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2014年12月

2014年12月30日 (火)

朝日新聞の問題提起について

今朝の朝日新聞に措置入院についての問題提起がありました。記事は下につけます。記事を先に読んでいただいた方がよいと思います。

私の感想は、なぜ家族同意の強制入院制度である医療保護入院を使わなかったのかということが大きいです。医療保護も強制入院であり好ましくはないですが実際問題として絶対にダメとは言えないケースもあります。この点は悩ましいことです。患者会でもあらゆる強制入院はダメという意見の人もいます。その人は今は患者会にも来られないくらい弱っているのですが入院を拒否しています。新聞記事になっているような暴力のケースではないですが、入院して休んだ方が好ましいと思えるのですが本人が任意入院を拒否し医療保護を含む強制入院に反対なので自宅に閉じこもっている状態で家族が面倒を見ています。家族がクリニックに薬を取りに行く形で医療とつながっているのですが、このまま弱っていく可能性もあり何とかならないものかと思っています。

 

一時的休憩としての入院は患者会としても求めていますが、精神科病院が休憩場所ではなく人権侵害の場所である現状を解決することが前提としてなければなりません。巨大精神科病院を無くし、休憩場所としての入院施設に限定したイタリアの先例など学ぶべきものがあります。患者本人に苦痛を求めるのではなく、社会の受け皿を整えることが考えられないといけないと思います。そのような受け皿ができたら上に書いた入院を拒否している人も、休憩場所として病院を求めることがあるかもしれません。

 

新聞記事の場合、ベッドが空いていないから入院を断られたとあります。ありうることですが、もし説得して任意入院に持っていこうとしても、これでは同じことです。私の住む県の県立精神科病院も新しい入院は厳しく制限しており、そこの通院患者でない場合は無理です。だから入院できるのは民間病院ですが、患者の人権を認めない病院が多いのが実態です。

 

朝日の記事にはいくつも論理のすり替えがあります。上の本人同意がないなら措置入院しかないかのような記述がひとつ。もう一つは措置入院なら拘束は避けられないかのような記述の問題があります。これは医療保護や任意入院でも同様です。暴れるなら拘束は仕方ないという理屈は論理として成立していません。イタリアの精神医療では不安になった患者を看護師が1日でも抱きしめて落ち着くのを待つと聞いたことがあります。拘束はマンパワーの不足を補う措置であり、医療の貧困が問題なのです。日本の精神科病院が看護師が少なくていいという特例基準のもとにあることが問題にされなければならないのです。特例がなくても日本の医療はマンパワーが少なすぎます。

 

上記の医療保護が嫌という人は、かつて医療保護で患者を虐待する病院に入れられた体験からきています。患者を虐待する病院があること、医者や看護師が少ない精神科特例の問題など、民間病院が多く金儲け第一になっている問題がまず解決されなければ、朝日の問題提起は成り立ちません。患者の人権が保障されない中では医療保護も人権侵害です。病院を選ぶ情報がなければ任意入院でも人権は侵害されます。イタリアのように巨大精神科病院を廃止するという前提から考えてはどうでしょうか。

朝日の問題提起は貧困な日本の精神医療を前提にした「究極の選択」を問うものになっています。

 

以下朝日記事

 

暴れる娘、押さえつけて病院へ 精神疾患、孤立する家族

 

塩入彩

朝日201412300159

 

図版

事件をめぐって朝日新聞に寄せられた声や、ツイッターなどでのつぶやき

 

 精神の障害を抱えた三男の暴力に悩み、三男を殺してしまった父親の裁判の記事(12月4日付朝刊)に、多くの反響が寄せられました。「どうにかならなかったのか」「ひとごととは思えない」。そうしたなかで、切実な思いを打ち明ける手紙を寄せてくれた家族に、話をうかがいに行きました。

 

「妻と娘を守る義務がある」 三男殺害、父への判決

連載「きょうも傍聴席にいます。」

■警察も医師も解決できず

 「私たちも、ありとあらゆる苦難とともに生きています。娘を殺さなければ家族の誰かが殺されるか、巻き添えで死ぬことになるのではという恐怖とともに生きてきました」

 神奈川県に住む50代の女性は胸の内を打ち明けた。いまは20代になる長女が摂食障害を起こしたのは、14歳の時。その後、精神疾患の疑いがある、と医師に告げられた。学校に行けなくなり、入退院を繰り返した。16歳ごろからは暴力がひどくなり、女性に塩酸が原料の洗剤を飲ませようとしたり、夜中にわめいて暴れたりすることも増えた。

