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2011年6月

2011年6月30日 (木)

怒りネット通信47号

■障害者基本法改定案にいかなる態度を取るべきか

                          古賀 典夫

 4月22日、この改定案は国会に上程されました。権利法とは全くなっておらず、多くの問題をはらんだ法案ですが、現行法と比較すると改善点がある部分もあります。他方、2月15日に厚生労働省が総合福祉部会の検討に対して提出した「第1期作業チーム報告書に対する厚生労働省からのコメント」(以下、厚労省コメント)は、現状の福祉さえ大幅に後退させかねない内容をはらんでいます。
政府の進める「地域主権戦略」も同じように社会保障や福祉の国家責任を投げ捨てようとするものです。この8月か9月には、総合福祉部会の意見が取りまとめられ、「自立支援法」に変わる総合福祉法の法案づくりが始まります。
 わたしたちは、こうした全体的状況をにらみつつ、障害者基本法改定案に対する態度を決めていかなければならないと思います。いや、政府の側もそうした状況を踏まえるからこそ、権利法とはせず、法文全体に5箇所にわたって「可能な限り」という言葉を入れるような条文作りをしてきたのではないでしょうか。
 やはりわたしたちは、現状の福祉さえ後退させる動きがあるからこそ、権利法を要求するのだ、ということを主張すべきだと思います。「可能な限り」などという言葉は許せないと主張すべきです。そうした主張を持った運動展開をしなければ、「自立支援法」に変わる法案を眼ぶる攻防に対しても不利な状況に立たされてしまうのではないでしょうか。
 以下では、基本法改定案の内容を紹介しながら、その問題点を指摘して行きたいと思います。

●新設された条文

 新設された条文がいくつかあります。この部分は改善といえるかと思います。
 「国際的協調」と題する第五条。ただし、福祉を低い水準に合わせようとなる可能性もあるかもしれませんが。
 「療育」と題する第十七条は、「障害児」の療育についてのものです。 「選挙等における配慮」と題する第26条 「司法手続きにおける配慮等」と題する第二十七条「国際協力」と題する第二十八条 第三十条の2項、3項、第三十二条。これは、国の「障害者基本計画」について、その作成や変更の再に意見を述べることになっていた「障害者」関係の委員会の権限を拡大した部分です。これまでの「中央障害者施策推進協議会」は「障害者政策委員会」という名前になりました。権限も拡大し、基本計画の実施状況の監視、それに基づく総理大臣や関係大臣に対する勧告ができるようになっています。そして、この勧告に基づいて行った施策については、総理大臣などの大臣が政策委員会に報告しなければならないとしています。ただし、当事者の委員を過半数にすべき、という推進会議の意見は反映されず、「私たち抜きに私たちのことを決めるな」という原則は踏みにじられています。

●「障害者」の地域や社会参加は「可能な限り」でしか認めない

 しかし、これらの改善点を上回る問題点があります。推進会議の求めたような権利法とはなっていません。このことは、総合福祉法をも権利法とすべきであると打ち出している総合福祉部会にも重大な影響を与えるでしょう。
 さらに、「可能な限り」という言葉がもっとも「障害者」の生活にとって重要な部分について付けられているのです。
 「全て障害者は、可能な限り、どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと。」
(第三条二号)
 つまり、「障害者」の地域生活は「可能な買い義理」でしか実現されず、それも国などが積極的に保障するものではないのです。

 「国及び地方公共団体は、医療若しくは介護の給付又はリハビリテーションの提供を行うに当たつては、障害者が、可能な限り地域社会におけるその身近な場所においてこれらを受けられるよう必要な施策を講ずるものとするほか、その人権を十分に尊重しなければならない。」(第十四条5項)
 「国及び地方公共団体は、障害者である子どもが可能な限りその身近な場所において療育その他これに関連する支援を受けられるよう必要な施策を講じなければならない。」(第十七条)
 入所施設からの地域移行などは書かれていませんし、この条文からするとそれが進まなくても「可能な限り」やっているということになるのでしょう。まして、推進会議が求めた「精神障害者」の社会的入院の解消を全く盛り込まなかったところに、政府の姿勢を読み取るべきでしょう。そして、「精神障害者」、その家族、国連からも、日本の精神医療のあり方が人権上問題があると指摘されながら、あくまで「問題はない」と言い切る厚労省の姿勢があります。だから、「人権を十分に尊重」と言ってもその程度のことなのです。

 「国及び地方公共団体は、障害者が、その年齢及び能力に応じ、かつ、その特性を踏まえた十分な教育が受けられるようにするため、可能な限り障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配慮しつつ、教育の内容及び方法の改善及び充実を図るなど必要な施策を講じなければならない。」(第十六条)
 2月14日の推進会議に示された政府案では、「可能な限り障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配慮しつつ」という言葉はありませんでした。その意味では改善なのですが、やはり「可能な限り」なのです。しかも、2項においては、交流教育の推進が述べられているのですが、これは隔離教育を前提にしているからこその話ではないでしょうか。

 「全て障害者は、可能な限り、言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されると共に、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られること」(第三条三号)
 コミュニケーションなくして、社会参加はあり得ないのですが、それもやはり「可能な限り」とされてしまっているのです。

●「社会的障壁」を取り除くつもりはほとんどない

 基本法改定案では、「障害者」の定義を次のように記述しています。
 「障害者 身体障害、知的障害、精神障害その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であつて、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。」(第二条1号)
  このように、「障害及び社会的障壁」と記載すると、「障害」という個人の特性と「社会的障壁」という社会の側の問題が並列されることになります。
 社会モデルでは、社会参加を阻んでいるのは、主要に社会の障壁の問題となります。国連の権利条約は、このような立場にたっています。この立場は社会の側が「障害者」の権利を認めるという立場につながります。
 だから、日本の政府は、社会モデルの考え方に立つことを拒否していると思われます。
 その上で、一応は認めた「社会的障壁」についても、これを除去するつもりがほとんどないことが条文に現れます。第四条1項で、「障害者」への差別、権利利益の侵害をしてはならないとした上で、2項では次のような条文があります。
 「社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによつて前項の規定に違反することとならないよう、その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならない。」
 この定義だと国や自治体の福祉施策についても「過重」だと判断されればやらなくてもよくなってしまうのではないでしょうか。

●「可能な限り」「過重でない」とはどの程度?厚労省コメントから判ること

 24時間の介助を含めたパーソナルアシスタント制度を求める総合福祉部会側の意見について、厚労省コメントは次のように回答しています。
「財源や人材の制約を踏まえ、また、制度に係る費用を負担する国民の理解を得るためにも、一人で地域で生活を営めるような自立訓練や困ったときに対応してくれる相談支援体制の充実といった他の代替手段の活用など、様々な地域資源の活用により総合的に対応することについても検討が必要と考えられます。」 つまり、相談を受けつつも一人で暮らせるようにならないと、地域生活はできなくてもやむをえない、と言っているのです。常時介助を必要とする人など、地域で暮らすべきではない、とも受け取れる発言です。これが厚労省の「可能な限り」であり、「過重でない」負担なのです。
 もし、こんな見解が認められたら、現在長時間介助を実施している自治体にさえダメージを与え、充実させてきた介助制度が破壊されかねないと思います。
 ここでわたしが言いたいことは、「可能な限り」や「過重でない」負担という言葉を許していると、現状の福祉の水準さえ破壊されかねないということなのです。

●憲法よりも「地域主権戦略」を上におく厚労省

  総合福祉部会側は、国、都道府県、市町村の義務を記し、国については次の
ように記しています。
 国の法制度整備・充実義務、国のナショナルミニマム保障義務、地域間格差是正義務、国の財政支出義務、国の制度の谷間解消義務、国の長時間介護等保障義務
 これらはすべて、憲法25条の生存権、14条の法の元の平等、「障害者」が地域で生きる権利を保障する立場から言えば、当然認めなければならないもののはずです。しかし、厚労省コメントでは、次のように記しています。
 「国及び地方自治体の費用負担や事務のあり方については、閣議決定されている「地域主権戦略大綱」において「住民に身近な行政はできる限り地方公共団体にゆだねることを基本とし、基礎自治体が広く事務事業を担い、基礎自治体が担えない事務事業は広域自治体が担い、国は、広域自治体が担えない事務事業を担うことにより、本来果たすべき役割を重点的に担っていく」こと等の一定の方向性が示されています。
 特に、近年の福祉法制については、その実施主体を住民に身近な市町村としており、こ
の流れを踏まえた検討が必要と考えられます。」

 このように、憲法よりも「地域主権戦略」のほうを重視しているのです。「地域主権戦略会議」の議論を読むと、国の財政負担を減らすために「地域主権戦略」を行うことは明白です。したがって、このような厚労省の姿勢は、社会保障や福祉を後退させてもかまわないというものです。

●あくまで優生政策を護持しようとしている

  基本法政府案では、推進会議の提案からはなくなるはずの条文が残されています。
 「国及び地方公共団体は、障害の原因となる傷病の予防のため、必要な知識の普及、母子保健等の保健対策の強化、当該傷病の早期発見及び早期治療の推進その他必要な施策を講じなければならない。」(第二十九条2項)
 現行法では「障害の予防」となっている部分が「障害の原因となる傷病の予防となっています。しかしこれだけではもともとの優生政策を助長する内容は変わっていません。「母子保健等の保健対策の強化」という文言が残っているからです。なにしろ、出生全診断は母子保健対策として行われてきたのですから。
 優生政策の意味合いをなくすためには、こうした文言をなくすか、これまでの優生政策への反省を書き記すしかないと思います。

★具体的な運動展開を

 JDFも「今後の国会における議論等によるさらなる改正を求めるものである」とその見解で述べています。そうであるならば、そのための運動展開が必要です。「障害者」自身が怒りと危機感を表明し、社会的にその主張が伝わるような闘いが必要です。
 微力であるにしても、怒りネットはこうした運動を作って行こうと思います。
 

