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2016年7月30日 (土)

相模原事件についての緊急声明

私たちひょうせいれんはファシズム・優生思想を許しません

私たちひょうせいれんは「精神病者」をとことん守り抜きます

 

2016年7月30日

(兵庫県精神障害者連絡会・代表)

連絡先:共生舎;電話090-3054-0947

Eメール:gen1951@nifty.com

 

これは今までに出ている報道を基にしており、十分に解明しきれていないこともあると思います。その限界性を踏まえて、今、「精神病者」が追い詰められた気持ちになっている状況を何としても打開したいと思い、また、しょうがい者が分断されようとしている状況に警鐘を鳴らしたくて、緊急声明をまとめました。

 

政府関係者からは措置入院のことだけしか聞こえてこず、ファシズムや優生思想への怒りの声は一言も聞こえてきません。「歪んだ考え」に対する怒りの表明は一切ないのです。「テロ」事件ならすぐに怒りの表明があるのに。それどころか、事件を「精神病者」問題にすり替えています。そこに根本的な問題があるように思います。

 

事実経過と事件の特徴

 7月26日午前2時ごろ、相模原市の津久井やまゆり園に侵入したU(26歳・男性)が刃物を使い、入所者の知的などの「重複障害者」で「意思疎通できない」とみなした男女を19人殺害、26人に重軽傷を負わせた。施設職員は結束バンドで縛り、2人がケガをした。職員は刃物では傷つけられていない。

 Uは2012年から2016年2月まで同施設で働いていた元職員。「しょうがい者は安楽死させなければならない」などと主張し同施設を退職していた。

 Uはノルウェーで、2011年7月22日政府庁舎を爆破し、また社会主義者を銃撃して77人を殺害したナチス信奉者のタイプの確信犯であると思われる。事実、「ヒトラーの思想が2週間前に降りてきた」と措置入院中の2月20日に言っていた。

 計画的に準備し、計画通りに犯行を行っている。いかに大量に殺すかを計算している。深夜2時という寝静まった時の犯行、結束バンドで職員を縛る、ハンマーやナイフ・刃物を5本用意するという準備周到さと計画性。しかも、2月の衆院議長宛て文書でその計画を明らかにしている。4月に知り合いをしょうがい者殺害の共犯となるように誘っている。犯行直前に、周囲の家などに、しょうがい者殺害の必要性を訴えるビラを入れていた。

 「意思疎通できない(知的などの)重複障害者は安楽死をさせなければならない」という思想的確信のもと犯行を行った。その施設の職員であった時期にも入所者への暴行を繰り返していた。施設職員であった時に衆院議長に「障害者を安楽死させる法律を作れ」という文書を渡した。施設で「障害者は安楽死」と発言し、退職させられた。

 心神喪失と診断されれば2年で自由になれると思っていた。(衆院議長宛て文書)

 このような大量殺人が可能になった背景には、しょうがい者が地域社会の中で暮らせず施設に集められていたという事情もある。

 それにも拘らず、警察は精神医療で対応しようとした。精神医療の保安処分的利用である。衆院議長あて手紙の一件で、「他害のおそれあり」として緊急措置入院とした。入院後の尿検査で大麻反応が出たので、「大麻精神病」「妄想性障害」等という病名をつけた。この病名については後述する。Uの計画性や犯行の準備性は「精神病」による犯行とは結び付かない。断じて「心神喪失」状態下での犯行ではない。Uは知人にこの強制入院(13日間)のことを「いやあきつかったっす」「医者を騙して出た」と語っている。

 大麻反応が消えたことと、「反省の言葉があった」ことで措置は解除された。これが2月のことであり、犯行は7月26日午前2時頃の1時間。

 精神医療を保安処分的に使うことは破綻した。

 

しょうがい者には2つの問題が投げかけられている

 安楽死を実行し大量殺人する人物が日本でも現れました。ナチス・ヒトラーの思想以来のものです。「ビューティフルジャパン」という思想は国粋主義者であることを匂わせています。「革命家」を自称していることもファシズム思想の持ち主であることをうかがわせます。体系的なファシズム思想であるかどうかは分かりません。日本で計画されている安楽死法案の先取りです。欧米では安楽死法がすでに実施されているところがあります。「在特会」等差別思想で被差別民衆を「殺せ」と言っている連中は他にもおり、追随犯が現れる可能性があります。怒りの反安楽死・反尊厳死運動、反優生思想を強めないといけません。