 「警察に連絡をすると、『またか』という対応をされ、それでも何度も呼びました。真夜中のサイレン、無線の音、近所の不審そうな目、いまでも忘れません」

 暴力がひどくなった時こそ、長女を入院させてほしかった。しかし、精神科医には「ベッドが空いてない」「本人の意思を尊重した方がいい」と断られることがほとんど。自分や他人を傷つけるなどの恐れがあると認定された時に強制的に入院させられる措置入院を警察に願い出たが、長女は警察官の前では落ち着きを取り戻し、「措置入院は無理です」と断られた。

 女性は精神病に関する専門書を何冊も読み、著者である医師のもとへも相談に行った。保健所にも相談した。しかし、解決策は見いだせなかった。「うちでは対応できません」と断られることも。暴れる長女を夫と2人で押さえつけながら、早朝に病院に駆け込む日が続いた。

 命の危険を感じ、家庭内暴力(DV)に関する相談所に駆け込んだこともあった。だが、DVの対象は配偶者やパートナーで、子どもからの暴力は対象外として、シェルターに入ることはできなかった。

 「子どもが暴れるのは親の育て方が悪いという土壌がある。だから、親が駆け込む先がないのではないでしょうか」「結局、家族が自らの命と引き換えに本人を引き取るしかない」

■措置入院しかなかった

 長女は約7年前から自殺未遂を重ねるようになり、措置入院が認められた。現在は閉鎖病棟に長期入院している。女性は週に数回、長女の着替えなどを持ち、病院に通っている。

 しかし、入院への世間の目は厳しい、と女性は感じている。「体を拘束してかわいそう」「人権侵害ではないか」。そういう声を耳にする度に、ではどうしたらいいのか、と絶望的な気持ちになるという。

 厚生労働省は2004年、長期入院する精神疾患患者が多い現状を受け、「入院医療中心から地域生活中心へ」と精神医療の改革方針を打ち出した。ただ女性は「入院患者数の縮小を訴えるだけでは、家族は追い詰められる」と話す。まずは暴力を振るう患者を家族などから引き離し、保護する場所が必要だと考えるからだ。

 「娘を拘束するのはつらい。それでも、もし子どもが他の人を傷つけた場合、家族はつぐないきれない。これ以外に、娘を生かす方法がないんです」。社会の支援と理解が進まないなかで、家族は孤立している。女性は、そう感じてならないと語った。(塩入彩)

     ◇

 〈三男殺害事件〉 12月4日朝刊で報じた事件の概要 今年6月、東京都内に住む男性(65)が自宅で就寝中の三男(当時28)を刃物で刺し、殺害した。11月に東京地裁立川支部であった裁判員裁判の公判で、男性ら家族が、精神の障害がある三男の暴力に悩み、追い詰められていたことが明らかになった。

 検察側や男性の証言などによると、三男は約10年前から精神科に通っていたが、症状は悪化。次第に家族に暴力を振るうようになった。男性は主治医や保健所、警察などに相談し、三男の入院を懇願していたが、断られていたという。

 地裁支部は11月21日、「相当やむを得ない事情があった」と男性に懲役3年執行猶予5年の判決を言い渡した。男性側、検察とも控訴せず、今月6日に判決が確定した。

 

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2014年12月26日 (金)

