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2011年10月 4日 (火)

怒りネット通信48号

10月28日、日比谷に集まろう!
国家官僚をはじめとする福祉きりすて勢力と闘おう!

■障害者基本法成立過程をどうとらえるべきか
                    古賀 典夫

 障害者基本法改定法は、7月28日に参議院内閣委員会で審議と採決が行われました。そして、翌日の本会議で採決され成立しました。内容は、衆議院を通過したものと同じです。改定前の法律と比べれば、いくつかの改善はありましたが、法文中の6箇所に「可能な限り」という言葉が挿入され、「障害者制度改革推進会議」が目指した権利法とは程遠いものとなってしまいました。
 4月22日の法案提出以降もJDFは、5月24日、7月22日と民主党宛ての要望書を出し、国会議員への働きかけもいろいろな団体が行ってきたようです。しかし、わたしたちも含めてそのような運動にとどまり、大衆的な国会行動も組まないままでした。7月22日のJDFの要望書は、付帯決議への要望が主たるものでしたが、その趣旨は全く反映されていません。
 他方、8月30日に総合福祉部会が「骨格提言」を取りまとめました。取りまとめられた文章は、この原稿を書いている9月4日段階ではまだ公表されていませんが、次の『怒りネット通信』では紹介したいと思います。そして、いよいよ「障害者自立支援法」に代わる総合福祉法の作成が始まったのです。ここでわたしたちが念頭に置かなければならないのは、この法律案文の執筆を行うのは、総合福祉部会に対する厚労省のコメントの執筆者と同じ人物たちによって書かれるであろうということです。何しろ総合福祉部会の事務局は、障害保健福祉部企画課企画法令係なのですから。
 『怒りネット通信』の前号に引き続き、今回の号では、6月23日に示された厚労省のコメントについて、宮崎さんに書いていただきました。怒りネットとしては、この厚労省のコメントについて、厚労省と交渉を行い、問題点を追求することにしております。日程などにつきましては、改めてご連絡いたします。多くの皆さんのご参加をお願いします。
 総合福祉法は、「障害者」の生活・生き死にのかかった法律です。障害者基本法をめぐる運動にとどまることは絶対に許されません。10月28日の日比谷集会は、これまでを超える結集が必要です。「障害者」の大衆的な行動が必要です。

 今、政府による社会保障・福祉の切り捨てが進められています。5月12日に厚労省が発表した「社会保障制度改革の方向性と具体策」では、「社会保障制度改革と財政健全化を同時に実現」すべきとして、「これまで以上に、給付の重点化、選択と集中、優先順位の明確化」を行う、としています。そして厚労省は、生活保護法の改悪を来年の通常国会で行う、としています。そこでは、保護基準の見直しも打ち出されています。
 イギリスやオランダでは、財政削減政策の中で、介助時間が削減されるという事態になっています。イギリスでは、これに抗議する「障害者」が8千人のデモを行い、裁判闘争も闘われています。ちなみに、イギリスもオランダも権利条約の加盟国です。
 こうした国内・国際情勢が、「障害者制度改革」にのしかかってきているのであり、障害者基本法とその審議にも現れていると思います。闘いなくして、わたしたちは生活を守れませんし、1歩の前進もあり得ません。
 以下では、参議院内閣委員会の障害者基本法審議について紹介します。「数十年前に戻ったのではないかと思った」との感想が出されるほど、それはひどい内容でした。現状の把握として是非お読みいただきたいと思います。

★参議院内閣委員会を傍聴して

 わたしたち怒りネットは、6月15日の衆院内閣委員会の時と同様に、朝からビラまきを行い、傍聴に入りました。ほかには、きょうされんや障全協関係の人々が数十人傍聴に入りました。
 この日の内閣委員会には、厚生労働委員である社民党の福島議員と共産党の田村議員が特別に質問するという場面がありました。ここではまず、この会議の速記録をも見つつ、何人かの議員の発言の紹介から始めたいと思います。

