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2011年11月25日 (金)

怒りネット通信50号

10・12厚労省交渉報告

 
10月12日、衆議院第一議員会館・第一会議室において、怒りネット二十数名の参加で、厚生労働省に対する交渉が行われた。厚労省の出席者は、社会・援護局 障害保健福祉部から、▽企画課:立岡係長、加藤係長、小原係員、▽障害福祉課:川崎補佐、久保係長、峰島係員、▽精神障害保健課:高橋係長、羽鳥係長の8名。
 障害者自立支援法に替わる新たな「総合福祉法」について、来春にも法案が国会に上程されようとしている。障がい者制度革推進会議・総合福祉部会は8月30日に最終意見として「骨格提言」を提出した。提言は障害者福祉にとって画期的な内容となっており、新たな総合福祉法にこの内容を反映させることは多くの障害者の願いであろう。しかし法案を作成する厚生労働省は、これまで総合福祉部会に対して、2月と6月に極めて対抗的で否定的なコメントを出している。今回の交渉は、すでに具体的な法案作成に入っている厚生労働省にあらためて釘を刺し、また悪しき意図を暴露するために持たれた。
 交渉は、あらかじめ渡してある、2月と6月の厚労省コメントに関する質問に対して回答を求めたものだが、以下の報告は、質問書Ⅰ・Ⅴに対応する問答をまとめたものである(質問書は省略)。なお、質問書Ⅵの「精神障害者と人権」部分については、別に高見がまとめ、最後の章とした。
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Ⅰ 「国民の理解」とは?

 【久保】「厚生労働省は、障害者が介助を受けながら地域で生活することについて国民の理解が得られていないと考えているのか」との質問だが、決して国民の理解が得られていないとは思っていない。しかし、直ちに介護職員を一対一で貼り付けるのは、多くの財源が必要となり、国費の分配という観点から国民の理解が必要と思う。その場合、議員との調整、障害当事者との調整を経て、パブリックコメント等で広く意見を伺いながら進めていくことも考えられる。例えば全国会議で自治体に周知し、さらに地元に周知を広げていく方法もある。「当面どのような障害者を地域移行の対象としているのか」との質問は、障害の種別や程度に関わらず基本的にすべての障害者が地域移行の対象となる。
○「国民の理解を得るために、一人で生活できる訓練をすべき」とあるが、介助を必要とするのが障害者である。介助を受けて地域で自立生活している障害者は国民の理解を得られないというのか。
【久保】障害の種類や程度は千差万別であると認識している。就労したい人には使える制度があるが、すべての障害者に就労を適用することはなく、地域で暮らすことを排除する趣旨ではない。障害者に介助が不必要などとは思っていない。必要な人に必要な分の介助が出るよう会議等でも周知している。「一人で」とは「ヘルパーを使わない」という趣旨ではない。
○「一人ひとりにヘルパーが付き添うと多額の財源と人材が必要」という部分に続く文章である。「ヘルパーを使わないで」という趣旨になっているではないか。
【久保】障害は様々なのでの、一人で暮らしたい人も、ヘルパーを必要とする人もいる。ヘルパーが必要であればヘルパー制度があり、一人で自立したい人にはそのための制度もあり、相談支援体制も整っている。
○だったらそう書けばいい。必要ないのにヘルパー付けている人などいない。支給量が足りない中で、必要だから自腹切ってでも介護付けてる。
○今言われた内容ならこのような文章にはならない。こうした文章が出ることで障害者が追い詰められる。
【久保】厚生労働省のとりあえずのコメントであり不十分な点もある。今後詰めていく中で、障害団体との意見交換、与野党の先生方との調整等、制度化する中で検討していきたい。
○「国民の理解を得る」とは「理想論ではいかない」という趣旨と思うが、厚労省は障害者福祉を切り捨てる立場ではなく推進する立場であるはず。では国民の理解を深めるための具体的な施策は何か。
【久保】介護の具体的あり方は、様々な方法があり、色んな意見を聞いて進めていきたい。
○根本的に考え方が逆転している。障害者の生活は、障害者が街中・職場・学校にいる状態があってはじめて理解される。国民の理解を得て施策を進めるのではなく、施策を進めることによって理解を得る。
【久保】方法として、施策を充実させて地域移行を進めることは、省として取り組んでいる。施設を出たい人ができるように充実を図っている。不十分という指摘があるかも知れないが、一気に完全に改善することは難しいが、地域移行に向けた施策の充実に取り組んでおり、今後も取り組んでいきたい。

Ⅱ 2つの事業、障害者を分ける根拠は?