STOP! 精神科病棟転換型居住系施設!! news23号

第23号(2014年12月25日)
生活をするのは普通の場所がいい
STOP! 精神科病棟転換型居住系施設!! NEWS

2014年12月15日
厚生労働省への要望書提出、意見交換

 12月15日(月)、病棟転換型居住系施設について考える会は、病院敷地内へのグループホーム設置を認めるための省令改正案について、厚生労働省障害保健福祉部長に対し、反対の要望書(P3参照)を提出してきました。厚生労働省からは藤井康弘障害保健福祉部長をはじめとした7名の担当官が出席。考える会からも7名が出席し、午後5時から30分間を予定していた交渉の時間を1時間に延長して、活発な意見交換を行いました。
 まず、要望の柱である、「入所施設又は病院の敷地外にあるようにしなければならない」と明記されている現行省令は堅持すべきものであり、新たに病院敷地内グループホームの設置を認める「改正」は不当であり、断固として反対であることを伝えました。そして、要望書に書かれている内容に沿って、病院敷地内グループホーム設置の条件として示されている各項目についての問題点を指摘しました。
 さらに、病院敷地内グループホームの新設を検討しているといわれるある精神科病院の実態(全入院患者の92%が強制入院であること。また、入院期間10年以上の人が全入院患者の半数を超え、3分の1の人が20年以上の入院であるということ等)を紹介し、今回の政策は、国が示している「地域移行へのステップ」などとは程遠い、まさに医療から福祉へ名を変えただけの収容期間の延長であり、引き続き患者を丸抱えすることによる病院経営の延命に他ならないものであることを主張しました。
 国によれば、この省令改正により設置される病院敷地内グループホームは、「経過的特例」として時限を定めた試行的な事業と位置付けられ、その実効性について「検証」するものとされています。しかし、私たち「考える会」の調査(表1)でも、すでに13の自治体に15か所・総定員200名のグループホームと、9か所・総定員168名の宿泊型自立訓練事業所が存在していることが明らかになっており、「検証」は、まずそれらのところで行われるべきであることを訴えました。
 厚生労働省の藤井障害保健福祉部長からは、本改正が「検討会」による検討を踏まえたものであることであること、目指すべきは本当の地域移行であり病院敷地内グループホームはそれに向けたひとつのステップであること等が述べられました。
 厚生労働省(あるいは厚生労働省を通じて収容施策の継続と強化を進めたい勢力)と私たちの主張には大きな隔たりがあることがあらためて確認された場ともなりましたが、精神障害のある人たちの当たり前の地域生活の実現に向け、引き続き意見交換を行っていくこととし終了しました。
(田中 直樹)

出席者(敬称略)

【厚生労働省】
藤井 康弘(障害保健福祉部長)
竹林 経治(障害児・発達障害者支援室長、地域生活支援推進室長)
冨澤 一郎(精神・障害保健課長)
尾崎美弥子(精神・障害保健課 課長補佐)
諸冨 伸夫(精神・障害保健課 課長補佐)
江浪 武志(精神・障害保健課 精神保健医療統括推進官)
片山 聡子(精神・障害保健課 地域移行支援専門官)

【考える会】
長谷川利夫(杏林大学 教授)
加藤真規子(こらーるたいとう 代表)
松沢 勝 (みんなねっと 副理事長)
野村 忠良(みんなねっと 事務局長)
佐藤 聡 (DPI日本会議 事務局長)
氏家 憲章(社会福祉法人うるおいの里 理事長)
田中 直樹(あみ 事務局長)


平成26年12月15日
厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部
部長 藤井康弘 様

病棟転換型居住系施設について考える会

「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス事業等の人員、設備及び運営に関する基準の一部を改正する省令(案)」に係る要望書

