闘いを強化する必要性を訴え、「脳死・臓器移植」のみならず、
出生前診断など優生政策との闘いを今後とも連帯して闘っていくことを確認した。
そして、9月15日に第2回目の集まりを持ち、「反優生思想の会」との名称で、
代表は全国青い芝の会の会長の金子さんになっていただいた。またこの日に、ク
レパスの見形さんにご自身の体験と思いを語っていただき、優生思想・政策との
闘いの重要性を語り合った(別掲参照)。12月15日には第3回の集まりを予
定している。多くの皆さんの参加をお願いします。

 今回最悪の法案が国会を通過してしまった。しかし、この闘いの中で、さまざ
まな立場の人たちの連帯が生まれた。特に、「脳死」とされた方のご家族が闘わ
れたことは重要である。
 そして、今まさにわたしたちは、臓器移植そのものを問題として闘っている。
この7月までの国会で示されたことはその必要性を強力にわたしたちに自覚させ
た。このことについて最後に触れたい。

●命の切捨てを進める臓器移植

 05年以降の「臓器移植法」をめぐる国会の論議をみるだけで、臓器移植を推
進するということが「価値なき命」を作り出し抹殺を煽動するものであることを
改めて強く認識させられる。
 新臓器移植法となったA案の推進者たちは、「脳死」を人の死としたほうが、
「脳死者」の家族は苦しまずに臓器提供に同意できる、と主張する。つまり、
「脳死」が社会的にあらゆる場面で人の死として取り扱われるべきであることを
主張したのだ。
 今年7月7日に行われた参議院での参考人質疑の場で、日本移植支援協会副理
事長・高橋和子氏は「長期脳死」とされる子供たちについて「たくさんの税金を
使って延命している」と発言している。無駄な医療費を打ち切れ、ということだ。

 臓器移植推進者たちにとって、「価値なき命」と考える対象は、「脳死者」だ
けには止どまらないようだ。
 河野太郎議員と共にA案を作り上げた福島豊前議員は、06年12月11日の
衆院厚生労働委員会の参考人質疑において、次のように発言した。
 「人の存在というのは何かという問題だなと私はずっと思ってきているんです
けれども自己があるかどうかということなんだろうな、本質的な問題というのは。
 脳死に関しての臨調では、有機的統合性という話でまとめたんですけれども、
いささかあいまいだなと私は思っていまして、むしろ人の自己としての存在の一
貫性というものがいかに保たれているかという問題なんじゃないか。そして、自
己というものはどこに存在するかというと、やはり私は、脳という座においてし
かないんじゃないかなと思うんですね。ただ、脳がどこまで破壊されたときに自
己という存在がもう存続しませんというふうに言えるかどうか、ここのところは
いろいろと議論があるんじゃないかなという気はしているんです」

 さらに、今年7月7日の参議院での参考人質疑において、大阪大学大学院医学
系研究科先端移植基盤医療学教授の高原史郎氏は、次のように語った。
 「生とは何かという御質問だと思うんですけれども、私の理解、まあ一医師と
しての考えですけれども、いわゆる人格として、個人として成り立っているとい
うのは、やはり私は脳が正常に働いている状態だと思います。」
 そして、高原氏は、「社会の資産としてのそういう臓器」とも語っている。
「価値なき命」とされた人の臓器は、「社会の資産」と言いたいのではないか。