「第1期作業チーム報告書に対する厚生労働省からのコメント」への批判
                                   宮崎一

<厚労省が総合福祉部会の論議に批判コメントを発表>
 障がい者制度改革推進会議の総合福祉部会で、障害者自立支援法に代わる新法の骨格作りの論議が進められています。9つの作業チームに分かれて詳細な論点整理が行なわれ、1月25日に第1期作業チームの報告書がまとめられました。
新法に盛り込む諸制度の新しい方向性をまとめたもので、今後の新法策定論議は、この報告書を土台にして進められることになります。
 これに対して2月15日の総合福祉部会で、厚生労働省が「第1期作業チーム報告書に対する厚生労働省からのコメント」(以下「厚労省コメント」)なる批判文書を発表しました。第1期作業チーム報告書の方向性に対して、官僚の立場から「拒否」の姿勢を示したものといえます。総合福祉部会におけるこれからの論議に介入する政治的意図をもったものであることは明らかで、強く批判されなければいけません。

全部で10項目35ページに及ぶ文書を一通り読むと、繰り返し出されている論点がいくつかあります。それは厚労省が強調したい点でもあり、また一般論として流布されやすい言い方になっています。新しい制度を作る際に必ず出てくる「実現可能な制度にしよう」という声を使って、障害者自立支援法の骨格を残す方向に今後の論議を誘導しようとしています。その部分を中心に批判の切り口をまとめました。それぞれが全10項目のどの項目で取り上げられているかも記してあります。(10項目の一覧を、文末に記してあります)

[1] 「国民の合意(理解)が必要」論
 (本音:「国民の理解が得られないのでできない」)
     取り上げられている項目=5項目
        1-① 「法の理念・目的」チームの「法の理念・目的」
1-② 「法の理念・目的」チームの「国・地方自治体の義務」
        2   「障害の範囲」チーム
        4ー① 「施設体系~訪問系」チームの「パーソナルアシスタンス」
        4-② 「施設体系~訪問系」チームの「移動支援」

 この「国民の合意」論は、5項目のうち「2」を除く4項目が、次の「財源がない」論と重なっています。“財源がない中で支出増につながるので、国民の理解が得られない”というわけです。「2」は、“公平性・透明性の面から国民の合意が必要”ということです。
 この5項目は、「権利の主体としての障害者」「国家の義務の規定」「権利保障の対象者の拡大」「障害者の自己決定保障」「義務的経費の拡大」と、すべて新しい制度の根幹を規定する部分です。厚労省は、それを正面から否定することができないので、代わって「国民の合意」論を持ち出してきているわけです。 国民の理解が得られなくても、「障害者」の地域生活を保障する新しい制度は作らなければいけないという立場を厚労省にとらせなければいけません。
 住民の反対のためにグループホームの建設が中止に追い込まれるという事例が、全国であります。通常は家を建てる時に近所の人達の合意をとることなどないのに、「障害者」が住む場合は説明を求められて、あげくのはてに拒否される。そのような差別的な状況を打破して地域生活を保障させるのが、新法の役割です。
国民の納得があろうがなかろうが、行政はすべての「障害者」に地域生活を保障する義務があるし、納得しない国民がいるのであれば、逆にそれを説得するのが国と自治体の仕事であること。新法は「国民の合意」のための法律ではなく「障害者」の権利を保障するためのものであることを、あらためて認めさせなくてはいけません。
 
[2]  「財源の確保が必要」論  (本音:「財源がないのでできない」)
     取り上げられている項目=4項目
        1-① 「法の理念・目的」チームの「法の理念・目的」
1-② 「法の理念・目的」チームの「国・地方自治体の義務」
        4ー① 「施設体系~訪問系」チームの「パーソナルアシスタンス」
        4-② 「施設体系~訪問系」チームの「移動支援」

 本当に財源がないのかという問題が、まずあります。2011年度国家予算のうち、障害福祉サービス(介護給付費・訓練等給付費)と地域生活支援事業費を合わせた額は6,787億円。対して、軍事費のうち基地対策等推進費だけで4,337億円で、うち1,858億円は在日米軍駐留経費負担です。米軍関係費を回すだけで、「障害者」関係予算を3割近く増やすことができます。“軍事費を削って社会保障費へ回せ”という批判が、まずされるべきでしょう。
合わせて、もう一つの論点として「限られた財源の中で、さらに『障害者』関連予算が切り縮められている」という、いわば配分率の面からの批判があります。
 GDPと「障害者」関係予算支出の対比の数字があります(2007年度)。日本の公的社会支出はGDP比18.6%でOECD諸国平均の20.5%とそんなに差はありません。
ところが、これを「障害者」関連の公的社会支出に限ると、日本はGDP比0.7%でOECD諸国平均の2.3%の3分の1になってしまいます。「障害者」関連施策を日本がいかに軽視しているかの表れでしょう。

[3] 「地域主権重視=補助金一般財源化の流れに逆行する」論
           取り上げられている項目=5項目
                1-② 「法の理念・目的」チームの「国・地方自治体の義務」
              3-① 「選択と決定・相談支援」チームの「相談支援」
         4-② 「施設体系~訪問系」チームの「移動支援」
                 5   「施設体系~日中活動」チーム
                 6   「施設体系~地域生活支援事業」チーム

 ひもつき補助金を縮小して地方が自由に施策を組み立てて予算を使えるようにする(一般財源化)という理屈は、標準的な生活保障がどの地域でも確立しているという前提があって成り立つものです。ところが、日本の場合はそうではないわけです。全国的に貧弱なレベルでしかないところで、それなりの問題意識を持っている自治体がある程度支出を増やしていて、それが「地域格差」につながっていること。この状況で一般財源化したら地域格差がますます広がってしまいます。
 地域格差の責任は国の貧弱な社会保障施策にあることを、ずっと推進会議は指摘してきました。5つという多くの項目でこの「地域主権重視」論が展開されているというのは、「障害者」施策に対する国家責任を何としても回避したいという、厚労省の強い願望の表れです。
 まずは国の財政責任で必要な支援の量をすべての地域で保障させる(つまり社会保障分野では「ひもつき補助金」が必要)ことが求められています。「どこの地域で暮らしていても必要かつ標準的な生活ができる体制」を作らせるのが、当面の課題です。

[4] 一般事業所(企業)の参入制限論
           取り上げられている項目=2項目
                3-① 「選択と決定・相談支援」チームの「相談支援」
4ー① 「施設体系~訪問系」チームの「パーソナルアシスタンス」

 ここは「エンパワメント支援(ピアサポート)」「パーソナルアシスタンス」のことを言っています。この両事業について、利用者主体のサービス提供組織が中心になって担うことを、作業チームは想定しています。それに対して厚労省は「事業者の指定権限は市町村にある」「(利用者主体でない)事業者が新たに参入することを規制することになる」と、これを回避しようとしています。
 「4-①」のパーソナルアシスタンスの項で、作業チームは導入の必要性を「①利用者の主導②個別の関係性③包括性と継続性」という3点にまとめています。介助者を自分で選べないのでは、自分の生活を自分で組み立てるという人間として最低限の選択権さえ奪われてきたのと同じで、それは制度として保障されなければいけないということがこの3点に含まれています。
 それを否定する厚労省コメントは、「障害者」から人間としての最低限の選択権を奪うものです。さらに、新法の基本理念が「障害者」の自己決定やセルフマネジメントにあることを考えれば、参入が制限されるのはむしろ当然と考えるべきでしょう。
 これは、社会保障分野を営利企業に開放して資本の金儲けの場にしようという国の政策にブレーキをかけることになります。その面からも厚労省としては認めたくないのでしょう。さらに、「障害者」主体の事業所が強化されることは、「障害者」が今以上に団結して制度の改善を要求することにもつながり、そのことへの警戒感もあるでしょう。

[5] 「事業所・学校の合理的配慮を踏まえる必要」論
      (本音:「事業所や学校に過度の負担をかけるのでできない」)
           取り上げられている項目=2項目
        4ー① 「施設体系~訪問系」チームの「パーソナルアシスタンス」
        4-② 「施設体系~訪問系」チームの「移動支援」

 通勤・通学・入院時等のヘルパー利用制限をなくすとともに、雇用分野・教育分野・介護保険から支援財源を回すべきという作業チームの方向性に対して、厚労省は「それぞれの場面で誰がどこまで責任を持つのか」「事業所・学校による合理的配慮の範囲が決まってから検討」という理由で回避しようとしています。
 厚労省のいう「それぞれの場面において誰がどこまで責任を有するのか」「どの分野から財源を出すのか」というのは、国や自治体の内部で調整するべきことです。一方、「障害者」の側が求めているのは、日常生活支援(介助)が境目無く連続的に保障されることで、職場や学校に通えるようになったり安心して入院できるようになることです。この2つはまったく次元が違うものです。それを意図的に混同させています。パーソナルアシスタンス制度創設や移動支援が拡大することによって、重度「障害者」が職場や学校に通えるようになることを避けたいというのが、厚労省の本音でしょう。
 また、「合理的配慮=過度の負担をかけない」論の扱いにもおかしさがあります。たとえば、職場就労での合理的配慮では企業に過度の負担をかけない範囲でということになっています。経営難で倒産の危機にさらされている中小・零細企業が、「障害者」雇用でさらに経営が苦しくなるのはおかしいのは確かです。その場合は、賃金補填等で国や自治体が支援しなければいけないのです。合理的配慮は、国と自治体こそが制度的・財政的に責任をもって支えなければいけない。
行政の支出抑制を前提とする日本の合理的配慮の論議は、このことを意図的にはずしています。その点からも批判されなければなりません。

[6] 「全国一律な透明・公平な制度」論
           (本音:「透明・公平な制度を作るためには、全国共通の制度にして国が決定権を持たなくてはならない。地域や『障害者』に基本的な決定権は与えられない」)
           取り上げられている項目=2項目
        2 「障害の範囲」チーム
       3-② 「選択と決定・相談支援」チームの「支給決定」

