-怒りネット通信-

2012年10月19日 (金)

怒りネット通信52号

怒りネット通信
52号
2012年10月22年発行

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10月31日行動に集まろう!

 全国の障害者団体、個人の皆さん。
 今年6月、多くの反対の声にもかかわらず「障害者総合支援法」が成立しました。「自立支援法」の廃止の約束は反故にされ、政府の下に設置された総合福祉部会が精魂を傾けてまとめあげた「骨格提言」はほとんど反映されませんでした。
 その結果、「総合支援法」とは、実質的には今年4月から施行された「自立支援法改定法」(「つなぎ法」)が延長されたものと言わざるを得ません。1割まで利用料を徴収できる内容であり、医療モデルである「障害程度区分」は「障害支援区分」としてますます「介護給付」のための絶対的な尺度とされようとしています。ケアマネージメントの導入などにより介護保険制度にますます近づけられ、地域間格差については元の「自立支援法」よりも拡大する内容となっています。難病者への制度の適用についても、一部の難病に限ろうとしており、決して「谷間の解消」とはなっていません。

 また、「総合支援法」には3年後の見直しがうたわれています。私たちは、見直しは今すぐ行なうべきであると考えていますが、3年後の見直しを良いものにするためにも途切れることなく運動を続け、声をあげ続けることがとても大切なことではないかと思うのです。その原点は何よりも、「自立支援法」体制への障害者一人一人の怒りを基盤とすべきです。
 「自立支援法」成立以降私たち障害者とその仲間は、悪法に屈することなく「自立支援法」廃止を求めてさまざまな活動を続けてきました。とりわけ、「自立支援法」成立の日である毎年10月31日を中心に1万人を超える人たちが抗議の声を上げ続けてきました。こうした闘いが利用料負担の大幅な減免をはじめいくつかの改善をせざるをえないところに政府を追い詰め、ついには「自立支援法」の廃止を政府に確約させるところまで頑張り抜いたのです。

 今私たちがなすべきことは、この確約への裏切りを許すことなく、「骨格提言」の実現をとことん迫っていくことだと思います。そして、消費税増税法案と共に成立した「社会保障制度改革推進法」にも明記されている、生活保護をはじめとする社会保障制度の全面改悪と闘うことだと思います。
 こんなおり、極めて残念なことに、今年は10月の日比谷集会が行われないということを知りました。私たち怒りネットは、「自立支援法は廃止となり、新たな法律ができた」という政府の詭弁を許さないためにも、10月31日に行動を行うこととしました。
 「総合支援法」はあくまでも認められないこと、「骨格提言」をきちんと盛り込んだ法律を作ること、生活保護を始めとする社会保障の後退を許さないことを訴えて、以下のとおり政府・厚労省への申し入れ行動を行ないたいと思います。
団体、個人を問わずそれぞれの思いを申し入れ書に託してご参加いただくようお願いします。
             
集合:10月31日、午後1時、日比谷公園霞門 

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声明 生活保護の扶養義務に異議       

以下の声明は怒りネットが5月に出したものです。その後、生活保護をめぐり自民党、橋下維新の会などの保護費切り下げ、食費の現物支給化などの攻撃が激しくなっています。8月10日に成立した「社会保障制度改革推進法」では、その附則に生活保護基準の切り下げなどを明記しています。8月17日、政府は「平成25年度予算の概算要求組替え基準について」を閣議決定しました。主に稼働年齢の人の保護費を狙い撃ちにし、障害者と分断を図り、全体の削減につなげようとするものでした。その中で厚労省は9月28日に、「生活支援戦略・厚労省案」を出し、保護費の削減のほか、扶養制度の強化を打ち出しています。すなわち、扶養義務のある親族が扶養できない場合、その理由を述べることを義務付けるものです。現在は、扶養できないことを申告すればよいものを、その理由まで述べさせることで、心理的圧迫で扶養義務をより強化することを狙った改悪です。
5月の声明が危惧したことが現実化しようとしています。今こそ、生活保護制度の改悪に反対しなければなりません。


●声明
生活保護の扶養義務に異議あり
2012.5.31

 産経新聞(5月26日)によると、「小宮山洋子厚生労働相は25日、人気お笑いコンビJのKさんの母親が生活保護を受給していた問題に絡み、生活保護受給者の親族が受給者を扶養できない場合、親族側に扶養が困難な理由を証明する義務を課す生活保護法改正を検討する考えを示した。」「小宮山厚労相は同日午後の衆院社会保障と税の一体改革特別委員会でもKさんの問題に触れ、「扶養義務者は責任を果たしてほしい」と述べ、余裕があるのに扶養を拒む場合は積極的に家庭裁判所へ調停を申し立てる考えを示した。小宮山厚労相は生活保護費の支給水準引き下げを検討する考えも表明。生活保護の受給開始後、親族が扶養可能と判明した場合は積極的に返還を求める意向も示した。」とあります。
 昔は親族に扶養の義務があったそうです。私たち障害者にとって、家族はたびたび抑圧者としてあらわれました。親による障害者殺しは昔のことではありません。家族によって障害児施設に放り込まれたり、養護学校を強制されたり、精神病院に強制入院させられた人も少なくはありません。すべての家族が悪いわけではないですが、抑圧に無自覚な家族が多いのも真実です。障害者はその抑圧をはねのけるのが地域自立生活の第一歩ではなかったでしょうか。地域で暮らしたいと言った時に、家族とはぶつからなかった人の方が少数派です。「親族の扶養義務」とは、生活の根本を家族に握られることであり、再び抑圧の下に引きずり込まれることです。
 私たちにとって家族制度とは悩ましい抑圧的な響きのある言葉です。扶養義務という名の鎖に再び繋がれることを拒否します。

 マスコミでは不正受給が増えているという報道があります。もしそうなら、今の制度で不正を把握できているということを意味しています。かえって、制度を変える必要はないということを示しているのではないでしょうか。
 この「扶養困難の証明義務化」が制度化されると、申請手続きのどこかで、行政が親族の経済状況を「査定」して「あなたが面倒を見れるだろう」と圧力をかけることになるということでしょう。証明しなければいけないのが親族の側だとすると、行政がそれを認めなければ生活保護は出ないで、その親族が経済的に当事者の面倒を見ざるをえなくなるのでしょう。
 その親族が自立生活に理解がある人間であればまだいいですが、そうでない場合にその親族はどのように動くか。当然、負担になることを押し付けられるわけですから、一番手っ取り早く「施設に入れてしまえ」という発想が出てくるのではないでしょうか?さらに、その親族が勝手に成年後見人をつけて強制的に本人を施設に入れることも考えられます。

 K氏の場合は、有名になる前から受けていた保護が問題にされています。この問題で大騒ぎしている片山さつき議員は、自民党の「生活保護プロジェクトチーム」の一員です。このプロジェクトは、生活保護給付水準を10%削減する方針を打ち出しています。そのための生贄としてK氏をやり玉に挙げているのです。小宮山も自民党の生保10%削減に歩み寄っています。私たちがここで踏ん張らないととんでもないことになります。
 このような貧乏人いじめの政府のやり方の対極に、富裕者課税論があります。
この数十年間、富裕者に対する減税が年間20兆円単位で行われ、貧者に対する増税が進められてきました。また全産業で企業の内部留保という形でため込んだお金は約429兆円(08年度)です。国家予算の一般会計は約90兆円ですからいかに大きな額かということです。金持ち優遇の税制の上に、国家予算も金持ち優遇です。在日米軍のために支出している「思いやり予算は」5年間で1兆円。それどころか世界の軍事費は年間140兆円です。死の商人を太らせているだけの金です。
金が溜め込まれているところから徴収すれば消費税などいらないし、「社会保障と税の一体改革」という名の大衆収奪などいらないのです。不正は良くないが、わずかな不正受給に目くじら立てて10%削減を迫る前にやるべきことがあるだろう。
私たちは小宮山厚労相や野田首相の猛省を求めるものです。

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声明
社会保障制度改革推進法成立を弾劾する
2012年9月6日

社会保障制度改革推進法案が、本年8月10日、参院本会議で民主・国民新党・自民・公明の与野党各党の賛成多数(194票)により可決、成立した(反対は、国民の生活、みんな、共産、社民、改革、みどり、大地、無所属43票)。
 「怒っているぞ!障害者きりすて!全国ネットワーク」(「怒りネット」)は、これを弾劾する。同法は、一言でいって、社会保障制度解体推進法である。同法はいう。「社会保障制度改革は」「家族相互及び国民相互の助け合いの仕組みを通じてその実現を支援していくこと」(第二条一号)、「年金、医療及び介護においては、社会保険制度を基本」(同条三号)とする、「社会保障給付に要する費用に係る国及び地方公共団体の負担の主要な財源には、消費税及び地方消費税の収入を充てるものとすること」(同条四号)、「医療保険制度については、・・(略)・・、保険給付の対象となる療養の範囲の適正化等を図ること」(第六条2号)、「保健医療サービス及び福祉サービス(以下「介護サービス」という。)の範囲の適正化等による介護サービスの効率化及び重点化を図る」(第7条)、どれをとっても、社会保障・福祉に対する国や自治体の責任を今以上に投げ捨てようとするものに他ならない。
 特に見過ごせないのは、第2条に「家族相互」という文言が入ったことである。
介護保険成立はすでに社会保障・福祉の公的責任の解体ではあった。しかし、「介護の社会化」が建前であった。即ち、高齢者問題は、家族でのみ担えるものでなく社会全体で担うものという考えで作られたはずである。しかし、今回、「家族相互」とい文言が入り、再び「家族」の役割が強調されたのである。しかも、それが政策提言とかそういったものでなく、法の文言となったことは極めて重大である。障害を持つものは、家族からさえ、疎外・抑圧されている現状がある。私たちにとって家族からの自立こそが求められているのである。

 同法は、以上を基調に、社会保障・福祉を限りなく自己責任原則に追いやろうとしている。
第1に、保険制度を基本とするということである。
社会保険制度とは、保険料の支払いと引き換えに給付を受けるということを基本とすることは言うまでもない。即ち、社会保障・福祉を売りかいすることが基本的在り方である。同法第2条3項は、「国及び地方公共団体の負担は、社会保険料に係る国民の負担の適正化に充てることを基本とする」としている。極々一部にしか「国及び地方公共団体の負担」は充てないとしか私たちには読めない。厚労省は一貫して、障害者福祉を介護保険に統合しようとしてきた。障害者自立支援法一部改正及び今回の障害者総合支援法の成立は、介護保険統合への布石である。
今回の社会保障制度改革推進法成立により、その危険性がいっそう高まったと私たちは強く認識する。

第2に、「国及び地方公共団体の負担」の主要な財源を消費税とすることである。
消費税が所得に対する逆進性をもつものであることは言うまでもない。貧しきものがより負担するということが社会保障・福祉といえるであろうか? 
 そもそも、社会福祉・保障は、市場原理では多くの民衆が生きていけない、そうした中、労働者・民衆の長い闘いの中で、国や資本化に社会保証の拡充を強制してきたのである。
 社会保障・福祉は、所得や収入が増えるほど支払う税率も高くなるという累進課税をもって所得の再分配を行うことでしか成り立たないのである。社会保障・福祉は、本来、国家等行政が、その財源を持って行なうものである。財源の中心は税であることは言うまでもない。税の制度が、所得に対して累進税をもたず、富める者も貧しきものも同じ税率、あるいは消費税のように所得の多寡と対応しないものであれば、それは結局、それぞれが自己負担しているのとなんら異ならない。
同法は、第一条で、「所得税法等の一部を改正する法律(平成二十一年法律第十三号)附則第百四条の規定の趣旨を踏まえて」と言っているが、同附則でさえ「個人所得課税については、格差の是正及び所得再配分機能の回復の観点から、各種控除及び税率構造を見直し、最高税率及び給与所得控除の上限の調整等により高所得者の税負担を引き上げる」、あるいは「資産課税については、格差の固定化の防止、老後における扶養の社会化の進展への対処等の観点から、相続税の課税ベース、税率構造等を見直し、負担の適正化を検討する」としているのである。即ち、格差の是正・所得再分配の必要性に触れているのである。しかしながら、社会保障制度改革推進法はこの点に何ら触れていない。
 「負担と給付の適正化」とは何であろうか? 「給付と負担の適正化」とは、所得税、法人税等に所得の再分配機能を担わせず、「給付と負担の不公平感」なる仮像を生み出し、民衆の中に分断を持ち込み、社会保障・福祉を解体しようとするもの以外のなにものでもない。

 第3に、医療保険給付の対象となる療養や、介護保険の保健医療・福祉「サービス」の範囲の「適正化」である。
はたして、現在、医療、介護、障害者福祉、生活保護などあらゆる社会保障・福祉で給付が十分すぎると感じる人がどれだけいるのだろうか?
障害者に関すれば、全国の障害者とその関係者が闘ってきた障害者自立支援法撤廃運動がその答えを十二分に示している。「適正化」というならば、更なる給付の拡大・充実こそが求められているのである。
 さらに、私たちが看過できないのは、同法が、「患者の意思がより尊重されるよう必要な見直しを行い、特に人生の最終段階を穏やかに過ごすことができる環境を整備すること。」(第六条3号)と述べていることである。脳死臓器移植法、そして法案提出が画策されている「尊厳死法案」と重ね合わせれば、これらの動きと連動している危惧を感じる。
第4に、同法が、「不正受給」を取り上げて、生活保護の縮小・切り捨てを行うこと宣言していることである。これを法として規定していることは極めて重大である。生活保護費が近年増大したのは「不正受給」の問題ではないことは明らかである。失業と貧困の蔓延が原因である。政府は、国際競争力強化の下、派遣をはじめとする不安定雇用を蔓延させ、資本強化のリストラを後押してきた。また、規制緩和の名のもとに、中小独立自営業者の生業を破壊してきた。その責任をごまかし、生活保護の切り捨てをもってするなど断じて許されない。
私たちの多くの仲間たちは、生活保護によりなんとか日々の生活を送っている。
現在の生活保護受給者へのバッシング、監視体制の強化は、私たちの仲間の尊厳を深く傷つけ、生きる術さえ奪うものである。私たちは満腔の怒りをもってこれを弾劾する。

第5に、国民会議なるものの設置である。以上のような社会保障・福祉の解体を、内閣総理大臣が任命する一部のものでしゃにむに推進しようとしていることである。しかも、この「国民会議」のメンバーには国会議員を含むというのである。
国会議員は国会で論議できるのでありこのような委員に入れるのはナンセンス極まりない。同会議の目的からいって、社会保障・福祉解体を推し進める政党の議員が任命されるのは明白である。
第6に、同法が、国及び地方公共団体の財政悪化の原因を、社会保障制度にかかわる負担のみにしていることである(第一条)。ここでも、重ねて言うが、それが政府見解とかではなく法として規定されたことは極めて重大である。
財政悪化は、無駄な公共事業や防衛費の拡大、他方での法人税や高所得者に対する減税がおもな原因であることは明らかである。そもそも、憲法にあるように、戦後、日本はいわゆる「福祉国家」を目指したのであり、したがって、社会保障・福祉・医療に一番財源が充てられることは前提である。この前提の上で、財政運営はなされるべきが当然である。まさに、政府の失策を社会保障・福祉に押し付け、これを解体しようとする、ためにする文言でしかない。

 同法は、私たち障害を持った者の生活と命を脅かすものであり断じてこれを認めることはできない。さらに、同法は、障害者のみでなくすべての民衆の生存権を脅かすものであることは確実である。
 この法律の具体化に向けて、「社会保障制度改革国民会議」の1年間の審議が開始されようとしている。生活保護法の改悪は、それに先んじて実行されようとしている。「障害者」や貧困者のいのちと生活を守るためにわたしたちは全力を挙げて闘うことをここに声明する。                    
          

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2012年5月 3日 (木)

怒りネット通信№51

怒りネット通信
No.51
2012年5月11日発行

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もくじ
・「障害者制度改革」と「尊厳死」法制化の動きについて
・2月22日 厚労省交渉の概要           

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「障害者制度改革」と「尊厳死」法制化の動きについて

 昨年8月30日に、「障害者制度改革推進会議」(以下、推進会議)の総合福祉部会は、122ページに及ぶ「骨格提言」をまとめた。それは、「障害者自立支援法」に替わる法律として結実することを目的としていた。
 ところが、「骨格提言」を基に法案をつくることになっていた厚生労働省が、今年2月8日の総合福祉部会に示したものは、わずか4ページのペーパーだった。その意味するものは、2013年4月以後、5年間にわたって「自立支援法」が存続することであった。座長が「不本意」と表明し、委員からは「ゼロ回答だ」「詐欺だ」という言葉が飛んだ。
 他方昨年12月8日、超党派の国会議員が参加する「尊厳死法制化を考える議員連盟」(以下、「尊厳死議連」)は、「終末期の医療における患者の意思の尊重に関する法律案(仮称)」を発表する。主治医以外の二人以上の医師が、死期がま近(これを「終末期」と呼んでいる)と判定すれば、患者が書面などにより示していた意思に基づき、新たに人工呼吸器をつけたり経管栄養や胃瘻などで水分や栄養の補給をしないようにしよう、というものだ。これでは、人工呼吸器などをつけて生活している人たちは「贅沢をしている者」とされ、そうした治療が必要な人も受けられなくなるだろう。人にとって、息ができないこと、のどが渇き続けること、空腹であることは苦しいことであるのに、なぜそれを「尊厳死」などという言葉で死なせたいのだろうか。それは「生きる価値がない」という思想があるからできることだと思う。
 以下、これらの動きについてまとめてみた。

[Ⅰ]総合福祉法が「障害者総合支援法」(「自立支援法」の延長)にすり替えられた

●危険な兆候
 今年の2月以前から危険な兆候はいくつもあった。一昨年12月3日に、「自立支援法改定法」が「障害者」の反対を押し切って採決されたこともそうだ。昨年厚労省は2月と6月に、総合福祉部会の議論に反対するコメントを発表。昨年11月辺りになると、民主党の中からも、「自立支援法改定法」でいいのでは、などという発言があった。12月15日に、「自立支援法」を違憲であるとして裁判を闘った人々が厚労省との検証会議を行ったが、厚労省は「自立支援法」の廃止という裁判の和解条項を実行することについて、明言を避け続けた。
 今年に入り、1月11日、民主党の厚生労働部門会議に厚労省は、9法案の一つとして、「自立支援法」に代わることになっている法案を示した。厚生労働関係の法律については、この部門会議の合意をとった上で、閣議決定して、国会に上程するようだ。ところで、この厚生労働部門会議の座長は、厚労大臣の時に、何度も「自立支援法」の廃止を約束し、違憲訴訟を闘った人たちとの合意文書に署名した、あの長妻さんだ。この部門会議のもとに、年金、医療・介護、障害者、生活保護、雇用のワーキングチーム(以下、WT)が置かれている。「自立支援法」関連は、障害者WTの管轄となる。
 ここで示されたものは、「自立支援法」の改定案であり、廃止するものではない、との情報が流れた。この時点から3月にかけて最も頑張ったのは、「自立支援法」違憲訴訟を闘った人たちだ。16日、17日と全国で民主党議員への働きかけを行った。怒りネットも、小宮山厚労大臣、長妻事務所、障害者WTの座長や事務局長、そして、私や有馬さんの地元である東京北区の青木議員に申し入れを行った。

●厚生労働省案
 2月7日、既に少し記述した厚生労働省案が、民主党障害者WTに示された。このWTでは既に厚労省とはやり取りしていたことは間違いないのだが。そして、翌日の総合福祉部会に提出された。
 そこでは、法律の理念、目的、名称を変えることが記述されていた。しかし、支給決定のあり方、「障害程度区分」と国庫負担基準、日中活動の体系、予算上不安定な「地域生活支援事業」のあり方など、実質的な部分は「自立支援法」のままなのだ。しかし、津田厚生労働政務官(民主党議員)は次のように述べた。
 「今回の改正法におきましては、まず障害者基本法を踏まえた基本理念を盛り込む、法律の根幹となる名称、目的規定を改正する、これらを検討しているわけでございます。これによりまして、私ども民主党のマニフェスト等に掲げられております障害者自立支援法の廃止になると考えているわけでございます。」(議事録より)
 これ以後、この見解が民主党と厚労省の公式見解として繰り返されることになる。この見解は客観的に言えば、民主党にとっては実に恥多きものであり、厚労省官僚にとっては民主党を手玉に取った誇るべきものなのだろう。そして、これを聞かされるわたしたち「障害者」やその関係者にとっては、二度と忘れることのできぬ怒りに火をつけるものである。

 理念については、次のように書かれている。
 「障害者基本法の改正を踏まえ、法に基づく日常生活、社会生活の支援が、可能な限り身近な場所において受けられること、共生社会を実現すること、社会的障壁を除去することに資するものとなるように、法律の理念を新たに掲げる。」
 法案に「可能な限り」という言葉が盛り込まれ、批判を受け続ける一つとなるのだが、これも現在まで変更されることはなかった。

 難病の人たちを、この法律と児童福祉法の対象とするような記述がされている。数少ない前進部分とも言える。しかし、これは「障害者基本法」でそのように規定したのだから当然のことである。
 問題なのは、すべての難病者を対象にしていない点だ。「政令で定めるものによる一定の障害がある者」としているのだ。これでは、どういう人を対象とするかは、政府の胸先三寸ということだ。この点も批判され続けているのだが、全く変わっていない。

この法案では、2013年4月1日が法律の施行日となっている。そして、施行後5年かけて見直すと記述されていた事項がある。それは、「障害程度区分」と「就労支援の在り方」だ。
 最近法律の見直しとしては、施行後3年というものが多いように思うのだが、5年とはどういうことなのだろうか。わたしの頭に浮かんだのは、2016年に介護保険の大規模な改定が行われる、という介護保険関係者の中で予想されている問題だ。他方、13年度から施行される「障害者」のこの法律の5年後といえば、18年度。あるいは、その前年辺りには改定内容が決まるということだ。
 次のようなストーリーは考えられないだろうか。
 16年の介護保険法の改定で、介護保険料の徴収年齢を20歳に引き下げ、こういう若い世代を介護保険のサービス対象とする。そういう既成事実をつくっておいて、その後の法改定で「障害者」も介護保険制度に全世代を組み込む。
 「自立支援法」は、介護部分については介護保険に大きく近づけている。しかし、大きく違う点として、就労支援や福祉的就労が入っていることだ。したがって、「障害者」を介護保険制度に組み込むとすると、この就労関係の部分は切り離すことになるだろう。移動支援やコミュニケーション支援についてもどうなるか、ということはあるのだが。
 その後、批判を浴びる中で、この5年後見直しは3年後の見直しとなり、見直す項目も増えることになる。3年後の見直しとなると、介護保険法と同じ16年の見直しとなるということだ。

 このほかとしては、次のようなものが挙げられている。
 より「重度」な人を対象とするケアホームをグループホームに統合する。「自立支援法」以前には、グループホームとして一体だった。
 「地域生活支援事業」については、啓発やボランティア活動の支援などということを書き込んでいるが、これはどこの自治体でも行っていることではないか。市町村の「基幹相談支援センター」について、事業者や民生委員と連携をするようにとか、障害者福祉計画を立てる時には市町村は潜在的ニーズを把握せよとか、自立支援協議会の設置を促進せよなど、これまでにも進められてきたことを書き込んでいる。
 新しいことといえば、労働法規に違反して罰金刑を受けた場合は事業者指定を行わない、という内容が盛り込まれた。小規模のヘルパー派遣事業所の中には、行政が24時間の介助を保障するお金を出さない中で、少ない人員をやりくりして24時間の介助を行っている。そんな場合には、しばしば労働法規を守れないような実情もある。そんな困難な状況を、厚労省が解決するような保障は、この法案の中には全く見当たらないのだが。

●影響は「障害者」だけにとどまらない
 2月9日に、「自立支援法違憲訴訟団」は、津田政務官と討論したが、平行線だったという。その後に訴訟団は記者会見を行った。訴訟団は1月25日にも記者会見を行っていたが、今回の記者会見には、薬害肝炎訴訟団、原爆症認定集団訴訟団、B型肝炎訴訟団も参加した。そして、これら4訴訟団以外に、ハンセン病違憲国家賠償訴訟団、全国生存権訴訟弁護団、中国「残留孤児」国家賠償訴訟弁護団、HIV訴訟弁護団、ノーモア・ミナマタ国賠等請求訴訟弁護団などが加わって、共同声明が出されている。その後にも、薬害ヤコブ病訴訟を行ってきた人たちも共同声明に加わっている。
 このように、国を相手どって訴訟を起こし、そこで国との和解を行って、政府に政策を行わせてきた関係者にとって、政府の「自立支援法」違憲訴訟の基本合意無視は、人ごとではない。第2第3の裏切りのさきがけになりかねない事態なのだ。逆に、「障害者」の運動が弱ければ、こうした人々にも影響をもたらしてしまうということでもある。

 2月13日、「自立支援法違憲訴訟団」は、参議院議員会館内で緊急集会を開いた。九州から北海道まで650人が参加した。この集会には、事前の登録が必要だったのだが、集会が近づくにつれて、人数がオーバーする状況になって、参加希望者を断っていたほどだ。その場には、参加者全員の激しい怒りがあった。
 愛知、埼玉、東京、愛媛など各地で集会が企画され、2月29日の京都で行われた全関西集会には1300人が結集した。
 新聞の論調も、2月16日付の『東京新聞』をはじめとして、『神奈川新聞』、『埼玉新聞』など地方紙が「自立支援法」問題で政府批判を開始する。全国紙については、3月5日に「自立支援法違憲訴訟団」が全国各地で行った記者会見を受ける形で、政府批判の論調を載せるようになった。

