« 2015年1月 | トップページ | 2015年3月 »

2015年2月

2015年2月22日 (日)

厚労省の物価偽装 第3話

 第3話 

基準時点と指数  指数というのは何かの数値がどれだけ変化したかを示すものです。消費者物価指数は有名ですが、数値が変動するものなら何でも指数にして考える材料にすることができます。だれでも身近な数値は体重でしょう。筆者の場合も肥満の傾向が少し気になります。肥満という言葉では厳しさが足らないので、ここでは「デブ化」という言葉を使います。  

指数は、基準の時点を100として変化率を示します。ある会社の売上高が基準の年度に2億円だった。昨年度は2億5千万円だったということなら、昨年度の売上高指数 は、2億5千万円÷2億円×100=125 という計算で125になります。基準の年度に比べて25%の増加です。  

筆者の体重は、17歳のときが57キロ。じわじわとデブ化して45歳のときは75キロ。S状結腸ポリープの摘出手術などがきっかけで相当に頑張って減量した46歳のときが69キロ。リバウンドもあり、その後はまたデブ化が進行。56歳の今は80キロになっています。  まず、17歳を基準時点にしてみましょう。17歳基準デブ化指数です。17歳基準の56歳時点のデブ化指数は、56歳時点の体重を17歳時点の体重で割って100を掛けます。80÷57×100=140・4 となります。「参った、4割も体重が増えたのか」と深刻になる人もいるでしょう。しかし、こうした体重の推移でも「たいしたことはない」と理屈をこねることは可能です。  基準時点を変えるのです。この場合は45歳を基準年齢にするのがいいでしょう。45歳基準デブ化指数への変更です。45歳基準に変えると、56歳のときのデブ化指数は、80÷75×100=106・7 となります。「11年間で6・7%しか体重は増えていない。たいした問題ではない」と開き直る人もいるでしょう。

筆者のデブ化指数の表とグラフを掲げておきます。データは、年齢と体重と、指数を計算する年齢の体重を基準年齢の体重で割って100を掛けたデブ化指数だけですが、それなりに面白いのでは。じっくり見て、基準時点と指数の関係を考えていただきたいです。 例えば、グラフでは4本の折れ線が平行関係になっています。これは、何歳基準のデブ化指数であろうが、元の体重の変化率と同じ変化率であるからです。現実の体重は、57キロ→75キロ→69キロ→80キロです。17歳基準のデブ化指数は、100→131・6→121・1→140・4となります。56歳基準のデブ化指数は、71・3→93・8→86・3→100です。どれも変化率は同じです。しかし、どの年齢が基準年齢なのかによってデブ化指数の数値が変わってくるのです。 個々の品目の価格の指数は「価格指数」と呼びます。多くの品目の価格指数の平均が物価指数です。価格指数の計算の仕方も、他の指数と同じです。指数を計算しようとしている時点の価格を基準の時点の価格で割って100を掛けます。計算表を見てください。

価格指数や物価指数の基準時点は、日本では年単位になっています。「基準年」。厚労省の物価偽装の一番核心の手口は「基準年のすり替え」です。物価指数の専門家らの意見も聞かずにこっそりやりました。筆者がデブ化を認めたくなくてやるかもしれない「基準年齢のすり替え」に比べると、あまりにも重大です。後で厚労省の手口をくわしく説明します。

「15.2.22第3話の表グラフ.xlsx」をダウンロード

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年2月21日 (土)

厚労省の物価偽装 第2話

第2話 異常な下落率

 

 生活扶助費を減らす理由として厚生労働省が挙げたのが物価下落。厚労省が独自に開発した「生活扶助相当CPI」が、2008年の104・5から2011年の99・5まで4・78%下落したと説明しました。

 この下落率は随分大きいです。生活扶助相当CPIは、生活扶助費でまかなう品目についての消費者物価指数です。総務省統計局が公表しているCPI総合指数(調査対象の全品目が対象)の推移を参考までに見てみると、2008年は102・1、2011年は99・7で、下落率は2・35%となっています。

