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2011年3月14日 (月)

■「障害者制度改革」を裏切ろうとする政府の姿勢の問題点について

■「障害者制度改革」を裏切ろうとする政府の姿勢の問題点について

            怒っているぞ!障害者きりすて-全国ネットワーク

2月14日の「障害者制度改革推進会議」(以下、推進会議)において、今の通
常国会に提出される予定の障害者基本法改正の方向について、政府側から「障害
者基本法の改正について(案)」(以下、基本法政府案)が示されました。翌1
5日には、総合福祉部会に対して「第1期作業チーム報告書に対する厚生労働省
からのコメント」(以下、厚労省コメント)が示されました。
わたしたちはこれらを読んで、強い憤りを感じています。推進会議の第1次意見、
第2次意見を踏みにじるばかりか、現在の福祉制度さえ大きく後退させかねない
姿勢がそこに表明されているからです。
わたしたちは、社会から隔離されることなく、障害者が地域社会のなかで暮らす
権利をまず政府自らが承認し、その権利の保障を行うことを要請します。その観
点から前述した2つの文章の問題点を指摘します。

★「可能な限り」しか保障されない機会の確保

 基本法政府案では、以下のように記しています。
 「全て障害者は、可能な限り、どこで誰と生活するかについての選択の機会が
確保され、地域社会において他の人々と共生することができること」
 「全て障害者は、可能な限り、情報の取得若しくは利用又は意思疎通のための
手段についての選択の機会が確保されること」
「国及び地方公共団体は、医療若しくは介護の給付又はリハビリテーションの提
供を行うに当たつては、障害者が、可能な限り地域社会におけるその身近な場所
においてこれらを受けられるよう必要な施策を計画的に講ずるものとするほか、
その人権に十分配慮しなければならないこと」
 「国及び地方公共団体は、障害者である子ども及びその保護者が、可能な限
り地域社会におけるその身近な場所において、療育の給付その他の支援が
受けられるよう必要な施策を講じなければならないこと。」
 
 さらに、基本法政府案では、「合理的配慮」をもっとも悪く解釈できる規定を
おこうとしています。
 「社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、
その実施に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによつて前項の
規定に違反することとならないよう、その実施について合理的な配慮がさ
れなければならないこと」
 前項とは、障害者への差別や障害者の権利・利益をしんがいしてはならないと
いう文章です。
 「合理的配慮」について、「負担が過重でない」程度の配慮を強調しています。
そして、権利条約の場合、労働と教育のところで使われていた「合理的配慮」が
ここでは、「社会的障壁の除去」全般に拡大されています。だから、障害者への
保障は可能な限りで良いということなのでしょう。 

 では、どの程度が「可能な限り」と考えているのか、厚労省コメントを見てみ
ましょう。24時間の介助を含めたパーソナルアシスタント制度を求める総合福
祉部会側の意見について、次のように回答しています。
「財源や人材の制約を踏まえ、また、制度に係る費用を負担する国民の理解を得
るためにも、一人で地域で生活を営めるような自立訓練や困ったときに対応して
くれる相談支援体制の充実といった他の代替手段の活用など、様々な地域資源の
活用により総合的に対応することについても検討が必要と考えられます。」
 つまり、相談を受けつつも一人で暮らせるようにならないと、地域生活はでき
なくてもやむをえない、と言っているのです。常時介助を必要とする人など、地
域で暮らすべきではない、とも受け取れる発言です。これが厚労省の「可能な限
り」なのです。
 もし、こんな見解が認められたら、現在長時間介助を実施している自治体にさ
えダメージを与え、充実させてきた介助制度が破壊されかねないと思います。。

★障害者の地域で暮らす権利は否認される

 可能な限りで保障されるものは権利ではありません。さらに厚労省コメントで
は、次のように記しています。
 
 「給付法である障害者自立支援法に代わる障害者総合福祉法において、具体的
な権利を規定することについては、日本国憲法との関係や既存の法体系との整合
性等を考慮した検討が必要と考えられます。 児童福祉や高齢者福祉といった他
の給付法では、給付種類、給付の対象範囲、給付手続等を主に定めていることも
踏まえ、障害者のみ「権利法」とすることの是非についても議論が必要と考えら
れます。」
 児童や高齢者の地域で生きる権利を認めようとしない厚労省は、障害者のその
権利も認めないと言っているわけです。

