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2010年9月27日 (月)

怒りネット通信 No.44

怒りネット通信 No.44

2010年8月6日発行

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■もくじ
・「障害者自立支援法」との闘いはなおも続く
・地域主権大綱に反対しよう

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「障害者自立支援法」との闘いはなおも続く
古賀 典夫

 5月の下旬から6月の16日まで、「障害者自立支援法」改定案が国会を通過しそうになる、などと5月の連休辺りに想像した方はいらっしゃいますか?わたしには思いもよらないことでした。

 昨年10月30日、日比谷に1万人の「障害者」とその関係者が集まる中、長妻厚労大臣が「自立支援法」の廃止と新法制定を約束し、山井政務官が涙ぐむ、そんなシーンがありました。
 12月8日には、内閣府に「障害者制度改革推進本部」(以下、推進本部)が設置されることになり、その第1回会合が同月15日に開かれました。
 今年の1月7日には、「障害者自立支援法違憲訴訟原告団・弁護団と国(厚生労働省)との基本合意文書が交わされ、2013年8月までに「自立支援法」を廃止し、新たな福祉法制を実施することが明記されました。
 そして12日には、推進本部に設置された「障害者制度改革推進会議」(以下、推進会議)の論議がスタートします。この推進会議は、「障害者」自身や家族がそのメンバーの多くを占めており、毎年10月末に日比谷での集会を主催してきた団体関係者が論議を主導する状況になって行きます。したがって、24時間の介助保障など、「障害者」の切実な要求を実現する方向で議論は進められていきます。
 こんな経過を知っていれば、なおさらのこと、5月下旬からの経緯は、寝耳に水でした。

 4月27日、自民党と公明党が「障害者自立支援法等の一部を改正する法律案」(以下、自民・公明案)を議員立法として国会に提出しました。
 これは、昨年の通常国会に提出されていた当時の政府(自民党と公明党)の案と同じようなものです。ただし、多少の手直しがされており、この点については、後で述べます。
 しかし、与党は多数を占めており、厚生労働委員会には多くの政府提出法案が上程されていました。常識的には、自民・公明案が審議されること自体が考えられない状態にあったと思います。

 ただ、今の時点から捕らえ返すと、わたしが記述した「自立支援法」をめぐる経過は、物事の一面しか捉えていないことが判ります。
 昨年12月14日には、内閣府に設置された「地域主権戦略会議」の会合がスタートします。そこでは、「自立支援法」をも含む福祉法制の地域間格差を広げていく内容が資料として提出されていました。福祉事業に必要な人員、利用者の定員、施設・設備などを都道府県の条例に任せようという内容です。また、政府が国全体の人々の権利を保障することをやめてしまおうとの論議が交わされていたのです。そうした資料や論議について、「制度改革推進会議」に紹介されることはありませんでした。そして、地域間格差を広げる「地域主権推進一括法案」が国会に提出され、参議院先議で4月28日参議院を通過しました。
 他方、「自立支援法」の自民・公明の改定案が提出される頃、厚労省の障害保健福祉部の官僚が国会に日参する姿もあったと言われます。また、この法案の提出日4月27日とは、推進会議の総合福祉部会の論議がスタートする日でした。「自立支援法」に変わる総合福祉法の案を検討する部会です。
 推進会議の事務局は内閣府なのですが、この総合福祉部会の事務局は、厚労省です。しかも、この部会の委員は、推進会議の委員の人数の2倍を超える55人です。「議論がまとまらないようにするためではないか」との見方もあります。

●雲行きの変化を感じさせた5月中旬

 5月10日、第10回の推進会議が行われました。この日は、政府の各省からのヒアリングの続きで、厚労省、総務省、国土交通省、内閣府からのヒアリングと意見交換が行われました。ここで特に指摘したいのは、厚労省のヒアリングについてです。
 山井政務官の報告に対して、推進会議の委員からは、「地域主権戦略」との関係の質問が相次ぎました。委員からの指摘は、ますます地域間格差を作り出していくことへの懸念です。山井氏は、地方に回す予算がおおければ、問題は起こらない、という趣旨の発言を行っています。しかし、「地域主権戦略」が予算がないことをそもそもの動機としているのであり、今から捕らえ返すと、その場をごまかすペテンであったといえます。
 また、山井氏は、「所得保障には、就労支援が大事」などと自民党と変わらない発言をしており、自民・公明の「自立支援法」改定案についても、「民主党がこれをどう判断するかだ」と否定する姿勢はとっていません。
 また、医療関係の報告をおこなった足立政務官は、「心身喪失者等医療観察法」について人権に配慮しているので問題はない、との趣旨の発言を行い、日本の精神医療体制そのものについても問題はない、との姿勢を取りました。

