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2014年1月 6日 (月)

戦争と「精神病」

精神病の社会的性格と特質。
精神病は社会の中で生まれる。社会的関係性の病であることを戦争の経験は鋭角的に証明している。
沖縄。沖縄戦による精神病の多発の問題だ。1959年コザ市での調査では「病者」49人中13人の発病原因が戦争に関連していた。1966年の精神衛生実態調査で沖縄の有病率は2.57%、当時の全国平均は1.29%。戦前の有病率に有意の差はなかった。戦争を前後して断層がある。当時沖縄精和病院院長の平安常敏氏は、直接的な戦争の影響、自分の子供や夫、同胞を失った間接的な影響、アメリカ統治下で基地化されたことからくる精神の不安・憤まんの影響を原因として挙げている。67年当時同病院入院患者240人中20%が戦争で肉親を失っており、29%が戦後の生活苦の中で肉親を失っていた。
沖縄協同病院医師の蟻塚亮二氏は2012年になって、直近の2年間に出会った100の事例を8分類し、①晩発性PTSD②命日反応型うつ病③匂いの記憶のフラッシュバック④パニック発作⑤身体表現性障がい⑥戦争記憶の世代間伝達⑦破局体験後の持続性人格変化・精神病エピソード⑧認知症に現れる戦争記憶の8タイプがあるという。これ以外にも戦争の影響による統合失調症、てんかん、アルコール依存症、ドメスティックバイオレンスなどが多発し、それは世代間伝達によって今の世代にも精神的影響を与えていると言っている。晩発性PTSDというのは、普通、PTSDが数か月のうちに現れるものであるのに60年を経て現れるという特徴をあらわしたものだ。戦後の混乱の中必死に生き抜き、一息ついた老後になってPTSD症状を現す。いずれの症状も戦争の記憶がよみがえる中で前面化したものだ。戦争の記憶は決して一過性のものではない。
戦争体験の苛烈さと、その後も続く占領、フラッシュバックによるストレスがこれらの病をもたらしている。戦争直後のPTSDや戦争神経症(当時PTSDという概念はなく戦争神経症と呼ばれたものがこれにあたると考えられるが、この概念も民間人には適用されなかった。)の多発があった。
 沖縄の精神病院入院者の半数は広い意味での沖縄戦関連(占領と基地化を含む意味で)と言われている。
逆の例で、フランツ・ファノンが報告している、アルジェリア民族解放戦争の中で「精神病者」の数が減っていたという事実がある。自己解放性が精神病の発病を減らしたと報告されている。
一方で、加害者の側も病気になる。ベトナム、イラク、アフガンの米兵。無人攻撃機のオペレーターが「精神病」になることが報告されている。
これらは遺伝説を否定する意味ある統計であろう。「精神病は医学によってのみ解明できる」という考え方の否定でもある。
階級的、(多くは階級性に起因するが家族的なものを含む、)長期の抑圧が発病の原因と考えられている。家族は社会の全矛盾を背負うものであり、社会の縮図でもある。矛盾と抑圧は人生の最初には家族関係としてあらわれる。家族という共同体の中で、本来備わっていたはずの共同性は破壊されており、家族的寛容と家父長的抑圧を特徴とする疎外関係が取って代わっているからだ。
戦争という極限的疎外が「精神病」の原因になっているという事実は、社会的関係性≒階級性としての「精神病」という本質を証明するものではないだろうか。今日の社会的関係性がまず第一に社会的疎外であり、階級性とは疎外の別名であるという点において。
すると「精神病」と自己解放性は矛盾するものかという疑問が生じる。「精神病者」が自己解放性を発揮した時には、その症状にどういう変化が現れるものなのだろうか。筆者の経験の中では、自己解放性は症状の軽減をもたらすものだったのだが、治るということではなかった。逆に、長期間の投獄が、心神喪失状態一歩手前まで行ったことがある。自己解放性は心神喪失と反対の概念であるのかもしれない。しかし、統計とするには材料が足りない。ファノンの経験は何を意味するのか。ただ症状の軽減は病気が治るとか良くなるという意味ではない。「精神病」の範囲内での苦痛の軽減といったことである。苦痛の無い「狂気」がありうるかは大きな問題だ。

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