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2017年1月 4日 (水)

新たな大政翼賛会作り=「地域力強化検討会」

「地域力強化検討会」=新たな「隣組」

 

161226日、厚労省の「地域における住民主体の課題解決力強化・相談支援体制の在り方に関する検討会(地域力強化検討会)」の「中間とりまとめ」が、27日には第1回から第3回の会議議事録が公開されました。

関西では「先進的な福祉」を実践していることで知られる豊中市の専門職も委員に出ています。全国各地から「先進的な取り組み」をしている自治体などが集められたようです。

「ニッポン一億総活躍プラン」(16年6月2日閣議決定)と「コミュニティソーシャルワーク」や「地域包括ケアシステム」「断らない福祉」「制度の隙間・谷間(を埋める)」「地域福祉」「包括的支援体制」「どんな町に住みたいか」をどうつなげていくかというのが国の問題意識のようです。

検討会の議論を読むと、住民自治の活性化をどう実現するかという議論がされています。一見すると、そう反対しなくてもいいことのようにも見えます。

しかしちょっと待ってほしい。国は社会保障全般を削減する方向を示しています。その中で、介護保険の要介護1。2や要支援切りをしたり、精神保健福祉法の改悪で精神医療を治安の道具にしたりという政策をやろうとしているわけです。「重度かつ慢性」の12万床の問題もあります。また、年金、生活保護の削減を進めています。

いくら自治体や役人が善意で住民主体の活性化を引き出そうとしても、国のやろうとしている方向性に棹差すのです。国の進める流れに流されるしかない。相模原事件を利用した新たな「T4作戦」の準備との一体性はないのでしょうか。

介護保険の要支援、要介護1、2切りと住民参加の方向性の関係は言うまでもありません。介護保険で国が手を引く代わりを住民が担わされるのです。「元気な高齢者などが担い手として活動する場の確保」「互助:費用負担が制度的に保障されていないボランティアなどの支援、地域住民の取組み」などと言われています。(15・5・19厚生労働省老健局「介護予防・日常生活支援総合事業と 生活支援体制整備事業について」)。従来の「自助、共助、公助」という言い方に加えて「互助」という新たな考え方を持ち込んでいます。福祉切り捨てのための都合のいい言葉です。旧来から存在する互助組織を体制内に取り込もうとしているのです。

精神医療を治安の道具とすることではどうでしょうか。「兵庫方式」では、ピア・サポーター(精神しょうがい者が入院中の別の精神しょうがい者に働きかけて、退院促進などをするもの)の動員が既に路線化されています。兵庫では行政は「兵庫方式」は「対象者のためにおせっかいを焼く」だけであり「監視や強制ではない」と強調しています。しかし精福法改悪で、患者が監視を拒否できないようになったらどうでしょうか。ピア・サポーターが監視と強制に動員されてしまう訳です。しかもこの場合のピア・サポーターには賃金が支払われるわけで「カポ」化することになります。「カポ」とはナチスによるユダヤ人強制収容所で、ちょっといい目を見ようと親衛隊の手先となったユダヤ人のことです。日本の初期の「病者」解放運動は「カポにはならない」ことを肝に銘じてきました。今その真価が問われています。

「重度かつ慢性」の場合はどうでしょうか。この12万人は「地域生活をしない」ことが前提化されているわけで、この場合もピアは8万人だけを対象とした活動しかできません。「カポ」化です。

 

大政翼賛会の末端組織

 

「一億総活躍」に動員されること自体が「カポ」化です。「向こう三軒両隣」という「隣組」が、日本帝国主義の中国・朝鮮への侵略戦争と第2次世界大戦を可能にした住民支配装置でした。物資不足への不満がある中で、住民同士を相互監視させ、反体制思想を持つ者や「お上に逆らう」者を「村八分」にすることで社会の抑圧装置になるものとして考え出されたものでした。江戸時代からの住民自治組織を改編したとも言われています。大政翼賛会の末端組織が「隣組」でした。安倍政権の「一億総活躍社会」は戦争を可能にする国内体制を作ることを目的にしています。福祉切り捨ての中で、不満が表面化しないように、「非国民」をあぶり出し「村八分」にする支配装置作りに乗り出したのが「地域力強化検討会」「中間とりまとめ」の一面ではないでしょうか。

「検討会・中間とりまとめ」が従来の地方自治組織と隔絶するものとして目指していることは何でしょうか。この検討会の言いたいことは、住民は「される側にいるな、する側に回れ」ということではないでしょうか。

だからしょうがい者福祉も意味が変わります。しょうがい者は福祉の受益者ではなく、福祉をする側に回れと。ピア・サポーターとしての動員等をしたいのでしょう。受益者としての面はどんどん削られていくわけですが、(例えば生活保護の障害者加算削減とか)、だからこそ「助け合い」の「隣組」に組織していくわけです。

これからの支配階級・国家には「福祉国家」を実現する力はなくなっています。選挙で不利になると分かっていながら年金を削減するしかないところに追い込まれています。高齢者介護からも「軽度者切り」という方向で手を引こうとしています。そこで「隣組」の「互助会」的側面が必要になっているのではないでしょうか。

