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2014年12月30日 (火)

朝日新聞の問題提起について

今朝の朝日新聞に措置入院についての問題提起がありました。記事は下につけます。記事を先に読んでいただいた方がよいと思います。

私の感想は、なぜ家族同意の強制入院制度である医療保護入院を使わなかったのかということが大きいです。医療保護も強制入院であり好ましくはないですが実際問題として絶対にダメとは言えないケースもあります。この点は悩ましいことです。患者会でもあらゆる強制入院はダメという意見の人もいます。その人は今は患者会にも来られないくらい弱っているのですが入院を拒否しています。新聞記事になっているような暴力のケースではないですが、入院して休んだ方が好ましいと思えるのですが本人が任意入院を拒否し医療保護を含む強制入院に反対なので自宅に閉じこもっている状態で家族が面倒を見ています。家族がクリニックに薬を取りに行く形で医療とつながっているのですが、このまま弱っていく可能性もあり何とかならないものかと思っています。

 

一時的休憩としての入院は患者会としても求めていますが、精神科病院が休憩場所ではなく人権侵害の場所である現状を解決することが前提としてなければなりません。巨大精神科病院を無くし、休憩場所としての入院施設に限定したイタリアの先例など学ぶべきものがあります。患者本人に苦痛を求めるのではなく、社会の受け皿を整えることが考えられないといけないと思います。そのような受け皿ができたら上に書いた入院を拒否している人も、休憩場所として病院を求めることがあるかもしれません。

 

新聞記事の場合、ベッドが空いていないから入院を断られたとあります。ありうることですが、もし説得して任意入院に持っていこうとしても、これでは同じことです。私の住む県の県立精神科病院も新しい入院は厳しく制限しており、そこの通院患者でない場合は無理です。だから入院できるのは民間病院ですが、患者の人権を認めない病院が多いのが実態です。

 

朝日の記事にはいくつも論理のすり替えがあります。上の本人同意がないなら措置入院しかないかのような記述がひとつ。もう一つは措置入院なら拘束は避けられないかのような記述の問題があります。これは医療保護や任意入院でも同様です。暴れるなら拘束は仕方ないという理屈は論理として成立していません。イタリアの精神医療では不安になった患者を看護師が1日でも抱きしめて落ち着くのを待つと聞いたことがあります。拘束はマンパワーの不足を補う措置であり、医療の貧困が問題なのです。日本の精神科病院が看護師が少なくていいという特例基準のもとにあることが問題にされなければならないのです。特例がなくても日本の医療はマンパワーが少なすぎます。

 

上記の医療保護が嫌という人は、かつて医療保護で患者を虐待する病院に入れられた体験からきています。患者を虐待する病院があること、医者や看護師が少ない精神科特例の問題など、民間病院が多く金儲け第一になっている問題がまず解決されなければ、朝日の問題提起は成り立ちません。患者の人権が保障されない中では医療保護も人権侵害です。病院を選ぶ情報がなければ任意入院でも人権は侵害されます。イタリアのように巨大精神科病院を廃止するという前提から考えてはどうでしょうか。

朝日の問題提起は貧困な日本の精神医療を前提にした「究極の選択」を問うものになっています。

 

以下朝日記事

 

暴れる娘、押さえつけて病院へ 精神疾患、孤立する家族

 

塩入彩

朝日201412300159

 

図版

事件をめぐって朝日新聞に寄せられた声や、ツイッターなどでのつぶやき

 

 精神の障害を抱えた三男の暴力に悩み、三男を殺してしまった父親の裁判の記事(12月4日付朝刊)に、多くの反響が寄せられました。「どうにかならなかったのか」「ひとごととは思えない」。そうしたなかで、切実な思いを打ち明ける手紙を寄せてくれた家族に、話をうかがいに行きました。

 

「妻と娘を守る義務がある」 三男殺害、父への判決

連載「きょうも傍聴席にいます。」

■警察も医師も解決できず

 「私たちも、ありとあらゆる苦難とともに生きています。娘を殺さなければ家族の誰かが殺されるか、巻き添えで死ぬことになるのではという恐怖とともに生きてきました」

 神奈川県に住む50代の女性は胸の内を打ち明けた。いまは20代になる長女が摂食障害を起こしたのは、14歳の時。その後、精神疾患の疑いがある、と医師に告げられた。学校に行けなくなり、入退院を繰り返した。16歳ごろからは暴力がひどくなり、女性に塩酸が原料の洗剤を飲ませようとしたり、夜中にわめいて暴れたりすることも増えた。