 なぜこのような発想が出てくるのだろうか。臓器移植推進者が根っからの強烈
な優生主義者なのかどうかは判らない。しかし、ある者の臓器を摘出し、別の人
に移植することを推進するという発想は、命の選別を肯定していることは確かだ。
そして、臓器に病気を持つ人の数と比して、「脳死」となる人の数はあまりにも
少なく、したがって臓器摘出の対象をますます増やす以外になくなる、というこ
とも確かだろう。
 参議院審議の過程で示された数字をみるだけで、「脳死者」だけでは移植用臓
器がまったく足りなくなることが判る。
 今年7月2日の参考人質疑で、昭和大学医学部救急医学教授・日本救急医学会
理事・有賀氏は、「年に大体2000ほどの臓器提供に供される可能性のある脳
死患者が出るだろう。しかし、日本全国ではそれが情報としては100ぐらいで
あります。」と語った。この2000という数字は、「脳死」となる可能性を推
計したものであり、100と言うのが、実際に移植用臓器の摘出対象となるかど
うかの検討対象になっている、ということだろう。
 これに対して、6月30日には、厚生労働省健康局長上田博三氏は、「平成2
1年3月31日現在で社団法人日本臓器移植ネットワークに登録されている移植
希望者数は、心臓が128名、肺が111名、肝臓が239名、腎臓に至っては
1万名を超える方等々ということで極めて多くの待機患者がおられまして」と述
べている。
 また、7月6日の参考人質疑で全国腎臓病協議会会長宮本氏は、「今現在、2
8万人の人工透析患者のうち、お手元の資料にありますように、私を始め、将来、
腎臓移植を希望する患者は、11、438人が只今、日本臓器移植ネットワーク
に登録されております」と述べている。
 これだけでも「移植用臓器不足」は明らかだが、上述の高原氏は次のような数
字をあげる。
 「心臓移植によって救えたはずの患者さんの数は、少なく見積もって年間40
0人から500人です。肝臓移植で年間救えたはずの方が2200人から230
0人。私の専門とします腎臓移植に至っては、血液透析、腹膜透析をされる、さ
れている今約28万人の患者さんの中の適用は約15万人以上です。移植によっ
て生命予後を延ばす効果を考えますと、数千人の効果があります。つまり、臓器
移植を受けていれば助かっていた可能性の高い人の数は年間1万人以上」。
 「肝臓移植を例に取ります。今、C型肝炎の患者さんの数は約2百万人と言わ
れています。今後数年、少なくとも10年以内に数万人の患者さんが肝臓移植を
必要とします。これらの患者さんにおいて生体移植のドナーが見つかるとは限り
ません。実際に行われる数は年間4~500例です。腎臓移植においては、40
万人程度にまで透析の数が増えると言われています。現在の年間の生体臓器移植
の数は1000人から1100人ですから、今後10年以内に3倍、4倍に増え
る見込みはほとんどありません。医療経済的にも、現在、血液透析で1兆数千億
円のお金が掛かっております。実際に臓器移植のニーズは非常に高いと考えてい
いと思います。」
 臓器移植希望者の数を超え数字を挙げる彼の言うニーズとは、患者のニーズで
はなく、政府のニーズだろう。腎臓の場合に透析よりも移植のほうが安上がりと
いう計算が発表されているが、それだけではなく、「脳死状態」を初めとする人
々の命を切り捨て医療費を削減できればとも考えているのではないだろうか。

 アメリカでは、臓器不足のために生体間移植が「死体」からの移植を上回って
いると言われる。そして、この「死体」とされている人も、「脳死」とされた人
はもちろん、「遷延性意識障害(植物状態)」で死亡宣告された人、人口呼吸器
を止められて殺されたALSや筋ジストロフィーなどの人たちも含まれているので
す。バージニア州など「遷延性意識障害」を死とする州もあり、メディケード
(生活保護のような制度)の対象者が「遷延性意識障害」となれば、この制度は
打ち切られる。
 それでも「移植用臓器不足」は解消されていない。世界中どこでも、「臓器不
足」が続いている。だから、臓器売買はけっしてなくならないし、闇での臓器摘
出目的の殺人もなくなることはないのだ。臓器移植に頼る限り、「価値なき命」
の対象拡大と臓器がらみの犯罪は不可避だ。