 さらに5月17日、「障害者自立支援法違憲訴訟全国弁護団」と「障害者自立支援法訴訟の基本合意の完全実現をめざす会」(以下、めざす会)が厚生労働大臣あてに申し入れを行っています。申し入れの趣旨は、「自立支援医療」と「地域生活支援事業」の利用料について低所得者の無料化を実現するための予算措置、及び、「地域主権推進一括法案」の拙速な施行を行わないように要望するものでした。
 山井氏は、低所得者の無料化について、予算は年末に決まるので答えられない、との発言を行っています。上述の基本合意文書で「自立支援医療に係る利用者負担の措置については、当面の重要な課題とする」と書かれているのに、この態度です。
 
●「自立支援法」改定案が動き出したことを知らせたのは、共同通信の記事だけ

 5月20日、共同通信は、この日をもって、与野党が「自立支援法」改定案をこの通常国会で成立させるための協議に入ったことを伝えました。この記事は、その後に衆議院厚生労働委員会を通すための手法まで伝えています。自民・公明案に対して、民主党が対案を提出し、与野党が修正協議を行い、厚生労働委員長提案ということで通過させる、というその後実際に行われたやり方です。民主党の対案というのは、実際には与党の対案でしたが。これだけの内容ですから、20日以前から検討されてきたことは間違いないでしょう。
 そして、26日には、与党の対案が提出されます。そして、実際にはわたしの知る限り、27日には厚生労働委員長提案の文章もできていました。
 この一連の過程で、推進会議には何の連絡もありませんでした。推進会議の担当者でもある福島みずほさんにも連絡はなかったと言います。
 「障害者」団体はこの動きを察知して動き出します。めざす会は24日のニュースで、26日の衆院厚労委員会で、「自立支援法」改定案が通されそうであることを報道し、抗議を集中するように呼びかけます。そして、26日には審議されず、28日の厚労委員会での審議となったのです。
 この遅れは、今から思うと決定的な意味を持ちます。当時与党であった社民党の阿部さんが法案に年限を盛り込むべきことを主張したために、与野党持ち帰りとなり、それで審議日程が遅れたと伝えられています。

 なぜ、民主党がこんな動きを始めたのか、この問題は今後も解明が必要な課題ですが、この頃国会で言われていたのは、労働者派遣法との取引で行われた、とのことです。労働者派遣法を通すために、派遣法の審議に反発していた自民党と取引を行ったということです。しかしわたしは、官僚と組んだ民主党の中心が、推進会議に反映されてくる要求の抑え込みに入ってきた、と考えておく必要があるのではないか、と思っています。

 実は、怒りネットは出遅れました。
 27日までの過程は、新臓器移植法の問題で、厚労省との交渉や国会への働きかけの準備に追われていたからです。
 27日国会に行くと、「障害者」関係者が動いています。社民党の阿部事務所に行き、わたしたちの来た趣旨を伝えていると、阿部議員が通りかかり、「自立支援法のことでしょ」とつかれきった感じで言われます。その後に事務所の方から状況をうかがいました。そこでわたしたちは、議員事務所を訪問する際に、新臓器移植法の問題と共に、「自立支援法」の問題を訴えることにしました。 
 両方の内容を話すというのは難しいもので、事務所によってはほとんど「自立支援法」の話となってしまいました。特に、民主党の福田えりこ事務所では、秘書の方が「自立支援法」改定案について、「賛成している団体もあるんです」と言って、その団体の文章を読み上げたりするもので、どこが問題かを延々話すことになってしまいました。
 
民主党の議員の中でも、「わたしはあんな法案はやめるべきだと思う。総合福祉法までのつなぎなら、予算措置で行っていけば良い」と明快に語られる方もいました。

●5月28日は、民主党の裏切りデー

 この日朝からテレビでは、日米合意で、沖縄の名護市辺野古に新基地を作ることが決められた、との報道が流れ続けました。沖縄への許しがたい裏切りです。そして、この方針にあくまで反対して閣議では署名を拒否するとした福島瑞穂さんを、鳩山政権がどうするのか、ということが話題となっていました。
 そんな中、この日の午前中に開かれた衆院厚労委員会では、400人の「障害者」関係者の国会行動を前にしながら、厚労委員長提案なるものが採決されてしまいます。反対したのは、社民党の阿部さんと共産党の高橋さんだけでした。10時過ぎから始まる審議の途中で、この法案を議員に配り、11時17分に採決したのです。この法案は、200ページを超える膨大なもので、大部分の議員はこの全体を読まずに賛成したことになります。
 国会に集まった「障害者」からは、「05年の自立支援法が成立したときを思い出す」と裏切りへの怒りが語られました。そして、新たな闘いに進むことを決意しました。
沖縄でも、辺野古への新基地建設の政府決定に対して「これは新たな琉球処分だ」との怒りが全島を覆っていました。福島さんは、報道によれば、社民党の又市副党首や重野幹事長などが署名拒否の方針を撤回するように迫る中、あくまでも意志を貫いて大臣を罷免されます。ところがこれが鳩山政権を逆に追い詰め、内閣支持率をさらに大幅に引き下げることになるのでした。