 作業チームの論議では、制度の対象者を「障害と社会的障壁の相互作用で生活に制限を受ける者」とし、支援の必要な人をなるべく広く対象にしようとしています。さらに、制度利用にあたっては、「障害者」本人の自己決定権を基本にした支給決定方法(本人と自治体の「協議・調整」)にしようとしています。それに対抗する形で厚労省が出してきたのが、この「全国一律な透明・公平な制度」論です。
 “支援が必要か否か”という曖昧な基準や、当事者と自治体の協議による支給決定方法では、厚労省のコントロールが利かなくなります。そのことを強く牽制しているコメントです。そしてその裏には、「障害者」施策を介護保険に統合しようという意図を感じ取れます。専門職や各「障害」当事者団体による認定でさえ「全国統一ではない」ことをもって否定していることは、全国一律の介護保険への統合を厚労省がなおも狙っていることの表れです。
 この部分は「障害者」にとっても生活の根幹に関わる部分で、新しい制度の根幹に据えなければいけない部分です。
 たとえば、「知的障害者」と「健常者」の境目は限りなく曖昧です。手っ取り早い指標は知能指数(IQ)ですが、IQが高くても多くの支援が必要な人もいれば逆にIQが低くてもそれほどでもない人もいるというのは、よく言われることです。
必要な支援の内容と量は個人によって違うことを前提にして、認定は地域に任せることを明確にするべきです。
 また支給決定の部分では、例として横浜市の利用者が11,730人いることをあげて「協議・調整」の支給決定方法が困難といっています。しかし、もしセルフマネジメントを基本にするのなら、「話し合い」にそんなに時間をかける必要はありません。出されたサービス利用計画で大きな疑問があるものだけ丁寧な協議・調整をすればよいだけです。厚労省は、行政の職員が納得しなければ支給決定をしないというイメージでいるようで、ここにも「決定権は国(行政)が握りたい」という意図が透けて見えます。
 それに、11,730人全員の生活の様子が毎年毎年大きく変わるということはまず考えられないわけですから、一度支給決定をすれば二度目以降はそんなに時間はかからないのではと思います。

[8] 事業体系
     取り上げられている項目  5「施設体系~日中活動」チーム

 作業チームが、日中活動を「働くこと」「趣味」「居場所」のいろいろな要素を含んだ、「総合的な居場所」としていることを全面否定。相変わらず「訓練系」「日中活動系」に分離し、訓練系事業所での効率を追求するなど、労働能力を基準にした輪切り体制を維持しようとしていることが批判されなければなりません。
 そもそも人は、生活費を得るだけではなく人間関係を作ることも含めて、働くことで「社会に参加している」という実感を得ているわけです。なぜ「障害者」だけが、毎日「訓練」をしなければいけないのか?一人の人間として見ていない証拠です。それがこの事業体系の扱いに表れています。

[9]  「コミュニケーション支援」「移動支援」についての問題のすりかえ
      取り上げられている項目:
  6 「施設体系~地域生活支援事業」チーム

 「コミュニケーション支援」「移動支援」という、人間として最低限必要なものを国の義務的経費にするべきという作業チーム報告に対して、「柔軟性のある支援」を主張。複数人数での利用など柔軟な利用ができるようにするのは当然なされるべきですが、それと「国の義務的経費化」は別次元のことで、問題がすり替えられています。
 これは、「事業のあり方」の次元ではなく「コミュニケーション」「移動」という、人として最低限必要なことさえ認めないということであり、「障害者」の地域生活そのものを軽視するものとして批判されるべきです。

[10] 精神「障害者」をめぐって
     取り上げられている項目  7「医療」チーム

 厚労省「精神保健福祉法等で人権確保に配慮した規を設けている」
      ←強制入院や身体拘束が多い実態を作業チームが課題にしていること自体を否定しています。
 厚労省「医療保護入院者12万人すべて(の入院時の同意)を保護者ではなく)公的機関で担うことは、人数的に無理」
      ←12万人もの強制入院者を産み出した国自身の責任を回避しています。

[11] 行政責任の回避
       取り上げられている項目:
1-② 「法の理念・目的」チームの「国・地方自治体の義務」

 作業チームは、
市町村の説明責任と申請妨害に対する制裁事業所整備が国・公共団体にあること
国民への広報・啓蒙の努力義務の3点について、国や公共団体に責任があることを明記するとしています。しかし厚労省は、以下のような理屈でこれを回避しようとしています。
他の福祉制度に同様に規定がないことと、国家賠償法等の既存制度との関係提供体制の確保は、計画的に整備(=財政状況で無理ならできなくても仕方ない)同趣旨は障害者基本法にすでに定められている
[12] 労働者の労働条件保障の回避
       取り上げられている項目:
 1-② 「法の理念・目的」チームの「国・地方自治体の義務」

 作業チームでは、「障害者」の生活保障には事業に携る労働者の人件費を適性水準以上にすることが必要としています。しかし、厚労省は労働条件の規定は新法にはなじまないとして、これを回避しようとしています。
 厚労省の本音は、事業所が安上がりの非常勤労働者中心でしか運営できない現
行の体制維持です。

[13] 資格制度
取り上げられている項目
                4ー① 「施設体系~訪問系」チームの「パーソナルアシスタンス」

 作業チームでは、介助者の資格取得について「入り口を幅広く取り」その上でOJT(実地研修中心の研修制度)を基本にするとしています。実質的に当該の「障害者」が介助者の研修に関われる仕組みにしていこうということですが、厚労省は「従事者の資質を、福祉サービス体系全体の中で整合性がとれるものにする必要がある」として、これを回避しようとしています。


<「厚労省コメント」全10項目一覧>
1-① 「法の理念・目的」チームの「法の理念・目的」
1-② 「法の理念・目的」チームの「国・地方自治体の義務」
2   「障害の範囲」チーム
3-① 「選択と決定・相談支援」チームの「相談支援」
3-② 「選択と決定・相談支援」チームの「支給決定」
4ー① 「施設体系~訪問系」チームの「パーソナルアシスタンス」
4-② 「施設体系~訪問系」チームの「移動支援」
5   「施設体系~日中活動」チーム
6   「施設体系~地域生活支援事業」チーム
7   「医療」チーム


以上

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2011年6月29日 (水)

●障害者基本法をめぐって

  4月22日に政府案が国会に上程されてから、民主、自民、公明の3党が水面下で折衝を行っていました。当初の公明党の修正案では、法案に前文を付けること、差別の定義を入れること、合理的配慮の定義を入れること、5箇所にある「可能な限り」を削除すること、多くの「精神障害者」が入院を余儀なくされている状況を改善するための検討、などが入っていました。しかし、これらは折衝の過程で消されてしまいます。
 6月15日、衆院内閣委員会では、共産党が6箇所の「可能な限り」を削除する修正案を提出しますが、これは否決。民主、自民、公明の修正案が可決されます。
  政府案と比べると、「防災及び防犯」、「消費者としての障害者の保護」、3年後の法律の見直しなどの条文が入りました。しかし、5箇所の「可能な限り」はそのまま維持され、新たに教育の部分に「児童及び生徒並びにその保護者に対し十分な情報の提供を行うとともに、可能な限りその意向を尊重しなければならない」という文章を入れたため、「可能な限り」は6箇所となりました。

 怒りネットは、6月8日に、衆院内閣委員会関係者に働きかけを行うと共に、6月15日には、ビラまきと内閣委員会の傍聴を行いました。きょうされんなど、共産党系の団体が傍聴に来ていました。
 審議を聞く中で、やはり多くの問題が明らかになったと思います。

・「可能な限り」について
 どこで誰と生活するかの選択、地域社会での生活、医療・介護・リハビリ・療育を身近な場所で受けること、これらが「可能な限り」となっていますが、そのことについてかの内閣府の村木厚子氏は、「例えば、障害が重度であって必要な設備の整った施設で適切な医療的ケアを受けなければならない方、こういった方々は必ずしもその身近な場所では適切な支援を受けられない場合もあり得るということも考えまして、「可能な限り」という表現を入れた」と述べました。しかしこの言葉は、医療という言葉が入るかどうかは別にして、「障害者」隔離を正当化するときに常に使われてきた表現ではないでしょうか。
  また、コミュニケーションや情報取得の方法の選択も「可能な限り」となっています。村木氏は、「企業、個人等を含む社会を構成するあらゆる主体において、必ずしも常にあらゆる障害者の意思疎通手段の選択の機会を確保することができるというわけではないということも考慮をいたしまして」と言います。国や自治体は保障する、などとも言いません。要するに、改善を図るための施策を進める姿勢はありません。
 共に学ぶ教育を「可能な限り」としていることについては、「例えば聴覚障害のある児童生徒など、本人にとって最も適切な言語、コミュニケーションを習得するために、本人、保護者が特別支援学校や特別支援学級等における教育を受けることを希望する場合などもあることを考えまして、「可能な限り」というふうに規定をした」と言います。
 なお、この答えは、民主党の山崎議員の質問に答えたものでしたが、なぜか、官僚の村木氏が答えているのです。その後、部分的には蓮舫氏も同じような答えをしてはいますが、「可能な限り」を書き込むことは、官僚の意志なのではないかと思いました。

・蓮舫のデマ
 「推進会議の意見を十分に聞いて改正案の検討は行ってきておりまして、改正案にも推進会議の意見を十分に反映させることができたと私どもは考えているところでございます」