●「障害者」の権利を否定する自民党

 7月28日の参議院内閣委員会で、自民党の山東昭子議員は「障害者自身も特別な権利意識は捨てて社会に溶け込んでもらいたいと思います。」と発言しました。
 さらに、自民党の衛藤晟一(えとう せいいち)議員は、「障害者制度改革推進会議」の第2次意見(昨年12月17日)を読んだ感想の中で、次のように述べます。
 「権利論が中心となって、やっぱり社会全体でお互いを尊重し合って共生していく社会を目指すという理念が、途中から共生という理念が強く盛り込まれましたけれども、出てきましたけれども、やっぱりちょっと希薄だったんではないのかなという感じを持っていました。」
 つまり、衛藤氏によれば、「権利論」と「社会全体でお互いを尊重し合って共生」するということは、対立関係にあるのです。これと同じような発言を6月15日の衆院内閣委員会でも耳にしました。それは、自民党の松本純議員の発言でした。
 「障害者基本法の改正に当たっては、障害者の権利を強調するような意見も出されていましたが、それぞれが権利を主張し合うということよりも、相互に助け合う方が、障害の有無にかかわらず共生する社会を実現するという改正案の理念に沿うのではないでしょうか」

 「障害者」の権利を否定するというのは、自民党の党としての見解であるということでしょう。
 わたしにとって、このような発言が遠慮なく出されてくるということは、率直に言って驚きでした。近代市民革命以後に形成された民主主義の概念では、少なくとも建前としては、市民の権利を守り調整するのが国家の役割だったのではないでしょうか?。この党の「自由」「民主」にしても、このブルジョア民主主義の概念から名づけられたもののはずです。改憲政党としてその建前さえも捨てようとしているようです。
 この自民党の「相互に助け合う」政治、「お互いを尊重し合って共生」する政治のもとで、わたしたちが経験したのは、「自立支援法」成立によって、次々と心中が起こる社会でした。共生どころか、死に追いやられる社会でした。
 自民党が否定したいことは何なのでしょうか。「障害者」が自らの存在、命を守るために権利を掲げて、国歌や社会に対して発言し行動することだと思います。そんなことはせずに、恩恵に甘んじろ、と言いたいのだと思います。しかし、甘んじていたら殺されるのです。
 この自民党の権利に対する考え方は、わたしたち「障害者」の場合にだけ語られているのではないと思います。憲法十二条で記されている権利を守る不断の努力として、自民党の政治生命を絶つべきだと思います。その自民党が、民主党の大連立構想の中で、また政権につくかもしれません。そんな政権に「障害者」の権利条約を結ぶ資格はありません。

●「発達障害者」、「精神障害者」を犯罪者予備軍とする発言

 さらに、参院内閣委員会で、山東議員は、次のように発言しています。

 「障害の中でも精神的なものに注目をしたいと存じます。それはアスペルガー症候群でございます。一九四四年、オーストリアの小児科医、アスペルガー博士が報告したこの病はアインシュタインやヒットラーなどいろいろな人が持っていたと言われておりますけれども、この病を持った人が全てではないのですけれども、普通の子供が突然十七歳ぐらいになって凶暴になって事件を起こすというようなこともあります。そうした犯罪に結び付くということ、これが非常に心配でございます。二〇〇〇年、愛知県の豊川市で主婦殺害、二〇〇三年、長崎での男児誘拐事件、また二〇〇四年、同じ長崎、佐世保の小学校六年の女子がクラスメートを殺害した。
 いずれもアスペルガーだったとのことでございますけれども、こうした発達障害や心神喪失に関しての法律はできても、日本ではこのアスペルガーや発達障害に関しての調査や研究が遅れていると思います・・・」
 そして、治療はできないのか、と厚労省に問いただしているのです。

 ここで、アインシュタインやヒトラーが「アスペルガー」だった、と言っているのですが、このこと自体が「風変わりな人」、「大きな事件を起こした人」をそのように呼んでいる、というように思います。「アスペルガー」は「発達障害」の一つとされていますが、衛藤議員は、「発達障害者」への専門家の対応を求めます。結局、偏見をもあおりつつ、治療の対象、専門家の監視、という状況において、「発達障害者」と診断された人々を孤立させる方向に追い込んでいくことになるのではないか、とわたしは思います。
 わたしも、「発達障害」と診断された子供を知っていますが、彼にとって重要なのは、彼が安心していられる周りの雰囲気なのだ、と思いました。それとは全く逆の方向に進めているのが、この自民党の人々ではないでしょうか。