 第2次世界大戦にいたる20世紀前半に、世界各国に優生政策としての断種法
制定が行われていき、それと共に「価値なき命」を殺す「安楽死」の主張がやは
り世界各国でボルテージが上がっていった。そして、行き着いた先はナチスの抹
殺政策であった。
 今、「臓器不足」として「価値なき命」を作り出し、それと並行して「尊厳死
・安楽死」の政策や主張が強められている。わたしたちは、こうした状況がナチ
ス以上の事態をもたらすおそれがある、と言わざるを得ない。
 人の死を期待する臓器移植に頼らない医療こそ進めなければならない。

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見形さんの提起
9月15日、反優生思想の会の報告より

 この日の集まりではまず、自立生活センタークレパスの見形信子さんから、優
生思想、優性政策とはなんなのか、という問題について提起をしていただきまし
た。見形さんは、着床前診断に反対して活動している「神経筋疾患ネットワーク」
の代表もされています。

 見形さんは、脊髄性筋萎縮症で、24時間の介助が必要な方です。幼いときか
ら病院に併設された施設で20年近くを過ごされたそうです。教育もそこに隣接
された養護学校で受けました。
 そこには、筋ジストロフィーの人たちも入所していました。その中には、デュ
シャンヌ型の人たちもいて、若くして病気が悪化し、人口呼吸器をつけ、やがて
亡くなっていく姿に接してきました。
 そうして亡くなった人たちの兄弟が1年か2年経ったある日やってきます。久
しぶりにあいさつをし会話もします。しかし、なぜ来たのかは話してくれません
でした。
 なぜ来たのかは、後で判ってきました。彼・彼女たちが結婚して子供を作る時
のことを考えて、筋ジストロフィーが遺伝するかどうかを調べに来ていたのです。
 「障害を持って生まれてはいけないのだろうか。筋ジストロフィーの子が生ま
れてはいけないのだろうか」、高校生の年齢の見形さんは悩みました。見形さん
にも妹さんがいます。彼女は健常者です。「わたしの存在を迷惑だと思っている
んだろうか。彼女が結婚を考えたときに、『おねえちゃんみたいな子が生まれた
らいやだ』と言われたらどうしよう」とも考えてしまいます。
 さらに「わたしがこうやって、障害を持って生きていては、社会の迷惑なのだ
ろうか。いっそ死んだほうがいいのだろうか」とも思いました。
 同じ施設に入所している人の中には自殺してしまう人もいました。施設の中で
は外の社会とのつながりもなく閉塞的で、情報も偏ってしまいます。夢や希望が
持てないと悲観してしまった場合、サポートもありません。職員からの虐待もあ
ります。耐え忍ぶか、何も感じないように自分を否定して生きるしかなかった、
とのことです。
 そして見形さんは施設を飛び出し、さいたま玉市で暮らし始めました。その中
で、「障害があってもそのまま社会の中で生きていけるんだ」と思えるようにな
ったそうです。環境を変えることによって考え方も変わった。これは見形さんに
とって大きな変化でした。
 自分の命・存在に向き合って生きていける仲間、いっしょに行動していける仲
間を、一人でも多く増やしていきたい、とのことです。それが自立生活運動の大
事な要素ではないか、と語られました。

 他方、社会自体はますます人の命を選別する方向に動かされ、障害者もそこに
巻き込まれていく危機感を、見形さんは感じられています。
 優生保護法が母体保護法と変わっても、超音波診断や羊水検査などの出生前診
断が行われ、さらに、2004年からは着床前診断も行われるようになりました。
障害を持つ胎児が中絶され、障害児となる遺伝子を持った受精卵が選別され破棄
されていくことに、強い恐怖を感じる、と語られます。
 今年に入って、筋ジストロフィー患者の遺伝子を登録するシステムが作られま
した。障害児の親たちは、「元気な子を生みたい」、「子供の病気を治したい」
との思いがあり、障害者本人にも自分の障害を否定し「自分の世代で終わってほ
しい」と思う人もいます。
 こうした発想から障害者自身も巻き込まれていきます。
 こうした命の選別のシステムを作っておいて「生むか生まないかは、あなたの
自己決定です」と女性個人に迫ることはおかしい、とも語られます。「わたしの
親も一緒につらい想いをしてきたと思います」として、周囲や社会からのサポー
トがない中で障害児を生み育てることの大変さがあることも指摘されました。そ
の中で生むか生まないかの決断を迫ることは、女性の自己決定という形で優生思
想を推し進めるものだと感じているそうです。