・教育について
 3党修正案で、十六条の2項に、生徒とその保護者の意見の「可能な限り」の尊重ということが入ったわけですが、この尊重の目的として、「前項の目的を達成するため、」という言葉が付けられています。この「「前項の目的」とは何かということで、西村智奈美議員は次のように説明しました。
 「新第十六条第二項においては、情報の提供及び意向の尊重についてと規定しております。この文言は、第一項における「障害者が、その年齢及び能力に応じ、かつ、その特性を踏まえた十分な教育が受けられるようにするため、」という部分を指しておりまして、それ以降の部分にはかかっておりません。」
 「それ以降」とは何か、と言えば、「障害児」と「健常児」が「可能な限り」で共に教育を受けられるように配慮するということです。
 つまり、本人や保護者の意見の尊重は、十分な教育のためであり、共に学ぶための配慮ではないのです。
 また、文部科学省の官僚は次のように発言します。
-----------------------
○?久政府参考人
 文部科学省におきましては、平成十九年以降、障害のある子供の就学先の決定に際しまして、保護者の意見聴取を義務づける等の取り組みを行ってきているところでございます。一方、今、西村委員の方から、修正提案者の方からお話ありましたように、障害者の権利に関する条約の理念を踏まえた特別支援教育のあり方について文部科学省といたしましても検討を行ってきましたけれども、中央教育審議会の特別支援教育の在り方に関する特別委員会の論点整理、昨年十二月でございますが、それにおきましては、就学先の決定のあり方につきましては、障害の状態、本人の教育的ニーズ、本人、保護者の意見等を踏まえた総合的な観点から決定する仕組みとすること、その際、本人、保護者に対し十分情報提供をしつつ、本人、保護者の意見を最大限尊重し合意形成を行うことを原則とし、最終的には市町村教育委員会が決定する仕組みとすること、このような仕組みに変えていくため、速やかに関係する法令改正等を行い、体制を整備していくべきなどの提言がされているところでございます。

文部科学省といたしましては、障害者基本法の改正や中央教育審議会の議論等も踏まえながら、障害のある子供の就学先決定の仕組みについて速やかに検討してまいりたいと考えてございます。 
-----------------------

 「就学先の決定のあり方につきましては、障害の状態、本人の教育的ニーズ、本人、保護者の意見等を踏まえた総合的な観点」と本人や保護者の意見は、あくまで検討資料の一つに過ぎないのです。この点では、議員である文部科学省の政務官は、意見の尊重を強調してはいるのですが。
 また「最終的には市町村教育委員会が決定する仕組」なのです。

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総合福祉部会 第二期作業チーム報告

障害連事務局FAXレター No.216

第2期作業チーム報告する

―ほとんど否定的、厚労省コメント、第15回総合福祉部会―



6月23日(木)第15回総合福祉部会が行われた。この日は第2期作業チームの報告であった。



はじめに選択と決定・相談の作業チームの報告を茨木座長が行った。「これまでの障害程度区分をなくし、本人計画に基づいた決定のプロセスにしていき、ガイドラインを作成し、市町村と折り合いがつかない場合は、そのガイドラインに基づいて、協議・調整していく」とした。また、それでも結論が出ない場合はこれからつくられるであろう差別禁止法制等を利用して、解決がはかられる仕組みが求められる、とした。



続いて、地域移行チームの報告が大久保座長から行われた。「単に空間的なものを指すのではなく、本人が選んで住まいを得る、ことが地域移行の本質だ」とした。そして、地域基盤の充実が何よりも求められる、とした。

それに対して、山本委員などからは「隔離収容政策そのものが問題であり、それを止めさせることが重要」と発言した。



3番目には地域生活の資源整備チームの報告を森座長が行った。「地域自立支援協議会の活性化や、24時間介護サービスの支援体制の確立、コミュニケーションや移動支援などのシームレスが支援の必要性」を発言した。

強度行動障害について質問があり、竹端委員から「シームレスな支援にもちろん含まれるもの」と答えた。



次に利用者負担チームの報告を田中座長が行った。「障害から発生する費用は無料とすべき。という考えでまとまった。障害から発生する費用とはコミュニケーション、相談支援などなども含まれる」とした。質疑では「高齢者との関連はどうなのか」という発言があり、同じグループの小野委員から介護保険制度導入を前提としない、介護保険優先を原則としない、という視点でまとめた、とした。



次に、報酬や人材確保チームから藤岡座長が報告した。

「福祉職員の給与を国家公務員並みとし、利用者個別報酬と事業所運営報酬の2本立てとし、日割と月割をミックスさせる」とした。



つづいて合同作業チームの報告に移り、就労チームの松井座長が報告し「賃金補てん制度と所得保障、あるいは合理的配慮など、今後の検討課題が多い」とした。


医療チームから堂本座長が報告をし「障害種別を問わず、どんなに障害が重くても医療が受けられるようにすべき」だとした。さらに費用負担については両論併記となった、とした。

精神科病床の在り方について、総合病院に基本置くかについては様々な意見が出された。



障害児支援チームから大谷座長が報告した。「基本的には一般施策の中で行うべきであるが、障害固有の問題については、それとは別に施策を作っていく必要がある。オンブズパーソン制度導入も必要」とした。



続いて第2期作業グループの報告についての厚労省としてのコメントを中島企画課長がした。「財源問題」「公平性」「他分野との整合性」「国民的議論の必要性」を強調していた。

それに対して「福祉部会と厚労省の溝が大きい」という指摘や「費用負担についての分析は的を得ていない」や「この部会が出来た経過を厚労省はきちんと認識しているのか、やる気があるのか」など鋭い意見が出された。時間がなく、厚労省からの回答はなかった。



施行調査についての報告や本調査の進め方について、責任者の平野委員から「施行調査は郵送だったため、回収率が著しく低かった。そのため本調査では、広報を強めると共に訪問して調査票を置いていくようにしたい」との提案があった。

しかし、拒否したい場合などの相談窓口等をめぐって、詰め切ることができず、保留となった。



最後に、8月30日までに骨格提言を作って行くことが佐藤部会長から明らかにされたが、「9月以降は厚労省任せにしてしまうのか」などの意見が出された。これに対して、東室長は「そのような考えは持っていない。具体的な進め方については検討したい」とした。



それにしても厚労省のコメントは、作業グループの考え方と隔たりが大きい。障害者制度改革・新法づくりの原点は、長妻前厚労大臣の「自立支援法廃止発言」であったことを忘れないでほしい。



次回は7月26日(火)

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2011年6月26日 (日)

国会の動き等

障害者基本法をめぐる重要な時期に事務局を長い間留守にしてしまい申し訳ありませんでした。詳細については、おって「共生舎」ホームぺージの方で公開する予定です。先週からは今年2回目の沖縄訪問をしていました。こちらについてはまた機会があれば報告していきます。

参議院内閣委員会の議題の中で、障害者基本法修正案がかけられるのは、日程としては、今週の木曜日か来週の火曜日となるだろうという見通しです。正式な内閣委員会の審議の日程は、火曜日(28日)に決まるという情報があります。

何らかの行動を組みたいところです。

また、総合福祉部会の方での動きもあります。これについては公開できる情報を検討中です。

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2011年6月 1日 (水)

怒りネット通信46号

遅くなりましたがお届けします。

●障害者の地域社会で暮らす権利をかちとるぞ!

●民主、自民、公明、官僚の一体となった障害者制度つぶしをゆるさないぞ!

もくじ
・「障害者」制度改革をめぐる攻防―10年秋から現在   P2
・10・29日比谷に1万人               P13







 
「障害者」制度改革をめぐる攻防ー10年秋から現在

                          

 古賀 典夫

 昨年11月29日、日比谷集会から今日まで、「障害者自立支援法改定法」をめぐる闘い、「障害者制度改革推進会議」(以下、推進会議)の意見を大きく裏切る今年2月の政府の姿勢、3月11日の東日本大震災、そして、4月22日、障害者基本法改定案の国会上程など、さまざまな動きがありました。これらの動きを捉えることに汲々としており、まとめて文章を書くことができず、つい『怒りネット通信』の発行が遅れてしまいました。申し訳ありません。
 大震災と原発事故という中で、日本社会はこれからどうすべきなのか、ということがすべての人の課題となる中で、「障害者制度改革」もますます重大な時期を迎えようとしています。5月の連休明けには、障害者基本法改定案の国会審議が始まるかもしれません。8月ないしは9月には、推進会議の総合福祉部会の意見のとりまとめが行われ、その後具体的に法文のとりまとめが進むことになります。
 障害者基本法改定案は、推進会議の第1次意見、第2次意見を大きく下回るものです。これと同じことが総合福祉法で起こるとしたら、「自立支援法」と変わらないものとなってしまうのではないか、との危機感を感じます。今こそ、運動そのものが問われていると思います。
 まずこの原稿では、この間の動きをまとめてみたいと思います。

★「自立支援法改定法案」との闘い

●10月29日の国会デモは、その後の事態を予見させた

 1万人の結集に高揚した日比谷の集会後、わたしたちは国会への請願デモに加わりました。気合のこもったシュプレヒコールをとどろかせながら、一路国会に向かいました。請願デモに対しては、これを支持する国会議員が衆議院議員面会所と参議院議員面会所で出迎えてくれるのが通例です。
 06年から続く請願デモに対する議員の出迎え状況について、この日、明らかな変化がありました。出迎える議員が少ない。いや、民主党議員がいないのです。
出迎えたのは、共産党と社民党だけなのです。
 通常国会で廃案となった「自立支援方改定案」が再び民主党も加わって上程されることをわたしたちは予感しました。

●「自立支援法改定法案」賛成を表明する9団体声明

 11月2日に、以下の9団体が「自立支援法改定法案」に賛成する声明を挙げました。
 全日本手をつなぐ育成会、障害のある人と援助者でつくる日本グループホーム学会、全国地域生活支援ネットワーク、日本発達障害福祉連盟、日本知的障害者福祉協会、全国重症心身障害児(者)を守る会、日本発達障害ネットワーク、日本重症児福祉協会、全国児童発達支援協議会