 2001年以降のCPI総合指数の推移も見てみましょう。104・5といった高い水準にはなっていません。ただ、CPI総合指数でも2008年は102・1とそれなりに高い水準になっていました。これは原油高や食料価格などがかなり高くなっていた影響です。厚労省はなぜ、2008年と2011年の生活扶助相当CPIを比べたのか。下落率が大きくなるように意図的に2008年と2011年を比べたのではないか。こういった疑問の声が各方面から湧き上がっています。なぜなのか、筆者もすっきりしません。

 この点はあるにしても、CPI総合指数と生活扶助相当CPIのグラフを見比べると、生活扶助相当CPIの2008年~2010年の下落の度合いが大きいのが目立ちます。筆者があれこれ調べたり考えたりして分かったのは、2008年~2010年については、厚労省が通常の方法とは違う方法で計算したことです。2010年~2011年は、厚労省も通常の方式で計算しています。

 CPI(消費者物価指数)は総務省統計局が担当。国際的なマニュアルに沿ってCPIの計算方法を定めています。厚労省は大胆にもその方法を使わず、別の方式で計算したのです。物価に詳しい学者の意見も参考にしませんでした。総務省統計局にお伺いを立てることもしませんでした。

 ならば、通常の方法で計算したらどうなるか。パソコンのエクセル機能を使えば、なんとか計算できます。筆者の計算では、2010年=100、2008年=101・8です。2008年の101・8から2011年の99・5への下落率は2・26%です。

 通常に計算された生活扶助相当CPIと厚労省独自の方法で計算された生活扶助相当CPIをグラフで見比べてください。独自の計算方法を採用したことによって、下落率がぐーんと大きくなったことが分かります。

 CPIの下落率は、物価がどれだけ下がったのかの「モノサシ」のようなものです。政府がいつも使っているモノサシではなく、厚労省は別のモノサシを使ったのです。そんなことをしていいのでしょうか。ここが物価偽装問題の核心です。

             (白井康彦)

「15.2.20第2話・表とグラフ.xlsx」をダウンロード

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年2月20日 (金)

厚労省の物価偽装

当ブログでも再三にわたり取り上げてきた、厚労省の物価偽装による生活保護費引き下げの問題。分かりやすい解説を中日新聞の白井記者が行なっています。連続ものになりますが掲載します。

第1話 物価偽装とは 生活保護制度の中で、日常の生活費に充てられるのが生活扶助費です。国は2013年1月、生活扶助基準切り下げ案を公表。同年8月から生活扶助費の削減が強行されました。14年4月、15年4月と段階的に減らされていく内容でした。削減額は、受給世帯の地域や家族構成などによってまちまちですが、平均の削減率は6・5%と説明されています。  この生活扶助費削減の主な理由とされたのが「物価下落との連動」でした。物価が下がれば暮らし向きがよくなる。だから、生活扶助費を減らすという理屈です。生活保護制度の担当省庁である厚生労働省は、物価がどれだけ下落したのかの指標として「生活扶助相当CPI」という独自開発の物価指数を持ち出しました。CPIは消費者物価指数の英語の略語。「生活扶助費でまかなう多くの品目の平均の消費者物価指数」といった意味です。  消費者物価指数は、基準の時点を100として消費者物価指数を計算しようとしている時点が基準時点に比べてどれだけ消費者物価が上がっているか下がっているかを示すものです。基準時点に比べて2割上昇していると、消費者物価指数は120、3割下落していると70といった具合です。  厚労省は、2010年平均=100の生活扶助相当CPIが2008年平均は104.5、2011年平均は99.5だったとしました。下落率は、(104.5ー99.5)÷104.5×100で4.78%となります。ここのところが物価偽装問題のポイントなので大書しておきましょう。

2008年~2010年にこんなに物価が下がっていたかな、と疑問を感じる人が多いでしょう。筆者も「そんなはずはない」と思いました。調べてみたらやっぱりおかしかった。「物価偽装があった」というのが白井の結論です。これから丁寧に説明していくつもりです。 (白井康彦)

「15.2.20第一話の表グラフ.xlsx」をダウンロード


| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年2月17日 (火)