●2月22日、怒りネットの厚労省交渉(※本誌後半の交渉概要参照)
 怒りネットは35人の参加で、衆院第一議員会館の第1会議室で交渉を行った。まずはじめに、「自立支援法」廃止の確約を無視し、総合福祉部会の「骨格提言」を無視したことに対する抗議から始めた。詳しくは、怒りネットのほうでまとめる予定だが、その交渉で明らかになったのは、厚労省の許すことのできない本音であったと思う。

 怒りネットは、「障害程度区分」批判の一環として、判定のための質問項目の中に、「障害者」の人格を否定する項目があることを採り上げた。「物を盗られたなどと被害的になることが」あるかどうか、「しつこく同じ話をしたり、不快な音を立てることが」あるかどうか、「助言や介護に抵抗することが」あるかどうか、「『家に帰る』等と言い落ち着きがないことが」あるかどうか、など。これは介護保険の要介護認定の項目と共通のものだが、本人を前にしてこのような質問をすること自体が許しがたいと思ったからだ。
 厚労省の答は一言で言えば、税金を使うんだから我慢しろ、という内容だった。

 厚労省は、精神医療の改善のためとして、医療観察法病棟の関係者による精神医療関係者への教育を12年度から行わせようとしている。厚労省も、「精神障害者」の病院から地域への移行を進めると言っておきながら、重隔離の病棟の医療が「先進的である」と考えているのだ。「精神障害者」の人権よりも治安を優先するその態度は、何も変わっていない。

 「自立支援法」では、「障害者」が65歳となり、介護保険からのサービスを受ける年齢となった場合、介護保険法が優先されることになっている。このため、改めて1割負担が適用されるなど、さまざまな問題が起こっている。「骨格提言」では、この介護保険優先原則をなくすこととしていた。ところが、厚労省はこれも無視。
 なぜ無視したのかを問うと「現在の社会保障制度の原則である保険優先の考え」を挙げてくる。ところが、こんな原則は何の法的根拠もないのだ。厚労省こそが法律なのだ、とでも言うようなこの態度は許しがたい。

 12年4月から施行される「自立支援法改定法」では、相談支援事業者がケアマネージメントを行うこととなっている。それにより、「サービス等利用計画」を作ることになっている。その書式を交渉に先立って厚労省から受け取ったのだが、その中には「課題解決のための本人の役割」などと、まるで訓練でも行うかのような項目が記載されている。社会的障壁を除去して、地域の中で生きていくことを保障する内容とは思えない。
 交渉参加者は、怒りと危機感を持って、今後の闘いに取り組むこととした。

●2月22日、厚労省案
 「障害者」側からの修正要求が突きつけられる中で、民主党内での修正作業が行われていく。21日の民主党障害者WTを受けて、22日に厚労省が新たな修正案を示した。
 ここでは、5年後見直しの項目が増えた。「障害程度区分」だけでなく、この法律に基づく支給決定のあり方も見直すとした。「常時介護を要する者に対する支援、障害者等の移動の支援」も見直しの対象となり、「障害福祉サービスの在り方等」が見直されることとなった。そして、この見直しの「検討に当たっては、障害者及びその家族その他の関係者の意見を聴く」とされた。
 「地域生活支援事業」にもさらに、「市民後見人等の人材の育成活用を図るための事業」や「手話通訳等を行う者を養成する事業」が加えられた。財政的基盤の弱い「地域生活支援事業」の項目を増やすことは、地域間格差をますます広げることになりかねない。
 「障害福祉計画の定期的な検証・見直し」が書き込まれたが、これまでも3年ごとに見直されてきたはずだ。この福祉計画で、医療機関、教育機関との連携が書き込まれたが、どれほどの意味があるのだろうか。
 「障害者の立場に立って相談支援を行うことを、指定相談支援事業者の責務として明記する」という記述や、名誉職的な位置づけである「身体障害者相談員、知的障害者相談員の活用」が加えられた。「自立支援協議会」は、「協議会」という名前に代えられ、その構成員に「障害者及びその家族が含まれることを明記」するとした。要は、金のかからないことが書き込まれた。
 この週には3回障害者WTが開かれ、翌週28日にも開かれた。そして、29日から3月1日にかけて民主党厚労部門会議のとりまとめが行われた。

●厚労部門会議で取りまとめられたものとは
 法律の名称は、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(障害者総合支援法)。
 理念についても一応触れておかなければならないが、法律の実質が変わらない中で理念を語ることは非常にむなしい。しかし、理念の記述に「可能な限り」とか「資することを旨として」という言葉が入ることによって、理念そのものが空疎なものとなっている。以下の長々とした文章を引用する。
 「第一条の二 障害者及び障害児が日常生活又は社会生活を営むための支援は、全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとリ、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため、全ての障害者及び障害児が可能な限りその身近な場所において必要な日常生活又は社会生活を営むための支援を受けられることにより社会参加の機会が確保されること及びどこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと並びに障害者及び障害児にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものの除去に資することを旨として、総合的かつ計画的に行わなければならない。」

「5年後の見直し」は、「3年後の見直し」となり、「手話通訳等を行う者の派遣その他の聴覚、言語機能、音声機能その他の障害のため意思疎通を図ることに支障がある障害者等に対する支援の在り方等」が加えられた。そしてこの見直しは、上に引用した理念を「勘案し」て行われるとしている。これで「骨格提言」を段階的に実現するのだ、と言いたいようだが、それにしても「基本理念に基づき」とさえ言っていないのだ。
 この検討過程で「聴くこと」とされていた「障害者及びその家族その他の関係者の意見」については、「反映させるために必要な措置を講ずる」という表現とされた。
 自治体の障害福祉計画の基本となる国の基本指針の作成や変更についても、「あらかじめ、障害者及びその家族その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずる」とした。

 身体介護、家事援助、外出介助を一体的に行う「重度訪問介護」の対象者は、「重度の肢体不自由者」だったが、「知的」や「精神」などほかの「障害者」にも拡大すべきだ、との「障害者」側の要求があった。そこで、「重度の肢体不自由者等」と記述し、具体的なことは「厚生労働省令で定める」こととした。そして、この部分の施行は、2014年4月からとされているので、どこまで対象を広げるかは「障害者」団体と厚労省とのやりあいになる。
 「地域生活支援事業」のボランティア活動の支援ということについては、ボランティアという言葉をなくすため「障害者、障害者等の家族、地域住民等が自発的に行う障害者等の自立した日常生活及び社会生活のための活動」という言葉に置き換えられた。どの程度意味が変わるかは不明だが。
 このような内容で3月13日に閣議決定され、国会に上程されるのだが、この程度の手直しでは、「自立支援法」を少なくとも15年度まで延長したという事実は変えようがない。

 またここで付言しておかなければならないのは、この4月から施行される「自立支援法改定法」は、施行以前に改定されている事実である。これは「地域主権関連法」の影響なのだが、施設・設備・人員配置・運営などについての基準を国の基準ではなく、自治体の条例に委任するなど、地域間格差をますます広げる内容となっているのだ。

 3月8日、民主党はそれまでにヒアリングを行ってきた団体を招き、これまでの法案の検討について報告を行った。300名分用意された席は満員となり、参加者の怒りの激しさの中で、1時間半の予定がさらに1時間延長された。
 3月12日には、最後の「障害者制度改革推進会議」が行われた。4月からは、障害者基本法に基づく「障害者政策委員会」が発足するためだ。推進会議の委員は、この政策委員会に移るようだ。差別禁止法案を検討している「差別禁止部会」は、政策委員会の専門部会になるという。
 この日、怒りネットは厚労省前と推進会議の行われる会場前でビラ撒きやマイクによる宣伝を行った。「知的障害者」自身の団体であるピープルファーストも宣伝活動を行った。偶然にも、05年の国会行動以来の共同行動となった。推進会議メンバーの福島智委員、「聴覚障害者」の久松委員とも挨拶を交わした。

●国会での強力な闘いを
 3月13日の閣議決定後の記者会見で小宮山厚労大臣は、「障害者の団体も色々なお考えがありますが、多くはご納得いただいているかとは思っています。」と発言。4月3日の社民党の吉田議員の質問の際にも同様の答弁を行っている。
 わたしたちは当然「ふざけるな」と言いたい。しかし、全く根拠のない発言とも言えない面が客観的にはあるのではないか。その一つは全日本育成会のように厚労省のイエスマンとなって、自らの利権のみを追求する団体の存在もある。しかしそれだけでもないだろう。法案の国会上程に反対した団体はないのだから。「自立支援法」を1ミリでも改善しようとすれば、これも止むを得ないことだ。
 しかし、小宮山のこのような発言を許しておけば、所詮「障害者」団体は押し切ることができる、となってしまうのではないか。前述したように、この運動の結果は、「障害者」だけにはとどまらない。そこにわたしたちの責任の重大さがある。
 どれだけ民主党の裏切りに「障害者」やその関係者が怒っているのか、国会行動として強力に叩きつけていくことが、ぜひとも必要である。

[Ⅱ]「尊厳死」法制化を絶対に阻止しよう!

「尊厳死議連」は、今年に入っても検討を続け、今の通常国会への法案上程を狙っている。
 これに対して、全国精神「病」集団をはじめとして、次々と反対声明が上がっている。怒りネット以外では、全国青い芝の会、DPI、人工呼吸器をつけた子の親の会(バクバクの会)、日本ALS協会、日弁連などである。
 「尊厳死議連」は3月22日に法案としての形式を整えて、新たな案を提出した。これを各党で議論し、法案の国会上程をやはり狙っている。
 昨年12月8日に出されたものと比べると、「延命治療の不開始」についての家族の同意をなくし、本人の意思だけにしている。「終末期」かどうかについては、主治医ともう一人の医師で判断すると変えた。いずれにしても、死なせる手続きを簡略化している。
 国と地方公共団体には、「終末期の医療について国民の理解を深めるために必要な措置を講ずるよう努めなければならない」と、啓発の責務が課されている。そして、臓器移植法のように「延命措置の不開始を希望する旨の意思の有無を運転免許証及び医療保険の被保険者証等に記載することができる」ようにするなどの措置を行おうとしている。事実この法案は、臓器移植法とよく似た構造を持っている。
 何を「国民」に理解させるのか、全く無限定である。やろうと思えば、オランダやベルギー、アメリカの一部の州で行われている「積極的安楽死」(毒薬を飲んだり、注射したりして死なせること)のキャンペーンや、欧米で広がりつつある「無益な治療」という考え方さえキャンペーンできることになってしまうのではないだろうか。
 同議連は、昨年8月には91人だったが、3月22日時点では112人になっている。顔ぶれは、首相や厚労大臣経験者も並んでいるが、小宮山大臣もその一人だ。法案が採決された場合には通る可能性が高い。
 だから、今反対の声で国会への法案上程を阻止していかなければならない。

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《2月22日 怒りネット 厚労省交渉の概要》

※ 凡例 ☆☆:こちらの参加者の発言、■■:厚労省官僚の発言
    質問項目の要旨は〔  〕で記載

☆☆ ここに骨格提言がある。厚労省から出された厚労省案。いったい何を厚労省は検討したのかなと。憤りをもって抗議したい。質問状の大半の部分が、議論の余地のないような話になってしまった。抗議したい。まずそれを前提に、厚労省の方から回答をいただきたい。厚労省の方、お名前を。

社会援護局 障害保健福祉部 企画課  小原係員
障害福祉課  内藤係員
精神・障害保健課  瀧田係長
精神・障害保健課  鈴木係長(障害程度区分係)
精神・障害保健課  高橋係長
精神・障害保健課  羽鳥係長(医療観察法医療体制整備推進室)

■■【精神・障害保健課 瀧田】
 [Ⅴ]から。自立支援医療については、違憲訴訟原告団・弁護団と国との基本合意文書において、自立支援医療にかかる利用者負担の措置については、当面の重要な課題とすると。H24年度予算編成の中で、検討すすめてきた。実現するのに必要な190億円を恒久的に確保するのが難しい。引き続き今後検討していきたい。障害福祉サービス、補装具の利用料、利用者負担については、H22年4月から、低所得者の方の利用者負担は無料に。実質的に応能負担。

■■【精神障害保健課の障害程度区分課 鈴木】
[Ⅱ]〔障害程度区分について〕
(1)〔障害程度区分の調査検証事業について〕
 障害程度区分については、従来よりさまざまな課題が指摘されてた。骨格提言でも新たな支給決定の提言がされてる。実態に即した公平公明な支給決定が行われるよう、障害程度区分に関する調査検証を行い、今後の作業にあたっての基礎資料を得たいと考えている。
具体的な調査内容は、今後の議論をふまえつつ、適切かつ効果的な調査を実施できるよう検討していく。現段階では、どういったものかという具体的には(答えられない)。

(2)〔判定項目の中で人権無視の質問項目がある問題について〕
 障害程度区分は、支援の必要度をはかる客観的尺度。その質問項目の内容は、適切な区分判定するうえで必要と考える。公のサービスですので、国民から徴収された、一般の方から徴収させていただいた税金その他の貴重な財源で賄われている。その点に留意が必要。運用にあたっては、公平性、透明性、納得性とかを明らかにしながら、広く国民から共感を得ながら運用していく必要があると考えている。
 調査の中で不愉快に感じる場面とかもあるかもしれないが、そこは、サービスの公平性、客観性を担保しつつ障害程度区分が適切な判定できるよう、制度の趣旨を改めてご理解いただき、認定調査にご協力いただきたい。

(3)〔介助の必要性は情況により変わるのでは〕
 障害程度区分認定は、まず1次判定で106の調査項目をもとに、コンピューター判定を行う。次に2次判定でコンピューターだけでは適切な評価が困難な障害特性について、医師意見書や特記事項をもとに、市町村の審査会で総合的に判定する仕組み。さらに、生活環境等を聞き取ったうえで、おかれている環境、サービス利用○○などをもとに、総合的に支給決定してる。本人のおかれている環境等は、障害程度区分の判定手続きとは別に、支給決定全体の中で確認している。サービス利用の意向については、4月以降は相談支援事業所のケアプランもふまえることで、反映できると考える。障害程度区分については、従来からさまざまな課題や意見あるところであるが、総合福祉部会の骨格提言や障害者自立支援法をめぐる今後の議論をふまえつつ、市町村間・利用者間の公平性、客観性をどう担保するかという観点も含めて今後検討する必要あると考える。

■■【企画課の小原】
[Ⅲ]〔介護保険優先について〕
 自立支援法と介護保険法の適用の関係については、障害者についても、ほかの国民の方と同様に40歳になったら介護保険保険料を支払っていただくとともに、サービスの利用に当たっては、現在の社会保障制度の原則である保険優先の考え方で、まずは介護保険制度に基づく介護保険サービスを利用することになっている。
 ただし、次のような場合は、障害者自立支援法に基づくサービスを受けられる
①介護保険サービスに相当するものがない障害福祉サービス、これらのサービスと認められるものを利用する場合
②市町村が適当と認める支給量が介護保険サービスのみでは確保することができないと認められる場合
 これまでのこのような取り組みを考えつつ、介護保険制度における給付と負担の関係、片やこれをふまえた障害福祉サービスと介護保険制度サービスとの関係のこと、障害者とそれ以外の方との公平性、給付にかかる財源の在り方、等々を総合的にかつ慎重に議論していく必要があると考える。

■■【障害福祉課 内藤】
[Ⅳ]〔4月からの「つなぎ法」に関して〕
(1)〔「サービス等利用計画案」の記載について〕
(☆☆ 事前に書式案の資料が出されたので返答いらない)
(2)〔「セルフプラン作成者」に、ア)家族が協力して作成した場合、イ)友人や支援者が協力して作成した場合、の可否〕
 ア、イ、いずれも含まれる。セルフプラン作成者というのは、簡単に言うと、家族、友人、支援者など、指定特定相談支援事業者以外の方が作成した場合、かつ障害者本人さんから市町村に提出された場合はセルフプランとして扱うこととしている。
(3)〔4月から施行のつなぎ法では「指定特定相談支援事業者」は市町村が指定することになっているが、これまでケアマネジメント事業者は都道府県指定だった。都道府県から市町村にかわった理由は〕
 市町村は、障害者の方からの相談支援業務を担ってる。だから市町村は相談支援事業者と密接な関係ある。身近な地域の相談支援事業者の情況を十分に把握している。市町村は自らの市町村内の体制整備を行う必要があるということから、指定特定支援事業者の指定は市町村がすることに。
(4)〔骨格提言では相談支援事業者は都道府県指定となっているが、どうか〕
 現在、民主党のワーキングチーム(以下、「WT」と略記)の意見をふまえながら検討中なので、明らかにできる内容がない。

■■【精神・障害保健課 高橋】
[Ⅵ]〔精神科医療に関して〕
(1)〔ざこねの病室への指導はいつから?〕
 調べたが、いつからかは明確にならず。基本的に実地資料は都道府県がすべての精神科病院に入っている。厚労省も、全部ではないが、自治体に赴いて病院への立ち入りもしてる。最近の実地資料について。各病棟の和室等でめかくしなしでオムツ交換やポータブルトイレの使用、保護室内のトイレが廊下から見える状態になっていたなどあったので、ついたて等の使用するなど入院者のプライバシー保護の観点から適切な措置を講じることなどを指導。引き続き、都道府県の年1回の調査、本省の実地調査で今後もやっていく。

(2)〔前回交渉の際に示された数字の齟齬について〕 略

(3)〔身体拘束について〕
 ア)身体拘束が増えている原因については不明。最近言われているのは、認知症の患者が多くなってきて、転倒・転落防止のための身体拘束等が行われているのではないかと考える。
 イ)医療観察法の担当もいますが、あわせて回答すると、630調査では、病棟別の調査をしていない。病棟別の件数は把握していない。なお、医療観察法病棟にかかる身体拘束については、H22年11月の国会報告でしたとおり、H17年7月15日~H22年7月31日、約5年の間、身体拘束が行われたのは29人。

(4)〔精神医療審査会についての質問。ア)審査の対象とされてない人が多いんじゃないか。イ)審査の結果、入院患者の意志が無視されてるのでは〕 略

(5)〔アウトリーチ事業について。対象者の同意確認。入院の方に走るのでは〕
 アウトリーチ推進事業は、今年度から実施。医療などの支援につながりにくい方に対し、ご自宅にうかがって、本人とともに家族も含めて、出来る限り入院を予防しつつ適切な支援を行うこととしてやってる。誤解されて困るのは、入院に頼らないというのが大前提にやってる事業。この事業は、地域で生活することを前提にした支援を行うのが基本。
 実際に行うのは、一定期間、医療だけでなく、福祉とか生活に関しての包括的な支援。新たな入院や再入院を防いで地域生活が維持できるような体制を構築することが目的。
 同意の件。精神障害者アウトリーチ推進事業の実施要項があって、その中の留意事項として、アウトリーチの実施にあたっては支援者側の一方的な計画によって行うのではなく、支援対象者や家族等との間に信頼関係を構築するよう努めることが銘記。実施要項を受けた手引きでも、問題の解決を入院に頼らない原則を確認する、と記載。
 事業の実施主体は都道府県で、補助金も都道府県経由で実施主体に流れる。課題の解決を入院に頼らない、ということを都道府県に対しても強調している。地域生活から新たな入院を増やさないようにする、あるいは精神科の病院から退院された方の再入院を防ぐことをめざすもの。この事業を行っていくうちに、入院ということになる場合もあるかもしれないが、そういう場合、詳細なレポートを提出してもらうようお願いしている。実際の支援では、対象者や家族に支援内容について了承を得たうえで進める。対象者の方で訪問拒否とか緊急性を有しない場合もある。そういう場合、無理な介入はせず、見守りを継続するにとどめる。
 事業の性格上、同意まで非常に時間かかる方もいる。そういう方については、玄関まで行って声だけかけて帰ってくるとか、担当者の名刺をおいて「何かあったらご連絡下さい」というかたちで対応している。強制的にアウトリーチのサービスを受けなければならなくなる、というわけではない。

(6)〔第3期障害福祉計画の目標値の問題〕 略

■■【医療観察法医療体制整備推進室 羽鳥】
(7)
 「H24年度障害保健福祉部概算要求の概要」のことかと思われる。その記載の中で、一部新規ということで「心神喪失者等医療観察法に基づく医療の専門家により医療体制等について技術的助言を行うとともに、一般精神医療機関に勤務する医師等を対象とした研修を実施し、精神医療の向上を図る」ということで記載。それの質問。
 この記述については、2つの新規事業を盛り込んでいる。
 1つは、「医療観察法に基づく医療の専門家により・・・助言を行う」という事業。これは、H24年度政府予算案で新規で計上してる事業。事業内容としては、医療観察法に基づく指定入院医療機関の医療従事者の方に、他の指定入院医療機関に出向いてもらい、改善等技術的助言をしてもらう。そうした中で、医療機関同士で相互評価することで、指定入院医療機関の医療の水準の向上を図る事業。医者だけでなく看護士とか精神保健福祉士とかも含まれる。それが「専門家」といわれる方々で、指定入院医療機関に勤務されてる医療従事者。
 「精神医療の向上を図る」ということで、今のお話した新規事業と、もうひとつ、一般精神医療機関に勤務する医師等を対象とした研修。この10・31資料の概算要求時点で要求していて、こちらは一般の病院に勤務するの医師、看護士、コメディカル、に指定入院医療機関で長期の研修にはいってもらう。実際の臨床の現場で研修してもらう事業。長期間にわたることから、そういった課題も多くあり、今般の予算案では当該研修事業については計上をみあわせた。
(☆☆ 「なんで医療の質が向上するの?」が質問だった)
 医療観察法の医療は、他職種チームでの医療。通常の精神科病棟での医療は医師が中心の医療。医療観察法の医療は、医師、看護士、心理技術者、作業療法士、精神保健福祉士、それぞれ専門的な観点から対象者の患者の治療計画をたてて社会復帰をめざす制度。
 他職種チームで行う医療というのが、専門的な医療。医療観察法に基づいて行われる医療の中で、アンガーマネジメント。怒りのコントロールなども治療プログラムに盛り込んで、対象者自身がそういうプログラムを学んでいただく中で、精神症状のコントロールを継続していく。そういった医療を指定入院医療機関で行う中で、精神の医療全般にそういった他職種チームの医療とか、専門的な医療を普及させ、全体の水準の向上を図っていくと考えている。

-----(以上、厚労省からの回答)-----

☆☆ 相当、違和感ありますけど、厚労省からの回答は以上で。いろいろうかがいたいことがある。骨格提言について、いろんな危惧がでてる。社会的にも問題になってる。

1.「自立支援法」を廃止しない問題

☆☆ 東京新聞の今朝の朝刊で「永尾光年企画課長補佐は『これまでに法律を廃止したのは、らい予防法などごくわずか。政策に一定の継続性がある場合、『廃止』とはいっても技術的には『改正』のことなんです』と話す。つまり、事務方にとっては最初から『改正ありき』だったわけだ。」と。これは何なんですか。自立支援法は廃止すると言ったんではないですか。
■■ 本日朝刊の記事。企画課長補佐の発言について、補足というか説明。
 障害者施策については、H22年の12月の障害者自立支援法、児童福祉法等の一部改正により、自立支援法廃止の最大の理由であった利用者負担が法益負担から応能負担に改められた。GH・CH利用の際の助成の創設など、障害者の地域移行の促進が図られたこと。また法律の目的から「その有する能力および適正に応じ」というセンテンスが削除されたこと。さらに利用者の意向を勘案したサービス等利用計画案をふまえて支給決定を行うことなど、抜本的な改正がなされたと認識してる。
 今回の総合福祉法においては、障害者基本法をふまえた理念を基本理念を盛り込むとともに、法律の根幹となる名称や目的規定を改正することを検討している。これらによって、民主党のマニフェスト等に掲げられている障害者自立支援法の廃止となると考えている。
☆☆ 中身が、障害者自立支援法とかわらない。障害程度区分があって、それに基づく国庫負担基準があって、支給決定のやり方があって、実際には障害の状態に応じて就労移行支援、就労継続支援A、B、生活介護っていう構造があって。これも変わってない。
■■ 厚生労働大臣も申し上げてるとおり、骨格提言に書かれていることは、充分に慎重に検討したいと思っている。計画的・段階的に改善していこうと。今、おっしゃっていただいた、就労支援のあり方の見直しとかについては、5年をめどに、必要な措置を講じるために検討をさせていただきたい。
☆☆ 普通の法律でも、制定されてから3年見直しでしょ。
■■ 「5年は長すぎる」というのは、厚労省案をいま民主党のWTに示して、議員間討議の中でもその点はご指摘うけ、検討中。この点は近いうちにお答えできるかと。
☆☆ 5年後に見直し確約されてるわけじゃない。区分認定の直しもそう。見直すの? やめるんですか? 非常に人権無視のような質問項目で聞いて、医療モデルに無理矢理押し込めるような区分認定はやめると、ちょっと時間くださいということ? それとも、存続も含めて見直しを検討するということ?
■■ 申し訳ないが、この時点ではっきり方向性を示すことはできない。検討させていただいたうえで、きちんとした方向性を示させていただきたい。
☆☆ あなたたちの「検討」は、信用できません。だって、自立支援法やめるって訴訟団と約束したんでしょ。それなのにまた続けると言ってるんですよ、あなたたちは。
■■ たしかに一部検討となってる項目もある。その点は計画的段階的に進める。もともと利用者負担の問題、制度の谷間の問題については、新法で対応させていただくと検討させていただいてる。自立支援法の名称そのものも見直す。実質的に障害者自立支援法の廃止と考えてる。
☆☆ 厚労省の声として、あちこちで廃止しないとでてる。「実質的に廃止」ってのは、ペテンじゃないんですか。「廃止」と「実質的廃止」の違いを述べてください。最初、長妻さんは廃止と言ったんですよ。それを守るんですか。東京新聞の今日の記事に出てる課長補佐の発言は、要するにこういうつもりでいたっていうこと? なんで今ごろこんなこと言い出すの。もともとこうふうに厚労省の方では理解してたということなんですか?
■■ この課長補佐の発言内容について、いつ時点か。基本合意した時点からのものかどうなのかということは、すいません、私の方では・・・