 他方、みんなの党の桜内文城議員は内閣府に法律の解釈を質問した、として、次のように述べました。

「内閣府の方に尋ねましたところ、基本的には、精神障害者の方々がなかなか外に出られないケースとか、そういったことがあるのを改善したいということだとお伺いしました。それはそれで確かに、特に基本的人権という観点でいえば重要なことだとも思うんですが、先ほど自民党の山東議員からの御指摘にもありましたとおり、精神障害といいますか、精神異常によって犯罪も幾つか、こうやって重大な犯罪が起こったりしているところでもありまして、そういった犯罪予防的な観点からこの規定についてどのように考えればよろしいのか、お考えをお聞かせください」

 桜内氏の質問は、自民、公明、民主の調整の中で入った部分だったので、公明党の高木美智代衆院議員が回答しています。

 「ただいま、また委員から犯罪というお話がありました。実は、今犯罪によりまして検挙されている人員のうち、精神障害者の占める割合は〇・六%でございます。また、精神障害者は今我が国では二百五十八万四千人、ですから、一億二千万人の人口のうち約二百六十万人というこの比率から見ますと、果たしてこの〇・六%が高いのかどうなのか。私は、こうした多くの誤解があることから、改めてこの数字に基づきまして考えていかなければならないと思っております。
 ちなみに、私がお会いする精神障害者の方たち、本来であれば地域で暮らせる、しかし地域で支える保健や医療や福祉の連携がないということから、余儀なくこの社会的入院をされているという方も多くいらっしゃいますし、またその中には大変心優しい、また傷つきやすい、そういう方が多いということも、これは私の率直な実感として受けております。」
 
 高木議員の適切な答えがあったものの、いかに「精神障害者」への差別・偏見が強いのか、ということが改めて明らかになりました。差別禁止の重要性、ということであれば、まずこのような差別者が政治の中心にいること自体が問題なのです。今後の制度改革の中で、精神医療の強制性の問題、医療観察法の廃止が課題になるとき、こうした議員たちが敵対してくることは間違いないでしょう。
 公明党はかつて、医療観察法を推進しました。高木議員の見解を党の見解だとするならば、医療観察法を自己批判を込めて撤廃する側に回るべきだと思います。

●差別の禁止は問題、とするみんなの党桜内議員

 「このように法律にしてしまいますと、特に共生という言葉でもって一般私人に対して差別禁止ということを余りに強く言い過ぎると、今度は他者の基本的人権ですね、例えば私人間の経済的活動の自由ですとか政治的活動の自由・・・これを少なからず侵害するおそれというのもあるんではないかと考えております」

 「今回の四条二項で「社会的障壁の除去」ということが、国、特に国だと思うんですけれども、に対してやらなければいけないということになっておりまして、素直にこれ解釈していけば、良くない観念を社会的障壁と認めてこれを除去しろというふうに国に命ずるような立て付けになっておりまして、憲法十九条の思想、良心の自由というものについてどうなんだろうと」

 みんなの党とは、新自由主義の党であり、改憲にも賛成の立場をとっています。その立場から、法律による差別禁止に反対しているのです。「私人」などと言っていますが、「経済活動の自由」や「政治活動の自由」とも言っていますので、企業や政治家の差別をも禁止するな、ということになります。これは、社会的「強者」による「弱者」切り捨てを認めよ、という論理に帰着します。彼は、財務官僚出身ですが、こうした思考の官僚が多いのかもしれません。
 
 このほかにも、「地域の学校へ」を主張する親たちへの上述の自民党山東議員の侮蔑発言もありました。
 「中には、かわいいお子さんの将来にとって本当にプラスになるのかどうか分からないけれども、どうも親のプライドが高くて、何でも普通学級に入れたいというようなことは、何というんでしょうか、主張する親御さんが多いようでございます」

