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2011年11月 2日 (水)

毎日新聞より

(10月31日)
■総合福祉法どう実現
■ニュース争論

 障害者自立支援法の廃止と国連障害者権利条約批准は民主党の政権公約の目玉の一つだ。そのために内閣府に障がい者制度改革推進会議を設置した。改正障害者基本法が成立し、現在の焦点は自立支援法に代わる総合福祉法(仮称)の制定だ。車いすの弁護士で現在は推進会議担当室長の東俊裕氏と、野沢和弘論説委員が語り合った。 【写真・小林努】

◆「骨格提言」とは
野沢:自立支援法を廃止した後の総合福祉法について55人もの障害関係者が議論に参加した。現在「骨格提言」がまとまり厚生労働省が法案作成に当たることになったが、その内容を説明してください。

東:制度の谷間をなくす観点から、障害者手帳を持っている人だけでなく心身機能に何らかの支障のある人も対象に含める。福祉サービスの支給決定の仕組みも大幅に変える。現在は障害程度区分に応じてサービスを提供しているが、個々の障害者の生活実態に沿ったものにする。サービス体系は自立支援法でずいぶん整理されたが当初は介護保険との統合が念頭にあったため、たとえばグループホームもケアホームも実態は変わらないのに「訓練等給付」と「介護給付」に分けられた。それを生活実態に合った体系に変える。障害者の生活の場を地域に移行すること、利用者負担、相談支援、権利擁護も意義のある提言になった。

野沢:理想的だが本当に実現できるのですか?

東:自立支援法では福祉サービスの枠から外れていた精神障害を入れ、財政的に義務的経費にするなど、前進もあった。しかし、障害者の施設や病院から地域への移行は十分には進んでいない。制度的な阻害要因があるのではないか。訪問系サービスの国産負担基準が、事実上の上限になってしまった。地域の社会資源は伸びないし、財政力の弱い自治体はちゃんとやろうとしない。方向性を見据えた予算配分と財源問題の見通しをつける必要がある。

◆膨らむ財政負担
野沢:やはり財政負担は大きく膨らみそうですね。

東:制度が落ち着けば、いずれ平準化するとも言われているが、骨格提言も一般住民の生活以上のものを望んでいるわけではない。「他との平等において」と書いてある。市町村で試行事業を積み重ねてガイドラインを作り、生活の実態に即した支援プランを決める。決して青天井ではない。

野沢:自立支援法の前の支援費制度は、ガイドヘルプなどの利用が膨れ上がり財政破綻した。実際にサービスを利用すると、ニーズはどんどん変化していく。標準を作っても、利用者のニーズは良いサービスであるほど予想を超えて増えていく。

東:それは、正しい評価とは言えない。そもそも、地域生活のニーズをどれだけ把握してきたのか、不十分な制度のツケが回ってきたからに他ならない。国として知的障害や精神障害の人の地域生活にどのくらい認識があったのか。国は反省した上でインクルーシブな(包み込む)社会をどう作るかといった視点から必要な予算や財源の新たな枠組みを示さなければならない。

野沢:民主党は予算の組み替えで17兆円は捻出できると言って政権を取ったが、財源は捻出できなかった。大幅に政策を修正してきたが、障害者の総合福祉法は全くその流れとは別に進んできた。骨格提言の通りに制度改革すると、少なくとも現在の2倍や3倍の予算が必要になると言われている。

東 OECD(経済協力開発機構)の水準から見ればそうなる。しかし、骨格提言では即座に予算を増やせとは言っていない。財政の現状認識はある。

野沢:ある意味で革命的な改革です。厚労省というより政治主導を発揮しなければできない。09年の総選挙の時、私は「民主は本気なのか」という社説(視点)を書いた。理想的な新制度を作ると言えば票は得られるかもしれないが、財源の裏付けや戦略はあるのかと。それから2年余。税と社会保障の一体改革でも消費増税の使途には障害者は含まれていない。担当大臣は今、6人目? 本気どころか「勝手にやらせておけ」みたいにしか見えない。