2.理念・姿勢の問題

☆☆ いずれにしても、今の時点でこういうこと言うってどういうことなんですか! 障害程度区分の考え方って、医療モデルじゃないんですか。それから、今回、サービス利用計画の書式の案を出してもらったけど、これも医療モデルなんですよ。医療モデルで、厚労省の頭の中が固まってる。「社会モデルだ」なんていう理念を書いたら、笑いもの。
■■ 理念の方では、これまでの自立支援法の形というのが、医療モデル、障害をお持ちの当事者の方に責任を持っていただくような、そういった規定ぶりだったのを、今回その理念を改正させていただく方向で検討させていただいてる。それは基本法の改正をふまえてのもの。従って、社会モデルの方に考え方、理念を切り替えるわけですが、今、障害程度区分そのものについても医療モデルではとのご指摘でしたが、検討させていただくということで。それを、新法上も掲げさせていただく。
☆☆ 程度区分は廃止するんですか?
■■ その点は、この場で、廃止する、しないということについてお答えはできません。あくまで慎重に検討させていただいた上での判断をさせていただく。
☆☆ 廃止の方向ぐらいは入れるんですか?
■■ 現在的には、言えません。申し訳ないんですけど、まさに今、民主党、与党の方でもこの新法のことについてご議論いただいてるところで、日々刻々と内容が変わっていく。検討中ということでご了承いただきたい。
☆☆ 民主党が問題じゃない。あなたちの姿勢が問われている。現場でやるのは厚労省なんだから。そもそも、もう結論は総合福祉部会で出てる。廃止して、新しい仕組みをつくるんだと。それなのに、なんであなたちが検討するの。民主党も違う。総合福祉部会は、程度区分は廃止したうえで新しくどんな仕組みをつくったらいいかを調査しなさいって言ってる。あなたたちは、廃止しないで程度区分をどうやって存続させるかって予算つけてる。違うでしょ。あなたちは、そんなの決める権限ない。撤回してくださいよ、この法案。それからこの事業も。障害程度区分を考える事業じゃなくて、新しい支給決定の仕組みを考える事業に変えるべし。官僚が勝手に決める権限ない。
☆☆ 厚労省って、行政府。立法府の国会につくられた推進会議で話し合って、それで骨格提言ができた。それを実行するのがあなたたち。行政は、決まった法律を執行するだけ。憲法上、そうなってる。自立支援法廃止は、推進会議等で議論して、廃止という結論が出た。障害程度区分についても、応能負担についても、全部ダメってなった。それを執行するのがあなたたちの役目。なんでそれができないの。なんで検討とか言えるわけ。
☆☆ [Ⅲ]の、骨格提言では、介護保険年齢になっても従来から受けていた支援を原則として継続して受けることができるものとする、とある。これはみなさんが介護保険に組み込みたいと思ってやってた。そうですよね。
☆☆ それでは、介護保険を廃止してください。介護保険を撤廃してください。そうじゃないと、私たちは安心して生活できません。お願いします。
☆☆ 介護保険優先原則(第7条)を変えても、何も混乱おこらないでしょ。なんでこれいれなかったの。さっき、説明なかった。提言には入ってた。どういう議論で、いれなかったのか。答えは簡単なこと。
■■ 自立支援法の制度と介護保険制度、給付の在り方とか、負担の考え方とかの違いがあって、2つがあることで、一方の制度を優先するっていう考え方も生じている・・・。結論からいうと、慎重な議論させていただく。

3.4月からの「つなぎ法」の問題

☆☆ 一番身近な問題。この4月からの支給決定の仕方、どうなるのか。ウィークリープランの立て方とか、違いを言ってください。今までは、ケースワーカーと直にやりあって時間を出して、やってきた。4月から自立支援法が改定になって、どのように変わっていくのか。4月からの支給決定の仕方。サービス利用計画が入ってくる中で、どうなるのか。
■■ 今年の4月からの支給決定方法、今までのやり方でも支給決定することは可能。3年間の経過措置の中で、サービス等利用計画の対象者を拡大していくということ。サービス等利用計画に同意するということは、本人の意向や家族の希望をサービス等利用計画案に盛り込んで、それを市町村に提出してもらい、市町村が支給決定をしたあとに、サービス等利用計画の本計画に基づいて、サービスを利用していただくことに。
☆☆ 4月から、全部の障害者にケアマネージャーを入れるっていう話があるけど、それは間違いですか。
■■ 3年間で計画的に拡大するっていうことは説明している。
☆☆ 3年後が怖い。3年経ったら、障害者にケアマネを入れるってこと。セルフケアプランつくれる人以外には、ケアマネを導入していくってことですよね。
■■ そのとおりです。
☆☆ なんだかんだ言って、介護保険に、より近づく。介護保険にもセルフプランはあるって聞いてるけど、セルフプランをたてることはできるんだけど、実際に書類に記載することが困難な書類の形式で、ケアマネに頼るしかないというような構造になってる状況。ケアマネのサインがないと通らない、と聞いたことがあるが、本当か。
■■ こちらで今、サービス等利用計画案を出してますけど(※注:交渉の事前に提出された)、もちろん計画作成担当者の署名欄もありますけど、利用者さんの同意署名欄もあるんで、障害者の方が同意しない限りこれは出せないというものに、今の様式はなってる。
☆☆ 質問は違う。今度のケアプランに関しては、ケアマネとかサービス利用計画作成事業者のサインとか無くても提出できるっていうことでいいわけですね。
■■ セルフケアプランということでは、そうです。
☆☆ 介護保険の場合、ケアマネのサインがないとだめということはご存じ?
■■ 私はちょっと、介護保険についてはわからない。

4.「ケアプラン」の問題

☆☆ なぜ「障害者」は生活するのにプランを立てなきゃいけないんですか? あなた方のライフスタイルの中で、中期的・長期的あるいは短期的な計画ってあるんですか? 怠惰に生きてるんと違うんですか。「障害者」なんて、悲しいことに、「ねばならないこと」はそんなにない。普通にメシ食くって、うんこして、寝て。それにプランを立てて、誰かの評価がなけりゃいけないなんてことが、なんで必要なんですか? 障害者だけじゃない。お年寄りもそうだと思う。しかも、程度区分にかけられるってことは、僕らずっと、「当事者ぬきに当事者のとこを決めるな」って言ってきたのに、なんで今さら、まだそんなことやるの。おかしい。できるできないで判断されたら、たまんない。何がしたいかなんです。同じ程度の障害者でも、同じ電動車いす乗ってる障害者でも、片や玄関のオブジェと化してる伝導車椅子もあれば、オレみたいに乗り回してすぐぶっ壊す障害者もいる。だから、できるできないで判断されたら、この程度のケアしか受けられませんなんてことになったら、話にならない。あなた方の生活で、そういうめにあったらどうするんですか?
☆☆ 何時何分に起床して、何時何分に外出して、何時何分にトイレ行って、それはケアプランで出してる。移動介助にしたって、月わずか124時間。あなた方そういうことやれないでしょ。トイレもそうだよね。トイレ何分ってはかられるわけ。入浴も、私は週3回だよ。普通、毎日入ったっていいわけじゃん。そういうものが、今、ケアプランであるわけ。それをセルフケアプランでもある。それ、自分たちだったら、どうなの?
■■ もちろん、私たちは決められた計画で生活はしてない。私の考えるサービス等利用計画は、障害者が実現したい生活とか困っていることとかを計画の中におとしこんで、市町村に出して、それをもとに市町村が支給決定するための仕組みと考えている。管理することは考えてない。
☆☆ 障害者には管理社会。さっき言ったように、トイレ何分とか、外出できるのはこれだけとか。実際、管理されてる。そういう生活、あなた方してますか?
■■ その計画案については、利用者、障害者の方の同意署名欄がある。障害者の方が利用する際に、思い、希望を記載していただいて、提出していただく。
☆☆ 全然、言ってることが伝わってない。同意しなければ、生きていけないの。
■■ 先ほども説明したが、セルフケアプランとして提出することは可能。
☆☆ 同意署名欄があるのは知ってるよ。でも、同意しないと、支給量が決められない。こちらがセルフケアプランを立てたって、それを行政が首をたてにふらないと、OKにならない。それを管理社会とよばずに、何というの。1日に4時間しか外出しちゃいけなくて、トイレ5分以内とか。全部そういうふうになってるんだよ。着替えは15分とか、事細かに書いてる。そこに同意しないとなったら、ヘルパー来てくれないんだよ。気にいらないから同意しないと、おれら死ぬんだよ。そういうことわかっていってるの。
☆☆ 時間時間の積み上げ方式になってるから、問題なのであって、なんでそうなってるかっていったら、区分認定の問題。区分認定がすべての悪の元凶。だから管理される。
☆☆ 結局、厚労省の頭の中には、税金を使って生きてる人間だから、いやなこと聞かれたって多少は我慢しろよっていう発想だけ。だったらあなたちも、そういうこと聞かれなさいよ。あなたちも国のお金で食べてるんだから、同じでしょ。
☆☆ 実際に、「課題の解決にむけた本人の役割」とか、「解決の時期」とか、きめ細かに出されてる。いついつまでに「本人の役割はこうです」なんて、ちゃんと書かれてないと認められないなんて、おかしい。
☆☆ 根本は程度区分。いくつの支給量の中で全部のことやれって決められる。だから推進会議がやめろと。それを執行すればいいんでしょ。なんで骨格提言を無視するの。
☆☆ 私がどこどこに行きたいと希望する、でもそれができない、それはなぜかというと、介助者がいないから。そういう問題の立て方じゃなくて、この人はこう動けないから、こうだと。医療モデル。
☆☆ つなぎ法で抜本的な改革したと言った。あたかもつなぎ法に骨格提言が反映されてるかのような言い方してましたよね。でも、これ(※サービス等利用計画案の書式)を見ても、部会のいってることと正反対。管理強化。これ、利用計画って、訓練計画と一緒でしょ。総合福祉部会は、そうじゃないでしょということを言ってた。だから、抜本的に改変されたなんて、撤回してほしい。かえって悪くなった。このサービス利用計画、これを全員がやらされたら、普通に生活したいのに、「解決のための本人の役割」なんて、これ、本人に書かせるわけ? ちゃんと骨格提言に基づいた法案をつくりなおしてください。
■■ 民主党に投げたから、厚労省としてはもう、とは認識してない。ご指摘いただいた、骨格提言のことについては、みなさんのご意見で出来上がったものですから、それは真摯に受け止めて、厚労省としても与党の方でのWTの議論をきちんとフォローしたい。
☆☆ 少なくとも、この骨格提言をつくった総合福祉部会の部会長、副部長、3役が厚労省と話して渡したいって言った時に、拒否したでしょ。どこが真摯なの。

5.介護保険の問題

☆☆ 障害程度区分もケアマネジメントも、介護保険につながってると思う。だからみなさんは、ケアマネが必要だのケアプランが必要だのと言うんでしょうけど、障害者自立支援法は悪法、でも介護保険の方がもっとたいへん。その介護保険に私たちは組み込まれようとしている。それ、自覚されてます? 諸悪の根源は、介護保険に組み込もうとしていること。それが心配だから、こうしてあなたがたを責めるんです。
☆☆ 「5年後」の見直しって話。介護保険は2016年に大きな改定があると。これとの関係で、「5年」になったのではとの心配の声もあるのですが。
■■ 介護保険、担当でないので、申し訳ないんですが2016年っていう話も、今初めて聞きまして・・・
☆☆ そんなこと、新聞にも書いてある。
■■ 今のご質問には、この場ではお答えできない。
☆☆ 支給決定にいたる流れ図をケアマネが見たら、「これ、介護保険だ」と言ってる。介護保険と同じやり方。
☆☆ ケアマネ導入することで、さっき、今までケースワーカーと一緒につくってきたという話ありましたけど、そういう構造じゃなくなるでしょ。そうすると、市町村は障害者の実態を知らないですむんですよ。そうなると、いくらでも福祉切りやすくなる。
☆☆ 障害者の生活を、ケースワーカーがどれだけ知ってると思う? 全くこないワーカーもいる。それでもそんなワーカーと一緒にやってきた。ケースワーカーもいらないという方向に動いてるとしたら、ますます本人不在で支給決定されていく。コンピューターにかけて。それで足りないものは、ケースワーカーとかが書くんでしょうけど。ほかの障害者と比べてどうなのか、この人だけ特別多くはできないとか、比較の問題になってく。1人1人違う生活をしてるんだから、比べようがない。それを比べようとしてる。区分認定は廃止、もしくは本人不在ではやらないように。本人のいるところで公開してやる。

6.(再び)「つなぎ法」での「サービス利用計画」書式の問題

☆☆ 遅れてきて申し訳ないが、サービス利用計画の書式みたが、驚いた。今までのやり方だと、行政からの本人への聞き取りがあって、こういう生活で、これだけの支給量が必要だ、そこまでは保障できませんとか、やりとりの中で、本人の希望にどこまでそえるかというかたちで決まっていた。今回、こういうふうなサービス利用計画ができると、「解決すべき課題」と横に「そのための本人の役割」と書いてるところを見ると、どうもこれは支給量の問題ではなくて、その人の生活の質、内容に支援する側が介入してくると見える。これって、許されるのか。なんで、こんな項目がでてくるのか。でも、これ書かないと支給されないんでしょ。3年間をおいて。
■■ あくまでサービス等利用計画案は、参考様式。その中身が不十分であってもセルフケアプランとして提出してもらって、市町村に判断してもらって、支給決定してもらう。
☆☆ ケアプランってさらって言うけど、中身を見ると、さかのぼってどこまで課題が解決できたかっていうところでまた本人の役割があるでしょ。今までだったら「課題解決のための本人の役割」なんてなかった。トイレとか食事に介助が必要だって、それだけですよ。単純な話。なんか理由があるから入れたんでしょ。理由を教えてください。
■■ 例えば、私が考えることですけど、段差があって、家で転びやすいというのが課題だったとする。それに対して、本人さん、住宅改修して手すりつけるとか。本人さんの役割というのは、手すりを使って段差をあがるとか。
☆☆ 訓練のように、自助努力も必要と言いたい?
■■ 自助努力というか、ご本人さんができることはやっていただく。手すりを持てる方ならば。
☆☆ 本人の役割って、そういうことじゃないと思いますよ、これ。どういうことを言ってるのか、よくわからない。そんなことは今までだって、自分で上り下りしたいか、違うやり方でするかっていうのは、本人が決めることであって、その本人しだい。
☆☆ モニタリングって? なんでモニタリングが必要なんですか?
■■ モニタリングっていうのは、会いにいって、お困りになってることがないか確認いに行くこと。管理するとか、そういうものではない。
☆☆ そうじゃないでしょ。本人が解決方法とかもモニタリングでは書かれてる。この書式は、全員に適用される書式なの? これじゃなくて、セルフの人は自分なりの書式でやることはできないの?
■■ 書式は様式例なので、変更することは可能。これじゃなきゃいけないということではない。
☆☆ 自由に自分の判断で、こういう生活したいので、これだけの支給量が必要だっていう書式でもいいの?
■■ 市町村がそれに対してさらにこれ書いてって言うかもしれないけど。
☆☆ それは無責任だよ。これを見たら、ものすごく縛りをかけるし、生活への介入だって思いますよ。一応これは例示で、一応それぞれのやり方でやってくださいっていうことなら、柔軟性ありますよ。
■■ それは、そのとおりです。
☆☆ じゃあ、4月から、そのようにしていいんですね。

7.「厚労省案」を読んでない厚労官僚

☆☆ 精神の方で質問したいことある。高橋さんに、骨格提言にある社会的入院については、厚労省案は、ゼロ回答。さっきもいろいろこういうことやって退院促進するって言ったけど、地域移行とか地域定着支援なんか、16億円しか予算ついてない。予算がありますからなんて、これで言えるんですか? 羽鳥さん、聞きたかったのは医療観察法の病棟でやってることが、なんで一般病棟のモデルモデルになるのかってこと。
■■高橋 地域移行の件。ご指摘のとおり、たしかに現在16億ついてる。少ないという話もあるが。来年度、この中の同行支援等が個別給付化される。ほかの事業で、居宅を確保して体験宿泊とかも増えてくる。そちらの方でメニューを増やすこともある。補助金は、都道府県事業なので、都道府県に予算がないと、しにくいということもあるが、なるべく使い勝手のいいように、わずかな予算だけどもやっていきたい。冒頭説明したとおり、高齢の入院患者さんの費用も、3億で、少ないといえば少ないが、広げていきたい。
☆☆ 聞きたいのは、社会的入院を解消しますよって、厚労省案に書いてないよね。それはなぜですか?
■■ 入院の解消は、別途、「新たな地域精神医療体制の構築にむけた検討チーム」で、この数値の着眼点も、そちらで議論してる。
☆☆ 骨格提言でたから。あなたちはそれを実施する。まず、「解消します」って書くべきでしょ。それで検討するのはわかるけど、最初から書かずに「検討」とは、おかしい。
■■ たしかに、書いてないというのはアレかもしれませんが、社会的入院の解消に向けてってことは変わらないと考えてる。
☆☆ 厚労省案の出し方が間違ってるっていうことでいいんですね?
■■ あの、厚労省案、私全体を把握してないもんで・・・
☆☆ たった4枚でしょ。みなさん、厚労省案は、読まれたんですか?
■■ 読みました
☆☆ 高橋さんは?
■■ すいません、私の方はそこまで読み込んでいません。
☆☆ 羽鳥さんは。
■■ 読ませていただきましたが、そこまで読み込んで準備はしておりませんで、申し訳ありません。

8.精神科医療の問題

☆☆ じゃあ、時間ないんで、羽鳥さんの答おねがいします。
■■羽鳥 なぜ一般精神医療に医療観察法の医療を研修することで、精神医療全般が向上するかと。さきほども申しあげたように、医療観察法の中で行われている医療のプログラム、アンガーマネジメントとか専門的な医療を継続的におこない、精神症状のコントロールを継続していくことで、同様の行為を行うことなく社会復帰させるという医療を行っており、一般精神医療で、他害のおそれを要件としている措置入院の方とか、あまりそういう治療が行われていない方に、こういった医療観察法のプログラムを普及することには意義があると考えている。あと、看護士、心理技術士、作業療法士、精神保健福祉士ということで、医師も含めて専門的な観点から治療の内容を評価していく、チーム医療も。
☆☆ 根本的なところで、医療観察法で自殺者が14人もでてる。それは、「立派な医療」なんですか。立派な医療してると、そんなに自殺者が出るんですか?
■■ 14人という数字は・・・
☆☆ 通院ふくめて。入院が3人。
■■ 通院医療は、法務省の方で、保護観察所でやってることなので、こちらでお答えすることできない。厚労省では入院医療で3人の自殺者ということは厳粛に受け止めて、おこった段階で、指定入院医療機関を管轄している厚生局に注意喚起等させていただいて、適正な医療を行うように指示している。
☆☆ 「指定通院は法務省」って言うけど、指定通院医療機関も厚労省の管轄の中にあるんでしょ、普通の病院なんだから。それを知らないっていうのはおかしいでしょ。
■■ 通院医療中に自宅とかで、必ずしも自殺された方の遺書があったりとかでなくて、事案の内容はこちらで把握できてないということで。
☆☆ 把握してないのはおかしいでしょ。前回も同じような質問で同じ答あったけど。法務省だから知りませんって、おかしいんじゃない。通院医療機関そのものに、自殺を企図する問題点があったかもしれない、なかったかもしれない、ちゃんと検証していかなきゃ。
■■ いただいた意見は厳粛に。
☆☆ 医療観察法つくったときに、触法精神障害者が二度と犯罪にいたらないように、特別な施設つくって、特別な医療やるっていってた。その特別の医療をどうして一般病院に普遍化しようとするの? おかしくない?
■■ 医療を普遍化ではなく、高い水準で専門的に行ってる医療を、少しでも。
☆☆ 高くないでしょ。自殺をおこすような問題医療だ。医者の数が多いだけで、やってる内容は別に高くない。そんなこと言ったら、一般の精神病院に勤めてる精神科医が怒る。
■■ さらに、チームでやるとか、人員配置基準を高くして手厚い医療を行っている。
☆☆ 厚労省がやるべきことは、人員配置こそ、一般の病院に普及させなきゃ。チーム医療なんて(一般の精神科病院では)絵に描いた餅。カンファレンスもできないし、他部門との連絡体制なんてできるわけない。人員配置基準を見直すことぬきに、医療観察法の人が来て話聞いただけで医療がよくなるなんて、冗談じゃない。そんなこと考えてるの?

9.まとめ

☆☆ また私たち、阿部事務所通じて厚労省と交渉をお願いすると思います。今日お話してて、廃止しなきゃいけないのは厚労省じゃないかなって気になってる。障害者に対する、高齢者に対する考え方も、「社会に遠慮して生きろよ、お前らは」っていう内容だったと受け止めた。私たちは、重大な問題だと思うので、今後もまたみなさんとお話していくけども、そこは本当に反省していただきたい。そして、厚労省が出したこの厚労省案は、障害者は受け取れない。このままじゃ。検討しなおしてください。
■■ 改めて質問というかたちで出していただければ、お答えさせていただきます。
☆☆ じゃあ、今日のところは、これで。ぜひ、考え方を根本的に変えてください。

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2011年11月25日 (金)

怒りネット通信50号

10・12厚労省交渉報告

 
10月12日、衆議院第一議員会館・第一会議室において、怒りネット二十数名の参加で、厚生労働省に対する交渉が行われた。厚労省の出席者は、社会・援護局 障害保健福祉部から、▽企画課:立岡係長、加藤係長、小原係員、▽障害福祉課:川崎補佐、久保係長、峰島係員、▽精神障害保健課:高橋係長、羽鳥係長の8名。
 障害者自立支援法に替わる新たな「総合福祉法」について、来春にも法案が国会に上程されようとしている。障がい者制度革推進会議・総合福祉部会は8月30日に最終意見として「骨格提言」を提出した。提言は障害者福祉にとって画期的な内容となっており、新たな総合福祉法にこの内容を反映させることは多くの障害者の願いであろう。しかし法案を作成する厚生労働省は、これまで総合福祉部会に対して、2月と6月に極めて対抗的で否定的なコメントを出している。今回の交渉は、すでに具体的な法案作成に入っている厚生労働省にあらためて釘を刺し、また悪しき意図を暴露するために持たれた。
 交渉は、あらかじめ渡してある、2月と6月の厚労省コメントに関する質問に対して回答を求めたものだが、以下の報告は、質問書Ⅰ・Ⅴに対応する問答をまとめたものである(質問書は省略)。なお、質問書Ⅵの「精神障害者と人権」部分については、別に高見がまとめ、最後の章とした。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
Ⅰ 「国民の理解」とは?

 【久保】「厚生労働省は、障害者が介助を受けながら地域で生活することについて国民の理解が得られていないと考えているのか」との質問だが、決して国民の理解が得られていないとは思っていない。しかし、直ちに介護職員を一対一で貼り付けるのは、多くの財源が必要となり、国費の分配という観点から国民の理解が必要と思う。その場合、議員との調整、障害当事者との調整を経て、パブリックコメント等で広く意見を伺いながら進めていくことも考えられる。例えば全国会議で自治体に周知し、さらに地元に周知を広げていく方法もある。「当面どのような障害者を地域移行の対象としているのか」との質問は、障害の種別や程度に関わらず基本的にすべての障害者が地域移行の対象となる。
○「国民の理解を得るために、一人で生活できる訓練をすべき」とあるが、介助を必要とするのが障害者である。介助を受けて地域で自立生活している障害者は国民の理解を得られないというのか。
【久保】障害の種類や程度は千差万別であると認識している。就労したい人には使える制度があるが、すべての障害者に就労を適用することはなく、地域で暮らすことを排除する趣旨ではない。障害者に介助が不必要などとは思っていない。必要な人に必要な分の介助が出るよう会議等でも周知している。「一人で」とは「ヘルパーを使わない」という趣旨ではない。
○「一人ひとりにヘルパーが付き添うと多額の財源と人材が必要」という部分に続く文章である。「ヘルパーを使わないで」という趣旨になっているではないか。
【久保】障害は様々なのでの、一人で暮らしたい人も、ヘルパーを必要とする人もいる。ヘルパーが必要であればヘルパー制度があり、一人で自立したい人にはそのための制度もあり、相談支援体制も整っている。
○だったらそう書けばいい。必要ないのにヘルパー付けている人などいない。支給量が足りない中で、必要だから自腹切ってでも介護付けてる。
○今言われた内容ならこのような文章にはならない。こうした文章が出ることで障害者が追い詰められる。
【久保】厚生労働省のとりあえずのコメントであり不十分な点もある。今後詰めていく中で、障害団体との意見交換、与野党の先生方との調整等、制度化する中で検討していきたい。
○「国民の理解を得る」とは「理想論ではいかない」という趣旨と思うが、厚労省は障害者福祉を切り捨てる立場ではなく推進する立場であるはず。では国民の理解を深めるための具体的な施策は何か。
【久保】介護の具体的あり方は、様々な方法があり、色んな意見を聞いて進めていきたい。
○根本的に考え方が逆転している。障害者の生活は、障害者が街中・職場・学校にいる状態があってはじめて理解される。国民の理解を得て施策を進めるのではなく、施策を進めることによって理解を得る。
【久保】方法として、施策を充実させて地域移行を進めることは、省として取り組んでいる。施設を出たい人ができるように充実を図っている。不十分という指摘があるかも知れないが、一気に完全に改善することは難しいが、地域移行に向けた施策の充実に取り組んでおり、今後も取り組んでいきたい。

Ⅱ 2つの事業、障害者を分ける根拠は?

