« 2015年3月 | トップページ | 2015年5月 »

2015年4月

2015年4月28日 (火)

本の紹介 「イスラム戦争」

本の紹介 「イスラム戦争 中東崩壊と欧米の敗北」(内藤正典著 集英社新書)

 
                               竹内仁

イスラム国が話題になってからなのだが、イスラム問題の本を読むようになった。まず読んだのが「イスラーム国の衝撃」(池内恵著 文春新書)。知らなかったことがいっぱい書いてあり、イスラム国について事実を知るには良い本だったが、著者が「反テロ」を強調しすぎるのには違和感があった。

新たに読んだのが「イスラム戦争」。これは良かった。著者のクルド問題の議論には異論があるが、それ以外は腑に落ちる内容だった。(クルド問題について著者はイラクを分裂させることに反対という立場で書いている。クルドの民族自決権を承認すべきだという観点が抜けていると思う。)著者は自ら、ムスリムやイスラム法学者ではなくイスラム地域研究の専門家だと言っている。同志社大学の教授だ。2014年の12月に書かれており、シャルリー事件や後藤さんらの殺害事件は直接出てこない。

著者は日本が集団自衛権を行使して中東に自衛隊を派兵し参戦することに反対し、警鐘を乱打している。日本国憲法第九条がいかに世界情勢の現状にあった解決策になっているか、対話なき武力行使で解決はないと書いている。その立場からイスラム世界で起きていること、ムスリムについての様々な誤解を解くことを具体的に書いている。

本書では欧米のマスメディアの情報を日本のメディアも垂れ流す状況に警鐘を鳴らしている。それに反論するのが本書の目的といってもいい。その目的は正しいし、目的を果たしていると思う。私たちは日々、帝国主義の見解に影響されている。共産主義者だからといってそれらから自由なわけではない。

「イスラム原理主義」という規定は正しいか

イスラムのことを知りもせずにあれこれ論じるのは危険すぎると感じている。「イスラム原理主義」という規定について著者は、「原理主義」というのはもともとキリスト教の一派を侮蔑的に呼んだ言葉で、それを帝国主義がイスラムとひっつけたので、ムスリムには通じない言葉だと書いている。本書には書いてないことだが、私もこの規定には危険なものを感じる。イスラム武装勢力にもいろいろな流れがあるのだが、「イスラム原理主義」と一括してしまうことの危険性だ。

イスラム国というのはそれを承認したムスリム全てを「国民」とする「カリフ制国家」であり、国境でくくられる既成の概念によるいわゆる「領域国民国家」ではない。だから中東のどの地域の武装勢力でも、アフリカやアフガニスタンの武装勢力でも、カリフ(預言者ムハンマドの後継者)を名乗っているバグダーディ(イスラム国の指導者)に忠誠を誓えばイスラム国国民となるという仕組みになっている。それどころか欧米やアジア、オーストラリア、日本などに在住のムスリムでもイスラム国の国民になることができる。しかし、アルカイダ系などのイスラム武装勢力もいるのだし、ガザの正当自治政府も「イスラム原理主義」と呼ばれている。エジプトの正当政府だったムスリム同胞団もそう呼ばれることがある。これらの正当政府を過激派だとして打倒の対象としてきたのが帝国主義でありシオニストだ。

パキスタンのタリバンが軍の学校を襲撃し子どもたちを大量虐殺したということになっているが、欧米の扇動を垂れ流すメディアの情報だけで判断していいものか疑問はある。本書では「これではパキスタンのタリバンはイスラムの名を騙る偽物といわざるを得ない」と評されている。本書には、子どもを殺すことはムスリムが最も憎むことだとも書いてある。またボコ・ハラムが女性を人身売買していると言われるが、もしそれが事実ならイスラム法に反したことであり「イスラム主義組織」とは言えない、単なる盗賊集団だということになると書いてある。2012年にアフガニスタンのタリバンは「女性教育を否定しない。われわれが否定するのは、アフガニスタンの伝統も信仰も無視して西欧の教育を持ち込もうとすることだ」と述べている。

これらをいっしょくたにして「イスラム原理主義」「テロリスト」と呼び「殲滅せよ、殺してしまえ」と、一般市民を巻き添えに数万数十万人のムスリムを殺害し続けているのが帝国主義だ。なお中東で帝国主義という場合、アメリカだけでなくイギリス、フランスを含むことに注意が必要だ。日本もそこに加えられつつあることを見ないといけない。

テロとイスラム法

帝国主義の「対テロ戦争」で大勢の子どもや女性、高齢者が殺されたことをムスリムは怒っている。それは武装勢力に限ったことではない。とくに子ども殺しをムスリムは心底憎む。それがある時、テロという形で現れるのだ。テロの根本原因は歴史的なものを含めて帝国主義の侵略と抑圧にある。イスラム国を支持するムスリムは今のところ少数者のようだが、帝国主義を憎むのはムスリムの圧倒的多数者だ。イスラム国が仮に軍事的に潰されても新たな「イスラム国」が現れるだけだ。