東:それは違う。民主党を中心とした新政権の制度改革に向けた挑戦は評価すべきだ。その上での話だが、制度改革にとって財源問題を含め高いハードルがあるのも現実だ。政治がそれを乗り越える筋道を示し強力なリーダーシップを発揮することが求められる。

野沢:民主党の厚生労働部門会議の座長が長妻昭氏になった。良妻氏は自立支援法廃止を宣言し、総合福祉法を作る路線を敷いた当時の厚労相。「ハシゴをはずすな」と言いたいですね。現政権は財政再建路線を鮮明に打ち出しており、年金も医療も制度内で削減できるものを提示しなければ予算増は認められない。障害者の骨格提書にその発想はないか。

東:事業者の努力や関係者の連携の在り方など、検討すべき事項もあるかもしれないが、障害福祉サービス分野の予算規模や働く人の賃金実態から見て制度内削減を検討するような余裕はない。骨格提言も最初から全般的にやれとまでは言っていない。新たな枠組みを示した上で四つくらいの時間軸を入れている。自立支援法も移行に5年間の猶予を設けた経緯があり、知恵を絞ればできない話ではないと思う。

◆社会の利益にも
野沢:障害者に予算を回すと社会は良くなりますか。

東:障害者は740万人、発達障害や難病の人を含めたら1000万人を超す。4人家族なら関係者は4000万人以上。精神的・経済的負担を受けている家族も多い。障害があっても自立生活ができれば、少子高齢化の中で家族も自立して働くなどの社会貢献ができる。重度障害者が社会に出るとバリアーがなくなって、お年寄り、妊婦や子連れの人も活動しやすくなる。消費活動や観光も盛んになり、内需の掘り起こしにもなる。福祉予算の多くは人件費だ。障害者はどんな地方にもおり、雇用や地元経済に責献している。

野沢:最近は都心のオフィスでも知的障害者などが働くようになった。そうした企業からは「私たちはグローバル競争の中で余分なものを削って生き残ってきたが、大事なものまでそぎ落としたような気がしてくる。障害者は周囲のやる気を高め社内を明るくしている」とよく聞きます。

東:被災地の映像を毎日見ていると誰しも無関心でいられなくなる。ふだんは気づかないものが出てくる。障害者も同じで、彼らが地域にいると連帯とか支え合いとか人間が本来もっているもの、社会の一番基礎的なつながりが出てくる。人間の絆は家族をつなぎ地域をつなぎ、ひいては国家をつなぐことにもなる。障害者が小さいころから学校でも分離されず、一貫して世の中で見える形で存在することが社会をしっかりとまとめる絆になると思う。

★障害関係者や各党は協力して難関越えよ
 話して一言 障害者自立支援法には批判が強いが障害者雇用や多様なサービスの拡充は同法によって進んできた。予算も前年度比で毎年10%前後伸びてきた。それを廃して作られる総合福祉法の骨格提言を見ると実に理想的ではある。だが、財源確保を含め実現にはいくつものハードルがある。国民の理解は得られるか。民主党や厚労省が本気にならなければ法案偲できず、野党の協力がなければ国会で成立はしない。政権交代や「ねじれ図会」が当たり前の時代、相手の悪い点を批判するだけでは何も進まない。そうしたことを障害関係者も各党も学んで克服する機会にできるかどうかが問われている。 (野沢)

◇地域生活を当たり前に 東俊裕氏
内閣府障がい者改革推進会議担当室長
ひがし・としひろ 53年生まれ。中央大法学部卒。弁護士。熊本学園大教授を経て現職。国連障害者権利条約緋本政府代表団顧問。

◇民主 本気に見えない 野沢和弘 本紙論説委員
のざわ・かずひろ 59年生まれ。東京本社社会部障害者虐待取材班キャップなどを経て現職。内閣府障がい者制度改革推進会議総合福祉部会委員。

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