【峰島】8月30日に、障がい者制度改革推進会議総合福祉部会の提言がまとめられた。しかし就労支援に関しては、結論に至っていないとの記載がある通り、(就労系事業と作業・活動系事業の)選択に関しても明確な記載がない。したがって明確に答えることができない。
○総合福祉部会の骨格提言では、就労系事業と作業・活動系事業に分けることは明確に書かれており、選択は「本人の希望」と書かれている。
【峰島】就労系事業と、作業・活動系事業につき、それぞれ何をするかを分ける必要がある。どういう人を対象とするかはどうしても検討しなければならないが、詰められていない。
○なぜそのように人を分ける必要があるのか。障害者自立支援法の改定法で「能力・適性に応じて」という文言をなくした。厚労省は、それでも「能力・適性に応じて」分けたいのか。
【峰島】現在も就労移行支援A型・B型があるが、基本的には利用者の希望に応じて選べるようになっている。その流れで言うなら、希望でサービスが選択される可能性はある。
○「現在も希望に応じている」とあったが違う。まず就労移行に行って、そこで一般就労できない人が就労継続A、さらに就労継続Bというふうに分けられている。希望に応じてというのは違う。
○例えば、ストレッチャーで小規模作業所に通っている重度の障害者がパナソニックなどの企業で働きたいと希望したらどうするのか。
【峰島】現在、希望を尊重して支援していくことはある。就労移行支援等を活用することになる。今後の話については明確に答えられない。
○コメントだと、そういう場合、ストレッチャーの人はどちらに行くかを決めなければいけない。本人の希望でないなら、そういうストレッチャーの重度の人は一般企業で働けるのか、働けないのか。
【峰島】まだ明確に答えられない。繰り返しになるが、まだ結論を得ていないのでそういうコメントになった。
○はっきりしないと言いながら、厚労省は今法律の案文を書いているのではないのか。この部分を法律としてどう書こうとしているのか。
○コメントというのは、総合福祉部会の提言に対する厚労省の考え方ではないのか。
【峰島】就労系事業と作業・活動系事業。事業については中身がまだ定まっていないのでこういうコメントになった。
○厚労省は骨格提言を受けてすでに法文を書き始めているはず。それで中身がはっきりしないと言っているのは、提言のこの部分については無視するものと思える。訓練と能力で分けるというのは医療モデルそのものであり、権利条約を批准できないと強く感じる。

Ⅲ 「客観性・透明性・公平性」とは?

【久保】PA(パーソナルアシスタント)は、重度訪問介護等の発展形と聞いている。どのような形が望ましいか、様々な視点からの検討が必要と考えているが、そこで客観性・透明性・公平性とコメントした。障害の程度は色々なので、個々の状態に応じて支給決定がなされるべき。公平性とは画一的なサービス提供を押し付ける趣旨ではない。
○厚労省は、なぜ部会提言に異議を唱えるのか。
【久保】市町村が支給決定するので支給量は違ってくる。客観性といっても、程度区分で支給量を合わせるという趣旨ではない。透明性も、障害者のプライバシーに踏み込む趣旨ではなく、支給決定に際しての行政手続きの透明性という意味である。
○今まで透明性がなかったと思っているのか
【久保】今までなかったとは思っていないが、支給決定のプロセスには、透明性が求められるべきであり、障害者もその透明性を認識して支給決定を受けているはず。
○パーソナルアシスタントの導入。すなわち障害者側が必要に応じた介助を求めていくと、透明性・公平性・客観性が無くなると言っている。その根拠は何か。
【久保】コメントとして客観性・公平性と書いたが、障害が色々あるので、障害者によって必要量が違うのは認識している。それでも必要量の支給決定について、透明化の必要があると考える。障害程度区分2や3の人が24時間くれと言った場合、行政の判断、支給決定の手続きについて透明性が担保されるべきとコメントした。障害者の本位に立ったコメントである。
○障害者自立支援法においては、「公平性」と称して介護時間が削減された例が多くある。裁判にもなった。総合福祉部会はそうした問題点を指摘している。各市町村は障害者の自立生活を削減していくために「公平性」という言葉を使ってきた。また繰り返すのか。
【久保】必要量が支給決定されない例があることは承知している。障害の本当に重い人の支給量が低く、軽い人の支給量が高いのは公平性がない。そういうバランス的な観点で、公平性はある程度担保されるべき。色々な勘案事項を考慮して支給決定するようお願いしているが、自治体によっては適正な支給量が決定されていない場合があり、訴訟も起こっている。支給量について、不公平感が生じないような公平性という観点で考えたい。
○自治体間にバラツキが無いようにという趣旨でこのコメント書いたのか。
【久保】すべからく平たくするという趣旨ではない。自治体によって多少のバラツキはあると思うが、ある程度のレベルまで押し上げられればと思っている。
○パーソナルアシスタントは、今の重度訪問より報酬単価が低いのに、なぜ厚労省は推進しないのか。財源がいらないのに。
【久保】PA(パーソナルアシスタントは)、24時間張り付きという認識でよいか。
○24時間かどうかは、その人の必要性によって違う。
【久保】それなら重度訪問介護でいい。PAは四六時中付いているという意味ではないのか。必要なところだけ付けるのか。
○総合福祉部会は、ずっと張り付きとも、必要なところだけとも言ってはいない。
【久保】短く使う場合、パーソナルアシスタントと言うのだろうか
○それを決めるのが当事者である。行政が時間を決めるから問題。
【久保】お金の話だが、重度訪問介護とパーソナルアシスタント、契約の中身にもよるが、どちらの費用が多くかかるかは一概には言えない。厳密に試算してみないとわからない。いずれにしても、PAがそもそもふさわしくないということではない。われわれは障害に応じて支給決定されるべきと思っており、周知してきている。
○先ほど「本当は障害が軽いのに多く支給されている場合がある」と言われた。「必要な人に必要な介助を」と言うが、「本当は軽い」「必要ない」と言われて否定される例がある。本人の必要性の主張を否定するために「公平性」という言葉が使われている。
【久保】私も必要に応じて支給決定されるべきだとの趣旨で述べた。
○必要性を決めるのは障害当事者だというのが、総合福祉部会の提言である。それに「客観性」を対置して当事者の必要性を否定している。
【久保】障害者の必要度は障害者にしか分からない。僕は前からそう理解をしている。
○障害者の介助のプロセスに「客観性」などを持ち込むこと自体間違っている。必要度は本人の主観でしか決められない。
○現場から必要な介助時間が保証されていない例が報告されているが、これは自治体の責任ではない。厚労省がこうした単語を持ち出すことに原因がある。
【久保】障害者各個人が必要量を申請し、自治体がどれだけ支給決定するかは大きな問題。すべてを平たくすることはできないとしても、客観化の必要性はゼロではないと思っている。公平性も、行政としてある程度担保すべきであり、(障害者の側から見て)「私にどういう支給決定がされているか」という透明性も担保されるべきだと思っている。

Ⅳ 「障害程度区分」を残すのか?

【河崎】支給決定の仕組みについては、(障害程度区分の)指標は一定の役割を果たしていると認識している。障害の程度について、全国一律に客観的に評価する指標が必要。その際、社会的状況は客観化しにくいため、ケアマネジメントにおいて考慮することが考えられる。程度区分の変更やサービス規準が、地域や担当職員によって著しく異なってはいけない。支給決定プロセス全体については、現在省内で検討中なので個々具体的に答えることはできない。
○厚労省は障害程度区分をなくすつもりはないのか。
【河崎】総合福祉部会の中で、色々と問題が指摘されていることは十分認識している。ただ障害程度区分を使用しないことを前提に考えるのか、あるいは改善することで対応できないのか検討している。
○総合福祉部会は障害程度区分を廃止して支援ガイドラインを作ると言っている。
【河崎】廃止する、廃止しないも含めて今現在検討している。現在省内では、総合福祉部会の骨格提言について、どこが法律を改正する必要があるのか、また法改正ではなく制度の運用レベルで改善できるのか検討している。提言に盛り込まれている中身について、すべてできるかどうかは約束できない。
○障害程度区分が必要だということか
【河崎】総合福祉部会は、厚生労働省の事務方が「こういった議論をして下さい」との議題を検討してもらっているわけではない。障害当事者や事業所の方々が、検討項目を含めて義論を進めてきた。厚労省側としては必要なデーターの提供や、ポイントポイントごとの省としてのコメントを出した。現行制度の前提に立った分も含めてコメントしているので、今の制度が無くなった前提でのコメントは難しい。
○骨格提言を受けても変える必要は無いと考えているのか。
【河崎】自立支援法に替わる新しい総合法制について、題名をどのようにするのかも含めて検討している最中なので、出された骨格提言をどのように新しい法制に反映していくのかも検討しているところ。したがって提言について、できる部分できない部分等を具体的に答えられない。
○障害程度区分を残す理由はなにか
【河崎】今の障害程度区分について、色々と批判や意見があるが、一定の役割は果たしているとの認識に立っている。やはり一律的に客観的に評価する指標は、ある時点では必要。ただ一律の客観的評価で全部を決めてしまうのは難しく、社会的状況が客観化しにくいため、ケアマネジメントにおいて考慮することが考えられる。
○支援ガイドラインについてはどのような検討が進められているのか
【河崎】個々の支援ガイドラインをどうするのか、例えば今の障害程度区分をどうするのかも含めて、支給決定プロセス全体について検討中である。個々具体的にどうしていくかは説明できる状況ではない。

市町村の基盤整備について

○支援ガイドラインについて、総合福祉部会では地域で生きていく権利を実現するとか、地域の人達と平等の権利を享有するものとして出している。厚労省はその基本理念を書かずに市町村間の基盤の違いを理由に難色を示している。そもそも厚労省は市町村間の基盤整備についてどう考えるか。
【立岡】市町村間でサービス基盤の整備状況に違いがあると認識している。各都道府県や市町村にサービス量の見込みを定めて、障害福祉計画の策定を義務付け、計画的なサービス提供体制の整備を進めることとしている。障害福祉計画の策定に当たっては、必要なサービスや相談支援等が地域において計画的に提供されるように、障害者の地域における実情やニーズを踏まえて、サービス量等の見込みを定めることとしており、厚生労働省としては本計画に基づいて、各自治体で必要な整備が進められるものと考えている。

実態調査の調査項目について

○12月1日から始まるといわれる障害者の実態調査の質問項目。介助時間の最大選択肢が「週21時間以上」とあるが、これは何か。
【加藤】全国在宅障害者実態調査の調査項目については試行調査を実施した厚生労働研究の研究班が原案を作成し、全国障害者実態調査に関するワーキンググループ(総合福祉部会の部会長と副部会長などで構成)おいて検討し設定している。また調査項目については障害者団体へのヒアリングを実施したほか、厚生労働省のホームページで広く意見を聞きながら検討しており、総合福祉部会にも随時、検討状況を報告して意見を聞きながら検討してきた。時間数の選択肢については、平成18年の身体障害者実態調査において、1回当たりの利用実績で最も多く利用している場合の選択肢が「3時間以上」(一週間あたり21時間以上)とあり、それも参考として設定されている。
○障害者の実態を把握しているとは到底思えない。裁判では1日で20時間必要という判決が出ている。週21時間とは何ごとか
【加藤】この選択肢もホームページ等で意見募集したが、時間数に意見はなかった。介助の必要時間数は実態が掴みにくい。この項目とは別に、日常の「生活のしづらさ」を把握する質問項目を設けており、時間数ではないが、食事・入浴・洗濯等について、それぞれ一人でできるのか、手伝ってもらえばできるのか、全介助が必要なのかも入れており、そういった項目と組み合わせて見ることによって、食事・入浴・洗濯に全部介助が必要な人を把握できるようになっている。12月に実施する今回の調査は準備が進んでいるので、次回以降の調査において調査項目を検討したい。
○一日3時間のレベルに世論を誘導しようとしているのではないのか。
【加藤】そのような意図はない。平成18年の身体障害者実態調査の結果では、ホームヘルプサービスを利用した人のうち、1回あたりの平均利用時間が3時間以上という人の割合が8%であった。今回は調査対象を広げて幅広く調査する。この選択肢ですべて把握できるわけではないが、今回の調査はこれでやる。
○平成18(2006)年調査は、自立支援法下での調査。自立支援法のもとで障害者の生活は歪められている。調査結果は法によって制限されたものであり実態ではない。

Ⅴ 地域主権戦略大綱は、国の責任放棄では?

○総合福祉部会の考え方は憲法に則った考え方。地域主権戦略大綱に基づく否定は憲法違反ではないのか。
【小原】地域主権戦略大綱は内閣府の地域主権戦略会議が中心となって取りまとめた閣議決定。各省はこれに沿って法案の作成や施策の立案を進めることが求められている。厚生労働省としては、障害福祉施策における最低限の規準を定める等のことは必要であると考えているが、一方で地域主権戦略大綱に記載されている通り、地域住民が主体となって、行政サービスの地域間差異など、結果に対する責任を負いつつ、物事を決めていく考え方が大切であると考えている。またこの地域主権戦略大綱が、憲法14条および25条を否定するか否かについて言う立場にはない。地域主権戦略大綱は、地域主権改革の意義が、日本国憲法の理念のもとに定義づけされている通り、否定するものではなく、整合性にも配慮されたものと聞いている。また国の本来果たすべき役割も、具体的な内容については答えられない。内閣府に照会してほしい。
○答えられないようなことをなぜコメントに書くのか
【小原】地域主権戦略大綱の考え方にも踏まえつつ、ナショナルミニマムの部分、最低限の規準を定めることは必要であると考えている。
○総合福祉部会が出したような国の責任は取っていくと確認していいのか
【小原】取っていくか否か、検討中なので答えられない。

[Ⅵ]精神医療と人権(この章のみ高見がまとめ)
○総合福祉部会は、精神保健福祉法や医療観察法で精神医療が規定されていることに、人権上問題がある、と指摘していますが、これについて2月コメントの中で貴省は次のように述べています(p33)。
 「現行の精神保健福祉法等においては、指定医による診察や入院措置等についての本人への書面告知、入院患者の病状等に関する定期的な報告や患者本人等からの退院請求・処遇改善請求について第三者機関である精神医療審査会による審査を義務づけるなど、精神障害者の人権確保に配慮した規定を設けています。」
 この点について質問します。
(精神障害者についての厚労省コメントだけでは、厚労省の考えが明らかにならないため、質問の範囲を広げて質問した。回答は文書によるものと、口頭によるものがある。口頭によるもので文書にはないものはテープ起こしをした。)
(回答者は、厚生労働省精神障害保健課精神医療係係長高橋氏、医療観察法医療体制推進室羽島係長。)
○内科や外科では、一人ひとりの入院患者はカーテンで仕切られたベッドを利用していますが、精神科では大部屋に雑魚寝の場合が多くみられます。また精神科で個室と言うと保護室になってしまいますが、そこの環境は到底一人でゆっくり休むと言うものではありません。これらの設置基準は法律や規則などでどのように定められているのですか。
【高橋】「資料として紙で渡してあるが、医療法上と通知2本で定めている。医療法では精神に限っていないが、病床の床面積の基準が定められていて、精神病室については精神疾患の特性に踏まえた適切な医療の提供及び患者の保護のために必要な方法を講ずることという記載がある。病室の構造は要約すると鉄格子等必ずつけるという取り扱いは止めてくれということです。建築基準の改正通知が出ていて、病室はベッド式、和式を問わず生活場所としての雰囲気を出すことが必要であると定められている。面積、建物の構造上、窓の採光、通風機能の面を定めている。
大部屋に雑魚寝という指摘だが、確かにそういう病院はあると認識しています。毎年全国の精神科病院に対して都道府県が監査を必ず1回入ることになっていて、それに加えて厚生労働本省の方で、全部の病院とは言いませんが、いくつかの病院には直接入っていて雑魚寝の場合もあったということで報告が上がってきている。患者のプライバシー等あるので、間仕切りを設けるよう指導をさせていただいている。」
【文書回答】医療法施行規則で病室の床面積が定められている(*詳細な数値などを示している)(*保護室の設置基準についての資料あり。)
○任意入院の患者数と、その中で閉鎖処遇を受けている患者数を示してください。また、措置入院の患者数とその中で閉鎖処遇を受けている患者数、及び、医療保護入院の患者数とその中で閉鎖処遇を受けている患者数も示してください。
【文書回答】平成20年の630調査(6月30日の調査なのでこう呼ぶ)で、任意入院患者数 184573人 うち開放処遇を制限:33674人(約18%)
措置入院患者数1803人 うち終日閉鎖1701人(約94%)
○630調査で任意入院の全閉鎖、夜間閉鎖をあわせると約17万人という数値があるが、この違いは何か?
【高橋】630調査の2の精神科病院在院患者の状況というところの表で見ている。(630調査の違うページで違う数値が出ている。どういう数値の違いなのか不明であった。)
○貴省の把握している精神病院における社会的入院と判断される人の数を示してください。
【文書回答】社会的入院数(受け入れ条件が整えば退院可能)、平成20年度619千人(入院患者の20.2%)(患者調査)(61.9千人の間違いと思われる)※患者調査における「退院可能精神障害者数」は医療機関の主観によるものであるところから、目標値とするには適当でなく、「今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会」報告書(平成21年9月24日)(別紙抜粋)においても、「別の客観的な指標」が必要である旨が提言されている。
○以前言われた数値から1万人も減っているのはなぜか?
【高橋】「これは下に小さな字で書かせていただいたんですが、結局受け入れ条件が整えば退院可能という判断がですね、医療機関の主観によっておりまして、その都度の630の時に多少変動があるということで、さっぴきで退院した、地域定着したひとが何人いるかという事ではなくなっている。調査のとり方がそうなっているということでございます。」
○退院した数は2819人ということですね。
【高橋】「そうですね。」
○また、現行の精神障害者地域移行・地域定着支援事業で、地域に定着した人の数を示してください。地域に定着できたとする判断の根拠と、どのような住まい(グループホーム、一般住宅など)かの内訳も示してください。
【文書回答】精神障害者地域移行・地域定着支援事業で地域に定着した人数は、(平成15~21年度まで(7年間)で)2819人である。(別紙あり。平成15~17年度まではモデル事業、平成18~19年度までは精神障害者退院促進支援事業として実施。平成20~21年度については、精神障害者地域移行支援特別対策事業として実施。)
平成21年度内に地域移行(退院)時の居住先。「支援に関わらず確保されていた自宅」25.5%、「退院に際し新たに契約した借家」24.8%、「共同生活援助(グループホーム)」20.3%、他には、共同生活介護(ケアホーム)、精神障害者福祉ホームなど。
○精神医療審査会について、ここ5年の患者側の申し立て数、審査にかけられた数、申し立てから審査結果が出るまでに要した日数(最長と平均)を示してください。
【文書回答】(5年分の回答があるが平成21年のみ記載する)
★退院請求 請求件数2909、審査件数2091、審査の結果適当とした件数2016、審査の結果不適当とした件数62。(2.1%)≪()内は高見による。≫
★処遇改善請求 請求件数384、審査件数265、審査の結果適当とした件数251、審査の結果不適当とした件数12(3.1%)≪()内は高見による≫
★請求受理から結果通知までの平均日数 32.5 
請求受理から結果通知までの最長日数87。
○心神喪失等医療観察法について、以下のデータを示してください。法施行後から現在までの法の対象となった患者の自殺数、自殺未遂者数、死因の不明な患者数、死因の不明な理由(いずれも入院と通院を分けて)
【羽鳥】入院者で自殺4人、病死2人、死因不明者はいない。
「通院処遇の方につきましては法律自体が法務省との共管の法律になりまして、通院処遇の方は保護観察所で社会復帰調整官の方が対象者をケアしていくという形をとっておりまして、厚労省では詳細な数値というものを承知していないという状況でございます。」
○観察法で現在入院中の人の詳細な在院日数(例えば、月数ごとの人数など)
【羽鳥】平成17年7月15日の法施行以来平成20年7月31日までで、退院者608人、平均在院日数574日。(平成22年10月の国会報告による)
平成20年の630調査で在院日数1年から5年のものは118人。5年以上のものはいない。(法施行5年であり当たり前だが。高見記)
○単科の精神病院をなくしたイタリアの実践について、貴省の見解を示してください。
【高橋】「厚生労働省として諸外国の制度に対する見解はない。担当者としての見解を述べさせていただく。イタリアの場合は日本と。東邦大の水野先生が研究されているようで、それを読んでいるのだが、日本とに違いはやはりありまして、確かに精神科病院、イタリアの場合強制的というか、ゼロに持って行った。単科の病院については。そういう場合に、日本でも7万人も退院できない方がいる中で、急に7万人も入れる病院を無くしてしまうということになりますと、それだけの受け入れする地域がなければ成り立たないということがある。イタリアの場合、地域間の格差等により、宿舎、退院先がないままストリートピープルになってしまったという悲しい状況もあるので。諸外国の状況といえども精神科病院の病床数を減らすという意味でイタリアの実践を病床数を考える上で、重要な要素となるので検討していきたい。現在、保護者制度の検討会をしていて、そこでもイタリアに限らず、諸外国の例を紹介しながら議論を進めて行きたいと思っている。」


Ⅵ章の総評 Ⅵ章につき、精神障害者でないと分かりにくいやり取りとなったので、報告者の高見の意見を以下書くことにしたことを御了解いただきたい。
社会的入院7万人(6万人と言うが)を退院させる時に、受け入れ先がない中で病院をなくすとストリートピープルになると言うが、地域の受け入れ先を作らないのは厚労省そのものである。7年間の制度による、社会的入院からの退院者数2819人、21年度で、うち公的な受け入れ先50%?自宅25%、新規アパート25%という数値を前にして、よくこんなことがいえるなと思うのは当然である。
ただ、厚労省は2819人という回答をしているが、本省以外で自治体独自の退院支援の取り組みが大阪府で行われている。大阪府以外については不知だが、この数がカウントされていない回答である。ただし、大阪府の事業でも2千数百人と大勢に影響を与えるものではないが、府下の社会的入院は解消したと言っているようである。
イタリアでも、バザリア改革を快く思わない病院当局者が、受け入れ先の確保をしないままに患者を放り出したということはあるようだ。それを盾にして、イタリアでもストリートピープルが生まれたと、バザリア改革にけち付けするのはいかがなものか。
任意入院で185千人中、17万人が全閉鎖、夜間閉鎖の病棟にいる。
改善しているというがいまだに雑魚寝の病室もある。原則開放の個室でないと安心して眠れないと思うがそれには程遠いのが現状である。
厚労省の言う第3者機関では、退院・処遇改善の請求もほとんど通らない(2.1%、3.1%)のが現状である。「精神障害者」の実感とかけ離れた数値である。総合福祉部会の挙げる第三者機関の必要性がかえって証明されている。
 これでは精神障害者の人権が守られているとは到底言えない。
総合福祉部会の骨格提言にあるように、OECD平均値並みの予算をつけて、退院促進の公的施設、民間住宅の確保を進めるべきである。精神科医療に今でも1兆5千億円が使われていると言う数値も聞かれる中で、使途が間違っている。
7万人もの人権が不当に侵害されている中、精神障害者福祉等言ったところで大嘘としか言いようがない。直ちに地域の受け入れ先を作って退院させるべきだ。
厚労省の官僚が挙げた、東邦大の水野氏の書いた(編集した)本を研究対象として読み始めている。水野氏はイタリアへの留学経験がある。官僚の言ったイタリアについての研究ではなく、病院・診療所で待っているのではなく、地域に出て行って診療を行うことについての本。東京の「みなとネット21」、福島県の「ささがわプロジェクト」を肯定的に取り上げている。「みなとネット21」は東京港区で「精神障害者」の地域生活をサポートするNPO。「ささがわプロジェクト」は既存の精神病院の分院を解散して地域生活に繋げた例。関西では京都の高木俊介医師らの「ACT-K」が有名だが、水野氏の研究の対象外。
「病」者集団が言う、厚労省の行う「アウトリーチ」批判は、保険医療では本人同意のない医療は出来ないところ、予算をつけて本人同意抜きの強制医療を行うことを批判したもの。このような「地域の施設化」をどのように回避しながら、「精神障害者」の地域自立生活をサポートするのか?患者会の役割は?兵庫県の実施しているピアサポート電話をどのようにそこに繋げるのか?といった問題意識でさらに研究していきたい。
「地域の施設化」とは病院・診療所を出て地域医療を進める上で、地域が巨大な施設に転化することを糾すもの。強制権限を持った「アウトリーチ」ではだめということ。医療機関などに見つからずに地域生活をしている「病者」を探し出して強制医療を行うことは、保健所や、差別的な地域住民の通報により介入し、強制入院に繋げることになる。厚労省が実施している「アウトリーチ」ではそうなる。
厚労省の「アウトリーチ」試行は3県(奈良など)で実施されているようだが、詳細については今後、質問していきたい。奈良では専任の職員は2名しか配置されず、医師等は病院等と兼務している状態。予算の問題でそうなっている。

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2011年11月11日 (金)

 怒りネット通信№49

怒りネット通信
2011年11月22日発行 No.49

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誰もが地域で生きるために障害者制度・介護保険制度を根本的に変革せよ!