私は帝国主義者のようにムスリムの決起を「テロリスト」と規定することで全否定することには反対だし、日本人がムスリムに対する抑圧民族である立場を踏まえるべきであるという議論や、日本政府がイスラムを侵略し、イラク戦争では参戦もしたのだから、まず日本政府・安倍政権打倒を明確にすべきだという立場も正しいと思う。しかし人道というものがあり、全ての「テロ」が正当化できるわけではないとも思っていた。本書では「テロ反対」という立場を表明しつつ、同時にテロといわれる行為を前述のように「イスラム法」にかなっているかという基準で判断している。(預言者ムハンマドの言ったこと、行なったこと、すなわち「神の定めた掟(おきて)」がイスラム法。)結局、被抑圧民族の利益にかなうことを基準として考えるしかないだろう。

共産主義とムスリム

本書から離れるが、最近のイスラム国を巡る議論の中で、共産主義に基づくテロリズムを否定する立場から論じるものがある。しかし、それは別個に論じるべき問題だと思う。ムスリムのテロが正しいかどうかは被抑圧民族の利益にかなうかという問題であり、共産主義に基づくテロはそれが共産主義革命の役に立つのかという問題だと思う。「人道」といっても帝国主義抑圧民族から押しつけてはいけないと思う。ムスリムのテロをムスリム自身の基準以外の基準で良くも悪しくも判断するのは、帝国主義抑圧民族の傲慢でしかないのではないか。共産主義を基準にすることさえも、テロの根本的原因が帝国主義の侵略と抑圧にあること、すなわち自分自身の責任であることを見失う可能性がある。「進歩・文明」という高みからムスリムを「後進・野蛮」と呼び、否定し続けている諸帝国主義国を、その価値観さえも未だ打倒えていないわれわれ日本の共産主義者が、取るべき態度ではないと思う。共産主義の高みから宗教に基づくテロを「後進」と論断するとしたら、ムスリムからは帝国主義と同列とみなされるだろう。われわれがムスリムの信頼を得るに十分な行動を行った時に初めて、共産主義の同じ土俵で論じることができるのではないだろうか。

日本において帝国主義と共闘するかのようにまったく同じ立場と論理で、イスラム国を非難する「左翼」党派が多数存在するという思想的腐敗状況を、どう考えたらいいのだろうか。ムスリムの決起を「テロ」と呼ぶが、それは帝国主義によってムスリムにくわえられている暴力と殺戮に比して、等価報復にもならない規模のものではないか。それを帝国主義と同列になって声高に非難することが正当だろうか。われわれには「7・7自己批判」をあらためて今日的に考える視点が必要だと思う。私は、われわれがムスリムについて無知である現実を直視することから始めるべきだと思う。


参考文献:「イスラーム 生と死と聖戦」中田考著 2015年 集英社新書

「イスラムの怒り」内藤正典著 2009年 集英社新書

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年4月17日 (金)

大阪生活保護訴訟

今日は大阪生活保護訴訟に朝から行っていました。行動は9時からでティッシュにチラシを挟んだものを駅頭で配布。11時から裁判でした。

原告2人の要点を押さえた陳述、弁護士の分かりやすい話と、法廷内は感じよかったです。 何よりよかったのは第2回期日でも原告の意見陳述が認められたこと。他の裁判所ではこれを巡ってもめていたので心配だったのです。 大阪地裁の裁判官が重要な裁判と認識しているようでよかったです。

原告席20、傍聴席100に対して、原告は30人以上、相手側が30席ぐらいとっていたので、記者が数人、残りの50席ぐらいを100人以上の傍聴希望者で抽選。 抽選に漏れた人にも弁護士会館で説明会がありました。 裁判は45分間で、そのあと1時間集会。

きょうされんや大生連の方が多く来ていました。関西合同労組からも本部執行委員の方が見えていました。 怒りネットからも数人参加しました。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年4月16日 (木)

オープンダイアログ・開かれた対話

ここ何年か、「オープンダイアログ・開かれた対話」という精神科の治療方針が日本でも紹介されている。私も注目しているのだがあまり広がっていかないのはなぜなんだろう。オープンダイアログは統合失調症の患者が最初に病院に行った時から、すべての治療方針を決めたり治療に関するあらゆる決定の場に患者自身が参加する。「私たち抜きに私たちのことを決めるな」という障がい者の大原則があるが、それの医療版だと考えたらいいのだろう。そうするとどういう効果があるかというと、医療者と患者の間に権力関係ができないらしい。日本などでは、医者は、看護者は権力者として患者の前に現れる。強制入院の権限を持つ者、隔離拘束の権限を持つ者として登場するからだ。医療者と患者が対等な立場だとそのような権力構造が生まれない。

