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2016年12月13日 (火)

相模原事件と新たな保安処分を許さない-ひょうせいれん声明

相模原事件を許さない

 

 相模原事件に対する私たちの立場は、ヘイトクライムを絶対に許さないということ、ヘイトクライムに対する怒りを一言も発しないばかりか、この事件を利用して精神しょうがい者差別を煽り、措置入院の強化に問題をすり替えようとしている安倍政権への怒りだ。

津久井やまゆり園での726日の虐殺事件はどのような状況の下で起こったのか。昨年11月の茨城県教育委員会での長谷川智恵子委員の「しょうがい者は生まれる前に出生前診断で死なせろ」という発言。今年、曽野綾子は『週刊ポスト』28日号において「高齢者は適当な時に死ぬ義務あり」という趣旨を発言。6月、麻生財務大臣の、高齢者について「いつまで生きるつもりだ」との発言。また長年にわたり、優生思想に基づく政治家などの発言がたいした批判も浴びることなく繰り返されてきた。このような、優生思想を賛美する発言が繰り返され、しょうがい者施設での虐待は後を絶たず、「脳死」臓器移植=しょうがい者虐殺が繰り返され、「尊厳死」(「安楽死」)法案が立法準備されているという思想的状況の中で、遂に優生思想を実行する人物が現れたということだ。

また人里離れた160人収容の隔離施設であることが、被害を大きなものにした。犯人は容易に次々と殺人を行うことができた。もし隔離施設でなく地域で暮らしている人だったらどうだろう。次々と殺傷することなどできなかったはずだ。また被害者を救急搬送し終わるまで5時間もかかっているが、人里離れた場所にあったからだ。

 

精神しょうがい者に対する新たな「T4作戦」の準備

 

問題は、12月8日に出された厚労省の検討チームの「最終報告」が、精神しょうがい者取り締まりの強化だったことだ。上記のようなこの事件で反省すべきことには一言も触れられていない。大部分を占めるのは「兵庫方式」の全国化、すなわち措置解除の困難化と措置入院後の対応の強化だ。また、「退院後支援全体の調整等が円滑に進むよう、保健所設置自治体の長による、地域の精神科医療機関等(公的及び民間)への委託などについて検討することが必要である」という文言をこっそり忍ばせており、精神科クリニックなどによる地域監視網づくり・地域支配体制づくりを準備している。今後、精神保健福祉法の改悪が行なわれていくことになる。

同「検討チーム」の「中間とりまとめ」では検討会の委員の出した結論が180度ねじ曲げられたという。「創」(つくる)という雑誌の11月号に9月の「中間とりまとめ」の裏側を、逆巻さとるという人が書いている。逆巻氏が「検討チーム」の委員に取材したところ、植松を措置入院にして早期退院させた病院の対応に間違いはなかったと結論付けていたというのだ。それが「中間とりまとめ」では「病院の措置対応に間違いがあった。措置入院後の対応の強化が再発防止策だ」という結論になってしまった。なぜか。政治家が介入し、官僚が作文して報告書を180度真逆なものに書き換えたというのだ。

「最終報告」を見る時、大げさではなく、今起きていることは精神しょうがい者に対する新たな「T4作戦」の準備ではないかと思える。「T4作戦」とはナチスドイツがユダヤ人虐殺に先立って、しょうがい者ら20数万人をガス室などで虐殺したことだ。今、政府は精神しょうがい者に対し「簡単には措置解除してはならず、措置入院からの退院後も監視しないといけない危険な存在だ」とレッテル貼りしている。まさに「不良な者」というレッテルであり、「子孫を残してはいけない者」という「T4作戦」の原理となった優生思想そのものだ。今は1930年代のドイツとは時代背景が違う。いわゆる「スマート化」している。「うまくやる」訳だ。肉体的殺害でなく、施設・病院に一生閉じ込めるという方法で、「社会的抹殺」を行うのだ。別の委員会で、政府は、精神科に1年以上入院する20万人の内、「重度かつ慢性」とされた12万人を死ぬまで病院に閉じ込めると言っている。そこに今回の検討チームの「最終報告」だ。精神しょうがい者の隔離を強化し、地域を精神しょうがい者監視網に変えてしまうのだ。今ここで止めないとスマート化された「T4作戦」がやってくる。