 「高校の生物の授業の中で、自然界の生物はある一定の法則によって突然変異
を起こしている、と習いました。それを人間だけは、人為的にコントロールしよ
うとしています」と指摘されます。そして、上述のような命の選別のシステムを
作り上げてきています。アメリカでは、精子バンクを通じて、好みのタイプの男
性の精子を手に入れ、好みのタイプの子供を作ろうとすることまで行われていま
す。
 こうした命の選別を行う思考が優生思想であり、その中には究極的には障害者
を絶滅してしまおうという発想もあると思う、と指摘されました。だから、優性
思想を許してはいけない、とも述べられました。
 「脳死」を人の死とする「臓器移植法案」に反対して国会行動を行いましたが、
人の命に関する問題について短期間で不十分な議論のまま、「脳死」を人の死と
する法案に賛成のボタンを押していく議員たちに恐ろしいものを感じた、と語ら
れました。
 生きる権利を保証しないでおいて、「死んで役に立て」ということがいわれて
いる気がします。そして、「尊厳死」も含めて、「死ぬ権利」が強調されていま
す。こんなもの、権利などではない、と見形さんは指摘されます。

 優生政策は、古くはギリシアのスパルタで行われていたことが知られ、ナチス
の障害者虐殺をも招きました。延々とと続く優生思想に対して、1970年代に
青い芝の皆さんが闘いを開始されました。しかし現在、障害当事者の運動として、
命に向き合う運動があまり行われていないように思われる、と指摘されました。
 障害者、健常者を問わず、優生思想のはびこる社会を変えていく仲間を草の根
的に増やして行きたい。そしてそのためにも、日々障害者が地域でサポートを受
けながら生きていく実践が大事、とも提起されました。誰もが病気や高齢になれ
ば、体が動きにくくなり、社会生活がしずらくなります。地域の中でいろいろな
状況の人々が、いろいろな関わりを持ちながら生きていくことは、障害者だけで
なく、人間すべてにとって良いことのはず、と語られます。こうした社会のあり
ようを作り出していくことが、優生思想と対抗していくひとつの方向ではないか、
と語られました。
 他方、その自立生活運動を取り巻く状況も、10年前とは様変わりしているこ
とも指摘されました。格差社会とか貧困が目前にあって、障害者ばかりが大変な
どと言っていられない状況になっているからです。この状況は、運動の困難さを
作り出していますが、同時に、そうした人たちと共同して考え闘っていけるチャ
ンスをも作り出している、と言われます。
 障害者の側も、今までの運動の成果に頼るのではなく、権利は、たとえそれが
憲法などに書かれていたとしても、与えられるものではない、という認識に立た
ないといけないことを語られました。議員にただ話しただけでは動いてはくれま
せん。自分たちの力で権利は獲得するものだ、と。今こそ運動を立て直していく
べきことも提起されました。

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東京体育館にて
『たんぽぽ通信』第90号より

 毎年6月と2月に千駄ヶ谷の東京体育館で、大規模な障害者のための就職面接
会が行われています。たんぽぽでも、毎年何人かの人が、一般就労を目指してこ
の面接会に挑戦しています。仕事の内容が、高いスキルを求めていない会社には
数十名の人が殺到しその一方で仕事の内容が、高いスキルや資格を求めている会
社には面接希望者が少なめという光景。なかなかハードルは高いものがあります。

●晴れて一般就労のはずが・・・

 それでも、たんぽぽの利用者A君は、数年前この面接会に挑戦して、見事一般
就労の道に進みました。数年間はがんばっていました。しかし、昨年8月にはこ
の不況で仕事も出勤日数も激減、リタイヤしてしまいました。
 障害者の就労が声高に叫ばれる今日この頃ですが、前記のA君のようにきちん
と真面目に働いていても、ずっと安定して働き続けるということは難しいようで
す。

