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2014年1月18日 (土)

階級社会と「精神病者」解放2、「収容から「医療」へ」という視座から【3】

⑤    国家主義の時代

では、その次に来るものは何か?国家を維持するということが精神医療の目的となる時代が来ようとしているのではないか。「反社会的人格」や、国のためにならない者を隔離・収容する時代だ。「アーリア人的でない」ものを排斥したのはナチス時代のドイツだ。ナチス時代も精神医学が政権の手先となり、「病者」の大量殺害に加担した。今、「反アメリカ的思想」を取り締まりの対象とするアメリカの国家主義がある。アメリカのグアンタナモ収容所では何の法的根拠もない収容と拷問が行われているが、社会問題化することはない。
日本では大きな支持率を持つ現安倍政権による国家主義の鼓吹が激しい。西の国家主義者・橋下は、人気は低下したとはいえ大きな支持率を持つ。すでに、安倍政権は教育の中立性を踏み破る国家主義的介入を行なおうとしている。これが医療に及ばないといったい誰が言えるだろうか。
「医療化」というと何か「病者」のためになるかのように装われるが、本当にそうだったか?
社会を維持するために「病者」を隔離するのが医療の果たした役割だったのではないか。「社会のためにならない者」、すなわち「社会に害をなす者」と「社会の利益にならない者」をターゲット化し、隔離の対象を拡大してきた。次々と「病気っぽい者」を社会の中からあぶりだす過程。これが「医療化」と呼ばれるものの歴史ではなかったか。職場・学校などでの労働者と子どもへの迫害は強められ、休んで回復するということができなくなり障がい化したのが「病気っぽい者」だった。「病気」がなんら固定的なものではなく、可変的なものだということを見てきた。その範囲は次々を広げられていったが、「病気っぽい者」を生み出す社会の矛盾が問われることはなかった。社会の矛盾が「病者」を生み出し、わずかに社会に適応できない者にまで対象を拡大してきた。このような医療化が国家を擁護の対象とし、国家からはみ出す者、国家に歯向かう者を対象とするというのに、何の内なる抵抗があろうか。「反社会的人格」、すなわち国家の意に沿わない者を精神医療が対象とすることまでは、ほんの一飛びだ。
日本では憲法にまで国家主義を貫こうとする改憲が準備されている。改憲とは明文改憲だけではなく、人権概念を否定する国家主義が実質的に貫かれる社会への変造を言うのだろう。人権概念を否定した国家にとって、国家のためにならない者を収容するのは必然であり、あるのは方法の問題に過ぎない。国家を維持するためには「反社会的人格」を許容できないまでに腐朽化した帝国主義の内部にあって、それを刑法体系によって収容・隔離するか、精神医療によって隔離・収容するかは、ただ単に選択の問題であるに過ぎない。問題は「反社会的人格」の芽を摘むことであって、整合性は後から付ければ良いのだ。秘密保護法によって刑法体系による収容に道を開き、共謀罪による収容が準備されている。医療の体系による収容にも道を開くのは時間の問題なのではないか。疾病・障がい概念の拡大によって「人格障がい」を精神医療の対象に含めることは既に行われている。「心神喪失者等医療観察法」という保安処分制度も存在する。観察法では、ある条件のもとでは人権を停止するということが既に実行されている。既に「病者」に対しては人権は停止されている。国家のためにならない者を精神医療の対象に当てはめるにはほんの一飛びが必要なだけだ。
最初は「精神病者」が、次に共産主義者が、次には社会民主主義者が、次にはユダヤ人が、最後に宗教者が収容・抹殺されたナチスドイツの前例を知らないわけではあるまい。スマート化し殺害という方法は取らないかもしれない。その分、隔離・拘禁という社会的抹殺の方法を取るのに、精神医療ほど都合の良い物は無い。医療と名付ければ社会の抵抗は少ないというのが「医療観察法」の教訓だ。疾病概念を広げ、「反社会的人格」や「国家のためにならない者」を隔離の対象とすることは、「医療化」の流れの中では小さな飛躍だ。
しかし、そのような社会をもたらすかどうかの選択肢は民衆の側が握っている。何の抵抗もしないのか、それともそれを帝国の滅亡に転化するのか。ナチスを許したのが民衆であったように、決めるのは民衆だ。

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