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2013年6月20日 (木)

朝日報道

医療保護入院、どう変わる 精神障害や認知症の治療、「同意者」の条件緩和 

紙面写真・図版

医療保護入院の主な流れ

 心を病んだ人や認知症の人を、治療の必要がある場合に、本人の意向にかかわらず入院させる「医療保護入院」という制度があります。これまでは親や配偶者などが「保護者」となり、同意する必要がありました。精神保健福祉法が改正され、来春から手続きが変わります。1人に負担を集中させないためという名目で、3親等までの親族なら誰でも同意できるようになります。ただ、「強制入院が増える恐れがある」など批判の声があがっています。

 ■今まで 配偶者・親など保護者が同意 「退院後恨まれ続ける」本人との確執に苦悩

 医療保護入院は、暴力的な行為や徘徊(はいかい)などで治療が必要なのに入院を嫌がったり、病気を正しく理解できなかったりする場合に利用される。

 医療保護入院の数は約13万1千人(2010年、厚生労働省調べ)。精神科病院の入院患者の約4割に達する。統合失調症など精神を病む人が55%と一番多い。ただし21%は認知症の人で、年々増えている。65歳以上のおよそ7人に1人が認知症という現在、誰もが無縁とは言い切れない制度だ。

 今の法律では、医療保護入院、さらに退院の同意も「保護者」の役割だ。保護者になれる人は1人で、優先順位は決まっている。(1)成年後見人(2)配偶者(3)親権者(4)扶養義務者の順だ。ただ、成年後見人がいるケースはまれで、ほとんどは3親等以内の親族が担っているのが現実だ。

 医療保護入院の仕組みは、以前から弊害が指摘されていた。入院に同意した家族が本人とのあつれきに苦しみ、トラブルになる例が少なくなかったからだ。

 東京都国立市の男性(68)は24年前、高校生だった息子(40)を医療保護入院させた。登校拒否だった息子は、自室にこもって壁や戸を壊すようになった。統合失調症と診断された。弟に危害を加える恐れも感じた。入院させようとしたが、息子は強く拒否した。男性は保護者になり、入院に同意した。

 息子は半年間で退院。今は症状も落ち着き、福祉作業所に通いながら1人で暮らす。だが20年以上たった今でも、「あの時、おまえが入院させたから俺は悪くなった」と男性を非難することがある。「恨まれ続けるのはつらい。家族が同意する仕組みはなくしてほしい」

 精神障害者の家族団体は、保護者制度を廃止し、入院の同意義務もなくすよう要望してきた。

 この仕組みには、患者本人の権利擁護という観点からも課題がある。入院が必要なのに保護者が同意しないため治療が遅れる▽保護者の同意がないと退院できないので入院が長期化する、などの恐れがあるからだ。

 ■今後 3親等以内の親族が同意 1人への負担集中回避、強制入院を増長の声も

 改正法では、批判のあった保護者制度が廃止された。ところが、医療保護入院について「家族の同意」要件は残ったままになった。

 同意できるのは成年後見人のほか、「3親等以内の親族のいずれか」となった。保護者と範囲は変わらない。保護者は1人だけだったが、改正後は複数の家族が入院への同意権を持つことになった。扶養義務者が「保護者」になるときは家庭裁判所で選任を受ける必要があったが、それもなくなった。家族の同意はこれまでより容易になったとも言える。

 1人の家族に負担が集中する保護者制度の弊害をなくす。その意味で「今回の法改正は現実的な中身」というのが厚生労働省の見解だ。改正案を議論した厚労省の検討会では、本人の権利を守るために、家族以外の第三者が医療保護入院に関わる仕組みも検討された。しかし法案には盛り込まれなかった。

 同省精神・障害保健課は「患者の人権を守るため、本人のかわりに誰かの同意を必要とする仕組みは必要だ。ただ家族以外にそれを担える第三者は現状ではおらず、実現は困難だった」と説明する。

 改正には批判の声が相次ぐ。全国精神保健福祉会連合会(みんなねっと)の川崎洋子理事長は「保護者制度がなくなったことは評価できるが、家族の同意が必要なのは変わらず、負担は軽減されない」と話す。

 当事者の立場から、入院に同意できる家族が増えたことを心配する声も広がる。医療保護入院の経験がある統合失調症の男性(39)は、「自分と折り合いの悪い兄弟もいる。その兄弟に無理やり入院させられるのでは、と思うと不安になる」と語る。

 精神疾患の当事者でつくる「全国『精神病』者集団」の山本真理さんは「強制入院を簡便化した改悪」と言い切る。日本弁護士連合会も「患者の自由の制限をより一層ゆるやかに認める方向の改正だ」との会長声明を出した。

 施行は来年4月からで、3年後をめどに、医療保護入院の入退院のあり方を改めて検討することが改正法の付則に盛り込まれた。障害者問題に詳しい池原毅和弁護士は「家族に頼る医療保護入院の仕組みを改める必要がある。患者本人の意思を伝え、適切な治療がなされているかどうか調査もできる第三者制度の創設を検討していくべきだ」と話す。

 (畑山敦子)

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投稿: ロールス | 2013年6月21日 (金) 08時43分

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