●首切り以前に待ち受ける壁

 不況下での首切りが、障害者のような弱い者からなされてしまうということは、
あります。しかし、そうならなくても、日々生き生きとして、職場に出勤してい
る障害者の人がどれほどいるでしょう。会社では仕事はあるものの、健常者との
壁、差別によっていつも孤独を感じている障害者。かたや特別な枠で入社してい
るという偏見で、一緒に働く同僚として認めていない周囲の健常者社員・・・。
学校時代に障害者、健常者と分離しておいて社会に出るなり、さあ共にといわれ
ても、双方が戸惑ってしまうのは当たり前です。

●二重三重の負担

 私の身近な知人も、若い頃一般就労につきました。障害者ゆえの不当な扱いに
耐えながら働いていましたが、体を壊し現在は一般就労どころではない状況です。
ずっと働き続けることは、身体障害の人にとっては、精神的負担に加えて、肉体
的な犠牲(時には命にかかわる)を伴います。

●求職者の高齢化?

 さて、今年の面接会ですが、例年にはない違いに気付きました。
 いつもなら、比較的若い人が多く、面接の順番待ちで殺到しているのは、清掃
関係の会社ホテル、レストランでの補助作業的な職種でした。一方、事務関係、
0A関連の会社は比較的ゆったりしているという光景でした。
 しかし、今年は逆に、後者の方に面接希望者が殺到しているという印象を強く
受けました。また、年齢層も、これまでは新卒から30代前半の人たちが主流だ
ったのですが、今年は、40代、50代の人たちが目立っていました。しかも、
年齢が高い人ほどOA関連の高いスキルが求められる会社の面接に臨んでいるで
はありませんか!服装、身のこなしから十分な就労の経験があることも容易に推
察することができました。スーツや化粧もさまになっている・・・?
 吹き荒れる不況の中、健常者さえも、非正規社員の多くが、契約を打ち切られ、
路頭に迷うことを余儀なくされています。
 そのことと今回の面接会の様変わりに、因果関係があるかどうかわかりません。
が、ないとも言い切れないという気がします。
 面接会の変わりようが、ついこの間まで一般就労していた多くの障害者が職を
失っていることを物語っているように感じました。
 高いスキルを持っていそうな方々でさえも大変な状況です。知的障害、身体の
障害が重い人たちにとって、一般就労は夢のまた夢。

●働きたくても働けない

 個別の肉体的な事情。就労の場、教育の場での制度、社会全体の構造の矛盾や
責任を棚にあげておいて、「働ける障害者は○、そうでない障害者は×」という
空気が社会全体に蔓延しようとしています。その流れを止めるべく私たち一人ひ
とりの意識と社会のあり方を変えていくべき時なのではないかと感じています。

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2010年1月25日 (月)

定時制高校廃止反対集会

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1月23日、定時制高校の廃止に反対する西宮集会に参加した。怒りネット関西からも多くの参加があった。

この集会は、宝塚良元高校、川西高校、伊丹高校の定時制高校三校が廃止され一校の単位制高校に統合されるということに反対するものだ。地元にあり通学しやすいところから不便なところに統合されるということから、生徒会やPTAなどをはじめとした反対がある。とりわけ、「障害児」の進学先としてある定時制高校の廃止で「障害児」の通える高校がなくなる恐れがあり、「障害者」)団体が激しく反対している。この日の集会の主催者も「障害者」団体だ。

このようななかで怒りネット関西の代表でもある住田さんが高校受験をして宝塚良元高校への進学を希望されている。集会もそれを後押しする意味もあった。

集会へは車椅子「障害者」約10人をはじめ80人くらいの参加があった。参加者には教育労働者も多かった。

怒りネット関西も動員の責任を果たせたようだ。遠方からの障害を押しての参加を実現できたからだ。集会は、それぞれの学校の存続の必要性が縷々(るる)述べられ、廃止反対の声を一つにすることが出来た。