 このうち半数ぐらいは、育成会と近い団体です。別の観点から注目されるのは、05年に「自立支援法」の成立推進に名を連ねた「身体障害者」関係の団体や「精神障害者」の家族の団体はここに加わっていない、ということです。
 にもかかわらず、民主党内部では、この9団体が「障害者」の多数の声を代表しているかのようなデマが流れていたようです。「障害者」関係のことに精通していると見られてきた石毛衆議院議員の事務所からさえそんな話が出てきたのです。誰が流したデマか分かりませんが、議員一人一人がその不明を恥じてほしいものです。

●「自立支援法改定法案」再上程

 11月12日、衆議院厚生労働委員会の理事懇談会で、民主党から17日の委員会で「自立支援法改定法案」を採決したい、との意向が示されました。自民党などとはすでに水面下で打ち合わせができていたようです。この時点では、まだ法案の文面さえ厚生労働委員には配られていませんでした。
 これに対して、社民党と共産党が反対して、16日の理事懇談会で改めて検討することになりました。
 怒りネットは15日に、厚労委員への働きかけを行いました。議員事務所を回ると、改定案に反対するファックスが各地から届いているのが分かりました。難病の会の山本さんにも出会いました。何しろ、改定法案では、難病の人は全く対象とされていません。そして、日比谷の大フォーラム実行委員会も17日には国会前の行動を決めました。しかし、わたしたちとは反対に育成会が賛成陳情を行っているのでした。
 この日の午後3時過ぎ辺りから、厚労委員に法案が配られ始めました。内容は、通常国会に出されたものと同じですが、厚さ3.5センチ、11万2880文字というものです。改定法案は、現行法と読み比べなければ分からず、この法案について、いえば、「自立支援法」だけでなく、児童福祉法、精神保健福祉法など、関連して改定される法律を多く含んでいます。またも、ほとんどの委員は読まずに採決することが予想されます。ある自民党議員の秘書は、通常国会の際の採決について、ほとんど読まないまま採決したことを認めていました。
 
 それにしても、通常国会で衆議院での採決が行われて以降、6月7日には推進会議が第1次意見を発表し、総合福祉部会が「障がい者総合福祉法(仮称)の制定以前に早急に対応を要する課題」を発表しています。また、民主党は、41団体からのヒアリングを行ったと言います。それにもかかわらず、一言一句変わらない法案を出してくるということは、「障害者」の声など取るに足らないものとして扱っているということなのではないでしょうか。
 そして、今回もほかの法案との取引であることがマスコミでも報じられています。政府提出の国民年金法の改定案を成立させる代わりに、自民党は「自立支援法改定法案」の成立を条件としたと言うのです。

 16日、衆院厚労委の理事懇談会は、17日の採決を決めてしまいます。この採決に対して質疑は行われず、希望する党が発言するだけで、30分以内に採決というひどいものです。
 17日午後1時から大フォーラム実行委員会の集会が、衆議院第2議員会館前で開かれました。怒りネットは、午前中から兵庫の高見さん、岩崎さんも参加して、議員への働きかけを行いました。そして、30人で大フォーラムの集会に合流しました。厚労委員会では3時過ぎからこの法案が議題となり、共産党の高橋さんと社民党の阿部さんが反対の発言を行いました。傍聴席からは、このお二人の発言を支持する声が上がります。しかし、3時25分、傍聴席からの怒号の中採決が強行されます。高橋さん、阿部さん以外はすべて賛成にまわりました。
 採決後、意味不明の付帯決議が上げられます。
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障害保健福祉の推進に関する件(案)
政府は、今後の障害保健福祉施策の実施に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

一平成二十五年八月までの実施を目指して、障がい者制度改革推進本部等における検討を踏まえて、障害保健福祉施策を見直すなど検討すること。

二指定特定相談支援事業者がサービス等利用計画案を作成する際に、障害者等の希望等を踏まえて作成するよう努めるようにすること。
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 一は、総合福祉法のことを言っているようですが、あくまで検討するにすぎません。二は、改定法の中身として、市区町村の支給決定の前に利用者側が作成させられる利用計画案のことを言っているようです。「指定特定相談支援事業者」にこの作成を頼んだ場合、計画案が訪問系の国庫負担基準以内に押さえ込まれてしまうのではないか、との批判を意識したものと思われます。しかし、「障害者等の希望等を踏まえ」るとなると、何を踏まえるのでしょうか?

 大フォーラムは、抗議集会を行い、兵庫や広島からの参加者も含め400人の怒りの声が響きます。そして、翌日の本会議を初めとしてとことん闘いぬくことが確認されました。
 18日12時47分、衆議院本会議は一切の質疑も発言もなくこの法案を可決してしまいます。大フォーラムは150人の結集でこれに抗議し、参議院での闘いを確認しました。

●参議院での闘い

 参院厚労委の状況は、最短では25日に「自立支援法改定法案」がかけられるのではないか、との予測がありました。24日の理事懇談会で、この日程が決められることになっています。そこで、大フォーラム実行委員会では、24日、25日、26日の連続行動を呼びかけました。
 これに先立つ21日には、怒りネットの茨城の人たちを中心に「地域でいきる権利かその否定か-私たちの生活を決めるのは誰か ~「障害者」の闘いは今~」というテーマで講座を開き、大フォーラム実行委員長の太田さんに講演していただきました。
 大フォーラム実行委員会の闘いは、上述した三日間に加え、29日、30日、1日、2日と続きました。毎回200人から500人の人々が結集し、議員事務所への働きかけと参院会館前での集会を続けました。参院の議員定数は242人です。それを上回る人たちが参院会館のすべての事務所を回りつくすのです。怒りネットも毎回一つのフロアーを担当しました。参加者も、関西、広島、東北や北海道など各地から結集されていました。怒りネット関西の人たちも、この間2度にわたって参加しました。
 参院では補正予算の審議が続いていました。また、自民党が問責決議案を上げる関係で、自民党の国会対策関係者からは、党員に一切の委員会審議に応じるな、との指示が出ていました。そんな関係もあり、25日、30日、12月2日の厚労委は開かれませんでした。他方、自民党の厚労委員からは、委員会を開きたいという働きかけが党の執行部に対して行われていたようです。
 大フォーラム実行委員会が参院会館内で会場を確保するのは、福島みずほ事務所に頼んでいました。福島さん自身、改定法案の成立を阻止するために、いろいろな働きかけを行ってくれていたようです。共産党の田村智子議員と共に、厚生労働委員長や民主党の参議院議員会長の所に申し入れもしてくれました。初代の「障害者制度改革推進会議」の担当大臣であった福島さんは、今では大フォーラム実行委員会の担当議員という感じでした。
 他方、育成会や知的障害者福祉協会などは、ファックスを含めた法案成立推進陳情を行ってきました。しかし、陳情者の数やファックスの量では明らかに反対派が圧倒していました。そして、育成会の地方組織からも、たとえば「東久留米市手をつなぐ親の会」、「吹田市手をつなぐ親の会」などが改定法案の廃案を地域のほかの団体と共に要請するに至ります。
 
 ところが、12月1日の夜になって、民主党と自民党の国会対策関係者の間で、会期末処理で合意します。民主党が成立させたい能力開発機構関連法案と国民年金法改正法案を継続審議とすることを条件に、自立支援法を採決するということがそこで決められました。そして、2日午後の厚労委の理事懇談会で、3日午前9時10分から厚労委を開き、そこで「自立支援法改定法案」の質疑を行い採決することが決められてしまったのです。そして、12時からの本会議で採決するという日程までが決められました。こんなことは会期末としては異例中の異例です。この戦いへの参加者は憤りました。
 3日朝、強い雨が降りしきる中、大フォーラム実行委員会の集合時間午前8時には、多
くの仲間が続々と結集してきます。怒りネット関西の京都の仲間も来てくれました。多くの人が傍聴に入り、ほかの人は参院の行動で厚労委の様子をテレビで見つめました。
 反対質問を田村議員と福島議員が行います。前日の理事懇談会では、この二人が闘って、15分ずつの質問時間を確保しました。
 田村議員は、厚労委の運営に抗議すると共に、改定法案が大きな制度変更を含んでおり、これが本当につなぎ法案なのか、と批判します。特に、「障害児」の関係施設については、「障害」種別をなくして一元化し、この福祉制度の実施主体も都道府県から市町村に移行するという児童福祉法の大きな改変点を指摘しました。
 福島議員は、「障害者制度改革推進会議」を無視するやり方に激しく抗議します。「でたらめなんですよ。つまり、障がい者制度改革推進会議を、政権挙げてこの世の中で障害者政策を変えるとやっていて、総合福祉部会もやっているんですよ。たくさんの障害者が入っている。そこの意見を正式に一度も聴かなければ、一度も説明もしなければ、一度も協議をしてないんですよ。・・・このようなやり方そのものについて強く抗議をいたします。」
 この二人が重ねて反対意見を表明する一方、みんなの党の川田龍平議員が賛成意見を述べます。彼個人としては、この法案に反対したかったようです。みんなの党にも働きかけたそうですが、反対するとはならなかった。そこで、提案者や厚労大臣に答弁を求め、総合福祉法への足場を固めたい、との方向を模索していたようです。しかし、結果としては、賛成意見を述べる状況になってしまった。
「自立支援法」の廃止ということについては、語気強く語ってはいたのですが、もたらした結果は、彼も賛成するのだから問題はないという雰囲気作りに一役かってしまうことになったのではないでしょうか。
 そう言えば、議員への働きかけをする中で、党の上層部が決めてしまったのだからどうしようもない、との話をいくつか聞きました。たとえば、民主党の障害者プロジェクトチームの谷議員の秘書の方は、ヒアリングした団体の中で賛成意見が決して多くはなかったことを認め、次のように述べました。「党全体との関係があって、わたしたちの上の国会対策関係とのこともあり、なかなか思うようにはいかない。わたしたちは意見も言ったし、反対もしたけど、そうはいかなかった。確かに、説明責任を果たしていない、と言われればそのとおりです。ヒアリングをした41団体の人たちに対しては、わたしたちは赤っ恥をかいてますよ」