福祉削減を行う監視装置としての「向こう三軒両隣」の「隣組」ができてしまわないように、決して軽視してはならないと思います。

 

「中間とりまとめ」を具体的に見る

 

 1226日に公開された、厚労省の「地域力強化検討会」「中間とりまとめ」を具体的に見て行きたいと思います。

そもそもの出発点である「ニッポン一億総活躍プラン」ではどういうことが閣議決定されたのでしょうか。「(地域共生社会の実現)子供・高齢者・障害者など全ての人々が地域、暮らし、生きがいを共に創り、高め合うことができる『地域共生社会』を実現する。このため、支え手側と受け手側に分かれるのではなく、地域のあらゆる住民が役割を持ち、支え合いながら、自分らしく活躍できる地域コミュニティを育成し、福祉などの地域の公的サービスと協働して助け合いながら暮らすことのできる仕組みを構築する。また、寄附文化を醸成し、NPOとの連携や民間資金の活用を図る」と、その意図が「住民に役割を持たせ」「助け合わせる」ことであるとされています。

日本の資本家階級の新自由主義的支配が、もはや「ケインズ主義」時代のように「福祉国家化」することで被支配階級を慰撫して支配者として認めてもらおうとする力をなくし、剝き出しの力の支配を行うとともに、「住民の助け合い」を上から組織しようとしているのです。

さらに、「(具体的な施策)育児、介護、障害、貧困、さらには育児と介護に同時に直面する家庭など、世帯全体の複合化・複雑化した課題を受け止める、市町村における総合的な相談支援体制作りを進め、2020年~2025年を目途に全国展開を図る」と介護としょうがい、育児等における「助け合い」の「相談支援体制」を一体で、20年から25年までに全国展開するとされています、

 「中間とりまとめ」では「「具体的には、社会福祉法第4条(地域福祉の推進)では、『福祉サービスを必要とする地域住民』について、~介護、子育て、障害、病気等にとどまらず、住まい、就労を含む役割の場の確保、家計、教育、そして孤立などにまで及ぶ。それらの人たちは、あらゆる分野の活動に『参加する』だけではなく、『日本一億総活躍プラン』にあるとおり、『支え手側と受け手側に分かれるのではなく、地域のあらゆる住民が役割を持ち、支え合いながら、自分らしく活躍できる地域コミュニティを育成』する主体であるべきである」とされています。「一億総活躍」の対象が、子育て、しょうがい者、介護、病気にとどまらず、貧困や教育など生活の多くの分野に及ぶこと。それらを一体化させ、そこに住民を動員し、「支え合う地域コミュニティ化する」ことが狙いだとしています。しょうがい者も自分は「受け手」だと思うなという訳です。

「自治体は、(具体的な)体制をつくっていくことに、最終的な責任を持つとともに、地域の実情に応じた体制をつくるために関係者との間で必要な機能について共通認識を持てるような働きかけをすることが必要である」と従来福祉の担い手であった国や自治体は一歩引き、「体制づくり」へと、その役割を後退させます。

 「国においては、『我が事・丸ごと』を、平成29年の介護保険制度の改正以降の一連の福祉の制度改革を貫く基本コンセプトに位置づける、との考え方のもと、必要な措置を順次、早急に講じるべきである」と介護保険制度改悪の方向の延長に国の役割はあると、責任放棄を明確にしています。また「国においては、(具体的な)内容について、『地域で自由に決める』ことを強調し、自治体に委ねてしまうのではなく、なぜそのような機能が必要なのか、各自治体で丁寧に話し合うような支援をしていくことが必要である」と国が首根っこを押さえておくことを強調しています。国は福祉を実現する「プレイヤー」ではなく「アドバイザー」のようなものに変質してしまいます。

 では具体的な内容は何なのでしょうか。「『住民に身近な圏域』での『わがこと・丸ごと』=他人事を『わがこと』に変える働きかけをする機能」「福祉の領域だけではなく、商業・サービス業、工業、農林水産業、防犯・防災、環境、まちおこし、交通、都市計画なども含め、人・分野・世代を超えて、地域経済・社会全体の中で、『人』『もの』『お金』そして『思い』が循環し、相互に支える、支えられるという関係ができることが、地域共生社会の実現には不可欠である」と、社会の全分野にわたって「助け合い」が基本になるとしています。「自分や家族が暮らしたい地域を考える」「住民が主体的に地域課題を把握し解決を試みる体制づくり」などと「相互の支え合い」が新たな社会のイメージとして語られます。「元気な高齢者の力を生かした事業の展開や、各地で広がっている『こども食堂』もその一例ということができるかもしれない」と、既に住民が自発的に取り組んでいる「こども食堂」まで取り込もうと貪欲な意図を語ります。

「行政や専門機関は、そうした地域住民と連携り必要な後方支援をしていくことで、包括的な体制を作ってことが必要である」というのが行政の役割であるとされ、福祉の主体は行政ではなく、行政は「後方支援」に役割を限定します。これが一つの肝になっています。