 

「兵庫方式」と措置解除の困難化・地域監視網づくり

 

「最終報告」は「兵庫方式」をパイロットケースにしている。「兵庫方式」とは、保健所行政などで構成する「継続支援チーム」が、「措置入院中から患者本人や家族と相談して退院後の課題把握に取り組む」というもので、措置解除の判断に影響を与えて困難化し、退院後も監視下に置く。1612月現在10人が対象となっている。他の都道府県でも措置後も保健所が本人に干渉を続けることに変わりはないが、「兵庫方式」は措置解除に影響を与え、監視の陣容を重厚にし、市境を超えて監視を続けることが、他都道府県とは違うところだ。

その兵庫県では知事が先走りして、新たな制度を作り、措置解除をさらに困難にしようとしている。「新・兵庫方式」とでもいうべきものだ。

兵庫県は126日、「措置入院」の解除について、201711日から複数の専門家で構成する第三者機関が指定医に助言する仕組みを設ける方針を明らかにした。自治体としては全国初の制度だ。兵庫県で昨年(2015年)、洲本市で2度の措置入院となった人が退院後に治療中断した後に5人を刺殺した事件が起きていることを受けたものだという。しかし、知事は相模原事件の対策として新制度を作るとはっきり言っている。助言を行うのは、精県精神科病院協会会長の精神科医や県精神保健福祉センター長、大学教授、弁護士ら5人で構成する第三者機関だ。法律に基づいて作られる機関ではなく、県が独自に設けるものだ。法律を変えることなく、措置解除の権限を持つ指定医に「助言する第三者機関」など作っていいものなのかという、根本的疑問がある。

 

兵庫県障害福祉課の対応

 

この件につき、10月に兵庫県障害福祉課に問い合わせた。

現場の担当者は「あれは知事が勝手に言ったこと。トップである以上すり合わせていかないといけないが、医療として自傷他害を判断できるのは医師だと個人的には思っている。法に反することはできない。」という立場であり、「私たちの仕事は如何に入院患者を地域に返していくか」だと言っていた。「厚労省の『中間とりまとめ』もおかしいと個人としては思っている」ということだった。

県障害福祉課の班長からの回答は、「指定医の判断に対して何かを言う第三者機関ではなく、指定医が迷った時に相談する機関を考えている。人権を考える弁護士を入れるなど、患者の人権を判断する立場からの目を入れることが望ましいと思っている。精神医療審査会の弁護士や、弁護士会とも調整する。相模原事件で入院歴があるということが問題にされるのは違うと思っている。」ということだった。

この件、兵庫県立精神科病院の院長も副院長も何も聞いていない。現場を無視して知事が偏見を煽るという構図だ。

今回の件は、相模原での措置解除を問題にして、保安処分として精神医療を使うということだ。措置解除を困難にし、「地域監視体制」を作り、地域を「保安処分体制」に作り替える「(新・旧)兵庫方式」に絶対反対だ。

 

新たな「T4作戦」と闘おう

 

2017年、精神しょうがい者に対する、相模原事件を口実にした新たなる保安処分のための精神保健福祉法の改悪の攻撃とともに、「重度かつ慢性」とされた12万人に精神科病院の中で死んでいけという攻撃が本格化する。私たちは、このような新たな「T4作戦」と対決し、厚労省「検討チーム・最終報告」路線を許さず、闘っていく。

精神しょうがい者は委縮せずに、社会に出よう。社会に出れば、闘う人とも出会える。たとえ「危険な奴だ」と言われても、「開き直って」街に出よう。差別のない社会を作るのは私たち、精神しょうがい者自身の仕事だ。しょうがい者政策の原則である「私たち抜きに私たちのことを決めるな」は、しょうがい者が能動的に働きかけること抜きには成立しえないのだ。

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