厚労委の採決では、田村さんと福島さんを除いて賛成。この採決に抗議して怒りネットの仲間が強制的に退場させられました。
 本会議では、共産党と社民党、そして無所属の糸数慶子さんが反対しました。
また、6月に涙を流して党の中でも反対していくことを語った金子恵美さんは保留しました。上述した国会の状況からすると、この保留は勇気ある行動だったと思います。
 そして、大フォーラム実行委員会は抗議の集会を開き、300名が結集しました。

 この秋の闘いに参加された方々は本当にみんな必死でがんばったと思います。
とりわけ、きょうされんの方々のがんばりと結集力に支えられたところが大きかったと思います。しかし、6月のように2000人を超えるような結集が実現できませんでした。怒りネットからの参加者数とDPIの参加者数がたいして変わらないというのも不思議な感じをうけました。

★障害者基本法改定案をめぐって

 推進会議は昨年12月17日に、第2次意見を発表しました。これは主要に障害者基本法の改善のための意見です。内容としては、第1次意見よりもさらに重要な記載が行われています。たとえば、「現行の精神保健福祉法及び医療観察法については、その廃止を含め抜本的に見直」すことの必要性が述べられています。
基本法については、「障害者」の権利法としていく方向がうちだされました。
 この第2次意見の内容を条文の形にまとめ上げたのが日弁連の「障がいのある人の権利と施策に関する基本法改正要綱案の提言」です。

 これにたいして政府の側は、2月14日の第30回の推進会議に「政府部内で検討中」としながら、基本法の改定案を示しました。しかし、その内容は第2次意見とは大きくかけ離れたものでした。

そもそもまったく権利法にはなっていません。「障害者」が地域で生きることも、だれと暮らすかの選択も、必要なコミュニケーション手段の選択も、可能な限りでしか認められない条文となっています。法案の中で4カ所にわたって「可能な限り」という言葉が出てきます。教育については、地域の学校でともに学ぶ内容は全く盛り込まれていません。
 以上、指摘した以外にも多くの問題があり、次々と「障害者」団体から抗議の声明が上がります。JDF(日本障害フォーラム、大きな「障害者」団体が加盟)は、具体的に書き直す個所と内容を記した統一要求書を提出します。
こうした中で、政府の側も調整に手間取ったようで、推進会議の開催も延期されます。そして、3月11日の午前中に、第3回の「障害者制度改革推進本部」が開かれ、さらに手直しを経た基本法改定案が了承されます。こうして事実上政府案がつくられたのです。
多少の改善があったのは、主に次の所です。教育については「可能な限り障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配慮しつつ」という言葉が入りました。これで法文全体で「可能な限り」は五つとなりました。
「刑事手続きにおける配慮等」とされていた27条の見出しが「司法手続きにおける配慮等」と改題され、刑事だけでなく民事についても「障害者」に適切な配慮を行うべきことが規定されました。
 この午後に東日本大震災が発生。3月14日に予定されていた推進会議はさらに延期され、開かれたのは4月18日でした。いくつかの改善点はあったものの、本質的には変わっていないこの法案に対して、委員からはクレームが出されますが、すでに政府案となっている法案はこれ以上変更されず、4月22日には国会に提出されます。
 
●総合福祉部会での厚労省の許せぬコメント

 推進会議に検討中の法案が示された翌日2月15日には、総合福祉部会が開かれました。そこでは厚労省より「第1期作業チーム報告書に対する厚生労働省からのコメント」が示されました。これは、作業部会に分かれて総合福祉部会が検討してきたことについてのコメントなのですが、そこには、権利条約の観点も「障害者自立支援法違憲訴訟原告団・弁護団と国(厚生労働省)との基本合意文書」の観点も一切ありません。ただ、「自立支援法」と「地域主権戦略」の立場からいちゃもんをつけているというものです。
 その内容は、かなり重大な問題をはらんでいます。総合福祉法を権利法とすることに反対し、24時間の介助保障を実現させようとする記述に対しては、一人で暮らせるように訓練することなどを強調しています。「障害者」の権利保障についての国の責任を明確にする記述に対しては、「地域主権戦略」を対置しています。憲法よりも「地域主権戦略」を上位においているようです。

 なお、福祉関係施設の人員、設備、運営に関する基準を条例に委任してしまおうとする「地域主権改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案」については、「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案」と名前を変えて、衆院を4月22日に通過しました。題名だけでなくいくつか修正点があるため、改めて参院に送付され、総務委員会にかけられています。


●「自立支援法改定法」を推進した9団体は

 2月26日、この9団体は、「障害のある方との共生社会を実現するための市民フォーラム」と題する集会を開きました。「厚生労働省行政官」と一緒に行っていくことを打ち出しているこの9団体は、厚労省の土生栄二障害福祉課長に「平成23年度の障害者福祉について」話をさせただけではなく、厚労省の意図を体現した発言が相次いだそうです。
 育成会関係の団体と密接なかかわりを持つ野澤和弘氏(毎日新聞・論説委員)と片桐公彦氏(りとるらいふ、全国地域生活支援ネットワーク事務局次長)とは、消費税増税に賛成し、「障害者」の制度を介護保険に統合することについても賛成発言を行ったそうです。
 また野沢氏は、「障害者制度改革推進会議は、現実を考えていない」とか、「権利、権利とばかり言うと反発をかう」という趣旨の発言を行ったとのことですが、彼だけではなく、自民党の衛藤 晟一議員、「全国重症心身障害児(者)を守る会」、「日本知的障害者福祉協会」などが同趣旨の発言を行っていたそうです。さらには、推進会議について、主張できる「障害者」が中心で知的や精神の人たちのことが十分考えられていない、などというデマをも流していたそうです。
 この団体の中には、05年に「自立支援法」が施行される中で、会員が心中に追い込まれて行った経験を持っているところがあるはずです。自らが推進した法律の結果、心中に追い込んだそのことについて、胸に手を当ててから発言してほしいものです。
 しかし、主催者側と参加者との間には意識のギャップもあったようです。なぜなら、招待されたDPIの発言に一番拍手が多かったそうですから。

★今、わたしたちはどうすべきなのか

 「障害者」運動は、今かつて経験したことのない大変な状況におかれていると思います。
 大震災被災地の救援は待ったなしです。「JDF東北関東大震災被災障害者総合支援本部」が立ち上げられ、福島県郡山市や宮城県仙台市に現地本部を置いて、いろいろな団体が協力しながら被災地支援を進めています。怒りネットも微力ながら義援金を集めています。
 現地入りした方々のお話では、いまだに「障害者」の実態がつかめない、とのことです。現地の団体でも、まだ連絡が取れない人がいると聞きます。介助者が避難してしまい、生活が困難になっている方、福祉施設そのものが津波や地震で破壊されている状況など、胸の痛む状況があります。
 しかし、こうした状況の下で「自立支援法」や介護保険制度が、「障害者」や高齢者を苦しめる状況があります。介助者が少なくなっても、新たに介助者を入れようとすると資格制度が邪魔をする。日割りの報酬制度は、被災した福祉施設の存続を困難にする。緊急に介助が必要だったとしても、認定調査をしないと介助を受けられない状況。
 被災地の「障害者」関係者の苦しみは、やはり現在の法体系がもたらしているのであり、被災地支援と「障害者」制度改革は一体で進めないといけない問題です。怒りネットでもそのような論議となりましたし、多くの「障害者」団体がそのように考えていると思います。
 
 総合福祉部会の法案に対する意見とりまとめが、今年8月に予定されています。震災の影響で論議が遅れたために9月になるかもしれませんが。このようなときに、上述の厚労省コメントに対する広範な批判が必要です。
 総合福祉法のためには障害者基本法の内容が重要であることは、いろいろな団体の共通の認識でしょう。JDFも「今後の国会における議論等によるさらなる改正を求めるものである」とその見解で述べています。そのためには、5月以降の運動方針がないといけないのですが、これがどこからも出てこない状況になっています。その原因は、障害者基本法改定案に対するさまざまな意見があるからだと言われます。
 確かに、この改定案は、現行法よりも改善されている部分はあります。他方、上述の厚労省コメントでは、現状の福祉の水準をさらに後退させる可能性があります。障害者基本法が権利法でもなく、「可能な限り」を5箇所も含む中では、こうした福祉の後退を防ぐことはできません。そこで、わたしは、厚労省コメントと基本法改定案を関連付けて批判する運動を展開すべきだと思うのです。
 ほとんどしがらみのない怒りネットがここで運動を切り開きましょう。







■カンパのお願い

 久しぶりに『怒りネット通信』を出しておいて、カンパのお願いをするのも心苦しいところなのですが、お読みいただければ幸いです。
 昨年の秋の過程では、状況の変化に合わせて4種類のビラを作り、国会議員への申し入れ書なども作って行動してきました。その結果、また持ち出し状態で活動を続けております。
 これからの1年を考えますと、障害者基本法の問題から総合福祉法をめぐる攻防が続きます。この中では、05年の時のように、怒りネットが前面に出なければならない状況も予想されます。
 この『怒りネット通信』46号の1週間後には、47号をお届けいたします。通信やビラも精力的に出して行きたいと思います。
 皆さんからのカンパをよろしくお願いします。

●被災地へのカンパもお願いします

 怒りネットとしては、被災地へのカンパを集め、「JDF東日本(東北関東)大震災被災障害者総合支援本部」に送ることにしました。4月段階で、8万円を送りました。ご協力いただいた皆さんありがとうございます。
 今後も集めて送りたいと思っておりますので、よろしくお願いします。
 