【峰島】8月30日に、障がい者制度改革推進会議総合福祉部会の提言がまとめられた。しかし就労支援に関しては、結論に至っていないとの記載がある通り、(就労系事業と作業・活動系事業の)選択に関しても明確な記載がない。したがって明確に答えることができない。
○総合福祉部会の骨格提言では、就労系事業と作業・活動系事業に分けることは明確に書かれており、選択は「本人の希望」と書かれている。
【峰島】就労系事業と、作業・活動系事業につき、それぞれ何をするかを分ける必要がある。どういう人を対象とするかはどうしても検討しなければならないが、詰められていない。
○なぜそのように人を分ける必要があるのか。障害者自立支援法の改定法で「能力・適性に応じて」という文言をなくした。厚労省は、それでも「能力・適性に応じて」分けたいのか。
【峰島】現在も就労移行支援A型・B型があるが、基本的には利用者の希望に応じて選べるようになっている。その流れで言うなら、希望でサービスが選択される可能性はある。
○「現在も希望に応じている」とあったが違う。まず就労移行に行って、そこで一般就労できない人が就労継続A、さらに就労継続Bというふうに分けられている。希望に応じてというのは違う。
○例えば、ストレッチャーで小規模作業所に通っている重度の障害者がパナソニックなどの企業で働きたいと希望したらどうするのか。
【峰島】現在、希望を尊重して支援していくことはある。就労移行支援等を活用することになる。今後の話については明確に答えられない。
○コメントだと、そういう場合、ストレッチャーの人はどちらに行くかを決めなければいけない。本人の希望でないなら、そういうストレッチャーの重度の人は一般企業で働けるのか、働けないのか。
【峰島】まだ明確に答えられない。繰り返しになるが、まだ結論を得ていないのでそういうコメントになった。
○はっきりしないと言いながら、厚労省は今法律の案文を書いているのではないのか。この部分を法律としてどう書こうとしているのか。
○コメントというのは、総合福祉部会の提言に対する厚労省の考え方ではないのか。
【峰島】就労系事業と作業・活動系事業。事業については中身がまだ定まっていないのでこういうコメントになった。
○厚労省は骨格提言を受けてすでに法文を書き始めているはず。それで中身がはっきりしないと言っているのは、提言のこの部分については無視するものと思える。訓練と能力で分けるというのは医療モデルそのものであり、権利条約を批准できないと強く感じる。

Ⅲ 「客観性・透明性・公平性」とは?