 本当に腹に据えかねる発言が相次ぎました。世界的な政治・経済の危機、そして、日本の震災と原発事故という中で、建前によって覆い隠されてきた差別主義が、むき出しになってきているといえるのかもしれません。

●「可能な限り」について

 法案の中に6箇所ある「可能な限り」については、民主党の岡崎トミ子議員、公明党の谷合正明議員、無所属の糸数慶子議員、そして、社民党の福島みずほ議員が質問しました。
 法案提案者の立場にある民主党や公明党の質問に対しては、かなりおざなりな回答が行われていたのですが、糸数議員の質問に対しては衆院の時と同じように村木厚子政府参考人が対応しました。発言は衆院の場合と同じなのですが、やはりこうした官僚の手によって、「可能な限り」は挿入されたことが実感されます。
 「障害者」の権利を否定しようとする自民党などの政治家や官僚との闘いをますます強めなければなりません。

●「障害者政策委員会」の人選を巡る攻防

 この政策委員会は、「障害者」を巡る政府の政策について、資料の提出を求めること、勧告を行うこと、そして、担当大臣の答弁を求めることができるものとして、こんどの障害者基本法改定法で規定された機関です。この人選について、火花が散る状況があります。
 「制度改革推進会議」の二人目の担当大臣であった岡崎議員は、「障害者」を過半数とするよう要請しました。初代の担当大臣であった福島みずほ議員は、現在の推進会議のメンバーを政策委員会のメンバーとすべきである、と主張し回答を求めます。なぜならば、推進会議発足の時点で、5年間続けることを閣議決定していたからです。
 これに対して、自民党の衛藤議員は、「発達障害者関係とか、あるいは福祉サービス事業の提供者」を入れるべきだ、と言います。彼の念頭にあるのは、「自立支援法改定法」を支持した団体の中の「発達障害」関係団体のことなのでしょう。また、「地方公共団体の関係者」ももっと入れるべきだと言います。
 この点について付帯決議の中では、次のように記されています。
 「八、障害者政策委員会の委員の人選に当たっては、障害者政策を幅広い国民の理解を得ながら進めていくという観点から、広く国民各層の声を障害者政策に反映できるよう、公平・中立を旨とすること。」
大連立政権が作られ、自民党などが政権に加わった場合、政策委員会がどのようになっていくのか、ここも重要な点であると思います。

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厚生労働省が第2期コメントを発表
障害者自立支援法延命の政治的誘導をゆるすな
(2011.6.23 障がい者制度改革推進会議総合福祉部会)

 6月23日の障がい者制度改革推進会議(以下「推進会議」)総合福祉部会において、第2期作業チームの各チームから検討結果が報告されました。それとともに、同日「第2期作業チーム報告書に対する厚生労働省からのコメント」(以下「コメント」)なる文書も出されました。第1期作業チーム報告に対するコメントと同じように、作業チーム報告が提起する内容を強く牽制するものになっています。
障害者自立支援法に変わる新法は、第1期および第2期作業チーム報告に基づいて組み立てられる骨格提言に基づいて法案が作られる予定です。厚労省コメントは、その過程に官僚の立場から介入を図り、作業チーム報告が提起する内容をできるだけ骨抜きにしようという意図をもった文書で、強く批判されなければなりません。
今回のコメントの基調も第1期コメントと同じく、「国民の理解が得られにくい」「財源の確保が難しい」「公平性・透明性の面から課題がある」というものですが、今回はさらに「一部改悪障害者自立支援法」(いわゆる「つなぎ法」)で実施済みとか、他省庁との調整が必要、あるいは厚労省の他の審議会で審議中というような論の立て方が出ています。総合福祉部会という枠組みそのものを軽視する姿勢を公然ととり始めたといえます。

今回のコメントも、全部で67ページにおよぶ大部なものです。各部会作業チームの報告ごとに意見をまとめています。それに沿ってポイントになりそうな部分のみ取り上げてみました。

