« 7・29医療観察法廃止全国集会・報告 | トップページ | 8・6ヒロシマ平和の夕べ »

2012年8月 1日 (水)

日弁連会長声明

社会保障制度改革推進法案に反対する会長声明

民主党、自由民主党及び公明党が今国会で成立を図ることにつき合意した社会保障制度改革推進法案(以下「推進法案」という。)は、「安定した財源の確保」「受益と負担の均衡」「持続可能な社会保障制度」(1条)の名の下に、国の責任を、「家族相互及び国民相互の助け合いの仕組み」を通じた個人の自立の支援に矮小化するものであり(2条1号)、国による生存権保障及び社会保障制度の理念そのものを否定するに等しく、日本国憲法25条1項及び2項に抵触するおそれがある。

すなわち、推進法案(2条3号)は、「年金、医療及び介護においては、社会保険制度を基本とし、国及び地方公共団体の負担は、社会保険料負担に係る国民の負担の適正化に充てることを基本とする」として、年金・医療・介護の主たる財源を国民が負担する社会保険料に求め、国と地方の負担については補助的・限定的なものと位置付けており、大幅に公費負担の割合を低下させることが懸念される。

また、推進法案(2条4号)は、社会保障給付に要する公費負担の費用は、消費税及び地方消費税の収入を充てるものとするとしているが、財源の確保は、憲法13条、14条、25条、29条などから導かれる応能負担原則の下、所得再分配や資産課税の強化等の担税力のあるところからなされなければならない。

さらに、推進法案(4条)は、新設する社会保障制度改革国民会議の審議を経て社会保障制度改革を具体化する立法措置を講じるものとしているが、社会保障制度改革をめぐる国民的議論は、全国民の代表である国会において、全ての政党・会派が参加し、審議の全過程を国民に公開すべきであり、内閣総理大臣が任命する僅か20名の委員による審議に委ねることは民主主義の観点から不適切である。

最後に、推進法案(附則2条)は、「生活保護制度の見直し」として、不正受給者への厳格な対処、給付水準の適正化など、必要な見直しを実施するとしている。しかし、生活保護受給者の増加は不正受給者の増加によるものではなく、無年金・低年金の高齢者の増加と非正規雇用への置き換えにより不安定就労や低賃金労働が増大したことが主たる要因である。むしろ、本来生活保護が必要な方の2割程度しか生活保護が行き届いていないことこそ問題である。給付水準の見直しについては、最も低い所得階層の消費支出との比較により、保護基準を引き下げることになりかねず、個人の尊厳の観点からも是認できない。

当連合会は、2011年の第54回人権擁護大会において、「希望社会の実現のため、社会保障のグランドデザイン策定を求める決議」を決議した。しかし、推進法案は、上記のとおり、社会保障制度の根本的改悪、削減を目指すものとなっており、当連合会の決議に真っ向から反する法案である。

よって、当連合会は、今国会で推進法案を成立させることに強く反対するものである。
2012年(平成24年)6月25日

日本弁護士連合会
会長  山岸 憲司

|

« 7・29医療観察法廃止全国集会・報告 | トップページ | 8・6ヒロシマ平和の夕べ »

-理論的深化のために-」カテゴリの記事

コメント

社会保障改悪で消費税増税すれば、さらに格差を生む。
社会保障が十分改善される(特に年金制度の公平性が十分改善する)までは、消費税増税をして欲しくないですね。

投稿: 匿名 | 2012年8月 7日 (火) 23時03分

残念ながら内閣不信任案が否決された。
民主党は社会保障改悪で消費税増税強行した。しかも、障害者総合福祉法案まで合意破りをした。もう民主党には票を入れたくありません。

投稿: 東京 | 2012年8月 9日 (木) 20時04分

自民党の谷垣氏と公明党は見えないところで民主党の野田首相と手を結んでいるにちがいないだろう。
本当に近いうちにというのは、今月か来月までに衆議院を解散するのか?注視しないわけにはいかないし、次回の衆議院選後の民自公3党の動きも見放せないだろう。

投稿: 残念だ | 2012年8月10日 (金) 11時09分

社会保障制度改革推進法案は自民党が主導したそうです。

投稿: | 2012年8月23日 (木) 19時56分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/517951/55331750

この記事へのトラックバック一覧です: 日弁連会長声明:

« 7・29医療観察法廃止全国集会・報告 | トップページ | 8・6ヒロシマ平和の夕べ »