【久保】PA(パーソナルアシスタント)は、重度訪問介護等の発展形と聞いている。どのような形が望ましいか、様々な視点からの検討が必要と考えているが、そこで客観性・透明性・公平性とコメントした。障害の程度は色々なので、個々の状態に応じて支給決定がなされるべき。公平性とは画一的なサービス提供を押し付ける趣旨ではない。
○厚労省は、なぜ部会提言に異議を唱えるのか。
【久保】市町村が支給決定するので支給量は違ってくる。客観性といっても、程度区分で支給量を合わせるという趣旨ではない。透明性も、障害者のプライバシーに踏み込む趣旨ではなく、支給決定に際しての行政手続きの透明性という意味である。
○今まで透明性がなかったと思っているのか
【久保】今までなかったとは思っていないが、支給決定のプロセスには、透明性が求められるべきであり、障害者もその透明性を認識して支給決定を受けているはず。
○パーソナルアシスタントの導入。すなわち障害者側が必要に応じた介助を求めていくと、透明性・公平性・客観性が無くなると言っている。その根拠は何か。
【久保】コメントとして客観性・公平性と書いたが、障害が色々あるので、障害者によって必要量が違うのは認識している。それでも必要量の支給決定について、透明化の必要があると考える。障害程度区分2や3の人が24時間くれと言った場合、行政の判断、支給決定の手続きについて透明性が担保されるべきとコメントした。障害者の本位に立ったコメントである。
○障害者自立支援法においては、「公平性」と称して介護時間が削減された例が多くある。裁判にもなった。総合福祉部会はそうした問題点を指摘している。各市町村は障害者の自立生活を削減していくために「公平性」という言葉を使ってきた。また繰り返すのか。
【久保】必要量が支給決定されない例があることは承知している。障害の本当に重い人の支給量が低く、軽い人の支給量が高いのは公平性がない。そういうバランス的な観点で、公平性はある程度担保されるべき。色々な勘案事項を考慮して支給決定するようお願いしているが、自治体によっては適正な支給量が決定されていない場合があり、訴訟も起こっている。支給量について、不公平感が生じないような公平性という観点で考えたい。
○自治体間にバラツキが無いようにという趣旨でこのコメント書いたのか。
【久保】すべからく平たくするという趣旨ではない。自治体によって多少のバラツキはあると思うが、ある程度のレベルまで押し上げられればと思っている。
○パーソナルアシスタントは、今の重度訪問より報酬単価が低いのに、なぜ厚労省は推進しないのか。財源がいらないのに。
【久保】PA(パーソナルアシスタントは)、24時間張り付きという認識でよいか。
○24時間かどうかは、その人の必要性によって違う。
【久保】それなら重度訪問介護でいい。PAは四六時中付いているという意味ではないのか。必要なところだけ付けるのか。
○総合福祉部会は、ずっと張り付きとも、必要なところだけとも言ってはいない。
【久保】短く使う場合、パーソナルアシスタントと言うのだろうか
○それを決めるのが当事者である。行政が時間を決めるから問題。
【久保】お金の話だが、重度訪問介護とパーソナルアシスタント、契約の中身にもよるが、どちらの費用が多くかかるかは一概には言えない。厳密に試算してみないとわからない。いずれにしても、PAがそもそもふさわしくないということではない。われわれは障害に応じて支給決定されるべきと思っており、周知してきている。
○先ほど「本当は障害が軽いのに多く支給されている場合がある」と言われた。「必要な人に必要な介助を」と言うが、「本当は軽い」「必要ない」と言われて否定される例がある。本人の必要性の主張を否定するために「公平性」という言葉が使われている。
【久保】私も必要に応じて支給決定されるべきだとの趣旨で述べた。
○必要性を決めるのは障害当事者だというのが、総合福祉部会の提言である。それに「客観性」を対置して当事者の必要性を否定している。
【久保】障害者の必要度は障害者にしか分からない。僕は前からそう理解をしている。
○障害者の介助のプロセスに「客観性」などを持ち込むこと自体間違っている。必要度は本人の主観でしか決められない。
○現場から必要な介助時間が保証されていない例が報告されているが、これは自治体の責任ではない。厚労省がこうした単語を持ち出すことに原因がある。
【久保】障害者各個人が必要量を申請し、自治体がどれだけ支給決定するかは大きな問題。すべてを平たくすることはできないとしても、客観化の必要性はゼロではないと思っている。公平性も、行政としてある程度担保すべきであり、(障害者の側から見て)「私にどういう支給決定がされているか」という透明性も担保されるべきだと思っている。

Ⅳ 「障害程度区分」を残すのか?

【河崎】支給決定の仕組みについては、(障害程度区分の)指標は一定の役割を果たしていると認識している。障害の程度について、全国一律に客観的に評価する指標が必要。その際、社会的状況は客観化しにくいため、ケアマネジメントにおいて考慮することが考えられる。程度区分の変更やサービス規準が、地域や担当職員によって著しく異なってはいけない。支給決定プロセス全体については、現在省内で検討中なので個々具体的に答えることはできない。
○厚労省は障害程度区分をなくすつもりはないのか。
【河崎】総合福祉部会の中で、色々と問題が指摘されていることは十分認識している。ただ障害程度区分を使用しないことを前提に考えるのか、あるいは改善することで対応できないのか検討している。
○総合福祉部会は障害程度区分を廃止して支援ガイドラインを作ると言っている。
【河崎】廃止する、廃止しないも含めて今現在検討している。現在省内では、総合福祉部会の骨格提言について、どこが法律を改正する必要があるのか、また法改正ではなく制度の運用レベルで改善できるのか検討している。提言に盛り込まれている中身について、すべてできるかどうかは約束できない。
○障害程度区分が必要だということか
【河崎】総合福祉部会は、厚生労働省の事務方が「こういった議論をして下さい」との議題を検討してもらっているわけではない。障害当事者や事業所の方々が、検討項目を含めて義論を進めてきた。厚労省側としては必要なデーターの提供や、ポイントポイントごとの省としてのコメントを出した。現行制度の前提に立った分も含めてコメントしているので、今の制度が無くなった前提でのコメントは難しい。
○骨格提言を受けても変える必要は無いと考えているのか。
【河崎】自立支援法に替わる新しい総合法制について、題名をどのようにするのかも含めて検討している最中なので、出された骨格提言をどのように新しい法制に反映していくのかも検討しているところ。したがって提言について、できる部分できない部分等を具体的に答えられない。
○障害程度区分を残す理由はなにか
【河崎】今の障害程度区分について、色々と批判や意見があるが、一定の役割は果たしているとの認識に立っている。やはり一律的に客観的に評価する指標は、ある時点では必要。ただ一律の客観的評価で全部を決めてしまうのは難しく、社会的状況が客観化しにくいため、ケアマネジメントにおいて考慮することが考えられる。
○支援ガイドラインについてはどのような検討が進められているのか
【河崎】個々の支援ガイドラインをどうするのか、例えば今の障害程度区分をどうするのかも含めて、支給決定プロセス全体について検討中である。個々具体的にどうしていくかは説明できる状況ではない。