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沼尻好夫の65歳介護保険適用問題についての報告と御礼

 このたびは、夫である沼尻好夫の65歳介護保険適用問題について関係者のみなさんから多くの応援と励ましをいただき、ありがとうございました。おかげさまで好夫は障害者福祉サービス(自立支援法適応)の本決定を市役所から受け取り、9月1日からこれまでどおりの安定した生活に入ることができました。
 以下、簡単ではありますが、これまでの経過をご報告させていただき御礼にかえさせていただきます。
 
問題の根本は介護保険制度そのもの
 
 もともと2000年4月の介護保険制度導入の時から「障害者福祉施策の介護保険への一本化」の攻撃はありました。この「65歳をこえた障害者への介護保険適用」の問題もそのひとつです。
 長年、障害者福祉施策にもとづき自立生活をつくりあげてきた地域生活する障害者にとって、「介護保険への一本化」は利用者1割負担、介護時間の大幅削減、移動サービスの全面カットなど生活を直撃する大問題でした。わたしたち障害者がそれまでコツコツと積み上げた既得権が、長生きして65歳になったというだけで、いきなりサービスを取り上げられるのです。
 その一方、厚生労働省はあえて障害者の65歳問題を焦点にしないようにしながら、既成事実を重ねてきました。その根本には「障害者は長生きできない」という厚生労働省の差別的見解があったと思います。確かに、福祉サービスのあまりの貧しさや、日常使用する薬が体に負担が大きいなどの要因により、統計のうえでは障害者の寿命が健常者より短い傾向はあるともいえますが、その責任はなにより行政当局にあるはずです。

2009年秋から 県当局に申し入れ
 
 2009年秋にこの問題についてまず県当局に初めて申し入れをしました。その後、対県交渉の場で県担当者と市担当者に見解を求めました。この際に県担当者と市担当者の厚生労働省方針に対する対応に大きなずれがあることがわかりました。法律上の「タテマエ」と現場での運用に大きなすきまがあるということです。
 2010年6月、良心的関係者との接触に成功しました。これにより県内において「医療上の必要からの例外措置」が行われている事実が確認できました。その後、検討の上、沼尻好夫の件については「主に医療上の必要から障害者福祉サービスの必要性を行政に確認させる」方向で取り組むことを関係者で確認し、2006年に首の手術を執刀した担当外科医、市内のかかりつけ主治医、介護事業所責任者の3人から「医療上の必要から65歳を過ぎても障害者福祉サービスが提供される必要がある」との意見書をいただく方針を確認しました。そして2010年10月には3通の意見書をすべていただくことができました。
 2010年11月19日、毎年行われる、行政の「障害程度調査」に合わせて「65歳の誕生日を過ぎても障害者福祉サービスを選択する」ことを3通の意見書を添えて市窓口に通告しました。窓口では、3通の意見書について「こういうものは受け取った前例がない」と対応してきましたが、「本人の希望を示す参考資料」との位置づけで受け取らせることができました。その直後、2010年12月1日、市障害福祉課から2011年3月31日までの「サービス支給決定書」がとどきました。これは「今のところ、担当部局としてできるのはここまで」という意味で、ここから好夫の申請についての交渉は本格的な段階に入ります。
 ところがその後、市担当者は沼尻好夫の申請について取扱いを進めようとせず、追加で事情を聞くなどのことを行わず、時間が過ぎていきました。時間切れが迫る中で事態が進まず、好夫はストレスで体調を崩すなど大変な時期でした。
 2011年3月9日、市障害福祉課窓口で担当者に現状確認を行いました。その際市担当者から「市としては沼尻さんの意向にそってサービス支給決定を出したいが、厚生労働省と県の意向があり勝手に決定を出せない状況です。この件は県の担当者に伝えてあるのですが、返事がまだないので市としては困っている。」と返答されました。この回答を聞いたその足で高速道路に乗り県庁に行き、担当者に抗議したところ「県としては市の判断で障害者福祉サービスを行ってかまわないことは市障害福祉課に伝えてある」とのことで、その根拠になる厚生労働省の通達のコピーを渡してくれました。いったい市と県とどちらが言っていることが正しいのか、あるいは両方ただの責任逃れなのか、悩みました。
 
 震災と原発事故のなかで
 
 2011年3月11日、東日本大震災が起きました。私たちの済んでいる市も被害を受けました。翌日には福島第一原発が爆発しました。周囲には避難する人も出はじめました。私と好夫は話し合い「大変なことになってしまったけど、とにかくここで生きていくしかないので支援の人手が集まりしだい市の窓口に行く」と決めました。
 3月15日、周りのガソリンスタンドに車が長い行列をつくっている中、好夫は支援の人たちといっしょに改めて市障害福祉課窓口に出向きました。そこで65歳になっても障害福祉サービスを利用する意思を伝え、当局の回答を求めました。担当者が3月9日に言ったことについて「そんなことは言ってない」と居直ったので現場は混乱しましたが、結局当局に「沼尻さんについてはサービスの切れ目をつくらない。沼尻さんが障害者福祉サービスを希望していることは理解した。」と確認させました。その上で担当者は、「なぜ障害者福祉サービスが必要なのか改めて文書で提出してほしい」と注文をつけてきました。この2年の間いったい交渉の席上で何を聞いていたのか誠意を疑う発言ですが、手続きを進めるための文書ということで文書提出に同意しました。
 ところがその後、介護保険関係の通知文書がなんの前触れもなく自宅に郵送され。私たちは市のやり方にたいへん不信を持ちました。
 2011年4月20日、文書提出をかねて市と交渉し、本決定手続きが住むまでは暫定措置で障害者福祉サービスを保証することを確認しました。また「障害者福祉サービスの継続を前提に事務作業を行うこと、今後市は沼尻本人の同意なく介護保険の関連の文書を沼尻家に送らないこと」などを確認し、改めて事務手続きに必要な医師の意見書などの提出について確認しました。
 4月20日にこちらから出した文書は「障害者が自分の判断で体調に合わせた介助を状況に応じて自分で指示することの必要性」を具体的事例で示し、「サービス内容がケアマネージャーの判断の下ひと月単位で決められてしまう介護保険による身体介護の問題性」を指摘した画期的なものです。それまで市の担当者は「介護保険にも身体介護の項目があるのだからそれでいいのではないか」という程度の理解でしかありませんでした。この点の偏見をくつがえしたことで交渉は大きく前進しました。
 5月には知り合いの市議に間に入っていただき、最終的な事務調整を行いました。
 7月21日、市担当者との討論にふまえ執刀医師の意見書を改めて書いてもらいました。(その方面では人気の高い先生なので意見書を書いてもらうにも3ヶ月もかかるのです。)
 明けて7月22日、医師の意見書と改めての申請書を提出しました。今度は手続きがスムーズに進みました。好夫が字を書けないので私が申請書類の代筆をしたのですが、この2年間のいろいろなことが頭を行き来しました。しばらくして本決定通知の書類が郵送で届きました。
 そして9月1日、本決定による障害者福祉サービス(自立支援法)が開始され、私たち夫婦はこれまでどおりの穏やかな生活をしています。
 
幸運を引き寄せた好夫
 
 新しく「これまでどおりの生活」が始まり、今回のことを好夫と振り返ると「運が良かった」とつくづく思います。もちろん当事者の好夫はぎりぎりまでがんばりましたが、ただそれだけではここまでこられなかったと思います。前例のない「医師意見書」に応じていただき、再提出書類も快く書いてくださった医師のみなさん。地震と原発事故で自分のことでだけでも精一杯な状況のなかから、市交渉に一緒に行ってくれた支援者。交渉の大詰めで骨を折ってくださった市議会議員。私たちに貴重な情報を下さった関係者。そして私たちの切実な要求に対して、すぐには理解できなくとも、席を立たずに根気よく交渉につきあってくれた県と市の担当者。本当に周りの人たちに恵まれたと実感します。
  しかし、それらはどこかから降ってわいたものではなく、これまでの好夫の長い地道な地域活動が実ったものだと思います。
 ここに至る交渉は苦しいことの連続で、どこかでつまずいてもおかしくないことばかりでしたが、好夫は幸運を引き寄せました。それは一人の障害者としてあきらめない生き方を貫くということです。もともと好夫は性格が頑固なのですが、「65歳の誕生日が来て今のサービスがうち切られても、俺はあくまで障害者福祉サービスを要求する」言われてさすがに市窓口担当者もたじろいだと思います。
 私たち障害者は「ものわかりが悪い」といわれてもいいと思います。いまの社会はあまりに生きづらくて、とても笑って「ものわかり良く」なれません。
 今回、私たちの経験を書かせていただきました。つたない文でどこまで役に立つかはわかりませんが、少しでも、同じ悩みをかかえるみなさんの参考になればと思います。
  最後にあらためてお礼させていただきます。ありがとうございました。
 
 
※サービスの法的位置づけの経緯
 2011年4月29日までは自立支援法の本決定
 2011年4月30日から6月30日まで暫定措置
 2011年7月1日から8月31日まで再度の暫定措置
 2011年9月1日から自立支援法の本決定(ただし障害程度に関する書類はこれまでどおり毎年提出する)
 
※※編集者からのお願い
この沼尻さんからの投稿についてのご意見・ご質問等については『怒りネット通信』編集者までお願いします。
とくに、沼尻さん宅に直接問い合わせることはやめて下さい。ご理解の上、ご協力をお願いします。

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報告・怒りネット関西よびかけで集い(9月23日)
高見元博

 9月23日、兵庫県西宮市で、怒りネット関西がよびかけた実行委員会主催で、《障害者自立支援法撤廃 人間らしく生きられる新制度をもとめる集い》を開きました。参加者85人。
 毎年秋に関西の地で開催してきたこの集会も、今年で6回め。今回は、自立支援法撤廃・総合福祉法制定にむかう現在の局面が、推進会議や総合福祉部会の提言を骨抜きにしようとする政府・厚労省とのせめぎあいにあることをつかんで、今後のたたかいの基礎をつくろう、との趣旨で行いました。基調講演を古賀典夫さんにしていただきました。
 以下、古賀さんのお話の要約です。

〈はじめに〉
 8月30日、「障害者制度改革推進会議」の「総合福祉部会」が「骨格提言」を取りまとめた。そして、厚生労働省が「障害者自立支援法」に代わる総合福祉法(仮称)案の作成に入った。総合福祉法は、来年の通常国会に政府提出法案として上程される予定だ。この秋から来年にかけて「障害者」解放運動は、決戦の中に入っている。
 05年10月13日、当時の中村社会援護局長は、福祉は買うものであるとして、「電気やガスや水道や交通や、生活のもろもろの費用については購入せざるをえない。そういう世界の中で生きているということ」と発言した。現在、この人物が厚労省の社会保障改革の中心となっていると言われる。

〈障害者基本法の改正(2011年7月成立)をめぐって〉
 自民・公明・民主3党の合意として提出された案では、「可能な限り」という文言が6カ所入っている。この法案が衆院で6月に、参院で7月末に可決。「可能な限り」という文言は、官僚の力で入れられたことが推測された。

〈総合福祉法をめぐって〉
 厚労省は、2月15日と6月23日に、総合福祉部会の打ち出している方向について、コメントを発表している。これが極めて悪質なもの。憲法よりも「地域主権戦略」が大事なのか。社会福祉や社会保障の増進の義務を国の責任とした憲法25条、法の下の平等を規定した憲法14条を否定する姿勢を示した。
 「非常に多額の財源及び人材が必要となるため、国民の理解を得ながら検討する必要があります。財源や人材の制約を踏まえ、また、制度に係る費用を負担する国民の理解を得るためにも、他の代替手段の活用など、様々な地域資源の活用により総合的に対応することについても検討が必要と考えられます」としている。
 8月30日、総合福祉部会が「骨格提言」を取りまとめた。その中から「障害者総合福祉法がめざすべき6つのポイント」を紹介する。
【1】障害のない市民との平等と公平
【2】谷間や空白の解消
【3】格差の是正
【4】放置できない社会問題の解決
 「わが国では依然として多くの精神障害者が「社会的入院」を続け、知的や重複の障害者等が地域での支援不足による長期施設入所を余儀なくされています。地域での支援体制を確立するとともに、効果的な地域移行プログラムを実施します。」
【5】本人のニーズにあった支援サービス
【6】安定した予算の確保
 「当面の課題としては、OECD加盟国における平均並みを確保することです。」これによって、1兆円以上の追加予算が確保できることになる。

〈経過の総括〉
この「骨格提言」を法案化するのは改革に抵抗する官僚だ。しかし、この間の経験は、この官僚機構も含めて、政府に譲歩させる力を、「障害者」運動は持っていることを示している。そのもっとも強力な武器は、06年の日比谷の1万5千人のような大衆行動だ。
 また、民衆全体がこうした闘いを支持する状況が重要だ。小泉改革に苦しめられた民衆の中に明らかに「障害者」の闘いを支持する状況があった。教育基本法改悪との闘い、沖縄の闘いなどがあった。

〈社会保障、福祉切りすての現局面〉
 いま、民主党が進めている「社会保障と税制の一体改革」は、消費税の増税と社会保障・福祉のきりすてを進めるものだが、これは自民党の麻生政権時代に成立した、〇九年度税制改正法(〇九年二月三一日公布)の附則一〇四条に沿って進められている。裏には、自公政権・民主政権を貫き、それを推進してきた官僚が存在する。
 5月12日、厚生労働省は「社会保障制度改革の方向性と具体策」を発表した。東日本大震災の影響により「社会保障制度改革と財政健全化を同時に実現することの重要性は、むしろ高まっていると考えられる」「そのため、これまで以上に、給付の重点化、 選択と集中、優先順位の明確化が求められる」と福祉切りすてを明言している。

〈結論〉
 強力な大衆行動を作り出そう。10月28日の日比谷に1万5千人を越える結集を作り出そう。厚労省コメントを許さない怒りネットの厚労省交渉を成功させよう。こうした立場で闘う人々との連帯を。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 以上のような古賀さんのお話を受けて、集い後半では、質疑・意見を出し合いました。
★(障害者)民主党は第2自民党ではないか?
★(障害者)障害者権利条約で、障害者の自由と権利を国は保障すべきとなっている。民主党は無視している。
★(古賀)地域で生きられるようにしようという人とは、誰とでも一緒にやる。権利条約だけでは何の力にもならない。イギリス・オランダで介助時間の削減があり、イギリスでは5月に8000人のデモがあった。命の切りすては全世界で進んでいる。権利条約があっても闘いがないとダメ。障害者を始めとする闘いが力になる。
★(脳性まひ障害者)今A市で一人暮らしをしている。一人暮らしをする時に市役所の障害福祉課、身障福祉センターの相談員は障害や体のことを聞かないで「家事援助削減しますんでそのように暮らしてください」と言った。それでは生活が出来ないので自分でパソコンで困ることを事細かに書いて市役所に出したら受け入れられた。相談員が話を聞いてくれないのは困った。
★(ヘルパー)ヘルパーの側から「ヘルパーの数を増やせ」「時間数を増やせ」「給料を増やせ」と言いたい。福祉が出来上がらないうちに、国は潰そうとしている。ヘルパーは集会に行くときいや応無く付いているだけで良いのか?ヘルパーに対してもかけられている攻撃だ。ヘルパー同士の交流、当事者と一緒にやるなかで生まれてくる。介護する者、される者を越えて地域で共に生きていくことに、ヘルパーが先頭に立っていく。10・28全国フォーラムには事業所の車を借りて日比谷へ行く。
★(精神障害者)強制入院、社会的入院はダメと推進会議、総合福祉部会は言っている。ところが、厚労省の官僚、日本精神病院協会の抵抗がある。ホ-ムヘルプを利用している。ヘルパーのほとんどは健常者の尺度で測って精神障害者への理解が無い。しかし、精神病のことを理解し励ましてくれる人もいる。ヘルパーと障害者は仲良くしたらダメと言われているそうだが、事業所に内緒でプライベートでも仲良くしてくれる人もいる。里美さんのことで。上司から性的暴行を受けた。障害者の弱みに付け込んだレイプそのもの。障害者、契約社員、女性と何重もの差別の構造がある。和解協議で会社も加害者も謝罪しなかったから不調となり、判決となった。11月4日が判決公判だ。判決までの大衆運動を。署名に協力を。
★(視覚障害者)違憲訴訟元原告72人の一人です。ヘルパーの世話になって2~30年。ほんの少数を除いて事務的・パート的な人が多い。健常者は自由に歩く。健常者は毎日買物に行く。買い物に行きたい時くらいは行かせろよ。財政難というところからしか検討しない。はらだたしい。車椅子も快くは押してくれないヘルパーもいる。この怒りをどこに持っていったらいいか。
★(元市会議員・医師)介護保険の問題で議員に出た。介護という公的保障されなければならないものを個人の責任とし、民間に介護させる。税と社会保障の一体改革で改悪が進められようとしている。介護保険法の改悪案が6月15日に成立した。「介護予防」を作って介護から外した。公的枠を外して民間業者にやらせる。市場として大手が参入し金儲けさせようとしている。介護保険の利かないところは1時間2千円の自己負担だ。金が無ければ介護を受けられない。全面的な切りすてが進んでいる。官僚が進めている。民主党になっていい方向に向かうかと思ったが、まったく違う。野田内閣は、税と社会保障の一体改革という形で改悪を進めようとしている。
★(障害者)自立支援法、介護保険に反対している。母親が10年前に片麻痺になった。リハビリを受けたいと訴えていたが、受けることなく先日亡くなった。官僚批判があった。「人間らしく生きられる」を官僚はどう考えるか?官僚なりに弱点があるのでは?ここが弱点と言うところを古賀さんに聞きたい。
★(古賀)官僚の弱点は多くの人が集まること。地方自治体から来て明け方まで働かされている。労働運動は無いのか。良い人もいる。食い込むような言い方が必要。誰を仲間と思えるかを問うていくことが必要だ。
まとめ(平田)現場の思いを聞かせていただいた。今の状況と問題を変えていくという行動提起があった。現場の思いを語っていただいた中で、その両方、政治闘争と現場を変えて行くというベクトル。同時にやれることをやりながら行動して変えていくことだ。

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この間の障害者制度改革の流れ

05年 
*自立支援法の成立までの課程で、国会前で全国で大きな反対の闘い
10/3 障害者自立支援法、国会で成立
06年
10/31 日比谷公犀に自立支援法反対で1万5千人
(その後も毎年10月末に6500~1万人規模の集会)
*12/1 国連で障害者複利条約 採択
  日本は同条約に07年に署名→批准のためには基本法改正、自立支援法の見直し、差別禁止条約制定が必要
08年
10/31 自立支援法違憲訴訟(第1次)29名が提訴
09年
4/1  自立支援法違憲訴訟(第2次)28名が提訴
9月 政権交代・民主党政権ヘ
長妻厚労相(当時)、自立支援法廃止を明言
12/8 内閣前に「障がい者制度改革推進本部」設置
12/14 地域主権戦略会議第1回会合
10年
1/7 違憲訴訟原告団・弁護団と国との和解合意
1/12 障がい者制度改革推進会議第1回会合 
4/27 総合福祉部会第1回会合
5月~ 自立支援法改正法案(議員立法)
6/7 障がい者制度改革推進会議第1次意見
自立支援法改止法案に対する抗議
10/29 日比谷に1万人
11/22 差別禁止部会第1回会合
12/3 自立支援法改正案 国会で成立
12/17 障がい者制度改革推進会議第2次意見(基本法改正に関する意見)
11年
1/25 第1期作業チーム報告
2/15 第1期作業チーム報告に対する厚労省からのコメント
6/23 第2期作業チーム報告
6/23 第2期作業チーム報告に対する厚労省からのコメント
基本法改定について、不十分として要求があがる一方、改定に賛同する団体も
6/30 社会保障・税-一体改革成案
7/29 障害者基本法改正 国会で成立(推進会議第2次意見の核心は反映されず…)
8/30 総合福祉法の骨格に関する提言
*今現在の攻防は、総合福祉部会の提言を総合福祉法の法案化(厚労省の官僚が!!)に反映させることができるか否か!
12年 通常国会で総合福祉法制定
13年 通常国会で差別禁止法制定

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障害者施策を行う政府機関の概略

■内閣府の下に

◆障がい者制度改革推進本部
首相を本部長に全閣僚で構成(閣議とは別の機関)。今後の障害者政策を決める
最高決定機関。最終決定はここで行い閣議にかけて法案化する

◆障がい者制度改革推進会議
・「障害者制度改革のエンジン機関」(当時の福島みずほ担当相)
・推進本部の下部機関
・構成員の過半数は障害者とその家族で構成。「障害者権利条約」の批准のために必要な法律を整備するのが目的。
※「障害者権利条約」は国際的な障害者団体の求めで国連で制定されたもの。数々の画期的内容がある。日本政府は批准の準備に入っている。
・今年7月に「障害者基本法改正案」を策定したが、政府・厚労省に骨抜きにさ れた。「可能な限り」という文言を6ヵ所に入れることによって。
 
*総合福祉部会
・推進会議の下部機関
・障害者自立支援法は廃止が決まっており、それに代わる新制度が出来る。その新制度を設計するための機関
・8月30日に「総合福祉法」(自立支援法にかわる新法)の法案の骨子を出した。

*差別禁止部会   
・推進会議の下部機関
・差別禁止法の策定を行っている。再来年に法制化の予定。差別禁止法は「障害者権利条約」の批准に必要な国内法。

■厚生労働省
・旧来からある障害者政策を決定する政府機関。障害者自立支援法(障害者が生きていくための介助に金をとる法律)はここで決まった。
・抵抗勢力はここにいる
・総合福祉法の制定過程では、総合福祉部会の報告に否定的な意見を述べていた。「予算の裏づけが無い」「国民の合意が得られない」などと主張し、ことごとくに反論した。
・総合福祉法の具体化(法律の形にまとめる作業)はここが行う。その為に、障害者自立支援法と変わらないものにしてしまうのではないかと危惧されている。

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2011年10月 4日 (火)

怒りネット通信48号

10月28日、日比谷に集まろう!
国家官僚をはじめとする福祉きりすて勢力と闘おう!