 「自立支援法」改訂案は、直近の衆院本会議にかけられることになりました。それが31日です。
 怒りネットはこの日、ようやく独自のビラを作り、国会行動を行いました。05年に座り込み泊り込んだ場所でビラまきを行いました。通りかかる議員に「先生何とかしてください」と沼尻勝江さんが迫ります。
 前日「日本難病・疾病団体協議会(JPA)」が反対の緊急アピールを総会で採択していましたが、この日は、こうした難病団体の方々が議員への要請に多くの署名を携えてやってきていました。わたしたちのビラを見たそうした方々は「わたしたちと同じですね」と声をかけてくれ、お互いに頑張ることを誓い合いました。
 本会議を傍聴すると共に、参議院の側ではどうなっているのかなど、情報収集も行いました。するとまたあきれた事実がわかってきました。翌日の参院厚労委員会で、12時40分から25分の質疑で採決することが決まっているということです。この事実に一同「自民党より悪質だ」と怒りました。
 この日の本会議は、自民・公明が不信任案を提出しており、中国首相の訪問などもあり、「自立支援法」改定案が採決されたのは、夜中の11時過ぎでした。質疑などは全く行われていません。

 翌日、わたしたちは再び国会行動を行いました。この日は、めざす会の方々も傍聴などを行い、全体で200名の国会行動となりました。
 厚労委員会では、予定よりも早い時間から質疑が始まりました。わたしが議員面会所のテレビの所にいけたのは、質疑の最後となる共産党の小池さんの質問の時でした。答弁にたっているのはあの民主党の園田衆院議員です。採決では、やはり共産党と社民党が反対しただけでした。
 採決後、わたしたちは直ちにシュプレヒコールを上げ、その後、めざす会の方々の行う集会に参加しました。翌日には、参院本会議が予定されており、最後まで結集して闘うことを確認しあいました。
 怒りネットは、こうした行動に備えて、「怒」の1文字を記した紙を用意しており、シュプレヒコールの際に使いました。これは、沖縄や岩国の闘いで使っているということを知ったからでした。わたしたちこそ元祖怒りネットなのだから使おうとの思いでした。それが8日以降になると、めざす会の方々が紙の片側に「怒」、もう片側に「廃案」と印刷して、みんなに配ってくれるようになりました。

 他方、同日開かれた推進会議の総合福祉部会でも重要な決議があげられます。
 「議論をまとめている最中にもかかわらず障害者自立支援法の一部改正が情報提供もなく進められたことに対して、部会構成員一同は強い遺憾の意を表すとともに、推進会議並びに部会の議論が尊重されるよう、推進本部に意見を上げていただきたい」
 実はこの中には、「自立支援法」改定案に賛成している団体も入っています。育成会、日身連、「日本発達障害ネットワーク(JDDネット)」などです。育成会はその支部に対して、民主党への働きかけを行うように支持も出していたようです。それがこの決議には従わざるを得なかったのです。

この決議は要望書として、7日の推進会議に手渡され、推進会議でも同文の決議が行われました。そして、推進本部長である首相に手渡されることになりました。
 
 話を6月1日に戻します。この夜から、鳩山首相辞任問題が焦点化してきます。そして、翌日6月2日の朝、辞任します。その結果、「自立支援法」などいくつかの法案を10分ほどで採決する予定の本会議は流会となりました。
 この日も、めざす会の方々を中心に100名の方々が国会に結集し、廃案まで頑張ることを誓い合いました。

★法案の何が問題なのか

 ここで、法案の中身に触れたいと思います。自民・公明案は、昨年の通常国会に政府案として提出されていたものをもとにしています。与党対案も厚労委員長提案も自民・公明案に手を加えたものです。
 しかし、その法案名と第1条に重要な違いがありますので、この点から述べたいと思います。