標記省令を改正し、病院敷地内グループホームの設置を認めることに強く反対する。

理由を以下に述べる。

現行の指定障害福祉サービス事業者指定基準、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年 厚生労働省令第171号)(平成26年4月1日現在)の第210条では、次のように定めている。
「指定共同生活援助に係る共同生活住居は、住宅地又は住宅地と同程度に利用者の家族や地域住民との交流の機会が確保される地域にあり、かつ、入所により日中及び夜間を通してサービスを提供する施設(以下「入所施設」という。)又は病院の敷地外にあるようにしなければならない。」
この条文は、入院患者の社会復帰の観点から当然のものと考えられる。
今回の省令改正案は、この規定に対し、様々な条件を付し、病院敷地内でのグループホーム設置を認めるようにするものである。
改正案に示された資料においては、「障害者権利条約に基づく精神障害者の権利擁護の観点も踏まえつつ、例えば次のような具体的な条件を整備の上で、それらを全て満たす場合には病院の敷地内でのグル-プホームの設置を認めるよう検討しているところ」としている。しかし、「権利条約の観点を踏まえ」るのであるならば、現状の敷地内グループホーム設置を認めない省令を維持すべきであり、それを設置できるようにすることは障害者権利条約の観点を踏まえるものとは言えず到底容認できない。
障害者権利条約19条は、締約国に対して、「全ての障害者が他の者と平等の選択の機会をもって地域社会で生活する平等の権利を有することを認めるものとし、障害者が、この権利を完全に享受し、並びに地域社会に完全に包容され、及び参加することを容易にするための効果的かつ適当な措置をとる」ことを求めている。
現在発出されている解釈通知の「設備に関する基準(基準第210条)(1)立地(基準第210条第1項)」では、「指定共同生活援助事業所の立地については、利用者に対して、家庭的な雰囲気の下、指定共同生活援助を提供するとともに、地域との交流を図ることによる社会との連帯を確保する観点から、入所施設や病院の敷地内に立地されるのではなく、住宅地又は住宅地と同程度に家族や地域住民との交流の機会が確保される地域の中に立地されることについて、都道府県知事が確認することを求め」ている。障害者が地域社会に完全に包容され、参加することを容易にするために当然の措置と言える。
しかし、今般の省令改正案では、敷地内でのグループホーム設置を認めるようになっている。これは障害者権利条約が求める「障害者が、この権利を完全に享受し、並びに地域社会に完全に包容され、及び参加することを容易にするための効果的かつ適当な措置をとる」ことに逆行するものである。障害者権利条約に違反する内容であり、省令改正はすべきではない。
「障害者権利条約の観点」を「踏まえながら」、社会復帰促進の観点から今まで禁じてきたものを認めることなどありようのないことである。

このような誤った前提の下に進められようとしている省令改正はいかなる理由があっても認めるべきでないと考える。よって、当該敷地内グループホームの諸条件について論ずること自体不必要とも考えられるが、貴省が起案してきている以上、これに対しても意見を述べることとする。

○  省令改正案資料の「利用者及び利用に当たっての条件」においては、「利用者本人の自由意思に基づく選択による利用であること」としている。
しかし、いかに「利用者本人の自由意思」と言っても居住資源が不足し他の選択肢を提供できなければそれは「自由意思による選択」とは言えない。このような自由意思による選択が保障されないなかでの敷地内グループホーム設置は、実質的に入院患者をそこに誘導することになってしまうものである。よって病院敷地内グループホームを認めるように省令を改正することに反対する。

○  また、敷地内グループホームの「運営上の条件」として、「本サービスを利用中も、引き続き地域生活への移行に向けた支援を実施すること。(利用期間中も引き続き地域生活への移行に向けた支援を実施する)」としている。このことは、貴省自らが敷地内グループホームは地域生活でないことを認めていることに他ならない。

○  一方で、敷地内グループホームが置かれるのは、「居住資源が不足している地域であること。(GHの整備量が障害福祉計画に定める量に比べて不足している地域とする)」ともしている。
居住資源が不足している地域に求められるのは、「地域」の居住資源の充実であるのに、それを行わず、「地域生活」でないグループホームを設置することは認めるべきではない。
貴省は既に平成16年9月に、「精神保健医療福祉の改革ビジョン」を策定し、その基本方針を「入院医療中心から地域生活中心へ」としている。敷地内グループホームはこの基本的な方策に反するものである。仮に今回のような方向に省令改正を行うのであれば、貴省は本改革ビジョンに対する明確な総括がなされなければならない。本年7月1日にとりまとめられた「長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策の今後の方向性(長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策に係る検討会取りまとめ)」においても「長精神病床数の将来目標については、『精神保健医療福祉の改革ビジョン』の評価等を踏まえ、平成27 年度以降に医療計画に反映することについて、今後検討する」としており、これを履行するよう強く求める。

○  そして最後の項目は、「時限的な施設とすること。(まずは本サービス実施後6年間の運営を可能にするとともに、制度施行日から4年後をめどに3年間の実績を踏まえ、本サービスの在り方について検討する)」としている。
しかしこのように施設の「在り方を検討する」としているのは、本施設が「時限的」になっていない証左である。「時限的」とは、施設の廃止の時期を決めることである。
改正案において定めることとされている利用期間については、「利用期間は2年以内で、やむを得ない場合には更新可能とする」としているが、本施設でない、地域内での施設を整備しなければ、結局は「やむを得ず」利用を更新せざるを得ない状況が生まれてしまうことは明白である。地域内の居住資源を充実させることなく、敷地内グループホームを認めることは、障害者のさらなる病院内での固定化を図るものであり、本省令改正は決して認めるべきではない。