注目すべきはその治療効果だという。統合失調症の治療に明らかな効果があるのだという。
経験的にも強制入院や隔離・拘束が、その後の改善にマイナスだと感じることがある。私は強制入院も隔離・拘束も経験していないが予後は良かった。仲間でそれらを経験した人は二度と精神科病院に入院するのは嫌...だといっている。入院して休んだ方がよいのではないかと思う症状なのだが、絶対嫌だという。悪い症状がなかなか抜けないのもそれらを経験したからかもしれない。

最近話題にしている病棟転換型居住系施設も同じ構造にあるのだろう。病院の敷地内に作られたグループホームでは医療者の権力構造が変わらない。長期入院者は病院から監視され続けるのは嫌だという。そこには権力構造の問題がある。
医療者側がこの権力構造から抜けることを考えないといけないと思うのだ。厚労省は逆の方向を抜いている。あくまで権力構造を強める立場だ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年4月14日 (火)

4月17日初公判です

「1504142.docx」をダウンロード

「150414sasaerukainews2.pdf」をダウンロード

4月17日に、大阪生活保護訴訟の初公判が行われます。ぜひ多くの傍聴で盛り上げてください。この訴訟は全国690人の原告で闘われる、平均6.5%、最大10%もの生活保護費引き下げに対する一斉訴訟の一環として、大阪で51人の原告で闘われるものです。怒りネット関係者も3人(広くとらえると4人)が原告となっています。政府が決めた最低生活のラインを大幅に引き下げるという非道に対する怒りの訴訟です。生活保護受給者のみならず、すべての低所得者にかかわってくる訴訟です。

最低賃金や住民税に非課税基準額にも連動してきます。自分は生活保護ではないからと見過ごしていたら火の粉が自分に降りかかってきます。政府はまず弱い立場の人から始めて全ての低所得者に生活を悪くする腹なのです。ここで他人事として見逃してはならないのです。

今の政府は所得上位1%の利益のために、下位99%を犠牲にする政府です。私たちは99%の連帯で安倍政権と立ち向かっていきましょう。ぜひ4月17日に注目し近隣の方は傍聴に駆けつけてください。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年4月 6日 (月)

7・25「病棟転換」問題兵庫県集会

「病棟転換」問題の兵庫の会合がありました。725日神戸市の長田で兵庫県集会をやることになりました、300人規模の会場です。私も一言発言することになりました。

300人を集めることの大変さもありますが、問題を多くの人に知ってもらういい機会ですので宣伝に努めたいと思います。会場は、神戸市立地域人材支援センターで、時間はまだ決まっていませんが午後の時間帯です。精神医療に関心のある方もない方もともかく来て話を聞いて下さい。

チラシなどはまだできていませんが、「病棟転換」問題を広く訴える集会です。「病者」でも「それ何?」という感じかと思いますが精神医療に関係する人には必見です。

「病棟転換系居住施設」というのは、厚生労働省の施策ですが、二つの目的があります。一つは日本の精神病院の入院者、特に長期入院者が外国に比べて異常に多いという批判をかわすこと。もう一つはそのことの別の側面ですが、医療費が飛びぬけて高くなっているのを減らすこと。

そのために、精神科病院の病棟を建て替えてグループホームやアパートにしてそこに患者を移し、退院したことにするという手を考え出したのです。患者にしたら病院の敷地内から一歩も外に出ていないのですが、手品のように退院したことにされてしまう。もともと精神科病院は特例があって一般病院より医者の数が少なくていいことになっており医療費は安いのですが、それでも医療費とグループホームを比べたらグループホームの方が断然安く済むわけです。

 「そんなのは嫌だ」という患者の声が上がっています。当たり前です。病院から外に出ていないのですから。

これを決めた厚労省の専門委員会には「病者」は2人しかおらず大半が医者などの病院の利害を代表する人でした。「私たち抜きに私たちのことを決めるな」という障がい者の大原則を完全に踏み外していたのです。

会場地図(JRから徒歩13分地下鉄から徒歩6分だそうです。)

http://futabasyo.jp/uploads/map2013.png

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2015年4月 3日 (金)

沖縄意見広告

沖縄意見広告の第6期が始まりました

http://www.okinawaiken.org/

今回は、翁長さんの訪米時に合わせてアメリカで意見広告を出し、日本の全国紙にも意見広告を出すそうです。オール沖縄の決起を安倍政権は踏みにじる意図です。許してはなりません。オール沖縄の決起を本土からも支援するために本土やアメリカの民衆に訴える方法としての意見広告です。ぜひ多くの賛同で成功させましょう。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

« 2015年3月 | トップページ | 2015年5月 »