 計画的確信版を精神保健福祉法で対応しようとして破綻したことをどう見るか。保安処分の先取りとして「精神病者」問題にすり替えられています。ABC、NHK、朝日社説など、措置入院後の警察の介入を制度化すべきという論調です。大和川事件と比類する「精神病者」差別キャンペーンとなっています。「精神保健福祉法の改悪」による警察との連携強化、措置解除後の警察による監視と管理という方向に世論が誘導されようとしています。精福法の保安処分法体制としての抜本的強化のキャンペーンです。池田小事件を口実にして作った「心神喪失者等医療観察法」が何らの治療的効果を上げることもなく、多くの自殺者と長期入院者を生みだすのみであり、入院者に不必要な苦痛を与えている事実をどう見据えるのかが問われています。

 

「大麻精神病」「妄想性障害」とは何なのか

容疑者が「大麻精神病」と「妄想性障害」等だったと発表されています。これらの病名について私は不知だったので、3人の精神科医に意見を伺いました。

 

 Tドクターの意見。

「大麻精神病」については、「大麻の影響はすぐに消える。長くは続かない。もし続けて吸っていても大麻はダウンさせる方向に働くので興奮状態になることは珍しい。今回の事件に繋がるものとは思えない。」

「妄想性障害」については「統合失調症性のものと、パーソナリティ、性格性のものがある今回のケースは統合失調症とは思えない。パーソナリティ性のものは薬は効かない。副作用ばかり出る。精神科医は対応するが「反省」があれば治療を止めるのは当たり前。今回のケースは、もともと措置入院にしたことに無理があったのではないか。反省したら出すのは当然。」

妄想と措置入院との関係は、在特会が在日外国人を「殺す」と言っているからといって強制入院とはならないのと同様だということ。

 

 Sドクターの意見

「「大麻精神病」も精神病である。大麻の影響は「ハイになる」こと。止めてすぐに消えることも、止めても症状が続く場合もある。今回の容疑者を見ていると逮捕1日後の様子は薬物でハイになっている状態のように見えた。今後の情報が出てくればさらに推測ができるようになる。」

(「精神病者」が迫害を受けている気持ちになっているということについて。)

「大麻精神病」は「精神病」といっても、「精神病者」が「仲間」だと思う必要はない。薬物中毒なのだから「精神病者」というのとは違う。覚醒剤中毒を「精神病者」だと言わない。」

(景気づけにアルコールを飲むように)「大麻の影響というよりは、景気づけに大麻を吸った可能性もある。」(この場合中毒は原因というよりは結果ということになる。)

「2月の措置入院はすぐにも犯罪を起こしそうなハイな状態だったかもしれない。3月2日の措置解除はすぐに犯罪を起こしそうなおそれが無くなったからだろう。どこの病院に措置になっていたのかの情報が出ていない。」

「「狂信者」と精神しょうがい者を混同しないことが必要。彼の行動をしょうがいを持つ仲間の行動のように感じてしまう傾向は否定しておく必要がある。彼が自分の行動に愕然とし苦しみ始め出したなら、どう受け止めるべきか、考え始めなくてはいけないが。今の時点では、薬物の力を借りて「狂信」を実行に移したとんでもない奴に過ぎない。」

「彼が日本国のために、と言って事件を起こしているので、国は彼の「狂信」を明確に否定するメッセージを発しておく必要があるのでないか。臨時国会の冒頭で超党派的に、しょうがい者の生きる権利を擁護することを明確にする声明を議決していいのではないか。」

 

 Kドクターの意見

「「妄想性障害」というのは統合失調症ではないが妄想がある場合につける病名である。今回の事件の容疑者が通常より強い差別意識を持っていたからといって、そう病名をつけられるかどうかは直接会ってみないと分からない。」

「「大麻精神病」は、情緒不安定や幻覚の場合もある。覚醒剤やシンナーだと診たことがあるが、大麻はない。覚醒剤・シンナーだと薬物中毒の後遺症の精神しょうがいがある場合が多い。妄想性障害、幻覚、うつ状態の人が多い。大麻だと後遺症は起きにくく覚醒剤・シンナーで起きやすいと言われている。」

「「しょうがい者は死んだ方が良い」という社会にある差別意識・優生思想を実行に移したということで許し難い事件だ。同時に、犯した犯行で「精神しょうがい者を取り締まれ」という攻撃もしょうがい者に向けられた攻撃である。精神しょうがい者に対する締め付けが、池田小事件の時のように行なわれていることもしょうがい者に対する攻撃だ。措置後の取り締まりを強化する方向に向いているのは危険だ。」

 

どのドクターとも措置解除後の警察への通報は現実的ではないということ。

なお、容疑者は、尿検査を拒否し、裁判所の令状を取って尿検査したようです。結果はまだ(7・29現在)発表されていません。

 

