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2014年1月21日 (火)

階級社会と「精神病者」解放3、戦争と「精神病」【1】

精神病の社会的性格と特質。

精神病は社会の中で生まれる社会的関係性の病であることを、戦争の経験は鋭角的に証明しているのではないか。
沖縄における地上戦による精神病の多発の問題だ。周知のとおり、沖縄戦での死者数は、沖縄出身者が約122,000人、そのうち約94,000人が民間人だ。地上戦域外での、戦争マラリア死、餓死、住民虐殺、戦時遭難船舶、集団自決(強制死)等を加算した沖縄県出身者の死者数は15万人以上と推定されている。当時の沖縄の人口は約59万人であり4人に1人が死ぬという激しい地上戦と日本軍による沖縄県民の虐待があった。なお、一般に公表されているこの数字には、推定1万人を超える強制連行などによる朝鮮人の軍夫(戦場の人夫)、朝鮮人「軍隊慰安婦」の戦没者数が含まれていない。沖縄県民は天皇制擁護のための捨て石として、無用な死を強制された。この時期に軍部・天皇が戦争継続を決定したのは天皇制の延命のためである。この激しい地上戦の経験は、多数の「病者」を生み出した。
1959年コザ市での調査では「病者」49人中13人の発病原因が戦争に関連していた。1966年の精神衛生実態調査で沖縄の有病率は2.57%、当時の全国平均は1.29%。当時の全国平均の2倍の有病率だった。戦前の有病率に有意の差はなかった。戦争を前後して明らかな断層がある。当時沖縄精和病院院長の平安常敏氏は、直接的な戦争の影響、自分の子供や夫、同胞を失った間接的な影響、アメリカ統治下で基地化されたことからくる精神の不安・憤まんの影響を原因として挙げている。67年当時同病院入院患者240人中20%が戦争で肉親を失っており、29%が戦後の生活苦の中で肉親を失っていた。
沖縄協同病院医師の蟻塚亮二氏は2012年になって、直近の2年間に出会った100の事例を8分類し、①晩発性PTSD②命日反応型うつ病③匂いの記憶のフラッシュバック④パニック発作⑤身体表現性障がい⑥戦争記憶の世代間伝達⑦破局体験後の持続性人格変化・精神病エピソード⑧認知症に現れる戦争記憶の8タイプがあるとした。これ以外にも戦争の影響による統合失調症、てんかん、アルコール依存症、ドメスティックバイオレンスなどが多発し、それは世代間伝達によって今の世代にも精神的影響を与えていると言っている。
晩発性PTSDというのは、普通、PTSDが数か月のうちに現れるものであるのに、60年を経て現れているという特徴をあらわしたものだ。戦後の混乱の中を必死に生き抜き、一息ついた老後になってPTSD症状を現す。8つの症状のいずれも戦争の記憶がよみがえる中で前面化したものだ。戦争の記憶は決して一過性のものではない。
戦争体験の苛烈さと、その後も続く占領、フラッシュバックによるストレスがこれらの病をもたらしている。戦争直後にはPTSDや戦争神経症があったと伝えられている。(当時PTSDという概念はなく戦争神経症と呼ばれたものがこれにあたると考えられるが、この概念も民間人には適用されなかった。)
沖縄の精神病院入院者の半数は、占領と基地化を含む広い意味での沖縄戦関連と言われている。
一方で、加害者の側も病気になる。ベトナム、イラク、アフガンの米兵や、無人攻撃機のオペレーターが精神病になったことが報告されている。
逆の例で、アルジェリア人の精神科医フランツ・ファノンが報告している、アルジェリア民族解放戦争の中で「精神病者」の数が減っていたという事実がある。自己解放性が精神病の発生を減らしたと報告されている。

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