1.「選択と決定・相談支援プロセス」部会作業チーム
    障害程度区分について、「制度の公平性、限られた資源の重点的な配分を担保している」として、全面擁護。「障害の程度については、全国一律に客観的に評価する指標が必要」と、必要な支援の質と量は当事者の生活状況によって異なるという「障害」認識の基本を依然として否定。
    「現行のサービス利用計画は、本人中心支援を重要な視点として策定されている」というのは明らかなウソであり、「協議調整とは、現行の市町村と本人との間の支給申請・支給決定を巡るやりとりとどのように異なるのか」というのは、現行の仕組みは単なる“聴き取り”であって“協議”ではないことを隠蔽するもの。
    さらにガイドラインについて、「(水準を)先進地域に合わせた場合に、他の地域がそれについていけるか??遅れている地域に合わせた場合??先進地域の水準が引き下げられるおそれ」と、マイナス要素をあげつらう。作業チームは「その地域の他の者との平等を基礎として生活することを可能とする支援の水準」と明記し、地域における平等性の確保を主眼においているが、コメントはその趣旨を意図的に無視。

2.「地域移行」部会作業チーム
    地域の基盤整備を進めるために時限立法で数年間にわたる「地域基盤整備戦略」を定めて集中的に予算をあてるという作業チームの提案に対して、厚労省は①各自治体の障害福祉計画②「つなぎ法」を始めとする4つの各種事業・制度③厚生労働科学研究を始めとする2つの研究・検討事業を列挙して、現行で同じような取り組みがされていると主張。つまり、現在の取り組みで足りているということ。

3.「地域生活の資源整備」部会作業チーム
    「障害者」主導で介助体制を組むパーソナルアシスタンスについて、「客観性・透明性・公平性をどのように担保するのか慎重に検討」と、第1期コメントに続いて否定。「障害者」本人の生活選択権を全面否定しているのと同じ。「一人ひとりに介護職員が常時付き添うということになれば、非常に多額の財源及び人材が必要となるため、国民の理解を得ながら検討する必要」というのも、第1期コメントと同じ。
    国庫負担基準については「国の厳しい財政状況を考慮し、国費を公平に配分する機能…今後とも必要」と固執。国の財政状況を最優先する姿勢を崩さない。

4.「利用者負担」部会作業チーム
    「負担能力がある方まで無料とすることは…他の法律や制度との整合性が求められる」「障害のある方についての支援のみ全て無料とすることについては、国民的な議論が必要」。負担能力があるというのは、どのレベルの所得のことか。一般の人よりも低い所得状況を強いられている状況を無視して、あたかも「障害者」だけが“特権”をあたえられるかのようなデマゴギー。

5.「報酬や人材確保等」部会作業チーム
    作業チームが提起する福祉職棒給表の法定化には、「民間事業者の給与水準を国が規制することは難しい」と難色を示し、現行体系での報酬改善も財源論を盾に消極的姿勢。民間事業者の安上がり雇用で現場を回したいという意図の表明。
    作業チーム報告は、現行の社会福祉士等の福祉専門職には当事者の立場に立った支援に欠けると指摘した上で、新しい仕組みにおける相談支援専門員は行政と対峙してでも「障害者」の自己決定を支えることを職務義務とするべきと提起。それに対してコメントは、「資格関係団体の意見を踏まえ」と問題を曖昧に。

6.「就労(労働及び雇用)」合同作業チーム
    ここで目につくのが「各省庁において…結論を得ることになっている」という言葉。全部で6ヵ所におよぶ。労働分野における差別禁止・合意的配慮・雇用率適用範囲の拡大・職場における支援のあり方等だが、いずれも労働・雇用の主管官庁である厚労省の守備範囲のはず。経営者レベルの判断を気にしていると思われる。経済産業省の判断を待つということか。
    それと、労働政策審議会の審議との兼ね合いを問題にしたところも2ヵ所と目立つ。