●日本国憲法さえ否定する厚労省

 総合福祉部会側は、国、都道府県、市町村の義務を記し、国については次のよ
うに記しています。
 国の法制度整備・充実義務、国のナショナルミニマム保障義務、地域間格差是
正義務、国の財政支出義務、国の制度の谷間解消義務、国の長時間介護等保障義

 これらはすべて、憲法25条の生存権、14条の法の元の平等、障害者が地域
で生きる権利を保障する立場から言えば、当然認めなければならないもののはず
です。しかし、厚労省コメントでは、次のように記しています。。

 「国及び地方自治体の費用負担や事務のあり方については、閣議決定されてい
る「地域主権戦略大綱」において「住民に身近な行政はできる限り地方公共団体
にゆだねることを基本とし、基礎自治体が広く事務事業を担い、基礎自治体が担
えない事務事業は広域自治体が担い、国は、広域自治体が担えない事務事業を担
うことにより、本来果たすべき役割を重点的に担っていく」こと等の一定の方向
性が示されています。
 特に、近年の福祉法制については、その実施主体を住民に身近な市町村として
おり、こ
の流れを踏まえた検討が必要と考えられます。」
 
 このように、憲法の条項さえ否定するような姿勢をとっているのです。わたし
たちは、「地域主権戦略」とは、憲法25条の生存権保障を否定するものである
と述べてきましたが、この厚労省コメントはそのことを裏付けているといえます。
「地域主権戦略」で福祉関連予算が削減されていくことは明らかでしょう。

★教育は隔離・別学体制を護持しようとしている

 障害者が地域社会の中で暮らしていくためには、子供の頃から共に学び遊ぶこ
とが重要なことは論を待たないと思います。だから、国連の権利条約でも地域の
学校で共に学ぶことを原則としているわけです。しかし、基本法政府案では次の
ように言います。
 「国及び地方公共団体は、障害のある児童及び生徒と障害のない児童及び生徒
との交流及び共同学習を積極的に進めることによつて、その相互理解を促進しな
ければならないこと。」
 この部分は、現在の障害者基本法と同文です。現在のように、隔離・別学体制
を基本としているからこそ「障害のある児童及び生徒と障害のない児童及び生徒
との交流及び共同学習」が記されることになるのです。つまり、隔離・別学体制
を護持しようとしているのです。
 これは、明白な権利条約違反です。

★社会モデルの立場を取らない基本法政府案

 基本法政府案では、障害の定義を次のように行っている。
 「障害者の定義を、身体障害、知的障害、精神障害その他の心身の機能の障害
(以下「障害」と総称する。)がある者であつて、障害及び社会的障壁により継
続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいうものと
すること。」
 このように、「障害及び社会的障壁」と記載すると、「障害」という個人の特
性と「社会的障壁」という社会の側の問題が並列されることになります。
 社会モデルでは、社会参加を阻んでいるのは、主要に社会の障壁の問題となり
ます。国連の権利条約は、このような立場にたっています。この立場は社会の側
が障害者の権利を認めるという立場につながります。
 だから、日本の政府は、社会モデルの考え方に立つことを拒否していると思わ
れます。
 また、この「障害」の定義では、難病の人が含まれるのかどうか、不明確です。
 
★「私たち抜きに私たちのことを決めるな」の原則も無視

 推進会議は、国の障害者に関する施策の策定などに関与する審議会組織も、都
道府県や市町村のこの種の審議会組織についても、「障害当事者が過半数を占め
る」ことを要請していました。しかし、障害者の権利を認めようとしない立場か
ら、政府案はこの「過半数」という言葉を条文の中に入れていません。


★あくまで優生政策を護持しようとしている

  基本法政府案では、推進会議の提案からはなくなるはずの条文が残された。
 「国及び地方公共団体は、障害の原因となる傷病の予防のため、必要な知識の
普及、母子保健等の保健対策の強化、当該傷病の早期発見及び早期治療の推進そ
の他必要な施策を講じなければならないこと。」
 現行法では「障害の予防」となっている部分が「障害の原因となる傷病の予防」
となっている。しかしこれでは、「母子保健等の保健対策」で進められてきた出
生前診断や着床前診断などの優生政策はけっして否定されない。こうした条文は
除去するか、これまでの優生政策についての反省を入れるべきです。

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コメント

もう見ました、大変ですね

投稿: 新世紀ヱヴァンゲリヲン 同人誌 | 2011年3月16日 (水) 17時17分

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