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2018年2月26日 (月)

安倍政権のしょうがい者対策をどう見るか

Ⅱ、全ての人に影響が及ぶ精神保健福祉法改悪

 

 改憲攻撃と一体の人権侵害

 私は警察ルートでの強制入院というケースが多い「措置入院」になったことはありません。では今回の「措置入院後の役人・警察の付きまとい」という精神保健福祉法改悪は私と関係ないのでしょうか。精神しょうがい者の仲間が不利益処分されるという意味で他人事ではありません。それだけではありません。先行実施している兵庫県方式では、入院歴がない地域で暮らしている精神しょうがい者をはじめ、精神科にかかっていない人でさえ対象にすると言っているのです。これでは精神しょうがい者ばかりではなく、「変人扱い」されているような「健常者」でさえも不利益処分の対象になってしまいます。旧ソ連で反政府的と見なされた人が精神病院に入れられたり、アメリカやフランスでムスリム人民が何の根拠もなく予防拘禁されたりしています。それらも戦前の日本の治安維持法も保安処分です。同様に反政府的と見なされた人を保安処分することが、この精神保健福祉法改悪で可能になってしまうおそれがあるのです。精神保健福祉法改悪案の国会審議の中で政府は「グレーゾーン事例」と言って、精神しょうがい者ではないが「確固たる信念を持って犯罪を企画する者への対応」を協議すると言っています。左翼活動家を連想させるものです。

 今は戦争挑発と戦争準備・明文改憲攻撃が進む「新たな戦前」の時代です。かつて戦前には治安維持法などで最初は一部の人の人権を侵害するところから始まり、戦中には一般の人が思っていることも口にできない暗黒社会に行きつきました。いまはじまっている精神保健福祉法改悪はまさにその「新たな戦前」に進む攻撃です。日本の左翼の弱点は天皇制と差別問題だと言われます。「北朝鮮がミサイルを撃ってくる」というキャンペーンに日本人の多くが屈服しています。民衆が「金正恩は何をするか分からないアブナイ奴だ」という差別観に囚われている中で、「朝鮮共和国が日本を先制攻撃する可能性などない。戦争危機を煽っているのは日米だ」と明確に主張できている左翼はどれほどいるでしょうか。朝鮮危機を煽ることこそ改憲攻撃の切っ先です。この戦争挑発と戦争準備・改憲攻撃と一体で今の精神保健福祉法改悪が進められていることを見据えないといけないと思います。精神しょうがい者のことは自分に関係ないと見過ごしていたら自分達の人権侵害を許すことになります。

 

 どのような法改悪か

 ではどのような法改悪なのか見ていきましょう。そのために先行して実施されている兵庫方式を見ていきます。兵庫県では法律改悪とは関係なく現行法の中で精神しょうがい者の地域監視網を作っています。政府はそれをモデルにして法改悪を進めています。兵庫方式では2016年度に74人が対象になりました。その内訳は警察官通報などによる措置入院37人、医療保護という家族の意志による強制入院が7人、本人の意思による任意入院が8人、入院していない人が22人です。この入院していない人には過去に入院歴がある人もない人も含まれます。それどころか本人は病気だと思っていないから精神医療にかかっていない人まで含まれます。この74人を選んだ基準は何かというと、保健所の内部会議の合議なのです。何か客観的な基準があるわけではありません。診断基準も関係ありません。医師が対象者を選ぶわけではないからです。何か基準はこうだと書いたものがあるわけでもありません。保健所の判断が全てです。

 選ばれた74人には地域移行支援と称した行政や精神病院による追跡監視が行われます。一応任意だということになっていますが、保健所がしつこくつきまとい「支援だ」と言ってくる中で拒否できるのは相当に意志の強い人だけではないでしょうか。74人の内の5%、おおよそ4人には警察が監視に入っています。それ以外の人の個人情報が警察に渡らないという制度的な保証は全くありません。国の制度では「代表者会議」に位置づく全体の調整会議の構成員には警察が入っており個人情報が警察に渡るルートになっているのです。

 善意でこの監視を行うだけでも「パターナリズム」という医療にはあってはならないこととされている強制になってしまいます。それが警察が関与するなどして悪意が加わればどうなるでしょうか。まさに保安処分そのものです。兵庫県方式で処分した後は、自宅を病室に見立て、地域を病院に見立てる「地域包括ケアシステム」に繋ぐそうです。まさに地域丸ごとの精神病院化です。

 

 法改悪の狙い

このように現行法の中での兵庫県方式でかなりのことができています。今年度(2017年度)中に現行法で出来ることの「ガイドライン」が厚労省から出ます。では何故に重ねるような法改悪案なのか。端的に言って、警察優位の体制を作ることが目的です。兵庫県方式では、警察が「全件の情報をよこせ」と言ってくるものを保健所行政が「警察は地域を守るのが仕事。精神しょうがい者の支援者ではない」ということで拒否していると言っています。今まででも、公安警察がしつこく「患者の情報をよこせ」と言ってくるものを、医者の守秘義務を盾にしてそれを拒否しているということがあります。その力関係の逆転を狙っているのです。

法で「代表者会議」(全体的な調整機関と位置付けられる)に警察を入れると位置づけられたなら警察権限は大幅に拡大され、警察優位の体制になります。日弁連が批判しているように「代表者会議」に警察を入れて各都道府県毎にバラバラの協力体制を作るというのは、いかにも不合理です。それは本当の理由を言っていないからです。なにがなんでも警察を入れたいという本音をごまかしているのです。兵庫県方式ではできないことをやる。すなわち行政や医師よりも警察を優位に立たせ、医者の守秘義務を破らせるという狙いが隠されているのです。まさしく保安処分制度の導入です。「グレーゾーン事例」という「確固たる信念を持って犯罪を企画する者」を処分の対象としたがっているように、どこまでも拡大できるようにしたいと思っている。それを可能にするのが嘘をついてでも警察を入れることなのです。

 この改悪の一方で厚労省は、精神科特例と言って精神科に入院すると医師定員が一般科の3分の1でいいという悪い待遇をする制度を温存しています。さらに厚労省はこの4月から入院ばかりでなく通院時の措置診察さえも医師定員を半分にしていいという改悪をするのです。精神しょうがい者に対するいかなる人権侵害も許してはなりません。

 

Ⅲ、生活防衛闘争

 Ⅰ,Ⅱの闘いをしょうがい者と労働者民衆の陣地を拡大するものとして実践することです。その中で、しょうがい者の生活防衛闘争を行なうことが重要です。私たちしょうがい者等が書いた「生きている!殺すな」(山吹書店刊)の発行の意義は、しょうがい者の生の声を広く知らしめることにあると思います。この本は多くの共感を呼び人から人へ拡がるような売れ方をしています。「施設の実態を初めて知った」という驚きを込めた感想を多く聞きました。この社会はしょうがい者を施設に追いやり、施設の中では虐待が当たり前のように行なわれています。この本はその実態を社会に突き出し、労働者民衆に問うものとしてあります。しょうがい者差別とは空理空論的、観念的な出来事なのではなく肉体的な虐待のことであり、精神的な虐待のことなのです。しょうがい者の生活防衛闘争はそういう意味で極めて具体的でなければなりません。この本を読むことはその第一歩です。まだ読んでいない人は是非購読してください。読んで良かったら次の人に薦めて下さい。そのようにして、しょうがい者と生きた交流と共生を実現し、差別分断を乗り越えていきましょう。この本を読んで下さい。観念的連帯の次元に留まるのではない実践的連帯としてしょうがい者解放・安倍政権打倒を私たちと共に闘いましょう。

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