政府はどう動こうとしているのか

  「相模原の障害者施設殺傷事件を受け、厚生労働省は27日、~「措置入院」の制度や運用について、見直しを検討する方針を固めた。厚労省は容疑者の入院後、関係機関の情報共有や連携が十分だったか検証した上で、有識者検討会などをつくることも視野に入れている。塩崎恭久厚労相は27日、事件現場を視察後、措置入院を巡る対応について「警察、自治体、施設の連携が適切だったか、検証しなければいけない」と指摘した。」(共同通信 7.28)

「安倍晋三首相は28日、~事件に関する関係閣僚会議を官邸で開き、事件の真相究明や施設の安全対策強化、措置入院後のフォローアップを早急に実施するよう指示した。 首相は会議で~塩崎恭久厚生労働相、河野太郎国家公安委員長らに「さまざまな観点から必要な対策を早急に検討し、できるところから速やかに実行に移していくように」と指示した。厚労省などは今後、施設の安全対策や精神疾患によって「自傷他害の恐れ」がある場合、本人や家族の意思にかかわらず強制的に入院させる「措置入院」のあり方などを見直す。河野氏は会議後、記者団に「措置入院などのあり方を厚労省中心にしっかり再検討する必要がある。警察もしっかりとそれに対応をしていきたい」と語った。」(サンケイ7.28)

「自民党山東派会長の山東昭子元参院副議長は28日の派閥会合で、相模原市の障害者施設殺傷事件に関連し、再発防止策として新たな法整備が必要との考えを明らかにした。「(2020年の)東京五輪に向けて世界中の人たちが日本を訪れ、(政府も)『安全な国』を主張している見地から、きちんとした法律をつくっておくべきではないか」と述べた。その上で、具体例として犯罪を予告した人物や再犯が懸念される性犯罪者らに対し、衛星利用測位システム(GPS)を捜査に活用することも含めて「何がいいのか、これから議論すべきだ」と提起した。」(サンケイ7.28)

 

 政府は、優生思想による大量殺人、ファシズム思想による大量殺人に対して怒るのではなく、問題を「精神病者」問題にすり替えています。優生思想、ファシズムについて政府関係者は一言も発言していません。それは、ファシズム・優生思想が政権の思想と同質なものであることからくるものなのでしょう。そして民衆の怒りを「精神病者」に向けさせ、優生思想やファシズムを無罪化させようとしています。池田小事件への民衆の怒りを「心神喪失者等医療観察法」制定に捻じ曲げたように、今回の事件への怒りが、優生思想やファシズムに向かい、ひいては政権批判になる必然性を持っていることに震撼し、「精神病者」憎しの世論操作を行っているのです。私たちはしょうがい者に対する分断と、民衆の分断を許さず、優生思想とファシズムに反対し、政府が問題を歪めて「精神病者」に対する弾圧を行おうとしていることを許さぬ運動を構築しなければなりません。

 はたして今の精神医療の現場には、「措置入院後の対応の強化」が可能な余力があるでしょうか。結局は、医療観察法がそうであったように、「犯罪予防のためなら予算を出す」「予算が欲しければ犯罪予防に特化しろ」ということになるのでしょう。ますます地域自立生活に使われる予算が削られて、「精神病者」にとっては隔離・収容・抹殺の攻撃が強められることになるでしょう。今でさえ地域自立生活に使われる予算と、隔離・収容に使われる予算の割合は5対95です。しかも、心神喪失者等医療観察法には他の精神医療全般に比して異常なほどの高額の予算が配分されているのです。それが、もっとひどくなることは目に見えています。

 

優生思想にも保安処分にも反対

世の中に、優生思想やファシズムを持つ人は少なくなく、これからも起こりうる事件であることに戦慄すべきと思います。しかし、今回の事件を許さないということと、「精神病者」を取り締まるということは全く違うのです。

今しょうがい者が分断されようとしています。マスメディアは連日の放送で「被害者になったしょうがい者がかわいそう」という世論を作る一方で、「「精神病者」は何するか分からない」「「精神病者」は危険」という世論を煽っています。まるで池田小事件の時のようです。「精神病者」は再び迫害されるという恐怖に震えています。

今回の事件はファシズム、優生思想の確信犯による犯罪です。世の中にある優生思想やファシズムに反対し、撲滅することが、事件を繰り返さない方法です。

政府やマスメディアは民衆の怒りを捻じ曲げて「精神医療で対応せよ、精神医療を保安処分に使え」という方向に世論誘導しています。「「精神病者」は危険」という世論を作ろうとしています。どちらも、しょうがい者に対する攻撃です。  

私たちは優生思想にも保安処分思想にも反対です。

私たちひょうせいれんは徹底的に「精神病者」に寄り添い、守り抜きます。すべてのみなさん、私たちの戦列に加わりましょう。

以上。

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