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2010年9月 5日 (日)

産経新聞より

民主党代表選は、菅直人首相と小沢一郎前幹事長という実力政治家の激突となり、両者は政治生命をかけた死闘を展開している。

 国民の関心は、どちらが勝利するかに集まっているが、代表選の公約として両者が示した政策には注視すべきものも盛り込まれている。その一つが小沢氏が掲げる社会保障費の地方交付制度の創設だ。

 小沢氏が発表した政策集をみると、「実務をすべて地方自治体が行っている実態を踏まえ、社会保障関係費としてまとめて地方に交付する」と書かれている。

 地方向け補助金のうち社会保障費関係は総額15兆円近くに及ぶ。これまでのように医療、介護保険といった制度ごとに国が負担する仕組みを改め、まとめて地方に渡そうという考え方だ。

 一括交付というのは、地方の裁量を広げる「立派な政策」に見えるのだが、やり方によってはさらに中央の権限が強まることにもなりかねない。まさか、今回の制度案には、小沢氏による“危険な罠(わな)”が潜んでいるのではないだろうか。

 小沢氏の政策集によると、対象とするのは、地方自治体が実務を担っている国民健康保険(国保)、介護保険、生活保護制度だ。小沢氏は、2日の日本記者クラブ主催の討論会で、高齢者医療制度にも言及しており、4制度を念頭に置いているようだ。

 制度を変えるメリットはどこにあるというのだろうか。政策集では「各地方の実情に応じて、かつ地方の知恵を生かして、より効果的な福祉が行える仕組みに改める」としている。

 日本記者クラブの討論会では、小沢氏は次のように説明した。「国保も全くの黒字のところがある。医療、病院にかかる老人も本当に少ないというような施策を自分たちで行っているところもある」

 確かに、医療費が多くかかっているところ、少ないところなど、市町村によって社会保障費をめぐる事情は異なる。
小沢氏は「市町村にお金と権限を任せて、それぞれの市町村で老人医療はどうする、介護はどうするというような知恵を出して、お金を有効に使い、自分たちのふるさとを作り上げていくのが、将来、いいと思う」とも語った。地方自治体の創意工夫の余地を広げれば、やる気のある市町村では、社会保障費の効率的運営につながる可能性もあると言いたいようだ。

 そもそも、民主党は国が使い道を細かく決める「ひもつき補助金」には無駄が多いと主張してきた。これを見直すことで相当の国の歳出削減、すなわち財源が捻出(ねんしゅつ)できるとの考えだ。今回の制度案も、これに沿ったものである。

 小沢氏は討論会で、補助金全体の話として、「民主党の調査で首長たちは『自由に使えるお金をもらえるのであれば、今の補助金トータルの7割で、今以上の仕事を十分やれる』という答えが出ている。私の親しい首長は『本当に自由に使えるのなら、半分でも今以上にいい行政ができる』と言っている」ともした。国のコストも減り、地方の活性化につながるという発想のようだ。

 民主党はマニフェストで「ひもつき補助金」を廃止し地方が自由に使える「一括交付金」に改める考えを示しているが、社会保障費は一括交付金の対象から外れていた。消費税を上げず予算の大幅組み替えで財源捻出できるとの立場の小沢氏としては、巨額な社会保障費も例外にすべきではないと考えたのであろう。

 ただ、政策集では社会保障費の交付金化を、「一括交付金」とは別項目として扱っている。ここから推測すると、どうやら「一括交付金」ほど自由ではないものの、社会保障費という大くくりの中で、地方自治体に裁量を認めようという発想であるようだ。

 さて、“危険な罠”はどこに仕掛けられている可能性があるのだろうか。それは、市町村への交付金の配分を誰がどう算出し、決めていくのかが明確でない点だ。
 普通に考えれば、自治体の面積や人口が配分基準の一つとなろう。だが、実力政治家が交付額に口出しするような仕組みとなれば、恣意(しい)的な配分となりかねない。

 まさか、民主党系の首長がいる自治体に重点配分するというようなことにはならないだろうが、小沢氏は夏の参院選静岡選挙区で、党静岡県連への活動費支給を中断するという“剛腕ぶり”を発揮した経緯もあるだけに懸念が残る。

 社会保障制度というのは、消防自動車のガソリン代と同じである。「予算が底をついたので、火事現場に出動はできません」というわけにはいかないのだ。社会保障費の一括交付金化は、首長にとっては、自由なお金が来るというよりも、義務を負わなければならない側面のほうが大きい。

 社会保障費というのは、見方を変えれば、「人質」のようにもなりかねい。独裁的政治家の下で、こびを売らないと十分な交付額をもらえないとなったら大変なことになるであろう。

 配分にあたっては、別の問題もある。例えば、高額医療を必要とする患者が複数出れば、その年だけ医療費が高騰することだってあり得る。企業城下町のようなところでは、工場が閉鎖となれば、生活保護受給世帯が急増するかもしれない。それでも、決まった交付金額の中でやりくりしなければならないのだろうか。

 不足分は地方財政の一般財源から穴埋めしなければならないとしたら、とても首長は受け入れられまい。想定外の事態が起こった場合には、国が別の財源で融通する財政調整の仕組みも必要だ。

 本当に地方のニーズに合っているのかという点も疑問だ。医療費や介護費は少子高齢化で今後ますます総額が伸びることが予想される。小泉政権下の「三位一体改革」でも、膨張し続ける医療や介護の権限移譲に及び腰の首長は少なくなかった。
それどころか、本格的な少子高齢社会を迎えるにあたって「社会保障制度は自治体ではなく、すべて国の責任でやるべきだ」という意見も少なくない。

 社会保障の需要が年々膨れあがる中で、どれだけの歳出削減効果が見込まれるのかもはっきりしない。小沢氏が言うように、大幅な無駄の切り込みとなるのだろうか。

 地方に回るお金の総額が減っても、本当に今以上の行政サービスができるのかも怪しい。社会保障費のような義務的経費の効率化は限界があるだろう。

 小沢氏は「厚生労働省で全部どうだこうだと決めたものを、市町村にその通りにやれという話になっている」とも語った。これは、医療や介護の制度設計までを自治体が担えということなのだろうか。

 民主党政権では、医療制度などは広域化が検討されているが、制度があまり細分化するとスケールメリットの効果が期待できなくなるのではという懸念も出てこよう。

 地方には、「三位一体改革」の際に、国から地方へと税財源が移されたものの、その総額が減らされたという苦い経験が残っている。小沢氏の制度案に、自治体がすんなりと賛同するとも思えない。

 小沢氏は政策集で「制度創設に向けて国民的議論をおこし、年内に具体的方針を示す」と期限を切ったが、ハードルは決して低くない。

 ただ、社会保障費の伸びを何らかの形で抑えなければ、日本の財政は立ちゆかなくなることも事実だ。小沢氏には、社会保障費の一括交付金化制度案の疑問点を一つ一つ明確にしてもらいたい。(論説委員)

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投稿: 第二次世界大戦のさなか、四肢を失って帰還した傷病兵と銃後の妻///どう思いますか? | 2010年9月 6日 (月) 10時33分

大分前ですが、アメリカ映画で「ジョニーは戦場に行った」というのがありました。同じ様なテーマを扱い、監督はレッドパージでハリウッドを追われ、数十年ぶりにメガホンを握ったという人でした。反戦の意図は伝わってくるけど、四肢が無くなるという状況をどう捉えるかということでは重たい・難しいテーマだと思います。

まだキャタピラーは観ていません。おそらくDVDがレンタルされてからみると思います。

投稿: | 2010年9月 6日 (月) 10時42分

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