 自民・公明案の法案名は、「障害者自立支援法等の一部を改正する法律案」です。その第1条から、「自立支援法」のどこを変えるかについて述べています。
 与党案は、まず法律の名称が違います。「障害者自立支援法の廃止を含め障害保健福祉施策を見直すまでの間において障害者等の地域生活を支援するための関係法律の整備に関する法律案」。
 与党案はその第1条で次のように述べています。
 「第一条 この法律は、平成二十五年八月までに障がい者制度改革推進本部等における検討を踏まえて障害者自立支援法の廃止を含め障害保健福祉施策を見直すまでの間において、障害者及び障害児の地域生活を支援するため、関係法律の整備について定めるものとする。」

  厚生労働委員長提案の法案名は、次のとおりです。
 「障がい者制度改革推進本部等における検討を踏まえて障害保健福祉施策を見直すまでの間において障害者等の地域生活を支援するための関係法律の整備に関する法律案」 
  そして、第1条は次のようになっています。
 「第一条 この法律は、障がい者制度改革推進本部等における検討を踏まえて障害保健福祉施策を見直すまでの間において、障害者及び障害児の地域生活を支援するため、関係法律の整備について定めるものとする。」 

  与党案と厚労委員長提案との間には、決定的な違いがあります。委員長提案には、「障害者自立支援法の廃止を含め」と「平成二十五年八月までに」という言葉が消されているのです。
 この「平成二十五年八月までに」は、社民党の阿部さんが強く主張して与党対案に入れたものだそうです。そして、この語句を除いた厚労委員長提案に対して阿部さんは、「年限の入らない法案には反対します」と質疑の中で宣言したのでした。

 わたしは今問題となっている改訂法案を、「障害者自立支援法」改訂案などと呼んでいますが、法律の本文だけでも、「障害者自立支援法」、児童福祉法、精神保健福祉法、精神保健福祉士法、社会福祉法、社会福祉士及び介護福祉士法が改訂の対象となっています。付則に記されている改訂の対象となる法律は膨大です。これらをわずかな時間で国会を通過させようとしたのですから、全くめちゃくちゃです。
 以下では、わたしの気づいた法案の問題点について述べていきます。

●能力主義、労働至上主義に変化はない

 「能力及び適性に応じ」という表現が削られました。
 しかし、日中活動の体系(就労移行支援、就労継続支援A、就労継続B、生活介護など)という能力主義的な体系は何一つ変わっていません。

●「地域生活支援事業」への更なる事業の盛り込みは、矛盾を拡大する。

そして、「成年後見制度利用支援事業」を、市町村の「地域生活支援事業」の必須事業とすることが打ち出されました。また、昨年の政府案と同様に、「基幹相談支援センター」も「地域生活支援事業」に盛り込もうとしています。
 そうでなくても、市町村の「地域生活支援事業」関係予算は逼迫しているのに、ますます矛盾を拡大することになるのではないかと思われます。国がそのための予算を増やす保障など、どこにもないのですから。

●この時期の「自立支援法」改訂は、総合福祉法実施の妨げとなる

 厚労委員長提案について、民主党は次のように弁護します。
 「障がい者制度改革推進本部等における検討を踏まえて障害保健福祉施策を見直すまでの間において」という言葉が入っているのだから、総合福祉法を作ることが変わってしまったわけではない、と。
 しかし、こうした主張は次の点を忘れています。
 今回の「自立支援法」改訂案の完全実施の時期は、2012年4月。
 「障害者自立支援法違憲訴訟原告団・弁護団と国(厚生労働省)との基本合意文書」によれば、国は「遅くとも平成25年8月までに、障害者自立支援法を廃止し新たな総合的な福祉法制を実施する」としています。「平成25年」は、2013年ですから、2012年の通常国会辺りで総合福祉法を成立させないと、2013年8月の実施は、困難となるでしょう。
 厚生労働委員長案という形で改定案が成立すれば、2012年は、この改定案施行直後によく起こる混乱と総合福祉法の準備の両方に対処しなければならないことになり、それこそ現場は大混乱となるでしょう。そうした結果、総合福祉法の施行は、ますます遅れていくことになるのではないでしょうか。
 したがって、「自立支援医療」などの利用料の減免などを予算措置として行えばいいのであって、法律をいじることは混乱を生むだけになるでしょう。

●1割までは徴収できる「応能負担」

 昨年の通常国会に出された政府案と同様に、応能負担にされたとされる部分は、次のように記載されています。ちょっと判りにくいのですが、引用します。
 「当該支給決定障害者等の家計の負担能力その他の事情をしん酌して政令で定める額(当該政令で定める額が前号に掲げる額の百分の十に相当する額を超えるときは、当該相当する額)」

 ここで、「前号に掲げる額」とあるのは、ホームヘルプなど福祉を提供するにあたって使われた金額、すなわち、報酬単価と考えてください。
 「家計の負担能力その他の事情をしん酌して」利用料が決められるのですから、応能負担にした、とのことですが、1割までは、利用者から徴収できるのです。