市町村の基盤整備について

○支援ガイドラインについて、総合福祉部会では地域で生きていく権利を実現するとか、地域の人達と平等の権利を享有するものとして出している。厚労省はその基本理念を書かずに市町村間の基盤の違いを理由に難色を示している。そもそも厚労省は市町村間の基盤整備についてどう考えるか。
【立岡】市町村間でサービス基盤の整備状況に違いがあると認識している。各都道府県や市町村にサービス量の見込みを定めて、障害福祉計画の策定を義務付け、計画的なサービス提供体制の整備を進めることとしている。障害福祉計画の策定に当たっては、必要なサービスや相談支援等が地域において計画的に提供されるように、障害者の地域における実情やニーズを踏まえて、サービス量等の見込みを定めることとしており、厚生労働省としては本計画に基づいて、各自治体で必要な整備が進められるものと考えている。

実態調査の調査項目について

○12月1日から始まるといわれる障害者の実態調査の質問項目。介助時間の最大選択肢が「週21時間以上」とあるが、これは何か。
【加藤】全国在宅障害者実態調査の調査項目については試行調査を実施した厚生労働研究の研究班が原案を作成し、全国障害者実態調査に関するワーキンググループ(総合福祉部会の部会長と副部会長などで構成)おいて検討し設定している。また調査項目については障害者団体へのヒアリングを実施したほか、厚生労働省のホームページで広く意見を聞きながら検討しており、総合福祉部会にも随時、検討状況を報告して意見を聞きながら検討してきた。時間数の選択肢については、平成18年の身体障害者実態調査において、1回当たりの利用実績で最も多く利用している場合の選択肢が「3時間以上」(一週間あたり21時間以上)とあり、それも参考として設定されている。
○障害者の実態を把握しているとは到底思えない。裁判では1日で20時間必要という判決が出ている。週21時間とは何ごとか
【加藤】この選択肢もホームページ等で意見募集したが、時間数に意見はなかった。介助の必要時間数は実態が掴みにくい。この項目とは別に、日常の「生活のしづらさ」を把握する質問項目を設けており、時間数ではないが、食事・入浴・洗濯等について、それぞれ一人でできるのか、手伝ってもらえばできるのか、全介助が必要なのかも入れており、そういった項目と組み合わせて見ることによって、食事・入浴・洗濯に全部介助が必要な人を把握できるようになっている。12月に実施する今回の調査は準備が進んでいるので、次回以降の調査において調査項目を検討したい。
○一日3時間のレベルに世論を誘導しようとしているのではないのか。
【加藤】そのような意図はない。平成18年の身体障害者実態調査の結果では、ホームヘルプサービスを利用した人のうち、1回あたりの平均利用時間が3時間以上という人の割合が8%であった。今回は調査対象を広げて幅広く調査する。この選択肢ですべて把握できるわけではないが、今回の調査はこれでやる。
○平成18(2006)年調査は、自立支援法下での調査。自立支援法のもとで障害者の生活は歪められている。調査結果は法によって制限されたものであり実態ではない。

Ⅴ 地域主権戦略大綱は、国の責任放棄では?