 「警察に連絡をすると、『またか』という対応をされ、それでも何度も呼びました。真夜中のサイレン、無線の音、近所の不審そうな目、いまでも忘れません」

 暴力がひどくなった時こそ、長女を入院させてほしかった。しかし、精神科医には「ベッドが空いてない」「本人の意思を尊重した方がいい」と断られることがほとんど。自分や他人を傷つけるなどの恐れがあると認定された時に強制的に入院させられる措置入院を警察に願い出たが、長女は警察官の前では落ち着きを取り戻し、「措置入院は無理です」と断られた。

 女性は精神病に関する専門書を何冊も読み、著者である医師のもとへも相談に行った。保健所にも相談した。しかし、解決策は見いだせなかった。「うちでは対応できません」と断られることも。暴れる長女を夫と2人で押さえつけながら、早朝に病院に駆け込む日が続いた。

 命の危険を感じ、家庭内暴力(DV)に関する相談所に駆け込んだこともあった。だが、DVの対象は配偶者やパートナーで、子どもからの暴力は対象外として、シェルターに入ることはできなかった。

 「子どもが暴れるのは親の育て方が悪いという土壌がある。だから、親が駆け込む先がないのではないでしょうか」「結局、家族が自らの命と引き換えに本人を引き取るしかない」

■措置入院しかなかった

 長女は約7年前から自殺未遂を重ねるようになり、措置入院が認められた。現在は閉鎖病棟に長期入院している。女性は週に数回、長女の着替えなどを持ち、病院に通っている。

 しかし、入院への世間の目は厳しい、と女性は感じている。「体を拘束してかわいそう」「人権侵害ではないか」。そういう声を耳にする度に、ではどうしたらいいのか、と絶望的な気持ちになるという。

 厚生労働省は2004年、長期入院する精神疾患患者が多い現状を受け、「入院医療中心から地域生活中心へ」と精神医療の改革方針を打ち出した。ただ女性は「入院患者数の縮小を訴えるだけでは、家族は追い詰められる」と話す。まずは暴力を振るう患者を家族などから引き離し、保護する場所が必要だと考えるからだ。

 「娘を拘束するのはつらい。それでも、もし子どもが他の人を傷つけた場合、家族はつぐないきれない。これ以外に、娘を生かす方法がないんです」。社会の支援と理解が進まないなかで、家族は孤立している。女性は、そう感じてならないと語った。(塩入彩)

     ◇

 〈三男殺害事件〉 12月4日朝刊で報じた事件の概要 今年6月、東京都内に住む男性(65)が自宅で就寝中の三男(当時28)を刃物で刺し、殺害した。11月に東京地裁立川支部であった裁判員裁判の公判で、男性ら家族が、精神の障害がある三男の暴力に悩み、追い詰められていたことが明らかになった。

 検察側や男性の証言などによると、三男は約10年前から精神科に通っていたが、症状は悪化。次第に家族に暴力を振るうようになった。男性は主治医や保健所、警察などに相談し、三男の入院を懇願していたが、断られていたという。

 地裁支部は11月21日、「相当やむを得ない事情があった」と男性に懲役3年執行猶予5年の判決を言い渡した。男性側、検察とも控訴せず、今月6日に判決が確定した。

 

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コメント

精神障害者を抱える家族でないと理解できない、想像すらできない不条理な行為と向き合っている家庭が多くあります。
精神障害者による父親殺人事件が私の住む市内で昨年の12月から今年の1月にかけて1ケ月以内に2件も発生しています。
毎日新聞2015(平成27年1月22日朝刊記事)
下野新聞朝刊 2014年(平成24年12月28日)
これらは、氷山の一角であり、家族は、身内から犯罪者を出すことを嫌い警察に告訴しないのが通常の一般人です。
精神障害者の意見は尊重しなければ成りませんが、深刻な家庭内暴力を抱えてじっと耐えている家族が多いのです。
精神障害者を抱える家族が殺されても殺しても社会的批判を受け司法・行政は冷たく世間も偏見があり、あしらうのが現実です。他人様の不幸は蜜の味であってはならないと考えています

投稿: 精神障害者家族相談員 | 2015年1月27日 (火) 05時45分

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