« 総合福祉部会 第二期作業チーム報告 | トップページ | 怒りネット通信47号 »

2011年6月29日 (水)

●障害者基本法をめぐって

  4月22日に政府案が国会に上程されてから、民主、自民、公明の3党が水面下で折衝を行っていました。当初の公明党の修正案では、法案に前文を付けること、差別の定義を入れること、合理的配慮の定義を入れること、5箇所にある「可能な限り」を削除すること、多くの「精神障害者」が入院を余儀なくされている状況を改善するための検討、などが入っていました。しかし、これらは折衝の過程で消されてしまいます。
 6月15日、衆院内閣委員会では、共産党が6箇所の「可能な限り」を削除する修正案を提出しますが、これは否決。民主、自民、公明の修正案が可決されます。
  政府案と比べると、「防災及び防犯」、「消費者としての障害者の保護」、3年後の法律の見直しなどの条文が入りました。しかし、5箇所の「可能な限り」はそのまま維持され、新たに教育の部分に「児童及び生徒並びにその保護者に対し十分な情報の提供を行うとともに、可能な限りその意向を尊重しなければならない」という文章を入れたため、「可能な限り」は6箇所となりました。

 怒りネットは、6月8日に、衆院内閣委員会関係者に働きかけを行うと共に、6月15日には、ビラまきと内閣委員会の傍聴を行いました。きょうされんなど、共産党系の団体が傍聴に来ていました。
 審議を聞く中で、やはり多くの問題が明らかになったと思います。

・「可能な限り」について
 どこで誰と生活するかの選択、地域社会での生活、医療・介護・リハビリ・療育を身近な場所で受けること、これらが「可能な限り」となっていますが、そのことについてかの内閣府の村木厚子氏は、「例えば、障害が重度であって必要な設備の整った施設で適切な医療的ケアを受けなければならない方、こういった方々は必ずしもその身近な場所では適切な支援を受けられない場合もあり得るということも考えまして、「可能な限り」という表現を入れた」と述べました。しかしこの言葉は、医療という言葉が入るかどうかは別にして、「障害者」隔離を正当化するときに常に使われてきた表現ではないでしょうか。
  また、コミュニケーションや情報取得の方法の選択も「可能な限り」となっています。村木氏は、「企業、個人等を含む社会を構成するあらゆる主体において、必ずしも常にあらゆる障害者の意思疎通手段の選択の機会を確保することができるというわけではないということも考慮をいたしまして」と言います。国や自治体は保障する、などとも言いません。要するに、改善を図るための施策を進める姿勢はありません。
 共に学ぶ教育を「可能な限り」としていることについては、「例えば聴覚障害のある児童生徒など、本人にとって最も適切な言語、コミュニケーションを習得するために、本人、保護者が特別支援学校や特別支援学級等における教育を受けることを希望する場合などもあることを考えまして、「可能な限り」というふうに規定をした」と言います。
 なお、この答えは、民主党の山崎議員の質問に答えたものでしたが、なぜか、官僚の村木氏が答えているのです。その後、部分的には蓮舫氏も同じような答えをしてはいますが、「可能な限り」を書き込むことは、官僚の意志なのではないかと思いました。

・蓮舫のデマ
 「推進会議の意見を十分に聞いて改正案の検討は行ってきておりまして、改正案にも推進会議の意見を十分に反映させることができたと私どもは考えているところでございます」

・教育について
 3党修正案で、十六条の2項に、生徒とその保護者の意見の「可能な限り」の尊重ということが入ったわけですが、この尊重の目的として、「前項の目的を達成するため、」という言葉が付けられています。この「「前項の目的」とは何かということで、西村智奈美議員は次のように説明しました。
 「新第十六条第二項においては、情報の提供及び意向の尊重についてと規定しております。この文言は、第一項における「障害者が、その年齢及び能力に応じ、かつ、その特性を踏まえた十分な教育が受けられるようにするため、」という部分を指しておりまして、それ以降の部分にはかかっておりません。」
 「それ以降」とは何か、と言えば、「障害児」と「健常児」が「可能な限り」で共に教育を受けられるように配慮するということです。
 つまり、本人や保護者の意見の尊重は、十分な教育のためであり、共に学ぶための配慮ではないのです。
 また、文部科学省の官僚は次のように発言します。
-----------------------
○?久政府参考人
 文部科学省におきましては、平成十九年以降、障害のある子供の就学先の決定に際しまして、保護者の意見聴取を義務づける等の取り組みを行ってきているところでございます。一方、今、西村委員の方から、修正提案者の方からお話ありましたように、障害者の権利に関する条約の理念を踏まえた特別支援教育のあり方について文部科学省といたしましても検討を行ってきましたけれども、中央教育審議会の特別支援教育の在り方に関する特別委員会の論点整理、昨年十二月でございますが、それにおきましては、就学先の決定のあり方につきましては、障害の状態、本人の教育的ニーズ、本人、保護者の意見等を踏まえた総合的な観点から決定する仕組みとすること、その際、本人、保護者に対し十分情報提供をしつつ、本人、保護者の意見を最大限尊重し合意形成を行うことを原則とし、最終的には市町村教育委員会が決定する仕組みとすること、このような仕組みに変えていくため、速やかに関係する法令改正等を行い、体制を整備していくべきなどの提言がされているところでございます。

文部科学省といたしましては、障害者基本法の改正や中央教育審議会の議論等も踏まえながら、障害のある子供の就学先決定の仕組みについて速やかに検討してまいりたいと考えてございます。 
-----------------------

 「就学先の決定のあり方につきましては、障害の状態、本人の教育的ニーズ、本人、保護者の意見等を踏まえた総合的な観点」と本人や保護者の意見は、あくまで検討資料の一つに過ぎないのです。この点では、議員である文部科学省の政務官は、意見の尊重を強調してはいるのですが。
 また「最終的には市町村教育委員会が決定する仕組」なのです。

|

« 総合福祉部会 第二期作業チーム報告 | トップページ | 怒りネット通信47号 »

-多事争論-」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/517951/52073992

この記事へのトラックバック一覧です: ●障害者基本法をめぐって:

« 総合福祉部会 第二期作業チーム報告 | トップページ | 怒りネット通信47号 »