■障害者基本法成立過程をどうとらえるべきか
                    古賀 典夫

 障害者基本法改定法は、7月28日に参議院内閣委員会で審議と採決が行われました。そして、翌日の本会議で採決され成立しました。内容は、衆議院を通過したものと同じです。改定前の法律と比べれば、いくつかの改善はありましたが、法文中の6箇所に「可能な限り」という言葉が挿入され、「障害者制度改革推進会議」が目指した権利法とは程遠いものとなってしまいました。
 4月22日の法案提出以降もJDFは、5月24日、7月22日と民主党宛ての要望書を出し、国会議員への働きかけもいろいろな団体が行ってきたようです。しかし、わたしたちも含めてそのような運動にとどまり、大衆的な国会行動も組まないままでした。7月22日のJDFの要望書は、付帯決議への要望が主たるものでしたが、その趣旨は全く反映されていません。
 他方、8月30日に総合福祉部会が「骨格提言」を取りまとめました。取りまとめられた文章は、この原稿を書いている9月4日段階ではまだ公表されていませんが、次の『怒りネット通信』では紹介したいと思います。そして、いよいよ「障害者自立支援法」に代わる総合福祉法の作成が始まったのです。ここでわたしたちが念頭に置かなければならないのは、この法律案文の執筆を行うのは、総合福祉部会に対する厚労省のコメントの執筆者と同じ人物たちによって書かれるであろうということです。何しろ総合福祉部会の事務局は、障害保健福祉部企画課企画法令係なのですから。
 『怒りネット通信』の前号に引き続き、今回の号では、6月23日に示された厚労省のコメントについて、宮崎さんに書いていただきました。怒りネットとしては、この厚労省のコメントについて、厚労省と交渉を行い、問題点を追求することにしております。日程などにつきましては、改めてご連絡いたします。多くの皆さんのご参加をお願いします。
 総合福祉法は、「障害者」の生活・生き死にのかかった法律です。障害者基本法をめぐる運動にとどまることは絶対に許されません。10月28日の日比谷集会は、これまでを超える結集が必要です。「障害者」の大衆的な行動が必要です。

 今、政府による社会保障・福祉の切り捨てが進められています。5月12日に厚労省が発表した「社会保障制度改革の方向性と具体策」では、「社会保障制度改革と財政健全化を同時に実現」すべきとして、「これまで以上に、給付の重点化、選択と集中、優先順位の明確化」を行う、としています。そして厚労省は、生活保護法の改悪を来年の通常国会で行う、としています。そこでは、保護基準の見直しも打ち出されています。
 イギリスやオランダでは、財政削減政策の中で、介助時間が削減されるという事態になっています。イギリスでは、これに抗議する「障害者」が8千人のデモを行い、裁判闘争も闘われています。ちなみに、イギリスもオランダも権利条約の加盟国です。
 こうした国内・国際情勢が、「障害者制度改革」にのしかかってきているのであり、障害者基本法とその審議にも現れていると思います。闘いなくして、わたしたちは生活を守れませんし、1歩の前進もあり得ません。
 以下では、参議院内閣委員会の障害者基本法審議について紹介します。「数十年前に戻ったのではないかと思った」との感想が出されるほど、それはひどい内容でした。現状の把握として是非お読みいただきたいと思います。

★参議院内閣委員会を傍聴して

 わたしたち怒りネットは、6月15日の衆院内閣委員会の時と同様に、朝からビラまきを行い、傍聴に入りました。ほかには、きょうされんや障全協関係の人々が数十人傍聴に入りました。
 この日の内閣委員会には、厚生労働委員である社民党の福島議員と共産党の田村議員が特別に質問するという場面がありました。ここではまず、この会議の速記録をも見つつ、何人かの議員の発言の紹介から始めたいと思います。

●「障害者」の権利を否定する自民党

 7月28日の参議院内閣委員会で、自民党の山東昭子議員は「障害者自身も特別な権利意識は捨てて社会に溶け込んでもらいたいと思います。」と発言しました。
 さらに、自民党の衛藤晟一(えとう せいいち)議員は、「障害者制度改革推進会議」の第2次意見(昨年12月17日)を読んだ感想の中で、次のように述べます。
 「権利論が中心となって、やっぱり社会全体でお互いを尊重し合って共生していく社会を目指すという理念が、途中から共生という理念が強く盛り込まれましたけれども、出てきましたけれども、やっぱりちょっと希薄だったんではないのかなという感じを持っていました。」
 つまり、衛藤氏によれば、「権利論」と「社会全体でお互いを尊重し合って共生」するということは、対立関係にあるのです。これと同じような発言を6月15日の衆院内閣委員会でも耳にしました。それは、自民党の松本純議員の発言でした。
 「障害者基本法の改正に当たっては、障害者の権利を強調するような意見も出されていましたが、それぞれが権利を主張し合うということよりも、相互に助け合う方が、障害の有無にかかわらず共生する社会を実現するという改正案の理念に沿うのではないでしょうか」

 「障害者」の権利を否定するというのは、自民党の党としての見解であるということでしょう。
 わたしにとって、このような発言が遠慮なく出されてくるということは、率直に言って驚きでした。近代市民革命以後に形成された民主主義の概念では、少なくとも建前としては、市民の権利を守り調整するのが国家の役割だったのではないでしょうか?。この党の「自由」「民主」にしても、このブルジョア民主主義の概念から名づけられたもののはずです。改憲政党としてその建前さえも捨てようとしているようです。
 この自民党の「相互に助け合う」政治、「お互いを尊重し合って共生」する政治のもとで、わたしたちが経験したのは、「自立支援法」成立によって、次々と心中が起こる社会でした。共生どころか、死に追いやられる社会でした。
 自民党が否定したいことは何なのでしょうか。「障害者」が自らの存在、命を守るために権利を掲げて、国歌や社会に対して発言し行動することだと思います。そんなことはせずに、恩恵に甘んじろ、と言いたいのだと思います。しかし、甘んじていたら殺されるのです。
 この自民党の権利に対する考え方は、わたしたち「障害者」の場合にだけ語られているのではないと思います。憲法十二条で記されている権利を守る不断の努力として、自民党の政治生命を絶つべきだと思います。その自民党が、民主党の大連立構想の中で、また政権につくかもしれません。そんな政権に「障害者」の権利条約を結ぶ資格はありません。

●「発達障害者」、「精神障害者」を犯罪者予備軍とする発言

 さらに、参院内閣委員会で、山東議員は、次のように発言しています。

 「障害の中でも精神的なものに注目をしたいと存じます。それはアスペルガー症候群でございます。一九四四年、オーストリアの小児科医、アスペルガー博士が報告したこの病はアインシュタインやヒットラーなどいろいろな人が持っていたと言われておりますけれども、この病を持った人が全てではないのですけれども、普通の子供が突然十七歳ぐらいになって凶暴になって事件を起こすというようなこともあります。そうした犯罪に結び付くということ、これが非常に心配でございます。二〇〇〇年、愛知県の豊川市で主婦殺害、二〇〇三年、長崎での男児誘拐事件、また二〇〇四年、同じ長崎、佐世保の小学校六年の女子がクラスメートを殺害した。
 いずれもアスペルガーだったとのことでございますけれども、こうした発達障害や心神喪失に関しての法律はできても、日本ではこのアスペルガーや発達障害に関しての調査や研究が遅れていると思います・・・」
 そして、治療はできないのか、と厚労省に問いただしているのです。

 ここで、アインシュタインやヒトラーが「アスペルガー」だった、と言っているのですが、このこと自体が「風変わりな人」、「大きな事件を起こした人」をそのように呼んでいる、というように思います。「アスペルガー」は「発達障害」の一つとされていますが、衛藤議員は、「発達障害者」への専門家の対応を求めます。結局、偏見をもあおりつつ、治療の対象、専門家の監視、という状況において、「発達障害者」と診断された人々を孤立させる方向に追い込んでいくことになるのではないか、とわたしは思います。
 わたしも、「発達障害」と診断された子供を知っていますが、彼にとって重要なのは、彼が安心していられる周りの雰囲気なのだ、と思いました。それとは全く逆の方向に進めているのが、この自民党の人々ではないでしょうか。

 他方、みんなの党の桜内文城議員は内閣府に法律の解釈を質問した、として、次のように述べました。

「内閣府の方に尋ねましたところ、基本的には、精神障害者の方々がなかなか外に出られないケースとか、そういったことがあるのを改善したいということだとお伺いしました。それはそれで確かに、特に基本的人権という観点でいえば重要なことだとも思うんですが、先ほど自民党の山東議員からの御指摘にもありましたとおり、精神障害といいますか、精神異常によって犯罪も幾つか、こうやって重大な犯罪が起こったりしているところでもありまして、そういった犯罪予防的な観点からこの規定についてどのように考えればよろしいのか、お考えをお聞かせください」

 桜内氏の質問は、自民、公明、民主の調整の中で入った部分だったので、公明党の高木美智代衆院議員が回答しています。

 「ただいま、また委員から犯罪というお話がありました。実は、今犯罪によりまして検挙されている人員のうち、精神障害者の占める割合は〇・六%でございます。また、精神障害者は今我が国では二百五十八万四千人、ですから、一億二千万人の人口のうち約二百六十万人というこの比率から見ますと、果たしてこの〇・六%が高いのかどうなのか。私は、こうした多くの誤解があることから、改めてこの数字に基づきまして考えていかなければならないと思っております。
 ちなみに、私がお会いする精神障害者の方たち、本来であれば地域で暮らせる、しかし地域で支える保健や医療や福祉の連携がないということから、余儀なくこの社会的入院をされているという方も多くいらっしゃいますし、またその中には大変心優しい、また傷つきやすい、そういう方が多いということも、これは私の率直な実感として受けております。」
 
 高木議員の適切な答えがあったものの、いかに「精神障害者」への差別・偏見が強いのか、ということが改めて明らかになりました。差別禁止の重要性、ということであれば、まずこのような差別者が政治の中心にいること自体が問題なのです。今後の制度改革の中で、精神医療の強制性の問題、医療観察法の廃止が課題になるとき、こうした議員たちが敵対してくることは間違いないでしょう。
 公明党はかつて、医療観察法を推進しました。高木議員の見解を党の見解だとするならば、医療観察法を自己批判を込めて撤廃する側に回るべきだと思います。

●差別の禁止は問題、とするみんなの党桜内議員

 「このように法律にしてしまいますと、特に共生という言葉でもって一般私人に対して差別禁止ということを余りに強く言い過ぎると、今度は他者の基本的人権ですね、例えば私人間の経済的活動の自由ですとか政治的活動の自由・・・これを少なからず侵害するおそれというのもあるんではないかと考えております」

 「今回の四条二項で「社会的障壁の除去」ということが、国、特に国だと思うんですけれども、に対してやらなければいけないということになっておりまして、素直にこれ解釈していけば、良くない観念を社会的障壁と認めてこれを除去しろというふうに国に命ずるような立て付けになっておりまして、憲法十九条の思想、良心の自由というものについてどうなんだろうと」

 みんなの党とは、新自由主義の党であり、改憲にも賛成の立場をとっています。その立場から、法律による差別禁止に反対しているのです。「私人」などと言っていますが、「経済活動の自由」や「政治活動の自由」とも言っていますので、企業や政治家の差別をも禁止するな、ということになります。これは、社会的「強者」による「弱者」切り捨てを認めよ、という論理に帰着します。彼は、財務官僚出身ですが、こうした思考の官僚が多いのかもしれません。
 
 このほかにも、「地域の学校へ」を主張する親たちへの上述の自民党山東議員の侮蔑発言もありました。
 「中には、かわいいお子さんの将来にとって本当にプラスになるのかどうか分からないけれども、どうも親のプライドが高くて、何でも普通学級に入れたいというようなことは、何というんでしょうか、主張する親御さんが多いようでございます」

 本当に腹に据えかねる発言が相次ぎました。世界的な政治・経済の危機、そして、日本の震災と原発事故という中で、建前によって覆い隠されてきた差別主義が、むき出しになってきているといえるのかもしれません。

●「可能な限り」について

 法案の中に6箇所ある「可能な限り」については、民主党の岡崎トミ子議員、公明党の谷合正明議員、無所属の糸数慶子議員、そして、社民党の福島みずほ議員が質問しました。
 法案提案者の立場にある民主党や公明党の質問に対しては、かなりおざなりな回答が行われていたのですが、糸数議員の質問に対しては衆院の時と同じように村木厚子政府参考人が対応しました。発言は衆院の場合と同じなのですが、やはりこうした官僚の手によって、「可能な限り」は挿入されたことが実感されます。
 「障害者」の権利を否定しようとする自民党などの政治家や官僚との闘いをますます強めなければなりません。

●「障害者政策委員会」の人選を巡る攻防

 この政策委員会は、「障害者」を巡る政府の政策について、資料の提出を求めること、勧告を行うこと、そして、担当大臣の答弁を求めることができるものとして、こんどの障害者基本法改定法で規定された機関です。この人選について、火花が散る状況があります。
 「制度改革推進会議」の二人目の担当大臣であった岡崎議員は、「障害者」を過半数とするよう要請しました。初代の担当大臣であった福島みずほ議員は、現在の推進会議のメンバーを政策委員会のメンバーとすべきである、と主張し回答を求めます。なぜならば、推進会議発足の時点で、5年間続けることを閣議決定していたからです。
 これに対して、自民党の衛藤議員は、「発達障害者関係とか、あるいは福祉サービス事業の提供者」を入れるべきだ、と言います。彼の念頭にあるのは、「自立支援法改定法」を支持した団体の中の「発達障害」関係団体のことなのでしょう。また、「地方公共団体の関係者」ももっと入れるべきだと言います。
 この点について付帯決議の中では、次のように記されています。
 「八、障害者政策委員会の委員の人選に当たっては、障害者政策を幅広い国民の理解を得ながら進めていくという観点から、広く国民各層の声を障害者政策に反映できるよう、公平・中立を旨とすること。」
大連立政権が作られ、自民党などが政権に加わった場合、政策委員会がどのようになっていくのか、ここも重要な点であると思います。

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厚生労働省が第2期コメントを発表
障害者自立支援法延命の政治的誘導をゆるすな
(2011.6.23 障がい者制度改革推進会議総合福祉部会)

 6月23日の障がい者制度改革推進会議(以下「推進会議」)総合福祉部会において、第2期作業チームの各チームから検討結果が報告されました。それとともに、同日「第2期作業チーム報告書に対する厚生労働省からのコメント」(以下「コメント」)なる文書も出されました。第1期作業チーム報告に対するコメントと同じように、作業チーム報告が提起する内容を強く牽制するものになっています。
障害者自立支援法に変わる新法は、第1期および第2期作業チーム報告に基づいて組み立てられる骨格提言に基づいて法案が作られる予定です。厚労省コメントは、その過程に官僚の立場から介入を図り、作業チーム報告が提起する内容をできるだけ骨抜きにしようという意図をもった文書で、強く批判されなければなりません。
今回のコメントの基調も第1期コメントと同じく、「国民の理解が得られにくい」「財源の確保が難しい」「公平性・透明性の面から課題がある」というものですが、今回はさらに「一部改悪障害者自立支援法」(いわゆる「つなぎ法」)で実施済みとか、他省庁との調整が必要、あるいは厚労省の他の審議会で審議中というような論の立て方が出ています。総合福祉部会という枠組みそのものを軽視する姿勢を公然ととり始めたといえます。

今回のコメントも、全部で67ページにおよぶ大部なものです。各部会作業チームの報告ごとに意見をまとめています。それに沿ってポイントになりそうな部分のみ取り上げてみました。

1.「選択と決定・相談支援プロセス」部会作業チーム
    障害程度区分について、「制度の公平性、限られた資源の重点的な配分を担保している」として、全面擁護。「障害の程度については、全国一律に客観的に評価する指標が必要」と、必要な支援の質と量は当事者の生活状況によって異なるという「障害」認識の基本を依然として否定。
    「現行のサービス利用計画は、本人中心支援を重要な視点として策定されている」というのは明らかなウソであり、「協議調整とは、現行の市町村と本人との間の支給申請・支給決定を巡るやりとりとどのように異なるのか」というのは、現行の仕組みは単なる“聴き取り”であって“協議”ではないことを隠蔽するもの。
    さらにガイドラインについて、「(水準を)先進地域に合わせた場合に、他の地域がそれについていけるか??遅れている地域に合わせた場合??先進地域の水準が引き下げられるおそれ」と、マイナス要素をあげつらう。作業チームは「その地域の他の者との平等を基礎として生活することを可能とする支援の水準」と明記し、地域における平等性の確保を主眼においているが、コメントはその趣旨を意図的に無視。

2.「地域移行」部会作業チーム
    地域の基盤整備を進めるために時限立法で数年間にわたる「地域基盤整備戦略」を定めて集中的に予算をあてるという作業チームの提案に対して、厚労省は①各自治体の障害福祉計画②「つなぎ法」を始めとする4つの各種事業・制度③厚生労働科学研究を始めとする2つの研究・検討事業を列挙して、現行で同じような取り組みがされていると主張。つまり、現在の取り組みで足りているということ。

3.「地域生活の資源整備」部会作業チーム
    「障害者」主導で介助体制を組むパーソナルアシスタンスについて、「客観性・透明性・公平性をどのように担保するのか慎重に検討」と、第1期コメントに続いて否定。「障害者」本人の生活選択権を全面否定しているのと同じ。「一人ひとりに介護職員が常時付き添うということになれば、非常に多額の財源及び人材が必要となるため、国民の理解を得ながら検討する必要」というのも、第1期コメントと同じ。
    国庫負担基準については「国の厳しい財政状況を考慮し、国費を公平に配分する機能…今後とも必要」と固執。国の財政状況を最優先する姿勢を崩さない。

4.「利用者負担」部会作業チーム
    「負担能力がある方まで無料とすることは…他の法律や制度との整合性が求められる」「障害のある方についての支援のみ全て無料とすることについては、国民的な議論が必要」。負担能力があるというのは、どのレベルの所得のことか。一般の人よりも低い所得状況を強いられている状況を無視して、あたかも「障害者」だけが“特権”をあたえられるかのようなデマゴギー。

5.「報酬や人材確保等」部会作業チーム
    作業チームが提起する福祉職棒給表の法定化には、「民間事業者の給与水準を国が規制することは難しい」と難色を示し、現行体系での報酬改善も財源論を盾に消極的姿勢。民間事業者の安上がり雇用で現場を回したいという意図の表明。
    作業チーム報告は、現行の社会福祉士等の福祉専門職には当事者の立場に立った支援に欠けると指摘した上で、新しい仕組みにおける相談支援専門員は行政と対峙してでも「障害者」の自己決定を支えることを職務義務とするべきと提起。それに対してコメントは、「資格関係団体の意見を踏まえ」と問題を曖昧に。

6.「就労(労働及び雇用)」合同作業チーム
    ここで目につくのが「各省庁において…結論を得ることになっている」という言葉。全部で6ヵ所におよぶ。労働分野における差別禁止・合意的配慮・雇用率適用範囲の拡大・職場における支援のあり方等だが、いずれも労働・雇用の主管官庁である厚労省の守備範囲のはず。経営者レベルの判断を気にしていると思われる。経済産業省の判断を待つということか。
    それと、労働政策審議会の審議との兼ね合いを問題にしたところも2ヵ所と目立つ。

    作業チーム報告は、日中活動事業を「就労系事業」と「作業・活動系事業」の2つに再編してどちらを選ぶかは「障害者」本人の自己選択によるとしていることに対して、客観的な選別方法に固執して難色を示す。また、作業・活動系事業について、「『自立訓練』…といった他のサービス類型との関係について整理が必要」とし、「訓練」的要素を残すことを図っていると思われる。
    また作業チームは、就業上必要な支援を明らかにする総合的なアセスメントの仕組みを導入する仕組みを提起していることに対して、「客観的な評価指標づくりが困難」と論点をずらして否定。作業チームの提起するアセスメントシステムというのは、職場における人的配置の保障や企業と就労支援機関(家族)との連携を公的なシステムとしてどのように作るのかという問題意識だと思われる。「障害者」個人の評価ではない。

7.「医療(その他の医療一般)」合同作業チーム
    ①難病②医療的ケア③精神科医療の3つに分かれているが、コメントで非常に目立つのが、厚労省内部に設置された各種委員会で検討中という主張。全部で6ヵ所この医療分野では他の項目以上に、厚労省の囲い込み姿勢が露骨。

難病の概念整理をするために当事者が参画した審議会を設けることを提起する作業チームに対して、「どのような状況であれば法律に基づく給付の対象になるのか…どのような基準で認定するのか…具体的な改革の内容が明確にならなければ制度設計は難しい」と無視(実質的に拒否)。
医療的ケアの面では、家族以外の第三者(介護者)がケアをできるようにするという作業チームの提起に、消極的。
精神科医療の面では、地域移行に必要な条件整備について非常に消極的。
 A.住まい:生活保護の医療費扶助・住宅扶助の充実(単独支給)については、「(生活保護は)生活需要全般を過不足なく支えるもの…慎重に検討」
 B.居住地の選択権(特定の居住施設での生活を強いられない):
       改訂障害者基本法「可能な限り、どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保」を引き合いに出す。
 C.退院を促進するための医療費負担軽減:
       「費用負担の軽減は、入院期間の長期化や、認知症を含めた社会的入院を助長するおそれ」「地域で暮らせる社会資源の整備を優先すべき」。悪質なウソ。
また、病院内の不適切な対応の防止や、病院へのヘルパー派遣に対しても、「安全を確保する観点から…(当該病院の)看護要員に代替するような付き添いは禁止」と否定。

8.「障害児支援」合同作業チーム
    作業チームは、①児童福祉法において「障害児」の基本的権利を規定して、児童一般施策と「障害児」施策を重層的に保障する②地域社会の身近な場所において専門性の高い療育を活用できるようにすること③適切なケアマネジメントに基づいて、総合的な個別支援計画を制度化すること、を提起。
    これに対してコメントは、児童福祉法との兼ね合いでは児童福祉分野の関係者全体との合意が必要と牽制。作業チームは、「子ども・子育て会議」(仮称)や「子ども・子育て新システム事業計画」(仮称)への「障害児」関係者の参画を求めているが、厚労省は他省庁との検討が必要と逃げの姿勢。
    身近な場所での療育の提供については、「検討が必要」を乱発。個別支援計画については、「つなぎ法」で取り入れられているという姿勢。
    全体に共通する事項として作業チームは、権利擁護のシステムとして「オンブズパーソンの制度化」を提起。当然これは「障害」のある子どもの権利を守るためのものだが、厚労省は意図的に一般論のオンブズパーソンに問題を拡大。「児童福祉分野のその他の関係者による議論な場で議論…児童福祉全体の議論の中で決定されることが必要」と、逃げの姿勢。

 「推進会議が厚労省との団交の場になってしまっている」…推進会議のある部会メンバーの方の言葉です。厚労省は事務方にすぎません。部会での論議を充実したものにする準備をして、そこで出された提起を形にすることが、本来の仕事です。それとはまったく逆のことをしているわけで、そこには「障害者自立支援法を延命させたい」という国家官僚としての政治的意思が強く働いていることは間違いありません。
 8月30日の総合福祉部会で、新法の骨格提言がまとまりました。いよいよ法案作りの段階に入ります。そして、法案を執筆するのは、ほぼ間違いなく厚労省です。厚労省への監視を強めるとともに、「障害者」や支援者の大きな運動の力で、本当に「障害者」の立場に立った新しい法律案を作らせましょう。

(宮崎)

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2011年6月30日 (木)

怒りネット通信47号

■障害者基本法改定案にいかなる態度を取るべきか

                          古賀 典夫

 4月22日、この改定案は国会に上程されました。権利法とは全くなっておらず、多くの問題をはらんだ法案ですが、現行法と比較すると改善点がある部分もあります。他方、2月15日に厚生労働省が総合福祉部会の検討に対して提出した「第1期作業チーム報告書に対する厚生労働省からのコメント」(以下、厚労省コメント)は、現状の福祉さえ大幅に後退させかねない内容をはらんでいます。
政府の進める「地域主権戦略」も同じように社会保障や福祉の国家責任を投げ捨てようとするものです。この8月か9月には、総合福祉部会の意見が取りまとめられ、「自立支援法」に変わる総合福祉法の法案づくりが始まります。
 わたしたちは、こうした全体的状況をにらみつつ、障害者基本法改定案に対する態度を決めていかなければならないと思います。いや、政府の側もそうした状況を踏まえるからこそ、権利法とはせず、法文全体に5箇所にわたって「可能な限り」という言葉を入れるような条文作りをしてきたのではないでしょうか。
 やはりわたしたちは、現状の福祉さえ後退させる動きがあるからこそ、権利法を要求するのだ、ということを主張すべきだと思います。「可能な限り」などという言葉は許せないと主張すべきです。そうした主張を持った運動展開をしなければ、「自立支援法」に変わる法案を眼ぶる攻防に対しても不利な状況に立たされてしまうのではないでしょうか。
 以下では、基本法改定案の内容を紹介しながら、その問題点を指摘して行きたいと思います。

●新設された条文

 新設された条文がいくつかあります。この部分は改善といえるかと思います。
 「国際的協調」と題する第五条。ただし、福祉を低い水準に合わせようとなる可能性もあるかもしれませんが。
 「療育」と題する第十七条は、「障害児」の療育についてのものです。 「選挙等における配慮」と題する第26条 「司法手続きにおける配慮等」と題する第二十七条「国際協力」と題する第二十八条 第三十条の2項、3項、第三十二条。これは、国の「障害者基本計画」について、その作成や変更の再に意見を述べることになっていた「障害者」関係の委員会の権限を拡大した部分です。これまでの「中央障害者施策推進協議会」は「障害者政策委員会」という名前になりました。権限も拡大し、基本計画の実施状況の監視、それに基づく総理大臣や関係大臣に対する勧告ができるようになっています。そして、この勧告に基づいて行った施策については、総理大臣などの大臣が政策委員会に報告しなければならないとしています。ただし、当事者の委員を過半数にすべき、という推進会議の意見は反映されず、「私たち抜きに私たちのことを決めるな」という原則は踏みにじられています。

●「障害者」の地域や社会参加は「可能な限り」でしか認めない

 しかし、これらの改善点を上回る問題点があります。推進会議の求めたような権利法とはなっていません。このことは、総合福祉法をも権利法とすべきであると打ち出している総合福祉部会にも重大な影響を与えるでしょう。
 さらに、「可能な限り」という言葉がもっとも「障害者」の生活にとって重要な部分について付けられているのです。
 「全て障害者は、可能な限り、どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと。」
(第三条二号)
 つまり、「障害者」の地域生活は「可能な買い義理」でしか実現されず、それも国などが積極的に保障するものではないのです。

 「国及び地方公共団体は、医療若しくは介護の給付又はリハビリテーションの提供を行うに当たつては、障害者が、可能な限り地域社会におけるその身近な場所においてこれらを受けられるよう必要な施策を講ずるものとするほか、その人権を十分に尊重しなければならない。」(第十四条5項)
 「国及び地方公共団体は、障害者である子どもが可能な限りその身近な場所において療育その他これに関連する支援を受けられるよう必要な施策を講じなければならない。」(第十七条)
 入所施設からの地域移行などは書かれていませんし、この条文からするとそれが進まなくても「可能な限り」やっているということになるのでしょう。まして、推進会議が求めた「精神障害者」の社会的入院の解消を全く盛り込まなかったところに、政府の姿勢を読み取るべきでしょう。そして、「精神障害者」、その家族、国連からも、日本の精神医療のあり方が人権上問題があると指摘されながら、あくまで「問題はない」と言い切る厚労省の姿勢があります。だから、「人権を十分に尊重」と言ってもその程度のことなのです。