○総合福祉部会の考え方は憲法に則った考え方。地域主権戦略大綱に基づく否定は憲法違反ではないのか。
【小原】地域主権戦略大綱は内閣府の地域主権戦略会議が中心となって取りまとめた閣議決定。各省はこれに沿って法案の作成や施策の立案を進めることが求められている。厚生労働省としては、障害福祉施策における最低限の規準を定める等のことは必要であると考えているが、一方で地域主権戦略大綱に記載されている通り、地域住民が主体となって、行政サービスの地域間差異など、結果に対する責任を負いつつ、物事を決めていく考え方が大切であると考えている。またこの地域主権戦略大綱が、憲法14条および25条を否定するか否かについて言う立場にはない。地域主権戦略大綱は、地域主権改革の意義が、日本国憲法の理念のもとに定義づけされている通り、否定するものではなく、整合性にも配慮されたものと聞いている。また国の本来果たすべき役割も、具体的な内容については答えられない。内閣府に照会してほしい。
○答えられないようなことをなぜコメントに書くのか
【小原】地域主権戦略大綱の考え方にも踏まえつつ、ナショナルミニマムの部分、最低限の規準を定めることは必要であると考えている。
○総合福祉部会が出したような国の責任は取っていくと確認していいのか
【小原】取っていくか否か、検討中なので答えられない。

