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2012年9月 6日 (木)

社会保障制度改革推進法成立を弾劾する

声明
社会保障制度改革推進法成立を弾劾する
2012年9月 6日
怒っているぞ!障害者きりすて!全国ネットワーク

社会保障制度改革推進法案が、本年8月10日、参院本会議で民主・国民新党・自民・公明の与野党各党の賛成多数(194票)により可決、成立した(反対は、国民の生活、みんな、共産、社民、改革、みどり、大地、無所属43票)。

 「怒っているぞ!障害者きりすて!全国ネットワーク」(「怒りネット」)は、これを弾劾する。同法は、一言でいって、社会保障制度解体推進法である。同法はいう。「社会保障制度改革は」「家族相互及び国民相互の助け合いの仕組みを通じてその実現を支援していくこと」(第二条一号)、「年金、医療及び介護においては、社会保険制度を基本」(同条三号)とする、「社会保障給付に要する費用に係る国及び地方公共団体の負担の主要な財源には、消費税及び地方消費税の収入を充てるものとすること」(同条四号)、「医療保険制度については、・・(略)・・、保険給付の対象となる療養の範囲の適正化等を図ること」(第六条2号)、「保健医療サービス及び福祉サービス(以下「介護サービス」という。)の範囲の適正化等による介護サービスの効率化及び重点化を図る」(第7条)、どれをとっても、社会保障・福祉に対する国や自治体の責任を今以上に投げ捨てようとするものに他ならない。

 特に見過ごせないのは、第2条に「家族相互」という文言が入ったことである。介護保険成立はすでに社会保障・福祉の公的責任の解体ではあった。しかし、「介護の社会化」が建前であった。即ち、高齢者問題は、家族でのみ担えるものでなく社会全体で担うものという考えで作られたはずである。しかし、今回、「家族相互」とい文言が入り、再び「家族」の役割が強調されたのである。しかも、それが政策提言とかそういったものでなく、法の文言となったことは極めて重大である。障害を持つものは、家族からさえ、疎外・抑圧されている現状がある。私たちにとって家族からの自立こそが求められているのである。


 同法は、以上を基調に、社会保障・福祉を限りなく自己責任原則に追いやろうとしている。

第1に、保険制度を基本とするということである。
社会保険制度とは、保険料の支払いと引き換えに給付を受けるということを基本とすることは言うまでもない。即ち、社会保障・福祉を売りかいすることが基本的在り方である。同法第2条3項は、「国及び地方公共団体の負担は、社会保険料に係る国民の負担の適正化に充てることを基本とする」としている。極々一部にしか「国及び地方公共団体の負担」は充てないとしか私たちには読めない。厚労省は一貫して、障害者福祉を介護保険に統合しようとしてきた。障害者自立支援法一部改正及び今回の障害者総合支援法の成立は、介護保険統合への布石である。今回の社会保障制度改革推進法成立により、その危険性がいっそう高まったと私たちは強く認識する。

第2に、「国及び地方公共団体の負担」の主要な財源を消費税とすることである。
消費税が所得に対する逆進性をもつものであることは言うまでもない。貧しきものがより負担するということが社会保障・福祉といえるであろうか? 
 そもそも、社会福祉・保障は、市場原理では多くの民衆が生きていけない、そうした中、労働者・民衆の長い闘いの中で、国や資本化に社会保証の拡充を強制してきたのである。
 社会保障・福祉は、所得や収入が増えるほど支払う税率も高くなるという累進課税をもって所得の再分配を行うことでしか成り立たないのである。社会保障・福祉は、本来、国家等行政が、その財源を持って行なうものである。財源の中心は税であることは言うまでもない。税の制度が、所得に対して累進税をもたず、富める者も貧しきものも同じ税率、あるいは消費税のように所得の多寡と対応しないものであれば、それは結局、それぞれが自己負担しているのとなんら異ならない。
同法は、第一条で、「所得税法等の一部を改正する法律(平成二十一年法律第十三号)附則第百四条の規定の趣旨を踏まえて」と言っているが、同附則でさえ「個人所得課税については、格差の是正及び所得再配分機能の回復の観点から、各種控除及び税率構造を見直し、最高税率及び給与所得控除の上限の調整等により高所得者の税負担を引き上げる」、あるいは「資産課税については、格差の固定化の防止、老後における扶養の社会化の進展への対処等の観点から、相続税の課税ベース、税率構造等を見直し、負担の適正化を検討する」としているのである。即ち、格差の是正・所得再分配の必要性に触れているのである。しかしながら、社会保障制度改革推進法はこの点に何ら触れていない。
 「負担と給付の適正化」とは何であろうか? 「給付と負担の適正化」とは、所得税、法人税等に所得の再分配機能を担わせず、「給付と負担の不公平感」なる仮像を生み出し、民衆の中に分断を持ち込み、社会保障・福祉を解体しようとするもの以外のなにものでもない。