障害者施策は、障害者基本法に則って実施されなければならない。
障害者基本法は以下のように定めている。
第3条第2項
第1条に規定する社会の実現は、全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを前提としつつ、次に掲げる事項を旨として図られなければならない。
一  全て障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されること。
二  全て障害者は、可能な限り、どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと。
三  全て障害者は、可能な限り、言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られること。
また上記第3条第2項第2号の「可能な限り」という文言については、政府は次のように答弁している。
「どこで誰と生活をするかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生ができるということは大変重要な課題というふうに認識をし、この新たな改正基本法に定めたところでございます。御指摘の「可能な限り」という文言については、例えば障害が重度であって、必要な設備の整った施設で適切な医療的ケアを受けなければならない方々等は、必ずしもどこで誰と生活するかについて完全な選択の機会が確保できないということもあり得るといったようなことを勘案をいたしまして、このような規定としたところでございます。この条文の考え方に従って、できる限りこういう機会が確保をされるように努力をしていきたいと考えているところでございます。」(平成23年7月28日/参議院内閣委員会/政府参考人(村木厚子厚生労働省事務次官答弁))
すなわち、この「可能な限り」という文言を理由に、今回の敷地内グループホームによって地域生活が送れなくなってはならないのである。

また、我が国が本年1月に批准した障害者権利条約は以下のように述べている。
第19条 自立した生活及び地域社会への包容
この条約の締約国は、全ての障害者が他の者と平等の選択の機会をもって地域社会で生活する平等の権利を有することを認めるものとし、障害者が、この権利を完全に享受し、並びに地域社会に完全に包容され、及び参加することを容易にするための効果的かつ適当な措置をとる。この措置には、次のことを確保することによるものを含む。
(a)障害者が、他の者との平等を基礎として、居住地を選択し、及びどこで誰と生活するかを選択する機会を有すること並びに特定の生活施設で生活する義務を負わないこと。
(b)地域社会における生活及び地域社会への包容を支援し、並びに地域社会からの孤立及び隔離を防止するために必要な在宅サービス、居住サービスその他の地域社会支援サービス(個別の支援を含む。)を障害者が利用する機会を有すること。
(c)一般住民向けの地域社会サービス及び施設が、障害者にとって他の者との平等を基礎として利用可能であり、かつ、障害者のニーズに対応していること。
敷地内グループホームを認めることは「障害者が、この権利を完全に享受し、並びに地域社会に完全に包容され、及び参加することを容易にするための効果的かつ適当な措置をとる。」の真逆の政策であることは明らかである。

日本国憲法において次のように定めている。
第98条は第2項
日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。
国は、日本国憲法を遵守しなければならない。

以上の理由をもって、今般の省令改正によって病院敷地内グループホームが設置されてはならないと考える。
よって病院敷地内グループホームを認める省令改正に強く反対する。

以上

発行:病棟転換型居住系施設について考える会

* 地域での集会・学習会の資料で本書をご利用になる場合には,10冊以上ご注文の場合には2割引き+送料でお分けできます.(50冊以上の場合には2割引き+送料無料)
ご注文は,やどかり出版まで(電話048-680-1891~1892 Fax048-680-1894)

病棟転換型居住系施設について考える会
stopbttk@yahoo.co.jp
この『速報』は、複写、転送、転載、大歓迎です。ご自由かつ積極的にご活用ください。
《連絡先》長谷川利夫(杏林大学保健学部作業療法学科)
  TEL.042-691-0011(内線4534)〔携帯電話〕090-4616-5521  http://blog.goo.ne.jp/tenkansisetu

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2014年12月22日 (月)