●事業者と利用者の管理の強化

 昨年の政府案を引き継いで、事業者の管理を強化する条文が追加されていますが、わたしが特に恐ろしいと思うのは、第四十八条の変更です。
 現行法では「サービス事業所に立ち入り」となっているのですが、改定案では「事務所その他当該指定障害福祉サービスの事業に関係のある場所に立ち入り」と、いくらでも立ち入りの範囲を拡大できる規定としています。場合によっては、ホームヘルプ利用者の家まで立ち入りができるという解釈さえできてしまうのではないでしょうか。ちなみに、このような条文は介護保険法にも見当たりません。なぜ「障害者」関係だけに、このような管理体制を敷こうとしているのでしょうか。

●国庫負担基準以下に、支給する福祉を押さえ込む条文

 これも昨年の政府案を受け継いでいるものですが、市町村は、ホームヘルプなどの福祉の利用を希望を申請した者について、利用計画案の作成を求めることができるようにしようとしています。この利用計画案は、利用者本人が作ることもできるとのことですが、基本は市町村が指定した相談支援事業者です。
 国は、「障害程度区分」に対応したホームヘルプの国庫負担基準を作っています。この国庫負担基準を超えてホームヘルプを支給するような計画案を作れば、それは市町村の持ち出しになりかねません。市町村の認定を受けた事業者にとって、利用者の必要性が判っていたとしても、国庫負担基準を超える利用計画案はなかなか作りにくいことが予想されます。そして、事業者を縛るための管理体制も新たにこの改訂法案には追加されているのです。
 このホームヘルプの国庫負担基準以下に押さえ込まれれば、1日数時間程度の介助しか保障されないようになっていくことでしょう。

●無視された基本合意文書

 「自立支援法」違憲訴訟の和解条項の基礎をなすのが、この基本合意文書なのですが、今回の「自立支援法」改定案とそれを成立させようとするやり方は、この基本合意を何重にも踏みにじるものです。
 「新法制定に当たっての論点」という部分で、原告団と弁護団は、収入認定については本人の収入だけを対象とすること、介護保険優先原則の廃止、国庫負担基準・「障害程度区分」の廃止など重要な論点を記しています。ちなみに、今度の「自立支援法」改定案では、ここに挙げた要求はすべて無視されています。
 これらの要求を受けて国は、① 利用者負担のあり方、② 支給決定のあり方、③ 報酬支払い方式、④ 制度の谷間のない「障害」の範囲、⑤ 権利条約批准の実現のための国内法整備と同権利条約批准、⑥ 障害関係予算の国際水準に見合う額への増額、について「しっかり検討を行い、対応していく」と記しているのです。
 ところで、「自立支援法」改定案には「(検討)」という見出しの付則第二条があります。この条文において、自民・公明案は5年後の見直しを規定しているだけです。つまり、2013年8月を無視し、総合福祉法も無視する意志表示です。
 しかし、与党対案や厚労委員長提案にしても、「難病の者等に対する支援及び障害者等に対する移動支援」の検討だけなのです。基本合意文書に忠実であるならば、上述の6点をすべて記載するか、推進会議の結論を踏まえた法案を作ることを述べるか、どちらかのはずです。
 また基本合意文書の中では、「国(厚生労働省)は、障害者自立支援法を、立法過程において十分な実態調査の実施や、障害者の意見を十分に踏まえることなく、拙速に制度を施行」して「障害者、家族、関係者に対する多大な混乱と生活 への悪影響を招き、障害者の人間としての尊厳を深く傷つけたことに対し、原告らをはじめとする障害者及びその家族に心から反省の意を表明する」と記載しています。この反省もまたうそであったことは明らかでしょう。

★闘いはさらに続く

めざす会は、引き続きファックスなどでの議員への要請を呼びかけると共に、8日の国会行動を訴えました。そして、8日には2000人の人々が結集したのです。衆参全議員への要請行動、議員会館前での行動、院内集会、憲政会館での集会、そして、最後にすべての参加者が議員会館前を埋め尽くしました。
 全員が集まると、議員会館前は、ぎっしりと人が並ぶ状態になります。1列にはとても並べず、前後左右に人が密着する状態になっています。広島、兵庫、福井、北海道など、各地からの参加者の怒りが表明されます。しかし、あのときを超える高揚感もまたありました。
 怒りネットは、この日初めて青木さん製作の旗を掲げました。周囲の人たちから「すてきな旗ですね」との言葉をいただきました。
 この日の議員まわりだって、いつものイメージとは違います。1フロアーに車椅子の人たちも含む何10人かが動くのです。
 憲政会館の集会は、さながら民主党糾弾大会のようだったとのことです。他方、院内集会から最後の全体集会まで参加し、謝罪し泣きながら「障害者」と共に闘うことを誓うかねこ恵美民主党議員もいました。
 