安倍は格差は広がっていないという

昨日、出かけるまでの時間に国会中継を見ていた。岡田と安倍のやり取りだった。安倍は何と日本では格差は広がっていないというのだ。どうも税などで再配分した後は格差は広がっていないということのようだった。なんと人間味のない発言なのか。非正規雇用は拡大している。生活保護費は税による再配分そのものだが引き下げられている。年金も下げられている。大金持ちのボンボンには庶民の感覚など全く感じられないらしい。それでも今日の新聞を見ると支持率は上がっているのだと。もちろん昨日の発言は反映されていないが。ピケティだったかその参考書だったかに、フランス革命後の時期に普通選挙権ができた後も、1%の貴族層の利益代表を国民が選挙で選んでいることを嘆いた人のことが出ていた。上位1%が世論を作るメディアを支配していると。その状況は今日でも変わっていないようだ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年2月15日 (日)

ピケティ・21世紀の資本

Eテレの「ピケティのパリ白熱教室」は先週金曜日で終わりました。「21世紀の資本」の要点をまとめた感じの放送でした。元の本も読んでいますが(まだ4分の3くらいまで)、そちらではもっといろいろ詳しく論証したりしているところを詳しい論証はおいておいて、結論を述べている印象でした。

資本の収益率は常に経済成長率を上回る、すなわちほっておけば不平等はどんどん拡大すること、相続財産がますます重要性をまし、一方で教育機会も不平等であり、能力や努力ではなく親の世代の財力が子どもの一生を決める。こんな社会がいつまでも続くのか?社会の不満はどんどんつのり、不満を移民などにすり替える差別排外主義が民主主義にとってかわるのではないか?民主主義を続けるつもりがあるなら今具体的に富裕層に対する課税強化をするべきではないか?テレビの方は差別排外主義にあまり焦点を当てていない感じでした。不平等の拡大という彼の主張を前面に出していて。


私のピケティへの疑問は資本家たちが民主主義を続ける気があると楽観する根拠は何なのか?資本家たちこそが安倍政権の民主主義否定、橋下維新的な差別排外主義の支持者なのではないか?所得上位10%の利益のためになることがマスメディアを支配し、下位90%の多くを動員しているではないか。それは日本でだけ特徴的なことなのか?資本家たちに民主主義を求めるのでなく、下位90%、下位50%が主導権を取ることを求めるなら、もっと明確に資本主義に対する疑問を正面に据えるべきではないのか?差別排外主義しか行く末のない資本主義か、労働者民主主義か、そういう選択肢を示すべきだったのではないか?


もっともピケティ自身はフランスの社会党のブレーンをしていたことがあるそうで社会民主主義にも近いのかなとも思います。ピケティが18歳のころにソ連型社会主義は崩壊しており、彼がマルクス主義にシンパシーを持つことはなかったそうです。共産党宣言は良く書けていると評価していますが、資本論には疑問があるとも言っています。多くの人が共産主義の必然性を信じていたことを考えるべきとも言っていますが、彼自身が共産主義に惹かれたことはないというのが、私の世代と彼とを分けるものなのかもしれません。

私自身、共産主義という言葉がイメージさせるソ連型社会主義・・・それはスターリン主義なのですが・・・とは別の社会ではなければならないと思います。反スターリン主義の諸党派が、結局スターリン主義に転落したことを思えば、それはそんなに簡単なことではないと思います。共産主義諸党派が、反スターリン主義諸党派を含めてとっている民主主義に対する蔑視ともいうべき態度が、根本的に間違えた根拠なのではないか?日本の社会民主主義もどこまで民主的かという疑問もあります。社会主義協会派は社会民主主義ではなく共産主義なのかもしれませんが、彼らにはひどい目に遭ったし。

ピケティに話を戻せば、社会がこのままではひどいことになるという事実を、具体的に論証しきったことは大いに評価できます。革命的と言ってもよい業績と思います。批判するにせよ「21世紀の資本」は読むに値すると思います。これから資本主義について論じる人は、この書を避けることはできない。読んでから批判せよ。

なお参考書として、「東洋経済」の特集は参考になりました。とくに彼の本には直接出てこない日本についての不平等の資料は参考になりました。「現代思想」の特集は本をある程度読んだ後で読み返すと面白いことが書いている。一番最初にこれを読んで、本そのものを読んでみないと分からないと思わせたものでした。「週刊ダイヤモンド」の特集は、メイン企画の池上彰のインタビューが池上が本を読んでいないことが露骨にわかり、ゴミでした。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2015年1月 | トップページ | 2015年3月 »