「病者」の郷 岩倉村を歩いて

 2014年11月の半ば、北岩倉を訪ね昔の岩倉村だったところを歩いた。江戸時代から昭和の初期にかけて、「精神病者」が集う里だったところだ。もともとは眼病に効くという言い伝えのある大雲寺があり、それが精神病にも効くと言われるようになり「病者」が籠るようになったことから「病者」の里になった。古くは茶屋と呼ばれた宿屋や農家が町の「病者」を預かり暮らしていた。もっと古くから里子を預かる習慣があり、それが「病者」預かりにつながったと言われている。後には保養所と名乗り旧岩倉病院を中心とした医療圏を形成していた。医療は旧岩倉病院、日常暮らすのは保養所や農家というあり方だった。昭和の初期に一番多くの「病者」が暮らしていた。1945年に旧岩倉病院が陸軍に接収されて廃院になり、戦後1950年に精神衛生法ができるとそのような習慣はすたれていった。保養所の一つが岩倉病院を名乗り今の岩倉病院になった。また別の保養所が北山病院を名乗って今に至る。

 昭和の初期までそこに暮らす「病者」は村人から差別を受けなかったと言われている。このことは「病者」と日常に接する人にとっては差別感情とは違う親近感を持った感情が生まれることを示すものとして興味深い。1920年代に鉄道が通るなどして町との交通が容易になると、岩倉村全体が差別の対象であることを村人が知るようになり、そこから「病者」を嫌うようになったと言われている。後に今の岩倉病院が病院の外に作業所を作ろうとすると大きな反対運動が起きたそうだ。

思ったよりも狭い地域だった。直前に、たまたま妻が知り合いになった岩倉の住民から地図などを送っていただいたので、詳しくはどこにあるかわからなかったいわれのある閼伽井堂(あかいどう)などの場所が分かったのは幸いだった。

最初に今の岩倉病院を訪ね、新築の診察棟の3階にある喫茶室から紅葉を眺めた。地図を送っていただいた方が一般の人も入れて景色がいいと教えてくれていた。ちょうど正面に比叡山があり紅葉がきれいだった。紅い紅葉が見られない今季だったが、里の方に一本紅い木があった。外の客が入ってもいいことになっているが、他の客はとみると入院者を訪ねてきたらしい老夫婦、一見して「病者」らしい人など5~6人の病院関係者だった。この棟は新築されたばかりのようで、外観も内装もきれいだった。外来を重視していると言いたいのだろうか。入院病棟は道を挟んで隣接しているが少し古く見えた。30年ぐらい前に友人が入院したので見舞いに来たことがあるが、通路から丸見えの畳敷きの8人部屋で布団をビニールで覆い失禁対策をしていたのを思い出す。今は基準が変わっているからそのようなことはないであろう。喫茶で200円の紅茶を飲んだ後、あらかじめ聞いていた旧保養所跡などを見て回ることにした。

その前に、ちょうど紅葉の季節だったことがあり近くの実相院を見学した。徒歩1分のところにある。床紅葉(ゆかもみじ)といってピカピカに磨いた木の床に外の紅葉が写っていた。説明してくれたお坊さんはあと1週間後が一番きれいな時期だと言っていたが、床に写った様は見るに十分紅葉していた。小さな庭などを見て後にした。

近くにある建物が保養所跡らしかった。跡と書いたが厳密に言うと今はどう使われているのかはよく知らない。ひょっとすると今も保養所として使われているのだろうか。木造二階建てで古い民宿風の建物だ。同じ作りの小さな部屋が並んでいるらしいことが見て取れた。もう一軒保養所跡を教えてもらっていたがそちらは塀などで建物は見えず、この公園の建物でだいたいどのような様子だったのかが分かったのは良かった。保養所跡の前で保養所の話はするなと言われていた。微妙な感情があるのであろう。

公園の北に今の大雲寺があった。写真で見ていたが一見して寺とは見えない変哲のない建物だった。江戸期には大雲寺はもっと大きな勢力を持っていて実相院もその一部にしていたそうだ。明治維新で勢力が大きく削がれた。そこから西に行く道を北山病院の方へ少し歩くと閼伽井堂がある。どんどん行くと北山病院の敷地に入っていくのではないかと思えたが、少し抜けたところに不動の滝があった。二本の滝が落ちており昔はそこで滝修業をしたらしい。滝と言っても細いもので水道水を普通より少し多めに出している程度のものだった。苔の生えた石造りの構造物で二本の水の道が少し出ている。その奥に閼伽井堂があった。精神病に効くと言われ昔「病者」が祈りを込めて飲んだという井戸があり、そこから引いた水の道があって井戸水が出ていた。今でもこの水を飲む人がいるのであろう。閼伽井堂の井戸の上には竹でできた大きな蓋いがかけてあり直接井戸の中を見ることはできない。その手前には大きな菊の花を生けた小さな壺が二つ置いてあり、その周りにはペットボトルのお茶や、お菓子が供えてあった。今でも詣でる人が多いのであろうことを想像させた。

