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2010年7月20日 (火)

■声明 ★新臓器移植法施行に反対します!

★新臓器移植法施行は、命のきりすてを拡大する道

 わたしたち障害者は、昨年の通常国会における臓器移植法の改悪に反対してきました。人の死を前提とした臓器移植が推し進められるならば、臓器の摘出対象を拡大するために、命の切捨てが推し進められるからです。それは、社会の優生思想をますます強めていく結果になるからです。

 新臓器移植法は、臓器の摘出対象を15歳未満の子供に拡大しました。国会審議においては、「長期脳死」といわれる状態について、あるいは、こうした状態の研究に基づき国際的に高まってきた「脳死状態」とは人の死ではないとの議論について、まともに議論されることもないままでした。

 その後、厚生労働省では、新臓器移植法の施行に向けた審議が厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会で行われてきましたが、その中で新たに危険な方向が現れてきました。

 こうした中で、わたしたちは改めて新臓器移植法の施行に反対することを表明します。

●「脳死」概念の拡大は許されない

  4月5日の第32回の臓器移植委員会において、厚生労働科学特別研究事業として行われた「小児の脳死判定及び臓器提供等に関する調査研究」が公表されました。そこでは次のような驚くべき見解が示されました。

 「"長期脳死"について小児では頻度が高く、期間も長いとされている。しかし、適切な診断根拠に基づぐ"長期脳死"とされたいずれの例でも、脳死判定後での人工呼吸器からの離脱や意識の回復は認められておらず、結局は脳死状態が持続し心停止にいたっている。"長期脳死"の存在は、「臓器提供を前提とした脳死判定」そのものに影響を与えるものではない」

  この見解は、脳死臨調の「脳死」概念を拡大するものです。 脳死臨調の答申では、「人工呼吸器を付けていても多くの場合数日の内に心停止に至る。これが脳死であ」るとしていたではありませんか。

 2007年10月12日付けの『毎日新聞』によれば、522病院を対象にした調査で、60人の「長期脳死状態」とされる子供たちがいると報道しています。そこでは、「脳死状態」と診断されてから10年5ヶ月の子供もいるとしています。

 また、脳死臨調の見解では、「脳死状態」とは「身体各部に対する統合機能が不可逆的に失われた」状態であるとしています。ところが「長期脳死」とされた人々は、汗をかき体温調節を行い、消化吸収し排尿・排便を行い、免疫力もあります。身体が統合された状態であることは全く明らかです。

 「長期脳死」の人々の存在は、人類にとって、「脳死」概念を問い直すことを要求していると思います。「脳死」を人の死とした脳死臨調の見解も当然問い直されるべきであります。
 ところがそれとは正反対に、「長期脳死」とされた人も臓器摘出対象として死んだものと取り扱おうとする見解を、臓器移植委員会も容認し、小児の「脳死判定基準」が作られているのです。

 
●心停止後の移植用臓器の種類拡大は「尊厳死・安楽死」導入につながる

 心停止後に移植用に使える臓器は、これまで、腎臓、膵臓、眼球とされてきました。ところが、臓器移植委員会の「臓器移植に係る普及啓発に関する作業班」の審議の中では、この臓器の種類を拡大すべきではないか、との発言が行われています。そして、新たなドナーカードでは、心停止後の臓器を限定していないように取れるものとなっています。

 厚労省の臓器移植対策室の見解では、ドナーカードと共に配るリーフレットで、心停止後に使用する臓器は、これまでどおりに限定している、とのことです。しかし、この運用が変わることをわたしたちは懸念します。

 アメリカなどでは、心停止後に、心臓や肝臓の移植を行っています。その場合には、人工呼吸器を必要とする患者からそれをはずし、心停止を待って75秒や2分後などに、臓器を摘出しています。つまり「尊厳死・安楽死」移植なのです。こうした摘出対象には、ALSなどの障害者もその対象となっています。

 これまでの心停止後の移植についても、ドナーに対して、心停止前から臓器保存のための処置を血管を切り開いて行い、心停止後0分で4dCの貫流液を注入するなど、問題の多い行為が行われてきました。さらに、移植用の臓器の種類を増やそうとするならば、今度は「尊厳死・安楽死」を導入しなければならなくなります。

 
●「脳死」を一般的な人の死とする動きが始まっている

 民主党の桜井充議員を中心に、臓器移植とはかかわりなく、「脳死状態」の人から声明維持装置をはずして死に至らしめるための法律づくりが検討されています。

 桜井議員は、新臓器移植法が、「脳死は人の死」とする考えを前提とするようになったことを踏まえた、としています。これは、1997年法が臓器移植の場合にだけ「脳死」を人の死としていたのに対して、新臓器移植法が臓器移植の場合だけという限定をはずすような改悪を行ったことによるものと思われます。

 わたしたちが恐れていた動きが起こっているのです。


 以上述べてきたように、新臓器移植法は、「脳死」概念を拡大し、「脳死」と判定された子供たちから臓器を摘出するものであり、また、この施行に伴いさまざまな命のきりすての動きを誘発していると言わざるを得ません。

 わたしたちの仲間にも透析を受けている人や内臓に病気を抱えた人がいます。こうした仲間は、人の死を期待する人生を拒否する、と述べています。

 内臓に病気のある人々の医療や福祉を充実させなければならないのは当然です。しかし、その医療は移植以外の方法を発展させるべきだし、移植に慎重だった日本はそうした医療をはぐくんできたはずです。

 わたしたち人類は、人の死を前提とした臓器移植を止めるべきであり、それに伴って作り出された「脳死」を人の死とすることを止めるべきです。

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