 怒りネットにお振込みいただく際には、怒りネットへのカンパと被災地へのカンパの区分が判るように、ご支持いただければ幸いです。

 よろしくお願いします。
 







10・29日比谷に1万人

木村 泰宏

 12月3日、臨時国会の最終日、障害者自立支援法の改正案は成立した。民主党の変質には本当に怒りが沸いた。本年春の、沖縄の普天間基地問題での大裏切りを想えば、今回の裏切りも驚く程のことはないが──。
 10・29大フォーラムは、今年も日比谷に1万人が結集した。反貧困ネットの湯浅誠氏の言葉を借りれば「広い日比谷の野外音楽堂を当たり前のように埋める毎年の障害者の活動、結集力」は大変な力になっている。この運動の力こそが、障害者制度改革の真の推進力であろう。登壇し発言した民主党の各議員(岡本・谷・梅村・石毛)は、自立支援法の改正法案について、一言も触れなかった。自分達が必要だと確信している良い法案であれば、堂々と言えるはずなのに、一言も触れられないのは、自らの不正義と、日比谷に結集したこの運動の力に怯え、恐れているからに他ならない。
 今、障害者の運動が熱い。この力に確信を持ち、ひるまず、たたかい続けよう。
 以下、10・29日比谷野外音楽堂での発言を紹介する。

【主催者挨拶・全日本ろうあ連盟理事長・石野氏】 昨年は、主催三団体の強い団結のもと1万人が結集した。長妻厚労大臣がこの壇上で、障害者自立支援法を廃止しより良い制度を作ると明言した。国政を動かした、障害者運動史に残るフォーラムとなった。違憲訴訟団は今年1月7日基本合意を交わし、4月21日、司法において勝利和解を実現させた。制度改革推進会議は6月7日第一次意見書をまとめ首相に提出し、6月29日閣議決定された。しかし、障害者自立支援法の現行の枠組みに固執する動きが依然とあり予断を許さない。もっと大きな運動が必要だ。

【厚労大臣政務官・岡本充功(みつのり)】障害者制度改革については、総理を本部長とする障害者制度改革推進本部が昨年12月に設置され、本年4月にはその下に当事者を中心とする障害者制度改革推進会議が置かれ、具体的な検討が進められている。この進会議等の議論を踏まえ、6月29日に『障害者制度改革の推進のための基本的な方向について』を閣議決定し政府として障害者制度改革の基本的な方針を示した。障害者総合福祉法について平成24年の通常国会への提出、そして25年8月までの施行を目指すとした。厚生労働省は障害者制度改革推進会議総合福祉部会での議論を踏まえ、この閣議決定に沿って障者総合福祉法の制定に向けた検討を進めていく。障害者施策の発展は、国民の理解を得ながら、透明性・公平性のある安定的な制度設計が不可欠。障害者が当たり前に地域で暮らせる環境・社会を作っていくには、一歩一歩の前進が肝要である。

〈※このあと「集会アピール」が読み上げられ、採択された。アピールでは、制度改革推進会議が、障害者権利条約の実現と自立支援法違憲訴訟の基本合意文書をベースに活発な議論をして画期的な第一次意見をまとめ、閣議決定に至ったこと、しかし5月には政権交代前に出されていた内容をベースにした自立支援法一部改正法案が、当事者抜きに進められ批判が集中したことが述べられ、あくまで前厚労大臣が約束した通り、自立支援法の廃止と、当事者の声が十分反映された新法の実現を求めた。また緊急課題は予算措置の中で具体化すべきであり、介護保険との統合への道を絶対に開いてはならないとし、15点にわたる要望を列挙した。
朗読後、採択されたアピール文を岡本政務官に直接渡す予定で、朗読には10分もかからなかったのだが、岡本政務官が「公務の都合」で既に退場したためできなかった〉

【民主党・谷博之・参議院議員】民主党の障害者制度改革担当プロジェクトチームの座長をしている。昨日も違憲訴訟を起こした元の原告団・弁護団と会合を持ち、重要な内容が指摘された。例えば、自立支援医療を低所得・非課税世帯は無料にすることを、訴訟の中で要請を受け約束もしたが、残念ながら22年度では福祉サービスの分しかできなかった。PTとして来年度の予算編成に向け自立支援医療に約200億の予算を獲得する努力をしていきたい。さらに制度改革推進会議や総合福祉部会の法的な位置づけをし、皆さん方と定期的な協議を行っていくことも前向きに積極的に検討したい。

【反貧困ネット・湯浅誠・事務局長】この広い日比谷の野外音楽堂を当たり前のように埋める毎年の障害者の活動、結集力に敬意を感じている。この運動の力が政府の中に制度改革推進会議を作らせたと思う。そういう場を実現できていない貧困や生活困窮者の活動に照らして、障害者運動の層の厚さを見る思いがする。運動の力が作った推進会議を実りあるものに進めていただきたい。制度の谷間の人たちは、障害施策でも労働市場でも福祉施策でも受け止められずに、その労働市場の周辺を出たり入ったりしている。こうした困難は障害の問題でもあり、その人たちに配慮できない雇用の場、職場の問題であり、その人たちの生存を支えられない福祉施策一般の問題が複合的に絡んでいる。だから私たちは障害や福祉や労働の各分野が手を取り合って、みんなが生活できる社会を求めていく必要があると思う。政権交代直後の、様々な分野での前のめりにつんのめるような勢いが、政治の場でも、運動の場でも若干落ちている。今はある意味では厳しい時期
だと思うが、そういうときこそ、様々なスタンスや分野や立場を超えて結びつくことが必要だと思う。

【竹下芳樹・違憲訴訟弁護団長】弁護団は、1月7日の基本合意を決してゴールだとは思っていない。訴訟は、私たちの願いの裁判の場における形である。だから1月7日の基本合意は、これから国の制度づくりに生かしていく出発点。ところが、古いものにこだわり、もう一度障害者自立支援法の生き残りを図ろうという政治の力がある。この力をもう一度つぶし、この考え方を残そうとする勢力を生き返らせないよう、これからも運動していく必要がある。裁判は終わったが闘いは終わっていない。古い勢力に負けないのエネルギーを示そう。私たちの弁護団の役割は、新しい法律ができるまで続く。

【民主党・梅村聡・参議院議員】参議院の厚労委員という立場と、民主党の団体対応の委員という立場にある。昨年長妻前大臣がこの場で、自立支援法の廃止を明言した。昨年より後退したのではないかとの声もあるが、長妻前大臣が表明した廃止も、新法の制定の議論も着実に進めることは全く変っていない。これまでは政府とプロジェクトチームが平走状態だったが、PTと政府は一体で進めていくことを約束する。勝手に党が独走することはなく、政府と一体であることを誓う。

【民主党・石毛えい子・衆議院議員】去年の今ごろを思い出す。民主党は自立支援法を廃止して新しい総合福祉法を作る約束をした。それまでの期間にも色々課題がある。怒りや不満もあると思うが、新しい法律を作るという方向性は変わっていない。


【共産党・高橋千鶴子・衆議院議員】党の厚労部会長を務めている。昨年は歴史的集会だった。1月には基本合意を結び、制度改革推進会議が持たれ、新法への、当事者を参加させた取り組みが始まったはず。しかし通常国会で障害者自立支援法改正案が突如として出された。この法案は、「私たちのことを私たち抜きに決めないで」という大原則を踏みにじり、今の自立支援法を延命させるものである。突然の闘いにもかかわらず、全国から当事者が連日国会に押しかけ、廃案に追い込んだ。しかし、また同じことを繰り返そうとしている。何としても食い止めなければならない。3つ述べたい。1つは、団結を崩さないこと。一部の要求の取り込みで、運動が分断されてはならない。2つめは、障害者問題を政争の具にさせないこと。先の国会では労働者派遣法の採決との兼ね合いだった。他の
法案との取引で議題に上らせてはならない。3つ目に、医療を含め、応益負担を速やかに撤廃するなど、予算措置でできることはすべき。例えば新制度を検討中なのに、2012年3月までに新事業体系への移行を急ぐ必要はない。緊急に小規模作業所と地域活動支援センターへの支援を行うべき。那須塩原の国立視力障害センターや伊東の重度障害者リハビリセンターの廃止統合は逆行である。精神障害者への交通運賃割引を他の障害と同じように実現すること、障害のある子供達は児童福祉法の中で支援を強めるべき。また福祉施設の設置規準の条例委任など、国の責任を投げ捨てる地域主権改革は反対である。そして障害者制度改革推進会議を法的に根拠付けなければならない。

【社民党・福島みずほ・参議院議員】去年の12月に対策本部ができた。1月に制度改革推進会議をスタートさせた。私はその担当大臣だったので、「あの時日本の障害者政策が変った」といわれるよう実現していきたい。今本当に頑張り時。障害者制度改革推進会議を応援して、内閣法制局を説得して、私たちが望む障害者基本法の改正法案を実現しよう。そして障害者権利条約を批准するためには障害者差別禁止法を作りたい。かつてない形で内閣のど真ん中に制度改革推進会議をつくり、当事者・有識者を送り込んでいる。だからこそ今大同団結してこの三つの法律を成立させていこう。障害者自立支援法の改正法案は邪魔である。これにエネルギーを使うより3つの法律を作って障害者の政策を進めたい。私は障害者制度改革推進会議の生みの親だと思っているので、育ての親と成立のたみにも皆さんと一緒にやりたい。

【新党日本・田中康夫・衆議院議員】冤罪になった村木厚子さん。冤罪はとんでもない話だが、障害者自立支援法作成の担当が彼女である。組織の一員だから本意ではないかも知れないが─。その彼女が今内閣府に戻って待機児童の問題を扱っている。それも大事なことだが、私は村木さんに障害者自立支援法を真の意味での改正の担当者になって欲しい。冤罪はけしからんがそれを乗り越えた人が真の意味で人間のために働いていただきたい。