 「国及び地方公共団体は、障害者が、その年齢及び能力に応じ、かつ、その特性を踏まえた十分な教育が受けられるようにするため、可能な限り障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配慮しつつ、教育の内容及び方法の改善及び充実を図るなど必要な施策を講じなければならない。」(第十六条)
 2月14日の推進会議に示された政府案では、「可能な限り障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配慮しつつ」という言葉はありませんでした。その意味では改善なのですが、やはり「可能な限り」なのです。しかも、2項においては、交流教育の推進が述べられているのですが、これは隔離教育を前提にしているからこその話ではないでしょうか。

 「全て障害者は、可能な限り、言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されると共に、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られること」(第三条三号)
 コミュニケーションなくして、社会参加はあり得ないのですが、それもやはり「可能な限り」とされてしまっているのです。

●「社会的障壁」を取り除くつもりはほとんどない

 基本法改定案では、「障害者」の定義を次のように記述しています。
 「障害者 身体障害、知的障害、精神障害その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であつて、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。」(第二条1号)
  このように、「障害及び社会的障壁」と記載すると、「障害」という個人の特性と「社会的障壁」という社会の側の問題が並列されることになります。
 社会モデルでは、社会参加を阻んでいるのは、主要に社会の障壁の問題となります。国連の権利条約は、このような立場にたっています。この立場は社会の側が「障害者」の権利を認めるという立場につながります。
 だから、日本の政府は、社会モデルの考え方に立つことを拒否していると思われます。
 その上で、一応は認めた「社会的障壁」についても、これを除去するつもりがほとんどないことが条文に現れます。第四条1項で、「障害者」への差別、権利利益の侵害をしてはならないとした上で、2項では次のような条文があります。
 「社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによつて前項の規定に違反することとならないよう、その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならない。」
 この定義だと国や自治体の福祉施策についても「過重」だと判断されればやらなくてもよくなってしまうのではないでしょうか。

●「可能な限り」「過重でない」とはどの程度?厚労省コメントから判ること

 24時間の介助を含めたパーソナルアシスタント制度を求める総合福祉部会側の意見について、厚労省コメントは次のように回答しています。
「財源や人材の制約を踏まえ、また、制度に係る費用を負担する国民の理解を得るためにも、一人で地域で生活を営めるような自立訓練や困ったときに対応してくれる相談支援体制の充実といった他の代替手段の活用など、様々な地域資源の活用により総合的に対応することについても検討が必要と考えられます。」 つまり、相談を受けつつも一人で暮らせるようにならないと、地域生活はできなくてもやむをえない、と言っているのです。常時介助を必要とする人など、地域で暮らすべきではない、とも受け取れる発言です。これが厚労省の「可能な限り」であり、「過重でない」負担なのです。
 もし、こんな見解が認められたら、現在長時間介助を実施している自治体にさえダメージを与え、充実させてきた介助制度が破壊されかねないと思います。
 ここでわたしが言いたいことは、「可能な限り」や「過重でない」負担という言葉を許していると、現状の福祉の水準さえ破壊されかねないということなのです。

●憲法よりも「地域主権戦略」を上におく厚労省

  総合福祉部会側は、国、都道府県、市町村の義務を記し、国については次の
ように記しています。
 国の法制度整備・充実義務、国のナショナルミニマム保障義務、地域間格差是正義務、国の財政支出義務、国の制度の谷間解消義務、国の長時間介護等保障義務
 これらはすべて、憲法25条の生存権、14条の法の元の平等、「障害者」が地域で生きる権利を保障する立場から言えば、当然認めなければならないもののはずです。しかし、厚労省コメントでは、次のように記しています。
 「国及び地方自治体の費用負担や事務のあり方については、閣議決定されている「地域主権戦略大綱」において「住民に身近な行政はできる限り地方公共団体にゆだねることを基本とし、基礎自治体が広く事務事業を担い、基礎自治体が担えない事務事業は広域自治体が担い、国は、広域自治体が担えない事務事業を担うことにより、本来果たすべき役割を重点的に担っていく」こと等の一定の方向性が示されています。
 特に、近年の福祉法制については、その実施主体を住民に身近な市町村としており、こ
の流れを踏まえた検討が必要と考えられます。」

 このように、憲法よりも「地域主権戦略」のほうを重視しているのです。「地域主権戦略会議」の議論を読むと、国の財政負担を減らすために「地域主権戦略」を行うことは明白です。したがって、このような厚労省の姿勢は、社会保障や福祉を後退させてもかまわないというものです。

●あくまで優生政策を護持しようとしている

  基本法政府案では、推進会議の提案からはなくなるはずの条文が残されています。
 「国及び地方公共団体は、障害の原因となる傷病の予防のため、必要な知識の普及、母子保健等の保健対策の強化、当該傷病の早期発見及び早期治療の推進その他必要な施策を講じなければならない。」(第二十九条2項)
 現行法では「障害の予防」となっている部分が「障害の原因となる傷病の予防となっています。しかしこれだけではもともとの優生政策を助長する内容は変わっていません。「母子保健等の保健対策の強化」という文言が残っているからです。なにしろ、出生全診断は母子保健対策として行われてきたのですから。
 優生政策の意味合いをなくすためには、こうした文言をなくすか、これまでの優生政策への反省を書き記すしかないと思います。

★具体的な運動展開を

 JDFも「今後の国会における議論等によるさらなる改正を求めるものである」とその見解で述べています。そうであるならば、そのための運動展開が必要です。「障害者」自身が怒りと危機感を表明し、社会的にその主張が伝わるような闘いが必要です。
 微力であるにしても、怒りネットはこうした運動を作って行こうと思います。
 

「第1期作業チーム報告書に対する厚生労働省からのコメント」への批判
                                   宮崎一

<厚労省が総合福祉部会の論議に批判コメントを発表>
 障がい者制度改革推進会議の総合福祉部会で、障害者自立支援法に代わる新法の骨格作りの論議が進められています。9つの作業チームに分かれて詳細な論点整理が行なわれ、1月25日に第1期作業チームの報告書がまとめられました。
新法に盛り込む諸制度の新しい方向性をまとめたもので、今後の新法策定論議は、この報告書を土台にして進められることになります。
 これに対して2月15日の総合福祉部会で、厚生労働省が「第1期作業チーム報告書に対する厚生労働省からのコメント」(以下「厚労省コメント」)なる批判文書を発表しました。第1期作業チーム報告書の方向性に対して、官僚の立場から「拒否」の姿勢を示したものといえます。総合福祉部会におけるこれからの論議に介入する政治的意図をもったものであることは明らかで、強く批判されなければいけません。

全部で10項目35ページに及ぶ文書を一通り読むと、繰り返し出されている論点がいくつかあります。それは厚労省が強調したい点でもあり、また一般論として流布されやすい言い方になっています。新しい制度を作る際に必ず出てくる「実現可能な制度にしよう」という声を使って、障害者自立支援法の骨格を残す方向に今後の論議を誘導しようとしています。その部分を中心に批判の切り口をまとめました。それぞれが全10項目のどの項目で取り上げられているかも記してあります。(10項目の一覧を、文末に記してあります)

[1] 「国民の合意(理解)が必要」論
 (本音:「国民の理解が得られないのでできない」)
     取り上げられている項目=5項目
        1-① 「法の理念・目的」チームの「法の理念・目的」
1-② 「法の理念・目的」チームの「国・地方自治体の義務」
        2   「障害の範囲」チーム
        4ー① 「施設体系~訪問系」チームの「パーソナルアシスタンス」
        4-② 「施設体系~訪問系」チームの「移動支援」

 この「国民の合意」論は、5項目のうち「2」を除く4項目が、次の「財源がない」論と重なっています。“財源がない中で支出増につながるので、国民の理解が得られない”というわけです。「2」は、“公平性・透明性の面から国民の合意が必要”ということです。
 この5項目は、「権利の主体としての障害者」「国家の義務の規定」「権利保障の対象者の拡大」「障害者の自己決定保障」「義務的経費の拡大」と、すべて新しい制度の根幹を規定する部分です。厚労省は、それを正面から否定することができないので、代わって「国民の合意」論を持ち出してきているわけです。 国民の理解が得られなくても、「障害者」の地域生活を保障する新しい制度は作らなければいけないという立場を厚労省にとらせなければいけません。
 住民の反対のためにグループホームの建設が中止に追い込まれるという事例が、全国であります。通常は家を建てる時に近所の人達の合意をとることなどないのに、「障害者」が住む場合は説明を求められて、あげくのはてに拒否される。そのような差別的な状況を打破して地域生活を保障させるのが、新法の役割です。
国民の納得があろうがなかろうが、行政はすべての「障害者」に地域生活を保障する義務があるし、納得しない国民がいるのであれば、逆にそれを説得するのが国と自治体の仕事であること。新法は「国民の合意」のための法律ではなく「障害者」の権利を保障するためのものであることを、あらためて認めさせなくてはいけません。
 
[2]  「財源の確保が必要」論  (本音:「財源がないのでできない」)
     取り上げられている項目=4項目
        1-① 「法の理念・目的」チームの「法の理念・目的」
1-② 「法の理念・目的」チームの「国・地方自治体の義務」
        4ー① 「施設体系~訪問系」チームの「パーソナルアシスタンス」
        4-② 「施設体系~訪問系」チームの「移動支援」

 本当に財源がないのかという問題が、まずあります。2011年度国家予算のうち、障害福祉サービス(介護給付費・訓練等給付費)と地域生活支援事業費を合わせた額は6,787億円。対して、軍事費のうち基地対策等推進費だけで4,337億円で、うち1,858億円は在日米軍駐留経費負担です。米軍関係費を回すだけで、「障害者」関係予算を3割近く増やすことができます。“軍事費を削って社会保障費へ回せ”という批判が、まずされるべきでしょう。
合わせて、もう一つの論点として「限られた財源の中で、さらに『障害者』関連予算が切り縮められている」という、いわば配分率の面からの批判があります。
 GDPと「障害者」関係予算支出の対比の数字があります(2007年度)。日本の公的社会支出はGDP比18.6%でOECD諸国平均の20.5%とそんなに差はありません。
ところが、これを「障害者」関連の公的社会支出に限ると、日本はGDP比0.7%でOECD諸国平均の2.3%の3分の1になってしまいます。「障害者」関連施策を日本がいかに軽視しているかの表れでしょう。

[3] 「地域主権重視=補助金一般財源化の流れに逆行する」論
           取り上げられている項目=5項目
                1-② 「法の理念・目的」チームの「国・地方自治体の義務」
              3-① 「選択と決定・相談支援」チームの「相談支援」
         4-② 「施設体系~訪問系」チームの「移動支援」
                 5   「施設体系~日中活動」チーム
                 6   「施設体系~地域生活支援事業」チーム

 ひもつき補助金を縮小して地方が自由に施策を組み立てて予算を使えるようにする(一般財源化)という理屈は、標準的な生活保障がどの地域でも確立しているという前提があって成り立つものです。ところが、日本の場合はそうではないわけです。全国的に貧弱なレベルでしかないところで、それなりの問題意識を持っている自治体がある程度支出を増やしていて、それが「地域格差」につながっていること。この状況で一般財源化したら地域格差がますます広がってしまいます。
 地域格差の責任は国の貧弱な社会保障施策にあることを、ずっと推進会議は指摘してきました。5つという多くの項目でこの「地域主権重視」論が展開されているというのは、「障害者」施策に対する国家責任を何としても回避したいという、厚労省の強い願望の表れです。
 まずは国の財政責任で必要な支援の量をすべての地域で保障させる(つまり社会保障分野では「ひもつき補助金」が必要)ことが求められています。「どこの地域で暮らしていても必要かつ標準的な生活ができる体制」を作らせるのが、当面の課題です。

[4] 一般事業所(企業)の参入制限論
           取り上げられている項目=2項目
                3-① 「選択と決定・相談支援」チームの「相談支援」
4ー① 「施設体系~訪問系」チームの「パーソナルアシスタンス」

 ここは「エンパワメント支援(ピアサポート)」「パーソナルアシスタンス」のことを言っています。この両事業について、利用者主体のサービス提供組織が中心になって担うことを、作業チームは想定しています。それに対して厚労省は「事業者の指定権限は市町村にある」「(利用者主体でない)事業者が新たに参入することを規制することになる」と、これを回避しようとしています。
 「4-①」のパーソナルアシスタンスの項で、作業チームは導入の必要性を「①利用者の主導②個別の関係性③包括性と継続性」という3点にまとめています。介助者を自分で選べないのでは、自分の生活を自分で組み立てるという人間として最低限の選択権さえ奪われてきたのと同じで、それは制度として保障されなければいけないということがこの3点に含まれています。
 それを否定する厚労省コメントは、「障害者」から人間としての最低限の選択権を奪うものです。さらに、新法の基本理念が「障害者」の自己決定やセルフマネジメントにあることを考えれば、参入が制限されるのはむしろ当然と考えるべきでしょう。
 これは、社会保障分野を営利企業に開放して資本の金儲けの場にしようという国の政策にブレーキをかけることになります。その面からも厚労省としては認めたくないのでしょう。さらに、「障害者」主体の事業所が強化されることは、「障害者」が今以上に団結して制度の改善を要求することにもつながり、そのことへの警戒感もあるでしょう。

[5] 「事業所・学校の合理的配慮を踏まえる必要」論
      (本音:「事業所や学校に過度の負担をかけるのでできない」)
           取り上げられている項目=2項目
        4ー① 「施設体系~訪問系」チームの「パーソナルアシスタンス」
        4-② 「施設体系~訪問系」チームの「移動支援」

 通勤・通学・入院時等のヘルパー利用制限をなくすとともに、雇用分野・教育分野・介護保険から支援財源を回すべきという作業チームの方向性に対して、厚労省は「それぞれの場面で誰がどこまで責任を持つのか」「事業所・学校による合理的配慮の範囲が決まってから検討」という理由で回避しようとしています。
 厚労省のいう「それぞれの場面において誰がどこまで責任を有するのか」「どの分野から財源を出すのか」というのは、国や自治体の内部で調整するべきことです。一方、「障害者」の側が求めているのは、日常生活支援(介助)が境目無く連続的に保障されることで、職場や学校に通えるようになったり安心して入院できるようになることです。この2つはまったく次元が違うものです。それを意図的に混同させています。パーソナルアシスタンス制度創設や移動支援が拡大することによって、重度「障害者」が職場や学校に通えるようになることを避けたいというのが、厚労省の本音でしょう。
 また、「合理的配慮=過度の負担をかけない」論の扱いにもおかしさがあります。たとえば、職場就労での合理的配慮では企業に過度の負担をかけない範囲でということになっています。経営難で倒産の危機にさらされている中小・零細企業が、「障害者」雇用でさらに経営が苦しくなるのはおかしいのは確かです。その場合は、賃金補填等で国や自治体が支援しなければいけないのです。合理的配慮は、国と自治体こそが制度的・財政的に責任をもって支えなければいけない。
行政の支出抑制を前提とする日本の合理的配慮の論議は、このことを意図的にはずしています。その点からも批判されなければなりません。

[6] 「全国一律な透明・公平な制度」論
           (本音:「透明・公平な制度を作るためには、全国共通の制度にして国が決定権を持たなくてはならない。地域や『障害者』に基本的な決定権は与えられない」)
           取り上げられている項目=2項目
        2 「障害の範囲」チーム
       3-② 「選択と決定・相談支援」チームの「支給決定」

 作業チームの論議では、制度の対象者を「障害と社会的障壁の相互作用で生活に制限を受ける者」とし、支援の必要な人をなるべく広く対象にしようとしています。さらに、制度利用にあたっては、「障害者」本人の自己決定権を基本にした支給決定方法(本人と自治体の「協議・調整」)にしようとしています。それに対抗する形で厚労省が出してきたのが、この「全国一律な透明・公平な制度」論です。
 “支援が必要か否か”という曖昧な基準や、当事者と自治体の協議による支給決定方法では、厚労省のコントロールが利かなくなります。そのことを強く牽制しているコメントです。そしてその裏には、「障害者」施策を介護保険に統合しようという意図を感じ取れます。専門職や各「障害」当事者団体による認定でさえ「全国統一ではない」ことをもって否定していることは、全国一律の介護保険への統合を厚労省がなおも狙っていることの表れです。
 この部分は「障害者」にとっても生活の根幹に関わる部分で、新しい制度の根幹に据えなければいけない部分です。
 たとえば、「知的障害者」と「健常者」の境目は限りなく曖昧です。手っ取り早い指標は知能指数(IQ)ですが、IQが高くても多くの支援が必要な人もいれば逆にIQが低くてもそれほどでもない人もいるというのは、よく言われることです。
必要な支援の内容と量は個人によって違うことを前提にして、認定は地域に任せることを明確にするべきです。
 また支給決定の部分では、例として横浜市の利用者が11,730人いることをあげて「協議・調整」の支給決定方法が困難といっています。しかし、もしセルフマネジメントを基本にするのなら、「話し合い」にそんなに時間をかける必要はありません。出されたサービス利用計画で大きな疑問があるものだけ丁寧な協議・調整をすればよいだけです。厚労省は、行政の職員が納得しなければ支給決定をしないというイメージでいるようで、ここにも「決定権は国(行政)が握りたい」という意図が透けて見えます。
 それに、11,730人全員の生活の様子が毎年毎年大きく変わるということはまず考えられないわけですから、一度支給決定をすれば二度目以降はそんなに時間はかからないのではと思います。

[8] 事業体系
     取り上げられている項目  5「施設体系~日中活動」チーム

 作業チームが、日中活動を「働くこと」「趣味」「居場所」のいろいろな要素を含んだ、「総合的な居場所」としていることを全面否定。相変わらず「訓練系」「日中活動系」に分離し、訓練系事業所での効率を追求するなど、労働能力を基準にした輪切り体制を維持しようとしていることが批判されなければなりません。
 そもそも人は、生活費を得るだけではなく人間関係を作ることも含めて、働くことで「社会に参加している」という実感を得ているわけです。なぜ「障害者」だけが、毎日「訓練」をしなければいけないのか?一人の人間として見ていない証拠です。それがこの事業体系の扱いに表れています。

[9]  「コミュニケーション支援」「移動支援」についての問題のすりかえ
      取り上げられている項目:
  6 「施設体系~地域生活支援事業」チーム

 「コミュニケーション支援」「移動支援」という、人間として最低限必要なものを国の義務的経費にするべきという作業チーム報告に対して、「柔軟性のある支援」を主張。複数人数での利用など柔軟な利用ができるようにするのは当然なされるべきですが、それと「国の義務的経費化」は別次元のことで、問題がすり替えられています。
 これは、「事業のあり方」の次元ではなく「コミュニケーション」「移動」という、人として最低限必要なことさえ認めないということであり、「障害者」の地域生活そのものを軽視するものとして批判されるべきです。

[10] 精神「障害者」をめぐって
     取り上げられている項目  7「医療」チーム

 厚労省「精神保健福祉法等で人権確保に配慮した規を設けている」
      ←強制入院や身体拘束が多い実態を作業チームが課題にしていること自体を否定しています。
 厚労省「医療保護入院者12万人すべて(の入院時の同意)を保護者ではなく)公的機関で担うことは、人数的に無理」
      ←12万人もの強制入院者を産み出した国自身の責任を回避しています。

[11] 行政責任の回避
       取り上げられている項目:
1-② 「法の理念・目的」チームの「国・地方自治体の義務」

 作業チームは、
市町村の説明責任と申請妨害に対する制裁事業所整備が国・公共団体にあること
国民への広報・啓蒙の努力義務の3点について、国や公共団体に責任があることを明記するとしています。しかし厚労省は、以下のような理屈でこれを回避しようとしています。
他の福祉制度に同様に規定がないことと、国家賠償法等の既存制度との関係提供体制の確保は、計画的に整備(=財政状況で無理ならできなくても仕方ない)同趣旨は障害者基本法にすでに定められている
[12] 労働者の労働条件保障の回避
       取り上げられている項目:
 1-② 「法の理念・目的」チームの「国・地方自治体の義務」

 作業チームでは、「障害者」の生活保障には事業に携る労働者の人件費を適性水準以上にすることが必要としています。しかし、厚労省は労働条件の規定は新法にはなじまないとして、これを回避しようとしています。
 厚労省の本音は、事業所が安上がりの非常勤労働者中心でしか運営できない現
行の体制維持です。

[13] 資格制度
取り上げられている項目
                4ー① 「施設体系~訪問系」チームの「パーソナルアシスタンス」

 作業チームでは、介助者の資格取得について「入り口を幅広く取り」その上でOJT(実地研修中心の研修制度)を基本にするとしています。実質的に当該の「障害者」が介助者の研修に関われる仕組みにしていこうということですが、厚労省は「従事者の資質を、福祉サービス体系全体の中で整合性がとれるものにする必要がある」として、これを回避しようとしています。


<「厚労省コメント」全10項目一覧>
1-① 「法の理念・目的」チームの「法の理念・目的」
1-② 「法の理念・目的」チームの「国・地方自治体の義務」
2   「障害の範囲」チーム
3-① 「選択と決定・相談支援」チームの「相談支援」
3-② 「選択と決定・相談支援」チームの「支給決定」
4ー① 「施設体系~訪問系」チームの「パーソナルアシスタンス」
4-② 「施設体系~訪問系」チームの「移動支援」
5   「施設体系~日中活動」チーム
6   「施設体系~地域生活支援事業」チーム
7   「医療」チーム


以上

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2011年6月 1日 (水)

怒りネット通信46号

遅くなりましたがお届けします。

●障害者の地域社会で暮らす権利をかちとるぞ!

●民主、自民、公明、官僚の一体となった障害者制度つぶしをゆるさないぞ!

もくじ
・「障害者」制度改革をめぐる攻防―10年秋から現在   P2
・10・29日比谷に1万人               P13







 
「障害者」制度改革をめぐる攻防ー10年秋から現在

                          

 古賀 典夫

 昨年11月29日、日比谷集会から今日まで、「障害者自立支援法改定法」をめぐる闘い、「障害者制度改革推進会議」(以下、推進会議)の意見を大きく裏切る今年2月の政府の姿勢、3月11日の東日本大震災、そして、4月22日、障害者基本法改定案の国会上程など、さまざまな動きがありました。これらの動きを捉えることに汲々としており、まとめて文章を書くことができず、つい『怒りネット通信』の発行が遅れてしまいました。申し訳ありません。
 大震災と原発事故という中で、日本社会はこれからどうすべきなのか、ということがすべての人の課題となる中で、「障害者制度改革」もますます重大な時期を迎えようとしています。5月の連休明けには、障害者基本法改定案の国会審議が始まるかもしれません。8月ないしは9月には、推進会議の総合福祉部会の意見のとりまとめが行われ、その後具体的に法文のとりまとめが進むことになります。
 障害者基本法改定案は、推進会議の第1次意見、第2次意見を大きく下回るものです。これと同じことが総合福祉法で起こるとしたら、「自立支援法」と変わらないものとなってしまうのではないか、との危機感を感じます。今こそ、運動そのものが問われていると思います。
 まずこの原稿では、この間の動きをまとめてみたいと思います。

★「自立支援法改定法案」との闘い

●10月29日の国会デモは、その後の事態を予見させた

 1万人の結集に高揚した日比谷の集会後、わたしたちは国会への請願デモに加わりました。気合のこもったシュプレヒコールをとどろかせながら、一路国会に向かいました。請願デモに対しては、これを支持する国会議員が衆議院議員面会所と参議院議員面会所で出迎えてくれるのが通例です。
 06年から続く請願デモに対する議員の出迎え状況について、この日、明らかな変化がありました。出迎える議員が少ない。いや、民主党議員がいないのです。
出迎えたのは、共産党と社民党だけなのです。
 通常国会で廃案となった「自立支援方改定案」が再び民主党も加わって上程されることをわたしたちは予感しました。

●「自立支援法改定法案」賛成を表明する9団体声明

 11月2日に、以下の9団体が「自立支援法改定法案」に賛成する声明を挙げました。
 全日本手をつなぐ育成会、障害のある人と援助者でつくる日本グループホーム学会、全国地域生活支援ネットワーク、日本発達障害福祉連盟、日本知的障害者福祉協会、全国重症心身障害児(者)を守る会、日本発達障害ネットワーク、日本重症児福祉協会、全国児童発達支援協議会

 このうち半数ぐらいは、育成会と近い団体です。別の観点から注目されるのは、05年に「自立支援法」の成立推進に名を連ねた「身体障害者」関係の団体や「精神障害者」の家族の団体はここに加わっていない、ということです。
 にもかかわらず、民主党内部では、この9団体が「障害者」の多数の声を代表しているかのようなデマが流れていたようです。「障害者」関係のことに精通していると見られてきた石毛衆議院議員の事務所からさえそんな話が出てきたのです。誰が流したデマか分かりませんが、議員一人一人がその不明を恥じてほしいものです。

●「自立支援法改定法案」再上程

 11月12日、衆議院厚生労働委員会の理事懇談会で、民主党から17日の委員会で「自立支援法改定法案」を採決したい、との意向が示されました。自民党などとはすでに水面下で打ち合わせができていたようです。この時点では、まだ法案の文面さえ厚生労働委員には配られていませんでした。
 これに対して、社民党と共産党が反対して、16日の理事懇談会で改めて検討することになりました。
 怒りネットは15日に、厚労委員への働きかけを行いました。議員事務所を回ると、改定案に反対するファックスが各地から届いているのが分かりました。難病の会の山本さんにも出会いました。何しろ、改定法案では、難病の人は全く対象とされていません。そして、日比谷の大フォーラム実行委員会も17日には国会前の行動を決めました。しかし、わたしたちとは反対に育成会が賛成陳情を行っているのでした。
 この日の午後3時過ぎ辺りから、厚労委員に法案が配られ始めました。内容は、通常国会に出されたものと同じですが、厚さ3.5センチ、11万2880文字というものです。改定法案は、現行法と読み比べなければ分からず、この法案について、いえば、「自立支援法」だけでなく、児童福祉法、精神保健福祉法など、関連して改定される法律を多く含んでいます。またも、ほとんどの委員は読まずに採決することが予想されます。ある自民党議員の秘書は、通常国会の際の採決について、ほとんど読まないまま採決したことを認めていました。
 
 それにしても、通常国会で衆議院での採決が行われて以降、6月7日には推進会議が第1次意見を発表し、総合福祉部会が「障がい者総合福祉法(仮称)の制定以前に早急に対応を要する課題」を発表しています。また、民主党は、41団体からのヒアリングを行ったと言います。それにもかかわらず、一言一句変わらない法案を出してくるということは、「障害者」の声など取るに足らないものとして扱っているということなのではないでしょうか。
 そして、今回もほかの法案との取引であることがマスコミでも報じられています。政府提出の国民年金法の改定案を成立させる代わりに、自民党は「自立支援法改定法案」の成立を条件としたと言うのです。

 16日、衆院厚労委の理事懇談会は、17日の採決を決めてしまいます。この採決に対して質疑は行われず、希望する党が発言するだけで、30分以内に採決というひどいものです。
 17日午後1時から大フォーラム実行委員会の集会が、衆議院第2議員会館前で開かれました。怒りネットは、午前中から兵庫の高見さん、岩崎さんも参加して、議員への働きかけを行いました。そして、30人で大フォーラムの集会に合流しました。厚労委員会では3時過ぎからこの法案が議題となり、共産党の高橋さんと社民党の阿部さんが反対の発言を行いました。傍聴席からは、このお二人の発言を支持する声が上がります。しかし、3時25分、傍聴席からの怒号の中採決が強行されます。高橋さん、阿部さん以外はすべて賛成にまわりました。
 採決後、意味不明の付帯決議が上げられます。
-----------------------
障害保健福祉の推進に関する件(案)
政府は、今後の障害保健福祉施策の実施に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

一平成二十五年八月までの実施を目指して、障がい者制度改革推進本部等における検討を踏まえて、障害保健福祉施策を見直すなど検討すること。

二指定特定相談支援事業者がサービス等利用計画案を作成する際に、障害者等の希望等を踏まえて作成するよう努めるようにすること。
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 一は、総合福祉法のことを言っているようですが、あくまで検討するにすぎません。二は、改定法の中身として、市区町村の支給決定の前に利用者側が作成させられる利用計画案のことを言っているようです。「指定特定相談支援事業者」にこの作成を頼んだ場合、計画案が訪問系の国庫負担基準以内に押さえ込まれてしまうのではないか、との批判を意識したものと思われます。しかし、「障害者等の希望等を踏まえ」るとなると、何を踏まえるのでしょうか?