「自治体が主導して単に有資格者を『配置する』という形ではなく、~自治体は支援する立場に回りつつ、地域で誰がその役割を担うのがふさわしいか、関係機関がどう連携してその機能を果たすのかなどを協議して決めていく過程が重要である。例えば、介護保険制度の地域支援事業における生活支援コーディネーターを活用し、活動の範囲を高齢者だけではなく、全ての世代の人を対象に拡大していくことも、方法の一つとして検討できる」と行政の役割「支援する立場」へと後退させるばかりではなく、介護保険を全世代に拡大する、すなわち、しょうがい者福祉や子育ても「保険化」してしまうという意図が語られます。既に高齢者福祉は「保険化」によって国や自治体の義務から外されています。育児も「保険化」が進んでいるといわれます。それをさらに進め、しょうがい者福祉も保険化する、すなわち国や自治体の義務ではなくすということです。

そればかりか「保険化」に留まらず、「助け合い」に転化してしまうのです。社協の役割が強調されています。「地域住民、福祉以外の分野に関わる団体や企業の幅広い活動につなげていくため、社会福祉協議会の役割は重要である。特に、ボランティアセンターは、ボランティアを通じたまちづくりのためのプラットフォームとなる『街づくりボランティアセンター』(仮称)へと機能を拡充させて、関係機関と協働していくことについて、検討する必要がある」と、「福祉の保険化」からさらに、「互助」によって住民が担い手になることを前提に、ボランティアの積極的活用を進めるといいます。これは、ボランティアを支配の道具に変えてしまうことであり、今のボランティアの原理であるボランタリズムを変質させます。現在、社協が果たしている役割を質的にも転換してしまうものです。

さらに「地域福祉計画は、社会福祉法では、策定は任意とされ~『我が事・丸ごと』の体制整備をすべての自治体で促進するためにも、任意から義務化するべきである」と社会福祉法の改悪によって体制整備すると、具体的プランが語られています。

私たちしょうがい者が恐れて阻止してきた、しょうがい者福祉と介護保険の統合がこのような形で準備され、子育ての保険化まで進められようとしているのです。単なる「保険化」にとどまらず、ボランティアの活用によって、「互助」に市民を動員することが狙われています。これはボランティアの質的転換です。

「ニッポン一億総活躍プラン」とはこういう具体的な攻撃であったことが明らかになりました。しょうがい者は早急に理論武装して、反撃の陣形を創る必要があると思います。

 

「住みたい町」「住みやすい町」

 

ところで、地域住民の活性化と「優しい町」「住みたい町」「住みやすい町」はどうしたら実現できるでしょうか。それは「一億総活躍プラン」という安倍政権を打倒することと一体です。パリ・コミューンの住民自治が理想の実物としてあります。すなわち、官吏は選挙で選ばれいつでも解任できること、議員は執行に責任を持ちいつでも解任できる「受任者」にとって変えること、労働者は職場の支配権を持つことなどを制度的保障として、下意上達と上意下達が組み合わされることによって、住民の自由闊達な自発性と主体性が保障されることです。

実際の「こども食堂」が、民衆の自発的互助組織として発展しているように、互助組織の社会的役割はあると思います。パレスチナの左派の宗教運動である「ハマス」が互助組織を基盤にして権力を掌握したような発展性を展望することができるかもしれません。ギリシャでは政府の破綻の中で政権をとった「急進左派連合」が互助会を組織して発展したということがあるそうです。私たちは、下からの民衆の互助会を積極的に推進する必要があるのでしょう。しかしそれはあくまで民衆の中から湧き上がってくる自主・自発的なコミューン的発展であって、「革命組織」による利用主義は排されなければなりません。コミューン的発展に従って「革命組織」は信頼を得るのであって、利用的関わりは百害あって一利なしです。私たちはこのことに厳しくなければなりません。

「地域力強化検討会」のように、支配階級が「互助会」を上から組織しようとすれば、自発性、民衆性はなくなります。支配階級が既存の「互助会」に介入し、支配の道具へと転換しようとしていることを許してはなりません。

 

相模原事件を利用した精神保健福祉法の改悪とこの「地域力強化検討会」は一体となって、片方で、精神保健福祉法を剥き出しの治安維持法として作り変え、その中で、精神しょうがい者を含む民衆を大政翼賛会の末端、治安維持の道具として動員するものです。私たちは「カポにならない」と強く決意した黎明期の「病者」解放運動にならい、新たな「T4作戦」の「カポ」として動員されることを拒否しよう。新たな大政翼賛会を作ろうとする、「ニッポン一億総活躍プラン」を許さず、「地域力強化検討会」路線に基づく、「隣組」作りの法・条例改悪を阻止しよう。

差別のない社会を作るのは私たち、精神しょうがい者自身の仕事です。しょうがい者政策の原則である「私たち抜きに私たちのことを決めるな」は、しょうがい者が能動的に働きかけること抜きには成立しえないのです。精福法改悪に反対する大きな流れを、精神しょうがい者民衆と一緒に創っていきましょう。

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