この地を訪ねることはだいぶん前から予定していたのだが、その間に古くからの友人が自殺して亡くなったことがあり、妻と共にその友のことを考えながら歩いた。地図を送ってくれた方が亡くなった友人と同姓なのも何かの縁を感じた。京阪電車の終点から叡山電鉄に乗り換え岩倉駅から少し歩きバスに乗ったのだが、岩倉駅からそのまま歩いてでも行ける距離にある。昔は農村だったのだろうが今は住宅も多い。季節がら実相院目当ての観光客や観光バスで混雑していたが普段ならもっと静かなところなのだろう。ちょうど紅葉の季節で山は色づいており、少しの遠出であったが程よい疲れがあった。亡くなった友人のことで、もしこのような地域が全国的にあり差別のない社会であったらどうだったろうかと考えた。もっと違う結果になっただろうと想像されるのだ。

「病者」の里とはどのようなところか見たくて行ったのだが、二つの精神科病院を挟んで広がる一帯が、昔は「病者」を差別しない人たちが暮らしていた場所だということが何か懐かしさを感じさせるものだった。精神科病院と観光地が徒歩1分の距離にあるのも興味深かった。短い訪問時間だったが、もう少し広い範囲が旧岩倉村なのであろう。地図にはもう少し広く載っていたがそこは歩かなかった。昔、「病者」が自由に歩き回っていたのはもっと広いのだろうなと思いながら歩いてみて、「病者」差別のない社会に思いを馳せるひと時だった。                    (2014.12.12記)

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2014年12月20日 (土)

大阪提訴の報道

「生活保護費減額は違憲」 取り消し求め集団提訴 大阪

 

太田航2014121912時29分朝日

 

 国が昨年8月から生活保護費を引き下げたのは憲法25条(生存権の保障)に反するとして、大阪府内の13市で暮らす受給者51人が19日、国と13市に引き下げの取り消しと1人あたり1万円の慰謝料を求めて大阪地裁に提訴した。51人の弁護団によると、同様の集団訴訟は各地で起こされ、大阪は17件目という。

 

 51人は32~80歳の男女。訴えによると、国は保護費のうち食費や光熱費に充てるための「生活扶助」の基準を改定し、来年4月にかけて段階的に平均6・5%(約670億円)減額していく予定。すでに13市は昨年8月と今年4月、改定された基準にもとづいて保護費の受給額を引き下げた。

 

 51人は受給額が下がったことで外食の回数を減らしたり、新聞の購読をやめたりするなどの影響が出たと主張。「憲法25条が保障する『健康で文化的な最低限度の生活』に達しない生活を強いられた」「改定された基準は算定方法が恣意(しい)的で、保護費削減そのものが目的であるのは明らかだ」と訴えている。提訴後、枚方市の女性(54)は「食費を切り詰めてもぎりぎりの生活。切り下げが続くと今後が不安」と語った。(太田航)

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2014年12月18日 (木)

生活保護引き下げに抗する大阪訴訟

直前の案内になってすみません。明日19日、大阪で生活保護引き下げに抗する集団訴訟が提起されます。同時に支援する会「生活保護基準引下げ違憲訴訟を支える大阪の会」が結成されます。

提訴は午前10時に大阪弁護士会館に1階ロビーに集合し大阪地裁へ向け訴状を提出します。その後弁護士会館に引き返し、11時から報告集会&支える会の結成集会です。

障がい者にとっては生活保護の引き下げは生存権を根底から脅かすものです。今の住宅扶助費も障がい者の住む家の家賃としては低すぎます。車いすを使用している人だとそれに対応した家がどうしても必要だからです。その為に家賃額が扶助費を超えたら共益費などとして契約している人も少なくありません。またどうしても住宅扶助費に収めようとすると他の条件を犠牲にしないといけません。住環境は極端に悪くなります。ところが厚労省は全国調査の結果は障がい者の家賃額は特に高くないなどと現実を無視したことを言っています。住宅扶助費を超える額を生活扶助費から持ち出している現実を全く無視するものです。