    作業チーム報告は、日中活動事業を「就労系事業」と「作業・活動系事業」の2つに再編してどちらを選ぶかは「障害者」本人の自己選択によるとしていることに対して、客観的な選別方法に固執して難色を示す。また、作業・活動系事業について、「『自立訓練』…といった他のサービス類型との関係について整理が必要」とし、「訓練」的要素を残すことを図っていると思われる。
    また作業チームは、就業上必要な支援を明らかにする総合的なアセスメントの仕組みを導入する仕組みを提起していることに対して、「客観的な評価指標づくりが困難」と論点をずらして否定。作業チームの提起するアセスメントシステムというのは、職場における人的配置の保障や企業と就労支援機関(家族)との連携を公的なシステムとしてどのように作るのかという問題意識だと思われる。「障害者」個人の評価ではない。

7.「医療(その他の医療一般)」合同作業チーム
    ①難病②医療的ケア③精神科医療の3つに分かれているが、コメントで非常に目立つのが、厚労省内部に設置された各種委員会で検討中という主張。全部で6ヵ所この医療分野では他の項目以上に、厚労省の囲い込み姿勢が露骨。

難病の概念整理をするために当事者が参画した審議会を設けることを提起する作業チームに対して、「どのような状況であれば法律に基づく給付の対象になるのか…どのような基準で認定するのか…具体的な改革の内容が明確にならなければ制度設計は難しい」と無視(実質的に拒否)。
医療的ケアの面では、家族以外の第三者(介護者)がケアをできるようにするという作業チームの提起に、消極的。
精神科医療の面では、地域移行に必要な条件整備について非常に消極的。
 A.住まい:生活保護の医療費扶助・住宅扶助の充実(単独支給)については、「(生活保護は)生活需要全般を過不足なく支えるもの…慎重に検討」
 B.居住地の選択権(特定の居住施設での生活を強いられない):
       改訂障害者基本法「可能な限り、どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保」を引き合いに出す。
 C.退院を促進するための医療費負担軽減:
       「費用負担の軽減は、入院期間の長期化や、認知症を含めた社会的入院を助長するおそれ」「地域で暮らせる社会資源の整備を優先すべき」。悪質なウソ。
また、病院内の不適切な対応の防止や、病院へのヘルパー派遣に対しても、「安全を確保する観点から…(当該病院の)看護要員に代替するような付き添いは禁止」と否定。

8.「障害児支援」合同作業チーム
    作業チームは、①児童福祉法において「障害児」の基本的権利を規定して、児童一般施策と「障害児」施策を重層的に保障する②地域社会の身近な場所において専門性の高い療育を活用できるようにすること③適切なケアマネジメントに基づいて、総合的な個別支援計画を制度化すること、を提起。
    これに対してコメントは、児童福祉法との兼ね合いでは児童福祉分野の関係者全体との合意が必要と牽制。作業チームは、「子ども・子育て会議」(仮称)や「子ども・子育て新システム事業計画」(仮称)への「障害児」関係者の参画を求めているが、厚労省は他省庁との検討が必要と逃げの姿勢。
    身近な場所での療育の提供については、「検討が必要」を乱発。個別支援計画については、「つなぎ法」で取り入れられているという姿勢。
    全体に共通する事項として作業チームは、権利擁護のシステムとして「オンブズパーソンの制度化」を提起。当然これは「障害」のある子どもの権利を守るためのものだが、厚労省は意図的に一般論のオンブズパーソンに問題を拡大。「児童福祉分野のその他の関係者による議論な場で議論…児童福祉全体の議論の中で決定されることが必要」と、逃げの姿勢。

 「推進会議が厚労省との団交の場になってしまっている」…推進会議のある部会メンバーの方の言葉です。厚労省は事務方にすぎません。部会での論議を充実したものにする準備をして、そこで出された提起を形にすることが、本来の仕事です。それとはまったく逆のことをしているわけで、そこには「障害者自立支援法を延命させたい」という国家官僚としての政治的意思が強く働いていることは間違いありません。
 8月30日の総合福祉部会で、新法の骨格提言がまとまりました。いよいよ法案作りの段階に入ります。そして、法案を執筆するのは、ほぼ間違いなく厚労省です。厚労省への監視を強めるとともに、「障害者」や支援者の大きな運動の力で、本当に「障害者」の立場に立った新しい法律案を作らせましょう。

(宮崎)

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