[Ⅵ]精神医療と人権(この章のみ高見がまとめ)
○総合福祉部会は、精神保健福祉法や医療観察法で精神医療が規定されていることに、人権上問題がある、と指摘していますが、これについて2月コメントの中で貴省は次のように述べています(p33)。
 「現行の精神保健福祉法等においては、指定医による診察や入院措置等についての本人への書面告知、入院患者の病状等に関する定期的な報告や患者本人等からの退院請求・処遇改善請求について第三者機関である精神医療審査会による審査を義務づけるなど、精神障害者の人権確保に配慮した規定を設けています。」
 この点について質問します。
(精神障害者についての厚労省コメントだけでは、厚労省の考えが明らかにならないため、質問の範囲を広げて質問した。回答は文書によるものと、口頭によるものがある。口頭によるもので文書にはないものはテープ起こしをした。)
(回答者は、厚生労働省精神障害保健課精神医療係係長高橋氏、医療観察法医療体制推進室羽島係長。)
○内科や外科では、一人ひとりの入院患者はカーテンで仕切られたベッドを利用していますが、精神科では大部屋に雑魚寝の場合が多くみられます。また精神科で個室と言うと保護室になってしまいますが、そこの環境は到底一人でゆっくり休むと言うものではありません。これらの設置基準は法律や規則などでどのように定められているのですか。
【高橋】「資料として紙で渡してあるが、医療法上と通知2本で定めている。医療法では精神に限っていないが、病床の床面積の基準が定められていて、精神病室については精神疾患の特性に踏まえた適切な医療の提供及び患者の保護のために必要な方法を講ずることという記載がある。病室の構造は要約すると鉄格子等必ずつけるという取り扱いは止めてくれということです。建築基準の改正通知が出ていて、病室はベッド式、和式を問わず生活場所としての雰囲気を出すことが必要であると定められている。面積、建物の構造上、窓の採光、通風機能の面を定めている。
大部屋に雑魚寝という指摘だが、確かにそういう病院はあると認識しています。毎年全国の精神科病院に対して都道府県が監査を必ず1回入ることになっていて、それに加えて厚生労働本省の方で、全部の病院とは言いませんが、いくつかの病院には直接入っていて雑魚寝の場合もあったということで報告が上がってきている。患者のプライバシー等あるので、間仕切りを設けるよう指導をさせていただいている。」
【文書回答】医療法施行規則で病室の床面積が定められている(*詳細な数値などを示している)(*保護室の設置基準についての資料あり。)
○任意入院の患者数と、その中で閉鎖処遇を受けている患者数を示してください。また、措置入院の患者数とその中で閉鎖処遇を受けている患者数、及び、医療保護入院の患者数とその中で閉鎖処遇を受けている患者数も示してください。
【文書回答】平成20年の630調査(6月30日の調査なのでこう呼ぶ)で、任意入院患者数 184573人 うち開放処遇を制限:33674人(約18%)
措置入院患者数1803人 うち終日閉鎖1701人(約94%)
○630調査で任意入院の全閉鎖、夜間閉鎖をあわせると約17万人という数値があるが、この違いは何か?
【高橋】630調査の2の精神科病院在院患者の状況というところの表で見ている。(630調査の違うページで違う数値が出ている。どういう数値の違いなのか不明であった。)
○貴省の把握している精神病院における社会的入院と判断される人の数を示してください。
【文書回答】社会的入院数(受け入れ条件が整えば退院可能)、平成20年度619千人(入院患者の20.2%)(患者調査)(61.9千人の間違いと思われる)※患者調査における「退院可能精神障害者数」は医療機関の主観によるものであるところから、目標値とするには適当でなく、「今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会」報告書(平成21年9月24日)(別紙抜粋)においても、「別の客観的な指標」が必要である旨が提言されている。
○以前言われた数値から1万人も減っているのはなぜか?
【高橋】「これは下に小さな字で書かせていただいたんですが、結局受け入れ条件が整えば退院可能という判断がですね、医療機関の主観によっておりまして、その都度の630の時に多少変動があるということで、さっぴきで退院した、地域定着したひとが何人いるかという事ではなくなっている。調査のとり方がそうなっているということでございます。」
○退院した数は2819人ということですね。
【高橋】「そうですね。」
○また、現行の精神障害者地域移行・地域定着支援事業で、地域に定着した人の数を示してください。地域に定着できたとする判断の根拠と、どのような住まい(グループホーム、一般住宅など)かの内訳も示してください。
【文書回答】精神障害者地域移行・地域定着支援事業で地域に定着した人数は、(平成15~21年度まで(7年間)で)2819人である。(別紙あり。平成15~17年度まではモデル事業、平成18~19年度までは精神障害者退院促進支援事業として実施。平成20~21年度については、精神障害者地域移行支援特別対策事業として実施。)
平成21年度内に地域移行(退院)時の居住先。「支援に関わらず確保されていた自宅」25.5%、「退院に際し新たに契約した借家」24.8%、「共同生活援助(グループホーム)」20.3%、他には、共同生活介護(ケアホーム)、精神障害者福祉ホームなど。
○精神医療審査会について、ここ5年の患者側の申し立て数、審査にかけられた数、申し立てから審査結果が出るまでに要した日数(最長と平均)を示してください。
【文書回答】(5年分の回答があるが平成21年のみ記載する)
★退院請求 請求件数2909、審査件数2091、審査の結果適当とした件数2016、審査の結果不適当とした件数62。(2.1%)≪()内は高見による。≫
★処遇改善請求 請求件数384、審査件数265、審査の結果適当とした件数251、審査の結果不適当とした件数12(3.1%)≪()内は高見による≫
★請求受理から結果通知までの平均日数 32.5 
請求受理から結果通知までの最長日数87。
○心神喪失等医療観察法について、以下のデータを示してください。法施行後から現在までの法の対象となった患者の自殺数、自殺未遂者数、死因の不明な患者数、死因の不明な理由(いずれも入院と通院を分けて)
【羽鳥】入院者で自殺4人、病死2人、死因不明者はいない。
「通院処遇の方につきましては法律自体が法務省との共管の法律になりまして、通院処遇の方は保護観察所で社会復帰調整官の方が対象者をケアしていくという形をとっておりまして、厚労省では詳細な数値というものを承知していないという状況でございます。」
○観察法で現在入院中の人の詳細な在院日数(例えば、月数ごとの人数など)
【羽鳥】平成17年7月15日の法施行以来平成20年7月31日までで、退院者608人、平均在院日数574日。(平成22年10月の国会報告による)
平成20年の630調査で在院日数1年から5年のものは118人。5年以上のものはいない。(法施行5年であり当たり前だが。高見記)
○単科の精神病院をなくしたイタリアの実践について、貴省の見解を示してください。
【高橋】「厚生労働省として諸外国の制度に対する見解はない。担当者としての見解を述べさせていただく。イタリアの場合は日本と。東邦大の水野先生が研究されているようで、それを読んでいるのだが、日本とに違いはやはりありまして、確かに精神科病院、イタリアの場合強制的というか、ゼロに持って行った。単科の病院については。そういう場合に、日本でも7万人も退院できない方がいる中で、急に7万人も入れる病院を無くしてしまうということになりますと、それだけの受け入れする地域がなければ成り立たないということがある。イタリアの場合、地域間の格差等により、宿舎、退院先がないままストリートピープルになってしまったという悲しい状況もあるので。諸外国の状況といえども精神科病院の病床数を減らすという意味でイタリアの実践を病床数を考える上で、重要な要素となるので検討していきたい。現在、保護者制度の検討会をしていて、そこでもイタリアに限らず、諸外国の例を紹介しながら議論を進めて行きたいと思っている。」