定時制高校は今後5~6年を掛けて完全廃校にされるというタイムスケジュールがしめされれている。新たに高校生になる住田さんを内部に送り、高校の内外から廃止反対の声を高めていこう。障害者自立支援法の廃止と、「障害児」の地域の普通高校への進学は一つの問題だ。養護学校ではなく地域の高校へという流れを作り出しながら、定時制高校の廃止反対の流れを作っていこう。

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2010年1月21日 (木)

医療観察法改悪案

阿部事務所からの情報提供によれば、今国会に厚労省の提出予定の医療観察法改悪案は以下のものとなるようです。


現行法律の第十六条 
(指定医療機関の指定)
第十六条 指定入院医療機関の指定は、国、都道府県又は特定独立行政法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第二項に規定する特定独立行政法人をいう。)が開設する病院であって厚生労働省令で定める基準に適合するものの全部又は一部について、その開設者の同意を得て、厚生労働大臣が行う。

上記条項についての改悪です。

その要旨は「対象者の円滑な社会復帰を促進するために必要な医療の実施を確保するため、指定入院医療機関の整備等を促す観点から、指定入院医療機関の指定の対象となる開設者について、一般地方独立行政法人、市町村等を追加する等の所要の改正を行なう。」備考として「法務省との共管」とあります。

ウィキペディアによれば「特定独立行政法人は「業務の停滞が国民生活又は社会経済の安定に直接かつ著しい支障を及ぼすと認められるもの」(法第2条第2項)であり、この役員及び職員は国家公務員の身分が与えられる(法第51条)。現在特定独立行政法人は、国立印刷局、造幣局や国立病院機構など数少ない。」とあり、一方、一般地方独立行政法人では労働者は非公務員とされ、より幅広い。

現行の国公立と国立病院機構に限られている点からすれば、かなりの対象拡大になると思われる。具体的にどこが含まれてくるのかは把握していないが。指定入院機関の建設が進まないことから、対象を拡大するものです。「等」という言葉を挟んでいる点について、注意が必要と思います。民間病院への拡大に道を開くものではないかと疑われるからです。

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2010年1月19日 (火)

1月18日国会開会日に医療観察法廃止行動

「心神喪失者等医療観察法」の法施行5年後の見直し時期を迎え、「心神喪失者等医療観察法をなくす会」(精神障害者や精神科医、弁護士、労働者らで構成・事務局長池原毅和弁護士)や「心神喪失者等医療観察法(予防拘禁法)を許すな!ネットワーク」など約30人が、18日の国会開会日に国会議員会館前での座り込みと集会を行い、今国会での同法の廃止を求める運動の口火を切った。

 心神喪失者等医療観察法は、2005年7月から施行されている。今年7月が法で定めた施行5年後の見直し時期に当たる。今国会では、政省令で無理を重ねていることのつじつま合わせの微修正のみ行い、改正のための厚労省諮問機関の会合を積み重ね、秋の臨時国会か、来年の次期通常国会に大幅改正案が出るのではないかと言われている。

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なくす会は、「当時の全野党の反対の中強行採決された医療観察法の廃止を」などと呼びかけながら国会議員や秘書や通行する市民にビラを撒いた。

昼からの集会では主催者より「医療観察法をなくし、精神科病床を半減化させ、医者の数を二倍化させれば精神医療はましなものになる。自分は政府の設けた障がい者制度改革推進会議のメンバーだが、一人の力では限界がある。正論のメールを集中して欲しい」と提起された。
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兵庫県からは私が発言。「この法の下で昨年9月までに13人が自殺しており、推進派の言うような『本人のための医療を行なうから保安処分ではない』というのはとんでもないデマだ。本人のための医療でなぜこれほどの死者が出たのか。実に約1%の自殺率だ。一般精神病院での自殺率の統計はないが、そんなに高くはない。政府はこの自殺に責任を取るどころか、医者と患者の間に信頼関係があったと言って責任逃れをしている。」
大阪からの参加者。「らい予防法と闘った人がいた。医療観察法も同じ様に閉じ込め死者まで出している。廃止を求める。」