 その後も、ファックスでの要請を続ける一方、太田修平さんをはじめとしてめざす会からは、国会前での14、15、16日の闘いが呼びかけられました。14日は雨の中200人が、15日にはかんかん照りのなか300人が、蒸し暑い16日には500人が結集しました。
 15日夜、参議院の議員運営委員会で、自民・公明は「自立支援法」改定案の採決を求めたそうです。そのときは、西岡委員長(民主党)が拒否したとのことでした。
 16日には、自民・公明が衆議院で不信任決議案を提出し、これが処理されるまで、参議院も含めて国会の公式の動きがストップします。
 その間も結集した「障害者」は必死の訴えを続けました。国会最終日という中で、ほかの陳情者はほとんどおらず、わたしたちだけが行動している状態です。
 午後3時過ぎ、不信任決議案が否決され、参議院の議員運営委員会が動き出します。参議院には、やはり自民・公明が問責決議案を提出することになっていました。議運で自民・公明が、問責決議案を取り上げよ、と迫りました。民主党側は、「問責決議案を取り下げれば、本会議にかけられている法案について、本会議採決を行う」との意向を示したそうです。そして、この民主党の提案について、双方が持ち帰って検討することになりました。
 行動の終了時間と主催者が決めていたのがこの時間帯です。しかし、どちらに転ぶか判らないこんなときに、とても帰ることはできません。いったん休憩に入りますが、怒りネットは民主党の幹部にあって要請をしようと電話をかけますが、ことごとく今会えないと言われます。
 集会が再開されます。何人かの発言が行われたところで、共産党の小池さんが、国会が解散になったとの情報をもたらします。社民党の福島さんもこの情報を確認します。結局民主党の提案を自民・公明は呑まず、民主党も問責決議案は取り上げることができないとのことで、物別れとなり、これで解散となった、とのことです。
 「やった!」どっと喜びがこみ上げます。これで「自立支援法」改定案は廃案です。
 しかし、「地域主権推進一括法案」は継続審議であり、「自立支援法」改定案もまた復活してくるかもしれません。
 太田さんの最後のまとめは実に的を得たものでした。「今日までの第1ラウンドは勝利しましたが、明日から第2ラウンドが始まります。共に闘って行きましょう」。最後のシュプレヒコールも「臨時国会でも闘うぞ」とのフレーズがありました。

●臨時国会を見据えて

 自民党の衛藤誠一議員は、臨時国会で改めて「自立支援法」改定案を提出する、との意向を示しているそうです。臨時国会冒頭からの行動が必要になっています。

 他方、6月7日に推進会議が示した「障害者制度改革の推進のための基本的な方向(第一次意見)」は、「障害者」の置かれた状況を改善していく上で、重要な方向を示したと思います。十分か不十分かという点では、議論すべき点はあると思いますが。
 「すべての障害者が家族への依存から脱却し、自ら選択した地域において自立した生活を営む権利を有することを確認するとともに、その実現のために 24時間介助等を含む支援制度の構築を目指す」
 「障害の有無にかかわらず、すべての子どもは地域の小・中学校に就学し、かつ通常の学級に在籍することを原則とし」
 「精神障害者に対する強制入院等の見直し」、「精神医療の一般医療体系への編入」、「「精神科特例」の廃止」
 こうした言葉が記されています。官僚、企業の利益主義や能力主義を守ろうとする政治家たちは、推進会議の目指す方向をつぶすために動くでしょう。
 わたしたちは、5月下旬以降、闘い続け勢力を拡大し続けなければ、何も守れず何も勝ち取れないことをますます実感させられました。共に闘いましょう。
 そして、10月29日が今年の日比谷の結集の日となりそうです。

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障害者福祉の「規制緩和」による社会保障費大幅削減=地域主権大綱
障害者は民主党の地域主権改革に反対しよう
高見元博