Ⅵ章の総評 Ⅵ章につき、精神障害者でないと分かりにくいやり取りとなったので、報告者の高見の意見を以下書くことにしたことを御了解いただきたい。
社会的入院7万人(6万人と言うが)を退院させる時に、受け入れ先がない中で病院をなくすとストリートピープルになると言うが、地域の受け入れ先を作らないのは厚労省そのものである。7年間の制度による、社会的入院からの退院者数2819人、21年度で、うち公的な受け入れ先50%?自宅25%、新規アパート25%という数値を前にして、よくこんなことがいえるなと思うのは当然である。
ただ、厚労省は2819人という回答をしているが、本省以外で自治体独自の退院支援の取り組みが大阪府で行われている。大阪府以外については不知だが、この数がカウントされていない回答である。ただし、大阪府の事業でも2千数百人と大勢に影響を与えるものではないが、府下の社会的入院は解消したと言っているようである。
イタリアでも、バザリア改革を快く思わない病院当局者が、受け入れ先の確保をしないままに患者を放り出したということはあるようだ。それを盾にして、イタリアでもストリートピープルが生まれたと、バザリア改革にけち付けするのはいかがなものか。
任意入院で185千人中、17万人が全閉鎖、夜間閉鎖の病棟にいる。
改善しているというがいまだに雑魚寝の病室もある。原則開放の個室でないと安心して眠れないと思うがそれには程遠いのが現状である。
厚労省の言う第3者機関では、退院・処遇改善の請求もほとんど通らない(2.1%、3.1%)のが現状である。「精神障害者」の実感とかけ離れた数値である。総合福祉部会の挙げる第三者機関の必要性がかえって証明されている。
 これでは精神障害者の人権が守られているとは到底言えない。
総合福祉部会の骨格提言にあるように、OECD平均値並みの予算をつけて、退院促進の公的施設、民間住宅の確保を進めるべきである。精神科医療に今でも1兆5千億円が使われていると言う数値も聞かれる中で、使途が間違っている。
7万人もの人権が不当に侵害されている中、精神障害者福祉等言ったところで大嘘としか言いようがない。直ちに地域の受け入れ先を作って退院させるべきだ。
厚労省の官僚が挙げた、東邦大の水野氏の書いた(編集した)本を研究対象として読み始めている。水野氏はイタリアへの留学経験がある。官僚の言ったイタリアについての研究ではなく、病院・診療所で待っているのではなく、地域に出て行って診療を行うことについての本。東京の「みなとネット21」、福島県の「ささがわプロジェクト」を肯定的に取り上げている。「みなとネット21」は東京港区で「精神障害者」の地域生活をサポートするNPO。「ささがわプロジェクト」は既存の精神病院の分院を解散して地域生活に繋げた例。関西では京都の高木俊介医師らの「ACT-K」が有名だが、水野氏の研究の対象外。
「病」者集団が言う、厚労省の行う「アウトリーチ」批判は、保険医療では本人同意のない医療は出来ないところ、予算をつけて本人同意抜きの強制医療を行うことを批判したもの。このような「地域の施設化」をどのように回避しながら、「精神障害者」の地域自立生活をサポートするのか?患者会の役割は?兵庫県の実施しているピアサポート電話をどのようにそこに繋げるのか?といった問題意識でさらに研究していきたい。
「地域の施設化」とは病院・診療所を出て地域医療を進める上で、地域が巨大な施設に転化することを糾すもの。強制権限を持った「アウトリーチ」ではだめということ。医療機関などに見つからずに地域生活をしている「病者」を探し出して強制医療を行うことは、保健所や、差別的な地域住民の通報により介入し、強制入院に繋げることになる。厚労省が実施している「アウトリーチ」ではそうなる。
厚労省の「アウトリーチ」試行は3県(奈良など)で実施されているようだが、詳細については今後、質問していきたい。奈良では専任の職員は2名しか配置されず、医師等は病院等と兼務している状態。予算の問題でそうなっている。

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