脳死問題と闘っている仲間。「7年前の観察法成立時には傍聴席から抗議して留置された。保安処分として強化せよという意見が最初からあった。いままた、その動きがある。民主党連立政権による障害者自立支援法の見直しでも自立支援医療は無料にならなかった。観察法予算や基地予算を回せば簡単に出来ることだ。それと優生政策は裏腹の関係だ。臓器をとるために人を死んだことにする法律が脳死臓器移植法だ。改正臓器移植法施行に向かって、命の切捨ての対象が拡大されている。優生政策が進められていることに断固反対する。」

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医療観察法許すなネットワークの仲間。「原案は保安処分的色合いが濃いとして修正案が通った。しかし、何の根拠もない差別法だ。いま日弁連のなかで危険な動きがある。観察法是認の動きだ。軽微な事件で収容されたり、保安施設が不足したために省令で普通の精神病院に収容できるようにするなど、法は事実上破綻している。」
争議団連絡会の仲間。「解雇撤回闘争を闘っている。不当労働行為が最高裁までいって認められた中でも会社は居直っている。医療観察法は予防拘禁法だから反対している。多くの労働者が病気になっても個人責任とされて社会から排除されている。排除したり閉じ込めたりは許せない」。

ネットワークからの方針提起。「自殺者3万人の日本は内戦状態にあると考えている。持つ者と持たざる者とが戦い犠牲者が出ている。精神病院は医師数は一般の三分の一、医療費は一日1万円と貧困な状態を放置したまま、観察法には年間一人に2200万円も使っている。旧政権下で日本精神病院協会の違法献金が行われる下で強行採決で法が作られた。これからの闘いの方針として、署名に取り組む。3月5日に院内集会を開く。7月25日に京都で全国集会を開く。観察法廃止を勝ち取ろう。」

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最後にシュプレヒコール。「医療観察法廃止を勝ち取るぞ」「精神障害者差別の医療観察法を許さないぞ」「保安処分を許さないぞ」などと声をそろえた。

この日、他に国会前には辺野古新基地と闘う人々が座り込みをしていた。また、在日外国人の地方参政権に反対する右翼30人がつめかけていたが、警備が私たちには認めないポールを工事用柵に縛り付ける行為を許すなど、右翼には甘い警察・警備のもと、下品な差別言辞をわめきたてていた。
この日の構造から見えることは、国政を問い左右が激突する熱い政治の季節がやってきているようだ。

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2010年1月13日 (水)

障害児・者の高校進学を実現しよう!!西宮集会

1月23日土曜日午後二時より、「障害児・者の高校進学を実現しよう!!西宮集会」が開かれます。怒りネット関西の代表である住田雅清さんは定時制高校の存続を求め、自身が高校へ入学されます。「障害を持つ人も地域で暮らそう」という運動は大分浸透し、政府方針に反映されるまでになっています。ところが障害児の普通高校入学は進まず、逆に全国的に特別支援学校・養護校に入学する障害児が増えています。自己選択ならなんらかまわないことですが、実態的には、この20年余り障害児を受け入れてきた定時制高校が次々に廃校になっている現実があります。10年前阪神間で4校が廃校になっています。さらに今まさに阪神間で3校が新規募集を停止しています。県教委は3校を廃校にしようとしています。定時制高校の存続を求め、住田さんは52歳で定時制高校の宝塚良元校を受験されます。

この集会は共生共育を考え、なぜ住田さんは高校を求めているのかを共に考えるために設定されました。

西宮勤労会館で1月23日土曜日午後二時からです。西宮と少し遠い方もいると思いますが、怒りネット関西呼びかけの実行委員会で昨年集会をした会場です。ぜひ遠方へ足を向けてください。よろしくお願いします。

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