 この問題は、私たちの対応が立ち遅れている内に、どんどんと既成事実化されています。6月22日閣議決定された「地域主権戦略大綱」はこの2~3年の間に実施すべきことを提起しており、11年度からはその根幹を成す一括交付金化が始まります。鳩山首相の時に「地域主権改革は民主党政権の一丁目一番地」と言われていました。菅政権でも所信表明演説で述べられ、民主党政権の重要な政策とされています。民主党政権の参院選での敗北の結果、この攻撃は弱められていません。むしろ前面化されているようです。民主党政権が続く限りいつ実行されてもおかしくないのです。
 まず、いったい何が起きているのかを見ていきたいと思います。
 昨年12月14日、内閣府に「地域主権戦略会議」が設置されました。
 新たな地方自治改革であり、廃藩置県以来の大改革だと言います。しかし、明治維新以来の改革と言いながら、「封建制からの脱却」といった、明確な展望を示せる者はいません。羽仁五郎の「都市の論理」における「都市は自由にする」という労働者階級の立場からの地方自治の提起に比しても、中身のある地方自治の姿は提示されていません。いまの支配階層の地方分権とは、国は国防や外交、治安維持、教育の根幹だけを握り、地方自治体に教育・福祉の大きな権限と予算を譲渡する大改革と言われています。民主党の「地域主権改革」が果たしてそれなのか。民主党は何を変えようとしているのか、本音の部分は、会議のメンバーとその発言から推し測るしかありません。

何が議論されているのか

 会議のメンバーの平野博文(内閣官房長官・当時)は「中央集権の統治機構は非常に高コスト。自立した国、地方、国民であって欲しい。国と地方自治体が最低限しなければならない部分は何か。国民の自立を前提として施策を打っていく。」と第一回会議で発言しています。「国民の自立」というのは、「自助・共助・公助」という考え方で、「自助」を中心にするという意味です。「国民は政府や行政の世話にならず、一人で勝手に生きて行け」と言っているのです。
 国から地方自治体に渡される予算の8割は社会保障と教育予算です。平野の発言から推し測れば、政府の狙いはこれを削減することにあるのであって、決して民主主義の推進や、福祉の増進などではありません。
 また、メンバーの一人である大阪府知事の橋下は、在日朝鮮人や北朝鮮をヤクザ・暴力団だと言って公然と差別し、朝鮮高校を府の補助の対象外とするなどと、まるで右翼団体、「在日特権を許さない市民の会」=在特会かと見間違うほどです。橋下が自らが民主主義とはかけ離れた手法を用いながら地方分権を叫んでいるのは、自らにより大きな権力を要求しているだけです。このことは自治体の長や議員により大きな権力を与えるだけで、真の地方分権でも民主主義改革でもないことを示しています。

真の地方自治ではなく

 沖縄県民、名護市市民の意思に反して、名護市辺野古沖新基地建設を公言し、地方自治を踏みにじっている当の民主党政権が、「地方自治」などという言葉をもてあそぶことは、いったい何を意味するのでしょうか。
 小泉政権の「三位一体の改革」は、地方に権限を委譲し、財源も譲渡するという謳い文句でした。しかし、実際には、地方に仕事は渡したが、譲渡する財源は大幅にカットされました。民主党は、自民党政権でもなしえなかった、憲法の下での戦後民主主義的なもの、民衆の権利意識と価値観を解体し、剥き出しの資本主義の弱肉強食の論理への置き換えに挑戦する「大改革」を狙っているのではないかと思えます。
 現実の地方自治体は、身近だからといって、民主的とは言えません。都市部でも自治体の実体は地域ボスの集合体という地方は少なからず存在するのではないでしょうか。土建屋ボスを中心にした地域支配のところも多いと思います。そういう地域ボス支配に依拠しているのが、いまの支配階層による労働者支配のありようです。会社・職場での支配という半面と対を成すものです。支配階層=会社経営者たちは昼間は職場で、夜は地域で労働者を支配し、労働者家族を日常的に地域で支配しようとします。真の地方自治は、資本主義の社会支配のひっくり返しとしてしか実現できないでしょう。

地域主権戦略大綱

 「地域主権戦略大綱」が10年6月22日に閣議決定されました。
 「地域主権改革」の定義は、「日本国憲法の理念の下に、住民に身近な行政は、地方公共団体が自主的かつ総合的に広く担うようにするとともに、地域住民が自らの判断と責任において地域の諸課題に取り組むことが出来る様にするための改革」だとされています。また、「おのずと地方公共団体間で行政サービスに差異が生じてくるものであり、地方公共団体の首長や議会の議員を選ぶ住民の判断と責任は極めて重大になる。」として、福祉削減の責任を住民に転嫁しています。障害者などのマイノリティの利益が守られるかどうかも地域住民の意思に従うということであり、国による福祉の保障という考え方は捨てられています。障害者福祉に地域間格差は広がるし、福祉予算はより縮小再生産されていくことになります。
 「大綱」は、施設などの設置基準を規制緩和して自治体の勝手にさせることと、国の地方自治体への財源保障である「ひも付き補助金」をなくし、使途を定めない「一括交付金」化するということを柱としています。また、「道州制」についての検討も射程に入れていくとされています。

