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2014年1月 7日 (火)

障害者権利条約とインティグリティ概念【その1】

道筋と言われているものとして障害者権利条約のこと。
インティグリティ概念は「「自己決定の前提となる価値観や世界観を醸成する固有の場となる人間の身体と精神に対する不可侵性」(池原毅和)であり、20世紀後半から、人権の基本概念と見なされるようになった。 自由権規約は6条(生命に対する固有の権利)、7条(拷問、虐待、同意なき科学的・医学的実験の禁止)、8条(奴隷、強制労働の禁止)でintegrityへの権利を定めている。さらに、拷問等禁止条約において、障害を矯正する目的で不十分なインフォームドコンセントのもとで行われる医療行為は、拷問・虐待と見なされる。」山田嘉則・阪南中央病院
 このインティグリティは条約17条で定められている。「希望しない医療、強制的な監禁、または望まない身体的及び精神的な侵害を受けることから保護される権利。」(世界精神医療ユーザーサバイバーネットワーク編障がい者権利条約履行マミュアル・以下同)「この保障は、保健医療の専門家がインフォームドコンセントに基づいた自由な同意に基づいて医療を提供するという義務を定めた25条によってさらに強化されている。」12条では「私たちには私たち自身の人生を決める法的能力があるということを認知する。」「法的能力の概念は精神医療ユーザーとサバイバーを人として否定し、私たちが自分自身の人生を決める権利を私たちから奪うことに使われてきた。」15条は、「拷問および他の残虐な非人道的なあるいは品位を傷つける取扱い、または刑罰からの自由の権利を保証している。同意のない医学的または科学的な実験からの自由も含まれる。これらの条項の持つ効力が強制的な精神的治療の廃絶をもたらす。」「障がいに基づいた自由の剥奪は正当化できない。障害のある人も地域社会の中に生きる権利を持ち、どこに誰と住むか選択する権利を持っている。したがって、障がいに基づいた強制的な施設収容、または強制入院は禁止されている。」
 このような条項が書き込まれた背景を同書は細かに書き記している。世界精神医療ユーザー・サバイバー・ネットワーク(WNUSP)など様々な団体のユーザーとサバイバーが諸国から結集し、いくつかの政府代表団に入り、国際障がいコーカス(IDC)の設立に取り組み、その運営メンバーとなったこと。IDCが統一した意見書を出すための共同作業に加わったこと。「私たちの作業の重要な側面は、同盟を構築したこと、総意を創りだしたこと、そして様々な障がい者の人権活動との協働を学んだことだ。」「最後には、IDCは統一した論理的かつ力強い意見で、すべての障がいをもつ人の人権の尊重の促進を訴えた。」WNUSPは第1回の会議の前から参加し、12の非政府組織(NGO)の一つの代表として27の政府と1つの国内人権機関と共に作業部会に参加した。作業部会ではすべての参加者が平等の発言権を持ち、条約草案を創りだすために協力した。条約特別委員会での審議は、すべての政府と市民団体に提言の機会が与えられ、最終的にすべての人が受け入れられる条約が採択された。それはたやすい経緯ではなかったが、IDCの承認は追求され、必要とされていた。」などとあり、さらに困難な場面を乗り越えたことが記されている。
 これらのことから浮かんで来るのは、これから各国政府に、この条約の内容を強制する過程こそが、この条約の本番だということだ。何とか条約など無化したい日本政府にこの中身を強制することの困難さを思う時、条約制定過程の苦労を思うことは意味のあることであろう。

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