 第3に、医療保険給付の対象となる療養や、介護保険の保健医療・福祉「サービス」の範囲の「適正化」である。
はたして、現在、医療、介護、障害者福祉、生活保護などあらゆる社会保障・福祉で給付が十分すぎると感じる人がどれだけいるのだろうか?
障害者に関すれば、全国の障害者とその関係者が闘ってきた障害者自立支援法撤廃運動がその答えを十二分に示している。「適正化」というならば、更なる給付の拡大・充実こそが求められているのである。
 さらに、私たちが看過できないのは、同法が、「患者の意思がより尊重されるよう必要な見直しを行い、特に人生の最終段階を穏やかに過ごすことができる環境を整備すること。」(第六条3号)と述べていることである。脳死臓器移植法、そして法案提出が画策されている「尊厳死法案」と重ね合わせれば、これらの動きと連動している危惧を感じる。

第4に、同法が、「不正受給」を取り上げて、生活保護の縮小・切り捨てを行うことを宣言していることである。これを法として規定していることは極めて重大である。生活保護費が近年増大したのは「不正受給」の問題ではないことは明らかである。失業と貧困の蔓延が原因である。政府は、国際競争力強化の下、派遣をはじめとする不安定雇用を蔓延させ、資本強化のリストラを後押してきた。また、規制緩和の名のもとに、中小独立自営業者の生業を破壊してきた。その責任をごまかし、生活保護の切り捨てをもってするなど断じて許されない。
私たちの多くの仲間たちは、生活保護によりなんとか日々の生活を送っている。現在の生活保護受給者へのバッシング、監視体制の強化は、私たちの仲間の尊厳を深く傷つけ、生きる術さえ奪うものである。私たちは満腔の怒りをもってこれを弾劾する。

第5に、国民会議なるものの設置である。以上のような社会保障・福祉の解体を、内閣総理大臣が任命する一部のものでしゃにむに推進しようとしていることである。しかも、この「国民会議」のメンバーには国会議員を含むというのである。
国会議員は国会で論議できるのでありこのような委員に入れるのはナンセンス極まりない。同会議の目的からいって、社会保障・福祉解体を推し進める政党の議員が任命されるのは明白である。

第6に、同法が、国及び地方公共団体の財政悪化の原因を、社会保障制度にかかわる負担のみにしていることである(第一条)。ここでも、重ねて言うが、それが政府見解とかではなく法として規定されたことは極めて重大である。
財政悪化は、無駄な公共事業や防衛費の拡大、他方での法人税や高所得者に対する減税がおもな原因であることは明らかである。そもそも、憲法にあるように、戦後、日本はいわゆる「福祉国家」を目指したのであり、したがって、社会保障・福祉・医療に一番財源が充てられることは前提である。この前提の上で、財政運営はなされるべきが当然である。まさに、政府の失策を社会保障・福祉に押し付け、これを解体しようとする、ためにする文言でしかない。


 同法は、私たち障害を持った者の生活と命を脅かすものであり断じてこれを認めることはできない。さらに、同法は、障害者のみでなくすべての民衆の生存権を脅かすものであることは確実である。

 この法律の具体化に向けて、「社会保障制度改革国民会議」の1年間の審議が開始されようとしている。生活保護法の改悪は、それに先んじて実行されようとしている。「障害者」や貧困者のいのちと生活を守るためにわたしたちは全力を挙げて闘うことをここに声明する。 

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コメント

とにかく、「人間は誰でも年を取る」そして「人間は明日は何が起こるかわからない」ということを、分かっていないとしか思えない。傲慢である。そして、大変危険である。悪政としか、言いようがない・・・。

投稿: 佐藤 | 2012年9月 7日 (金) 00時10分

社会保障制度改革推進法の問題点を広く知らせ、撤廃してもらいたいな

投稿: | 2012年9月27日 (木) 19時40分

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