規制緩和

 小泉改革は主に民間に対する規制緩和で巨額の財政赤字の矛盾を労働者人民に押し付けました。それは貧困を拡大し、大きな貧富の格差を生みました。ワーキングプアといわれる新たな社会層を作り出しました。その規制緩和を、今度は社会保障にも持ち込み、国と地方自治体の間で行おうというのが「地域主権改革」です。「財政再建」を労働者や障害者の犠牲によって、成し遂げようというものです。しかし、財政が破綻しているのは、巨大な公共事業や巨額の銀行救済などの資本家救済策を重ねてきたツケであり、労働者や障害者が責められる筋のものではありません。

「一括交付金の対象・括り方」(別紙資料イメージ図参照)

 「一括交付金の括り方」として、横軸を大まかな政策分野別に、○○分野、△△分野、□□分野と括るとされています。この分野別に交付金を一括して自治体に渡します。この○○分野というブロックは省庁の壁を越えて括る、ともされています。
 生活保護や障害者福祉や介護保険が一括交付金の対象とされ、それらがいくつかの分野として一括でくくられるというイメージのようです。そのなかで障害者福祉と介護保険との統合の問題も再浮上するかもしれません。
 「大綱」は生活保護は始めは対象とならないように読めます。しかし、あの悪名高き「労働者派遣法」でも、最初はもっともらしい事を言って対象を極めて限定して、労働者の利益になるという謳い文句で制定したのです。一度できてしまうと対象をどんどん拡大して、製造業の日雇い派遣までも対象を無制限に拡大していったのです。それが賃金では生きて行けない労働者群を生み出したのです。その轍を踏んではならないと思います。約2兆円の(社会保障費の約10%)生活保護費だけが聖域になるとは考えにくいことです。
 生活保護という国家による生存権保障の要の予算が、自治体の好きなように使える一括交付金化するということであれば、憲法25条(生存権保障)の実質的な改悪です。 
 「大綱」の実体を示す部分を少し長く引用します。

「一括交付金の対象範囲

(1) 基本的考え方
・ 一括交付金化する「ひも付き補助金」の対象範囲は最大限広く取る。
・ 補助金、交付金等を保険・現金給付、サービス給付、投資に整理し、地方の自由裁量拡大に寄与するものを対象とする。
(2) 対象範囲の整理方針
・ 社会保障義務教育関係―――「社会保障。義務教育関係」については、国として確実な実施を保障する観点から、必要な施策の実施が確保される仕組みを検討するとともに、基本的に、全国画一的な保険・現金給付に対するものや地方の自由裁量拡大に寄与しない義務的な負担金・補助金等は、一括交付金の対象外とする。
・ その他~一括交付金の対象としないものは最小限に限定する。具体的には、災害復旧、国家補償的性格のもの、地方税の代替的性格のもの、国庫委託金、特定財源が国費の原資であるもの等に限定する。
(3) 実施手順
投資に係る補助金・交付金の一括交付金化は平成23年(2011年)度以降段階的に実施する。経常に係る補助金・交付金等の一括交付金化は平成24年(2012年)度以降段階的に実施する。」

「障害者」福祉政策は一括交付金化の対象

 一括交付金化で、障害者福祉のどこに重点をおくかは自治体の自由になります。障害者の間が分断されて、より極端に小さくなったパイのなかで、競争と蹴落としあい、予算の分捕りあいに落とし込まれるかもしれません。しかもブロックはより大きく括られているから、障害者予算と他の予算が一つのブロックとされて、障害者予算は削られる一方といったことも想定されます。巨額の財政赤字を抱える自治体では、赤字解消が優先されることになるでしょう。
 法制定の行程表が明らかにされています。「地域主権一括法案」、地方自治法の一部改訂、「国と地方の協議の場法案」は、参議院先議だったので、4月28日に参議院を通過して継続審議とされています。来年の通常国会には本格法案が出されてきます。一括交付金化は11年度から順次始まります。

真の改革とは

 必要なのは労働者や障害者が自由に生きていくための施策であり、その実現のための民主主義です。障害者自らが国政や地方自治に口を出し、手を出し、関与し、政策決定をしていくことが真の民主主義なのです。少数者を排除した多数決原理はファシズムです。
 「地域主権改革」は、逆立ちした、障害者に犠牲だけを押し付ける「規制緩和」です。実施されるとなれば、各省庁の抵抗もあり、「大綱」が単純ストレートに実行されるとは限りません。これからまだまだ紆余曲折を経ることでしょう。だからこそ、私たち障害者は「地域主権改革」に絶対に反対します。

                      

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