【制度改革推進会議・室長・東俊祐弁護士】推進会議は、今年の1月から1回4時間、多い時には月に4回、既に22回の議論を行ってきた。6月には4項目の当面の重点課題まとめ、また第1次意見をまとめ提出した。政府はこれをベースに閣議決定した。閣議決定は①基礎的な課題、②横断的な課題、③11に渡る個別分野の大きな3つ枠組みの中でそれぞれの工程表が作られている。②の横断的な課題には、障害者基本法の改正、差別禁止法の制定、総合福祉法の制定の3つの法律が問題になっている。基本法改正については「権利」という観点、「監視の機関」を盛り込む。差別禁止法では「合理的配慮」を日本の法制度に根付かせていく。総合福祉法では制度の谷間のないシステム。こうした議論がなされている。制度改革推進の、残り4年の期間の中で、来年には障害者基本法の改正案、再来年には新しい総合福祉法、翌25年には差別禁止法を出すという工程表ができている。障害者権利条約については、「ナッシング・アバウト・アス・ウィズアウト・アス」というスローガンが当事者の声を反映させる大きな力になった。国々の違い、障害種別の違いという二つの大きなハードル乗り越えるために、徹底的に話し合い、違いは違いとして認めながら共通項を模索して統一的な見解を出していく戦略をとった。この努力がスローガンに力を与えた。権利条約が採択され、舞台はニューヨークから各国に移っている。今、日本国内で一番大事なのは小異を捨てた大同団結しかない。


【全日本ろうあ連盟・小中栄一氏】関係6団体一緒で、聴覚障害者制度改革推進中央本部を立ち上げた。目的はコミュニケーション法の制定である。1つは、かつて手話は「手まね」と言って偏見や差別を受けていたが、今は言語として認められている。いつでもどこでも手話が使え、会話ができる社会を作っていきたい。2つめ、音声だけではない情報提供社会を作っていきたい。3番目は、コミュニケーションは社会参加であるから無料であるべきだと法律に明記して欲しい。4番目は手話通訳の設置・派遣、現在の厚生労働省の通達による不十分な方法ではなく、法律で定めてほしい。こうした内容の運動を展開している。私たちの運動をまとめたパンフレットが「ウィ・ラブ・コミュニケーション」。25年前の運動で120万部普及した「アイ・ラブ・コミュニケーション」を発展させたもの。このパンフの普及と、あわせて進めている運動が、情報コミュニケーションの法整備を求める署名。120万筆を目標にしている。私たちは昔仲間がいなくて、手話もわからないという状態で孤立していた。しかし今は沢山の仲間がいる。手話も誇りを持って使うことができる。仲間と一緒にろうあ者であるという誇りを持っている。障害者として生きていく誇りを、運動を後退させないように実現していきたい。

【全国大行動実行委・横山輝久氏】制度の谷間にある人達と共に自立支援法を粉砕する運動を作り上げていくことが大行動としての課題。私は40年間、介助保障問題をやってきた。かつて厚生省の次官の、国民的合意・国民的理解と言う話を聞いて、僕らはずっと差別されてきた、国民的合意はあんたらの仕事だろと思った。僕ら障害者一人ひとりが生き生きとして、自己主張していけば、地域主権のことや制度改革推進会議も頑張れると思う。地域移行は重要。好き好んで施設や病院にいく人はいない。地域で生きていく、みんなで協力して支えあっていく、そういう運動を一人ひとりが自ら作り上げていくことが今大事ではないかと思う。


【日本障害者者協議会(JD)・大田修平氏】障害者自立支援法に替わる新法の制定と、障害者基本法の改正、障害者差別禁止法の制定という、かつてない障害者制度改革向けた機運が当事者参加のもとに今進められている。日本は先進国の中で障害者関連予算が極めて低い。この状況を改善しなければならない。自立支援法の応益負担で悔しい時代を強いられてきた。今総合福祉部会では権利条約の考え方に則り新法づくりを進め、4点に渡る当面の課題をまとめている。自立支援医療の問題、制度の谷間で苦しむ人達のサービス提供などは今すぐ予算措置で是正させたい。日本では未だに親子心中寸前の状況の人達がいっぱいいる。しかし運動の力で政治を動かしていこう。

【日本難病疾病団体協議会・NPO繊維筋痛症友の会・橋本氏】繊維筋痛症、あまり良く知られていない病気だが、日本には200万人、50人に一人いる。ある日突然身体が痛くなる病気。難しい病気なので、診断できる病院は少ししかなく、医師も不足している。原因がわからず「気のせい」と言われ、たらい回しにされる。使える薬はほとんどなく、効く薬も保険の対象外。繊維筋痛症は難病指定されていないので補助が出ない。見た目には障害者と判断されず、手帳を取ることが容易でない。難病の人たちが生活できるように、経済的に助けてほしい。医療費、ホームヘルプサービス、障害者手帳、以上の点を求めたい。

【全国精神病者集団・関口氏】心身喪失者等医療観察法を許すなネットワークの代表でもある。新しい総合福祉法は、精神保健福祉法の改正でなければならない。国策医療から生等な人間関係を築く必要がある。強制入院の権限は厳しく制限する必要がある。つまり強活者の医療に変えるためには、医療基本法が必要。
障害者権利条約の目的は、精神障害者が施策の対象ではなく権利の対象として扱われること。医者の権力を減少させ、患者との対等な人間関係を築く必要がある。強制入院の権限は厳しく制限する必要がある。つまり強制医療の原則禁止が必要。
人身の自由はすべての自由の根幹。監禁はとんでもないこと。治療を続けていくには医者と患者の信頼関係が不可欠。信頼関係が全くないのが医療観察法。刑罰は司法に、治療は医療にとすべき。たった2週間の傷害で2年の入院、3年の保護観察、こんなことは許されない。刑務所長と病院の院長が同じのはおかしい。ベッド数を3分の1にし、診療報酬を他課との差別をなくして3倍にし、人員配置、特に医師の数を増やすことが必要。

【障害乳幼児の療育に応益負担を持ち込ませない会・中村たか子氏】「この子は3年待てない」と主張して、自立支援法改正法案の早期成立を主張している人達がいる。「待てない」の意味が全然違う。子供も親もこの自立支援法の改正法案でさらに夢が奪われる。いくら負担が軽減されても、応益負担の制度が残っている限り負担は残る。契約制度は自分で施設を探さなければならないが、場所そのものがない。全国どこでも療育が受けられるよう施設を作る、国や自治体の姿勢が求められている。責任を放棄させてはいけない。今、国が検討している「子供子育て新システム」は、自立支援法と同じ応益負担・契約制度、日払いで、具体化されたら、障害児は保育所からもはじき出されてしまう。保育分野の人達との連携も必要。

知的障害のある子供の入所施設で働いている上田という。子供の入所施設にとって契約制度は弊害しかない。保護者が契約したということで、行政が子供達に責任を取らなくなった。保護者の金銭負担も大幅に増えた。利用料を払うために仕事増やして月に一度の面会ができなくなった父親がいる。小遣いがもらえない子供も出てきた。国の施設規準は劣悪で子供達とゆっくり話をすることもできない状況だ。現場の声を推進会議に伝えて新法に反映させたい。

【大阪障害フォーラム・楠としお氏】大阪では一昨年、権利条約の批准を求める地域フォーラムが行われ府下の30団体が結集した。去年、正式に大阪障害フォーラムをつくった。推進会議に8つの大阪からの提言をまとめたので、紹介したい。1つ目は地域移行。精神病院・施設に本人の意思に反して長期間閉じ込められている人を地域に帰していく取り組み。2つ目はグループホームケア・ホームの取り組み。誰かに与えられたホームではなく、自ら積極的に住み易いグループホームを作っていきたい。3点目は多様な日中活動の場を絶対に潰さない、閉鎖させないという取り組み。4つ目は就労支援の取り組み。企業と障害当事者をつなぐ、就労支援ワーカー、ジョブサポーターをもっと増やして一般就労への道を切り開いていきたい。5つ目は、精神障害者が地域で安心して暮らせる運動を強めたい。6つ目はコミュニケーション法の制定を目指す運動に連帯していきたい。7つ目、不十分な成年後見制度を改めていく。そして最後は教育。本人や保護者の意見を最重点に、多様な選択肢をそれぞれ充実させていく。以上8つの取り組みを大阪から推進会議に反映させていきたい。

【沖縄ピープルファーストハイビスカス・大川はじめ氏】6年前から関わっている「カリタスの家」虐待事件や、広島県の福山成年後見人事件、そして奈良の大橋製作所事件など様々な事件に関わっている。障害者虐待を無くそうと言っている中、被害が続いているのだろう。あと、沖縄県では障害者の条例作りを行っている。インクルーシブな社会を作ろう、どんな障害を持っていても、一緒に暮らしていけるようにと活動をしている。様々な障害の人達と一緒に活動している。難病者の方々もいる。

【尾上氏】障害者権利条約に基づく制度改革に大きな期待を持ち、地域・現場で自ら改革に取り組むことが語られた。障害種別を超え、あるいは団体の枠を取っ払って、立場を超えて、取り組んできたこのフォーラムが制度改革に結実し始めている。推進会議の動きを面白くないと思っている人達も厳然といるが、私たちの声、運動が推進会議を動かす。私たちの声なしには、この制度改革推進会議や制度改革も進まない。



【司会】この「10・31」は今年で5回目。あの2005年の10月31日を忘れまいというのがこの「10・31」。今年は非常に大事な時期になっている。臨時国会が12月3日までといわれているが、自立支援法の一部法改正、予断を許さない。現段階では法案を出すとも出さないとも言っていない。この法律は改正ではなく、現行の自立支援法に根っこを下ろすような意味を含んでいる。絶対に出させてはいけない。そういう意味のある今日の10・29である。一番信用できるのは、運動ということ、これを異口同音にいわれた。本物の権利、本物の新法は、与えられるものではなく獲得してこそ本物といえる。運動は団結が必要。団結の基本は、違った意見に耳を傾け共通点を見出すこと。運動を大事にしていこう。

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