精神障がいの友人は引き下げで「新聞をやめざるを得ない」と言います。これが文化的生活といえますか。食べて寝るだけでは人間としての生活とは言えません。国民の文化的生活を保障しえないで国家といえますか。アベノミクスで岩盤規制の打破をするといいますがそれが生活保護費の引き下げだったのです。1%の超富裕層を優遇するために99%を犠牲にするのですか。われわれは99%だ。99%の連帯を思想信条さまざまな違いを越えて創り出そう。今日の生活保護の引き下げは、明日の賃金引き下げ、年金の引き下げです。社会の底に穴をあける岩盤規制改革・アベノミクスと闘う、幅広い共同闘争を創り出しましょう。

明日、ぜひ多くのご参加をお願いします。

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2014年12月 6日 (土)

大阪の生活保護訴訟

<衆院選>食費1日800円程度…生活保護 なぜ切り下げ

毎日新聞 125()150分配信 

 ◇大阪の受給者らが切り下げ取り消し求める訴訟準備

  衆院選で安倍晋三首相の経済政策「アベノミクス」の評価が焦点になる中、大阪の生活保護受給者らが、国と各自治体を相手取り、生活保護費切り下げの取り消しなどを求める行政訴訟を準備している。国は昨年、長引くデフレで物価が下がったことを理由に減額を決めたが、金融緩和で円安が進み、今は物価が上がっている。二重の苦しみを負う受給者らは「弱者の切り捨てだ」と声を上げる。

  衆院選が公示された2日夕。74歳の無職男性が暮らす大阪府寝屋川市の築約50年の木造アパートは、室温が10度に下がった。節約のためストーブは使わず、毛布2枚でしのぐ。「ぜいたくしていないのに、なぜ切り下げるのか」。寒さと怒りで声が震えた。

  古本店を経営していたが、客足が遠のき、8年前に店を畳んだ。4年前から生活保護を受ける。離婚して子どもはおらず、1人暮らしだ。保護費は月約11万7000円で、家賃を払うと手元に残るのは7万円弱。1日の食費は800円程度に抑え、入浴も週1回の銭湯だけだ。受給してから下着以外の服は買ったことがないという。

  国は昨年8月、保護費のうち生活費に当たる「生活扶助」を減額した。来年4月まで段階的に引き下げ、男性も受給額が月2000円程度減る。円安で食料品の値上げが続き、増税の影響もあってやり繰りは苦しい。月末になると、20円のそばや100円のパック詰め白米などの格安品で空腹を紛らせる。

  衆院選では、保護費の切り下げを巡る議論がほとんど出ていないと感じる。司法の場で窮状を訴えようと、原告になることを決めた。「議員定数削減も進んでいないのに、今回の総選挙は予算の無駄遣いと感じる。立場の弱い者から削るのは納得できない」

  訴訟は今月19日、他の受給者約60人と共に大阪地裁に起こす。「憲法で保障された最低限度の生活を侵害された」と主張するつもりだ。弁護団によると、同様の訴訟は16道県で起こされており、原告は全国で500人以上になる見込みだ。

 【服部陽】

 

  ◇13年度から3年間で670億円削減方針

  生活保護の受給者は9月現在約216万人で、過去最低だった1995年の2.5倍に拡大している。国民の58人に1人が受給している計算で、生活保護費は年間約3.8兆円(このうち国費は約2.9兆円)に膨らんでいる。国は、保護費のうち生活扶助を2013年度から3年間で670億円(約6.5%)削減する方針で、家賃の実費を支給する「住宅扶助」などの見直しも進めている。

  一方、円安による輸入価格の上昇などで、物価は昨年6月以降、上がり続けている。総務省が発表した今年10月の全国消費者物価指数では、昨年10月に比べて食料費が3.8%、光熱水費が4.8%上がった。

  生活保護問題対策全国会議事務局長の小久保哲郎弁護士は「国は生活保護を切り崩し、医療や年金など社会保障制度見直しの突破口にしようとしている」と指摘する。【服部陽】

 

 

 

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