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2014年3月22日 (土)

最低生活保障は多くの民衆の課題【3】

扶助費引き下げ

 このように見ていくと日本の生活保障費は引き上げるしかないはずだ。ところが日本では、実際には引き下げが行われている。
生活扶助費は2013年8月、14年4月、15年4月と3回に分けて引き下げられる。最終的な引き下げ額は夫婦と子供1人世帯で1.6万円、夫婦と子供2人世帯で2.0万円、70代以上夫婦6千円、70代以上単身3千円、60代単身2千円、41歳~59歳単身4千円、20歳~40歳単身7千円、母と子1人8千円だ。
この4月には消費税が3%上がる。これに対応して生活扶助費は2.9%上がることになっている。ところが平均6.5%、最大10%の引き下げの第2回目の引き下げ分が差引されるので実際にはそれだけ上がらない。
2014年4月の生活扶助基準の実際の改定率をいくつか例示する。(都市部)
・ 夫婦と子(30 代夫婦と幼児) -0.6%
・ 単身世帯(20~40 歳) +0.1%
・ 高齢単身世帯(60 代単身) +2.0%
(厚労省の試算による。年齢・世帯人員・地域差によって異なる。)
60代単身世帯では、実質0.9%の引き下げだ。夫婦と幼児の世帯では消費税分以上の引き下げとなる。
また、「アベノミクス」というインチキな経済政策の結果である円安で、物価は上がっているがそれは反映されない。

自公政権の政策

なぜこのようなことになるのか?自民党の政策である。
自民党の2012.2政策ビジョン。「自助、自立を基本とした~社会保障制度」「家族の助け合い、すなわち『家族力』の強化により『自助』を大事にする方向を目指す」「『自助』『自立』を第一とし、『共助』、さらには『公助』の順に従って政策を組み合わせ、負担の増大を極力抑制する中で真に必要とされる社会保障の提供を目指す」
2012・8社会保障制度改革推進法。「自助、共助及び公助が最も適切に組み合わされるよう留意しつつ、国民が自立した生活を営むことができるよう、家族相互及び国民相互の助け合いの仕組みを通じてその実現を支援していく」
プログラム法。社会保障制度改革国民会議報告を利用して作られたプログラム法(持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律)には「公助」という言葉は跡形もない。自助努力の強調のみが目立つ。「自助・自立のための環境整備」に社会保障を切り縮めている。社会保障制度の全面解体と考えてもおかしくない。なぜなら、そうなれば自助努力で生きる以外になくなるからだ。
さらに、2012.9.11報道ステーションでは自民党の衆院議員石原伸晃が、社会保障費抑制の具体策を述べるなかで尊厳死に言及している。
 
富裕者課税論

財源がないといわれるが本当か?
日本では累進課税で、高額所得者ほど税金をたくさん支払っていると思っている人が多いのではないか?
ところが所得税負担率は年収1億円くらいを境に下がっていき、100億円以上の収入の層の税率は14%なのだ。図を見ていただきたい。年収が多い人ほど税率が下がり、税金を支払っていないのだ。適切な累進課税をすれば財源はあるのだ。

 

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「生活保障法」案

 ではどうすれば良いのか?
一つの考え方として、日弁連「生活保護法改正要綱案『生活保障法』案」というものがある。2008年11月18日に発表されている。その中身は、
①    水際作戦を不可能にする制度的保障。
②   保護基準を国会で決める民主的コントロール。
③    権利の明確化。「保護」という言葉そのものがスティグマを生んでいる。
④    ワーキングプアに対する積極的支援。収入が最低生活費の1.3倍未満の人に対して、資産を問わず、住宅給付、医療給付、自立支援給付(現行の生業扶助にあたる)を支給する。
というもので、現行制度の歪みをできるだけ正し、権利としての福祉を法律化しようとするものだ。現行制度に対する対案として有効なのではないかと思う。ただ、保護基準を国会で決めるといっても、様々な差別感情を基盤にした今の国会では何も良いことはない。そもそもこの法案が通るような政治の改革が前提だ。

どう闘うか

 ではどう闘うのか?
①    不服審査請求第2弾。4月の引き下げに対する不服審査請求を再度取り組もう。3月に送られてくる保護決定通知書をなくさないようにしていただきたい。
②    調査団活動。現行制度の下での人権侵害を暴き出し、改善を求めるための活動だ。大阪で行われている。
③    集団違憲訴訟。先行して取り組まれているところもあるが、全国的にはこの夏に取り組まれる。大阪では5月12日と14日に事前説明会が行われる予定なので是非参加していただきたい。
④    捕捉率を上げるための運動
ワーキングプアで生活保護以下の賃金だと制度を利用できるはずだが実際には利用率は低い。これは制度を利用できることを知らなかったり、水際作戦やスティグマの存在が大きく影響している。同行支援などの支援が必要だ。また、スティグマを取り除く社会的運動が必要だ。実際には社会運動家、労働運動活動家が偏見を持っていてスティグマを作り出している面もある。意識改革はすぐに取り組まれなければならない。
 マスメディアも活用しながら、世論を変えていく努力で、社会を動かそう。国会を変える努力も必要だ。政治を変えなければならないが、そのためにはまず当事者が立ち上がって、支援者と一体で、世論を変える努力をしなければならない。

 (本稿執筆にあたり「生活保護から考える」稲葉剛著(岩波新書)、「間違いだらけの生活保護『改革』」生活保護問題対策全国会議編(明石書店)を参考にした。もし時間のある方は、原著に当たられたい。)

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