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2017年5月 2日 (火)

精神医療を警察の手先にするのか

2017年5月1日 兵庫県精神障害者連絡会

 

前代未聞・法案概要から目的を削除

 

 今国会に、精神医療を警察の手先に作り替える精神保健福祉法改悪案が出されています。国会では、4月7日の参議院本会議以来、「相模原事件の再発防止のために、精神保健福祉法を変えるとしたら、精神保健福祉法を治安の道具とすることではないか」との追及が行われてきました。

精神保健福祉法改悪案の審議3日目になって、政府はホームページにも出していた法案の趣旨概要文の中の「相模原市の障害者支援施設の事件では、犯罪予告通り実施され、多くの被害を出す惨事となった。二度と同様の事件が発生しないよう、以下のポイントに留意して法整備を行う」と書かれた部分などを削除したいと言ってきました。これは立法事実を説明したところであり、削除するとは法の目的がなくなったことを意味します。参院厚生委員会委員の反発にあい「追加資料」として配付するということになりました。精福法を犯罪防止のものに作り替えるのかという民衆の批判をかわすためでした。批判をかわすのが目的であることは、法案の本文は一切変えないことからも明らかです。

 また、安倍首相施政方針演説(2017年1月20日/衆参本会議)の「昨年七月、障害者施設で何の罪もない多くの方々の命が奪われました。決してあってはならない事件であり、断じて許せません。精神保健福祉法を改正し、措置入院患者に対して退院後も支援を継続する仕組みを設けるなど、再発防止対策をしっかりと講じてまいります。」というのは一切、謝罪も変更もしないと言います。相模原事件の被告が「責任能力あり」とされた後でも、一切の謝罪も訂正もせず、事件の原因が精神しょうがいであるかのような印象付けをしています。そして、その後の法案審議の中でも、「防犯を目的としないが結果として事件を繰り返さないことになる」「立法事実は相模原事件である」と繰り返しており、本心ではなんら反省をしていないことは明らかです。

 

「個別ケース検討会議」に警察が入る

 

 改悪案では、措置入院者の退院後支援計画にかかわる「精神障害者地域支援協議会」に警察を入れるのです。警察は「悪いことをした人を捕まえる」のが仕事でしょう。精神しょうがい者が何か悪いことをしましたか。措置解除した人が対象ですから「自傷他害」のおそれもなくなっています。当初、厚労省側は、「措置入院者の支援体制を協議する代表者会議に警察は入るが、個別のケースに対応する個別ケース検討会議には警察は原則として入らないから、監視にはならない」と答弁していました。しかし、さらなる追求によって、個別ケース検討会議にも警察が入る「例外がある」と厚労省は認めました。自殺の可能性のある人やたびたび救護措置が必要な人のケースなど、と例示を行いました。「例」であり本音は「他害」のケースなのです。「警察は防犯のためには入らないが、医療の目的なら入る」とし、既に個別ケースの検討会に警察が入っている兵庫方式も「医療のためだから問題ない」としています。また、警察との情報共有は、各地の「精神障害者地域支援協議会」の中で決めることである、と述べ、協議会がそう定めた場合には、個別の情報が警察にわたることも明らかになりました。さらに、この協議会とは関係なく警察との情報共有がありうるとも言っています。また、議員が「警察にわたった情報はいつ削除されるのか」と問うたのに対し、厚労省は警察が判断することだとし、一生つきまとわれる可能性を否定しませんでした。

 法案に批判的に質問する者も、民進党、日本共産党、社民党だけでなく、維新の会、無所属クラブの野党全体に及びました。この中で前述の法案の概要の削除が行われました。しかし、法案審議の途中に、こんなことをするのは、前代未聞のことです。審議はいったん止まり、与党側は「塩崎大臣にしっかり説明させたい」と、審議を再開することで与野党が合意しました。塩崎厚労大臣は20日、「混乱させたこと」を詫びましたが、精神しょうがい者にひどいことをしたことを詫びたわけではありません。これで済むことではないと思います。

 

問われているのは精神科医療者と国会議員です

 

 この中で、4月25日に院内集会が開かれました。集会ではひょうせいれん・フレンズも発言しましたが、法案の廃案を望む声が多数上がりました。集会には緊急の呼びかけにもかかわらず多くの精神しょうがい者を始め260人が全国各地から参加、議員や議員秘書も多数参加しました。同時に約90人が参院厚労委を傍聴しました。

同日行われた審議では、厚労大臣はじめ政府側は開き直りに終始しました。政府は「警察は防犯のためではなく医療のために入る」「自殺や入退院を繰り返している人などが対象」「ご近所トラブルで警察が出動するときにその人が精神しょうがい者とわかっていた方がいい」というのが警察を個別ケース検討会議に入れる目的だと、見え透いた嘘を重ねています。警察に医療の何ができるというのでしょうか。警察の存在理由が防犯以外のどこにあるというのでしょうか。本音が防犯と治安維持のための取り締まりであり、精神医療を治安維持の手段化することにあることは明らかです。

問われているのは精神科医療者であり民衆です。精神科医療者は警察の手先になることに甘んじるのか、今起って闘うのか。民衆は精神しょうがい者が犠牲になることを黙って見逃すのか。言い訳はできません。事実を見ないふりはできないのです。

そして、国会議員には議決権を持っているという重大な責任があります。国民から負託された議決権を、全ての国民、すなわち精神しょうがい者の利益になるように行使するのか否かが問われています。日精協など一部の者の利益のためにその行使を誤ってはなりません。

いますべての国民には精神しょうがい者を人間として見ない法律を作るのを許すのか否かが問われています。旧ソ連における政治的反対者を精神病院に収容して強制的に矯正したという、精神医学の政治的利用の再現を許すのか否か、ナチスのT4作戦の再現を許すのか否か、あいまいさなくその決断が求められているのです。

 

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