 大フォーラムは、抗議集会を行い、兵庫や広島からの参加者も含め400人の怒りの声が響きます。そして、翌日の本会議を初めとしてとことん闘いぬくことが確認されました。
 18日12時47分、衆議院本会議は一切の質疑も発言もなくこの法案を可決してしまいます。大フォーラムは150人の結集でこれに抗議し、参議院での闘いを確認しました。

●参議院での闘い

 参院厚労委の状況は、最短では25日に「自立支援法改定法案」がかけられるのではないか、との予測がありました。24日の理事懇談会で、この日程が決められることになっています。そこで、大フォーラム実行委員会では、24日、25日、26日の連続行動を呼びかけました。
 これに先立つ21日には、怒りネットの茨城の人たちを中心に「地域でいきる権利かその否定か-私たちの生活を決めるのは誰か ~「障害者」の闘いは今~」というテーマで講座を開き、大フォーラム実行委員長の太田さんに講演していただきました。
 大フォーラム実行委員会の闘いは、上述した三日間に加え、29日、30日、1日、2日と続きました。毎回200人から500人の人々が結集し、議員事務所への働きかけと参院会館前での集会を続けました。参院の議員定数は242人です。それを上回る人たちが参院会館のすべての事務所を回りつくすのです。怒りネットも毎回一つのフロアーを担当しました。参加者も、関西、広島、東北や北海道など各地から結集されていました。怒りネット関西の人たちも、この間2度にわたって参加しました。
 参院では補正予算の審議が続いていました。また、自民党が問責決議案を上げる関係で、自民党の国会対策関係者からは、党員に一切の委員会審議に応じるな、との指示が出ていました。そんな関係もあり、25日、30日、12月2日の厚労委は開かれませんでした。他方、自民党の厚労委員からは、委員会を開きたいという働きかけが党の執行部に対して行われていたようです。
 大フォーラム実行委員会が参院会館内で会場を確保するのは、福島みずほ事務所に頼んでいました。福島さん自身、改定法案の成立を阻止するために、いろいろな働きかけを行ってくれていたようです。共産党の田村智子議員と共に、厚生労働委員長や民主党の参議院議員会長の所に申し入れもしてくれました。初代の「障害者制度改革推進会議」の担当大臣であった福島さんは、今では大フォーラム実行委員会の担当議員という感じでした。
 他方、育成会や知的障害者福祉協会などは、ファックスを含めた法案成立推進陳情を行ってきました。しかし、陳情者の数やファックスの量では明らかに反対派が圧倒していました。そして、育成会の地方組織からも、たとえば「東久留米市手をつなぐ親の会」、「吹田市手をつなぐ親の会」などが改定法案の廃案を地域のほかの団体と共に要請するに至ります。
 
 ところが、12月1日の夜になって、民主党と自民党の国会対策関係者の間で、会期末処理で合意します。民主党が成立させたい能力開発機構関連法案と国民年金法改正法案を継続審議とすることを条件に、自立支援法を採決するということがそこで決められました。そして、2日午後の厚労委の理事懇談会で、3日午前9時10分から厚労委を開き、そこで「自立支援法改定法案」の質疑を行い採決することが決められてしまったのです。そして、12時からの本会議で採決するという日程までが決められました。こんなことは会期末としては異例中の異例です。この戦いへの参加者は憤りました。
 3日朝、強い雨が降りしきる中、大フォーラム実行委員会の集合時間午前8時には、多
くの仲間が続々と結集してきます。怒りネット関西の京都の仲間も来てくれました。多くの人が傍聴に入り、ほかの人は参院の行動で厚労委の様子をテレビで見つめました。
 反対質問を田村議員と福島議員が行います。前日の理事懇談会では、この二人が闘って、15分ずつの質問時間を確保しました。
 田村議員は、厚労委の運営に抗議すると共に、改定法案が大きな制度変更を含んでおり、これが本当につなぎ法案なのか、と批判します。特に、「障害児」の関係施設については、「障害」種別をなくして一元化し、この福祉制度の実施主体も都道府県から市町村に移行するという児童福祉法の大きな改変点を指摘しました。
 福島議員は、「障害者制度改革推進会議」を無視するやり方に激しく抗議します。「でたらめなんですよ。つまり、障がい者制度改革推進会議を、政権挙げてこの世の中で障害者政策を変えるとやっていて、総合福祉部会もやっているんですよ。たくさんの障害者が入っている。そこの意見を正式に一度も聴かなければ、一度も説明もしなければ、一度も協議をしてないんですよ。・・・このようなやり方そのものについて強く抗議をいたします。」
 この二人が重ねて反対意見を表明する一方、みんなの党の川田龍平議員が賛成意見を述べます。彼個人としては、この法案に反対したかったようです。みんなの党にも働きかけたそうですが、反対するとはならなかった。そこで、提案者や厚労大臣に答弁を求め、総合福祉法への足場を固めたい、との方向を模索していたようです。しかし、結果としては、賛成意見を述べる状況になってしまった。
「自立支援法」の廃止ということについては、語気強く語ってはいたのですが、もたらした結果は、彼も賛成するのだから問題はないという雰囲気作りに一役かってしまうことになったのではないでしょうか。
 そう言えば、議員への働きかけをする中で、党の上層部が決めてしまったのだからどうしようもない、との話をいくつか聞きました。たとえば、民主党の障害者プロジェクトチームの谷議員の秘書の方は、ヒアリングした団体の中で賛成意見が決して多くはなかったことを認め、次のように述べました。「党全体との関係があって、わたしたちの上の国会対策関係とのこともあり、なかなか思うようにはいかない。わたしたちは意見も言ったし、反対もしたけど、そうはいかなかった。確かに、説明責任を果たしていない、と言われればそのとおりです。ヒアリングをした41団体の人たちに対しては、わたしたちは赤っ恥をかいてますよ」

厚労委の採決では、田村さんと福島さんを除いて賛成。この採決に抗議して怒りネットの仲間が強制的に退場させられました。
 本会議では、共産党と社民党、そして無所属の糸数慶子さんが反対しました。
また、6月に涙を流して党の中でも反対していくことを語った金子恵美さんは保留しました。上述した国会の状況からすると、この保留は勇気ある行動だったと思います。
 そして、大フォーラム実行委員会は抗議の集会を開き、300名が結集しました。

 この秋の闘いに参加された方々は本当にみんな必死でがんばったと思います。
とりわけ、きょうされんの方々のがんばりと結集力に支えられたところが大きかったと思います。しかし、6月のように2000人を超えるような結集が実現できませんでした。怒りネットからの参加者数とDPIの参加者数がたいして変わらないというのも不思議な感じをうけました。

★障害者基本法改定案をめぐって

 推進会議は昨年12月17日に、第2次意見を発表しました。これは主要に障害者基本法の改善のための意見です。内容としては、第1次意見よりもさらに重要な記載が行われています。たとえば、「現行の精神保健福祉法及び医療観察法については、その廃止を含め抜本的に見直」すことの必要性が述べられています。
基本法については、「障害者」の権利法としていく方向がうちだされました。
 この第2次意見の内容を条文の形にまとめ上げたのが日弁連の「障がいのある人の権利と施策に関する基本法改正要綱案の提言」です。

 これにたいして政府の側は、2月14日の第30回の推進会議に「政府部内で検討中」としながら、基本法の改定案を示しました。しかし、その内容は第2次意見とは大きくかけ離れたものでした。

そもそもまったく権利法にはなっていません。「障害者」が地域で生きることも、だれと暮らすかの選択も、必要なコミュニケーション手段の選択も、可能な限りでしか認められない条文となっています。法案の中で4カ所にわたって「可能な限り」という言葉が出てきます。教育については、地域の学校でともに学ぶ内容は全く盛り込まれていません。
 以上、指摘した以外にも多くの問題があり、次々と「障害者」団体から抗議の声明が上がります。JDF(日本障害フォーラム、大きな「障害者」団体が加盟)は、具体的に書き直す個所と内容を記した統一要求書を提出します。
こうした中で、政府の側も調整に手間取ったようで、推進会議の開催も延期されます。そして、3月11日の午前中に、第3回の「障害者制度改革推進本部」が開かれ、さらに手直しを経た基本法改定案が了承されます。こうして事実上政府案がつくられたのです。
多少の改善があったのは、主に次の所です。教育については「可能な限り障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配慮しつつ」という言葉が入りました。これで法文全体で「可能な限り」は五つとなりました。
「刑事手続きにおける配慮等」とされていた27条の見出しが「司法手続きにおける配慮等」と改題され、刑事だけでなく民事についても「障害者」に適切な配慮を行うべきことが規定されました。
 この午後に東日本大震災が発生。3月14日に予定されていた推進会議はさらに延期され、開かれたのは4月18日でした。いくつかの改善点はあったものの、本質的には変わっていないこの法案に対して、委員からはクレームが出されますが、すでに政府案となっている法案はこれ以上変更されず、4月22日には国会に提出されます。
 
●総合福祉部会での厚労省の許せぬコメント

 推進会議に検討中の法案が示された翌日2月15日には、総合福祉部会が開かれました。そこでは厚労省より「第1期作業チーム報告書に対する厚生労働省からのコメント」が示されました。これは、作業部会に分かれて総合福祉部会が検討してきたことについてのコメントなのですが、そこには、権利条約の観点も「障害者自立支援法違憲訴訟原告団・弁護団と国(厚生労働省)との基本合意文書」の観点も一切ありません。ただ、「自立支援法」と「地域主権戦略」の立場からいちゃもんをつけているというものです。
 その内容は、かなり重大な問題をはらんでいます。総合福祉法を権利法とすることに反対し、24時間の介助保障を実現させようとする記述に対しては、一人で暮らせるように訓練することなどを強調しています。「障害者」の権利保障についての国の責任を明確にする記述に対しては、「地域主権戦略」を対置しています。憲法よりも「地域主権戦略」を上位においているようです。

 なお、福祉関係施設の人員、設備、運営に関する基準を条例に委任してしまおうとする「地域主権改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案」については、「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案」と名前を変えて、衆院を4月22日に通過しました。題名だけでなくいくつか修正点があるため、改めて参院に送付され、総務委員会にかけられています。


●「自立支援法改定法」を推進した9団体は

 2月26日、この9団体は、「障害のある方との共生社会を実現するための市民フォーラム」と題する集会を開きました。「厚生労働省行政官」と一緒に行っていくことを打ち出しているこの9団体は、厚労省の土生栄二障害福祉課長に「平成23年度の障害者福祉について」話をさせただけではなく、厚労省の意図を体現した発言が相次いだそうです。
 育成会関係の団体と密接なかかわりを持つ野澤和弘氏(毎日新聞・論説委員)と片桐公彦氏(りとるらいふ、全国地域生活支援ネットワーク事務局次長)とは、消費税増税に賛成し、「障害者」の制度を介護保険に統合することについても賛成発言を行ったそうです。
 また野沢氏は、「障害者制度改革推進会議は、現実を考えていない」とか、「権利、権利とばかり言うと反発をかう」という趣旨の発言を行ったとのことですが、彼だけではなく、自民党の衛藤 晟一議員、「全国重症心身障害児(者)を守る会」、「日本知的障害者福祉協会」などが同趣旨の発言を行っていたそうです。さらには、推進会議について、主張できる「障害者」が中心で知的や精神の人たちのことが十分考えられていない、などというデマをも流していたそうです。
 この団体の中には、05年に「自立支援法」が施行される中で、会員が心中に追い込まれて行った経験を持っているところがあるはずです。自らが推進した法律の結果、心中に追い込んだそのことについて、胸に手を当ててから発言してほしいものです。
 しかし、主催者側と参加者との間には意識のギャップもあったようです。なぜなら、招待されたDPIの発言に一番拍手が多かったそうですから。

★今、わたしたちはどうすべきなのか

 「障害者」運動は、今かつて経験したことのない大変な状況におかれていると思います。
 大震災被災地の救援は待ったなしです。「JDF東北関東大震災被災障害者総合支援本部」が立ち上げられ、福島県郡山市や宮城県仙台市に現地本部を置いて、いろいろな団体が協力しながら被災地支援を進めています。怒りネットも微力ながら義援金を集めています。
 現地入りした方々のお話では、いまだに「障害者」の実態がつかめない、とのことです。現地の団体でも、まだ連絡が取れない人がいると聞きます。介助者が避難してしまい、生活が困難になっている方、福祉施設そのものが津波や地震で破壊されている状況など、胸の痛む状況があります。
 しかし、こうした状況の下で「自立支援法」や介護保険制度が、「障害者」や高齢者を苦しめる状況があります。介助者が少なくなっても、新たに介助者を入れようとすると資格制度が邪魔をする。日割りの報酬制度は、被災した福祉施設の存続を困難にする。緊急に介助が必要だったとしても、認定調査をしないと介助を受けられない状況。
 被災地の「障害者」関係者の苦しみは、やはり現在の法体系がもたらしているのであり、被災地支援と「障害者」制度改革は一体で進めないといけない問題です。怒りネットでもそのような論議となりましたし、多くの「障害者」団体がそのように考えていると思います。
 
 総合福祉部会の法案に対する意見とりまとめが、今年8月に予定されています。震災の影響で論議が遅れたために9月になるかもしれませんが。このようなときに、上述の厚労省コメントに対する広範な批判が必要です。
 総合福祉法のためには障害者基本法の内容が重要であることは、いろいろな団体の共通の認識でしょう。JDFも「今後の国会における議論等によるさらなる改正を求めるものである」とその見解で述べています。そのためには、5月以降の運動方針がないといけないのですが、これがどこからも出てこない状況になっています。その原因は、障害者基本法改定案に対するさまざまな意見があるからだと言われます。
 確かに、この改定案は、現行法よりも改善されている部分はあります。他方、上述の厚労省コメントでは、現状の福祉の水準をさらに後退させる可能性があります。障害者基本法が権利法でもなく、「可能な限り」を5箇所も含む中では、こうした福祉の後退を防ぐことはできません。そこで、わたしは、厚労省コメントと基本法改定案を関連付けて批判する運動を展開すべきだと思うのです。
 ほとんどしがらみのない怒りネットがここで運動を切り開きましょう。







■カンパのお願い

 久しぶりに『怒りネット通信』を出しておいて、カンパのお願いをするのも心苦しいところなのですが、お読みいただければ幸いです。
 昨年の秋の過程では、状況の変化に合わせて4種類のビラを作り、国会議員への申し入れ書なども作って行動してきました。その結果、また持ち出し状態で活動を続けております。
 これからの1年を考えますと、障害者基本法の問題から総合福祉法をめぐる攻防が続きます。この中では、05年の時のように、怒りネットが前面に出なければならない状況も予想されます。
 この『怒りネット通信』46号の1週間後には、47号をお届けいたします。通信やビラも精力的に出して行きたいと思います。
 皆さんからのカンパをよろしくお願いします。

●被災地へのカンパもお願いします

 怒りネットとしては、被災地へのカンパを集め、「JDF東日本(東北関東)大震災被災障害者総合支援本部」に送ることにしました。4月段階で、8万円を送りました。ご協力いただいた皆さんありがとうございます。
 今後も集めて送りたいと思っておりますので、よろしくお願いします。
 
 怒りネットにお振込みいただく際には、怒りネットへのカンパと被災地へのカンパの区分が判るように、ご支持いただければ幸いです。

 よろしくお願いします。
 







10・29日比谷に1万人

木村 泰宏

 12月3日、臨時国会の最終日、障害者自立支援法の改正案は成立した。民主党の変質には本当に怒りが沸いた。本年春の、沖縄の普天間基地問題での大裏切りを想えば、今回の裏切りも驚く程のことはないが──。
 10・29大フォーラムは、今年も日比谷に1万人が結集した。反貧困ネットの湯浅誠氏の言葉を借りれば「広い日比谷の野外音楽堂を当たり前のように埋める毎年の障害者の活動、結集力」は大変な力になっている。この運動の力こそが、障害者制度改革の真の推進力であろう。登壇し発言した民主党の各議員(岡本・谷・梅村・石毛)は、自立支援法の改正法案について、一言も触れなかった。自分達が必要だと確信している良い法案であれば、堂々と言えるはずなのに、一言も触れられないのは、自らの不正義と、日比谷に結集したこの運動の力に怯え、恐れているからに他ならない。
 今、障害者の運動が熱い。この力に確信を持ち、ひるまず、たたかい続けよう。
 以下、10・29日比谷野外音楽堂での発言を紹介する。

【主催者挨拶・全日本ろうあ連盟理事長・石野氏】 昨年は、主催三団体の強い団結のもと1万人が結集した。長妻厚労大臣がこの壇上で、障害者自立支援法を廃止しより良い制度を作ると明言した。国政を動かした、障害者運動史に残るフォーラムとなった。違憲訴訟団は今年1月7日基本合意を交わし、4月21日、司法において勝利和解を実現させた。制度改革推進会議は6月7日第一次意見書をまとめ首相に提出し、6月29日閣議決定された。しかし、障害者自立支援法の現行の枠組みに固執する動きが依然とあり予断を許さない。もっと大きな運動が必要だ。

【厚労大臣政務官・岡本充功(みつのり)】障害者制度改革については、総理を本部長とする障害者制度改革推進本部が昨年12月に設置され、本年4月にはその下に当事者を中心とする障害者制度改革推進会議が置かれ、具体的な検討が進められている。この進会議等の議論を踏まえ、6月29日に『障害者制度改革の推進のための基本的な方向について』を閣議決定し政府として障害者制度改革の基本的な方針を示した。障害者総合福祉法について平成24年の通常国会への提出、そして25年8月までの施行を目指すとした。厚生労働省は障害者制度改革推進会議総合福祉部会での議論を踏まえ、この閣議決定に沿って障者総合福祉法の制定に向けた検討を進めていく。障害者施策の発展は、国民の理解を得ながら、透明性・公平性のある安定的な制度設計が不可欠。障害者が当たり前に地域で暮らせる環境・社会を作っていくには、一歩一歩の前進が肝要である。

〈※このあと「集会アピール」が読み上げられ、採択された。アピールでは、制度改革推進会議が、障害者権利条約の実現と自立支援法違憲訴訟の基本合意文書をベースに活発な議論をして画期的な第一次意見をまとめ、閣議決定に至ったこと、しかし5月には政権交代前に出されていた内容をベースにした自立支援法一部改正法案が、当事者抜きに進められ批判が集中したことが述べられ、あくまで前厚労大臣が約束した通り、自立支援法の廃止と、当事者の声が十分反映された新法の実現を求めた。また緊急課題は予算措置の中で具体化すべきであり、介護保険との統合への道を絶対に開いてはならないとし、15点にわたる要望を列挙した。
朗読後、採択されたアピール文を岡本政務官に直接渡す予定で、朗読には10分もかからなかったのだが、岡本政務官が「公務の都合」で既に退場したためできなかった〉

【民主党・谷博之・参議院議員】民主党の障害者制度改革担当プロジェクトチームの座長をしている。昨日も違憲訴訟を起こした元の原告団・弁護団と会合を持ち、重要な内容が指摘された。例えば、自立支援医療を低所得・非課税世帯は無料にすることを、訴訟の中で要請を受け約束もしたが、残念ながら22年度では福祉サービスの分しかできなかった。PTとして来年度の予算編成に向け自立支援医療に約200億の予算を獲得する努力をしていきたい。さらに制度改革推進会議や総合福祉部会の法的な位置づけをし、皆さん方と定期的な協議を行っていくことも前向きに積極的に検討したい。

【反貧困ネット・湯浅誠・事務局長】この広い日比谷の野外音楽堂を当たり前のように埋める毎年の障害者の活動、結集力に敬意を感じている。この運動の力が政府の中に制度改革推進会議を作らせたと思う。そういう場を実現できていない貧困や生活困窮者の活動に照らして、障害者運動の層の厚さを見る思いがする。運動の力が作った推進会議を実りあるものに進めていただきたい。制度の谷間の人たちは、障害施策でも労働市場でも福祉施策でも受け止められずに、その労働市場の周辺を出たり入ったりしている。こうした困難は障害の問題でもあり、その人たちに配慮できない雇用の場、職場の問題であり、その人たちの生存を支えられない福祉施策一般の問題が複合的に絡んでいる。だから私たちは障害や福祉や労働の各分野が手を取り合って、みんなが生活できる社会を求めていく必要があると思う。政権交代直後の、様々な分野での前のめりにつんのめるような勢いが、政治の場でも、運動の場でも若干落ちている。今はある意味では厳しい時期
だと思うが、そういうときこそ、様々なスタンスや分野や立場を超えて結びつくことが必要だと思う。

【竹下芳樹・違憲訴訟弁護団長】弁護団は、1月7日の基本合意を決してゴールだとは思っていない。訴訟は、私たちの願いの裁判の場における形である。だから1月7日の基本合意は、これから国の制度づくりに生かしていく出発点。ところが、古いものにこだわり、もう一度障害者自立支援法の生き残りを図ろうという政治の力がある。この力をもう一度つぶし、この考え方を残そうとする勢力を生き返らせないよう、これからも運動していく必要がある。裁判は終わったが闘いは終わっていない。古い勢力に負けないのエネルギーを示そう。私たちの弁護団の役割は、新しい法律ができるまで続く。

【民主党・梅村聡・参議院議員】参議院の厚労委員という立場と、民主党の団体対応の委員という立場にある。昨年長妻前大臣がこの場で、自立支援法の廃止を明言した。昨年より後退したのではないかとの声もあるが、長妻前大臣が表明した廃止も、新法の制定の議論も着実に進めることは全く変っていない。これまでは政府とプロジェクトチームが平走状態だったが、PTと政府は一体で進めていくことを約束する。勝手に党が独走することはなく、政府と一体であることを誓う。

【民主党・石毛えい子・衆議院議員】去年の今ごろを思い出す。民主党は自立支援法を廃止して新しい総合福祉法を作る約束をした。それまでの期間にも色々課題がある。怒りや不満もあると思うが、新しい法律を作るという方向性は変わっていない。


【共産党・高橋千鶴子・衆議院議員】党の厚労部会長を務めている。昨年は歴史的集会だった。1月には基本合意を結び、制度改革推進会議が持たれ、新法への、当事者を参加させた取り組みが始まったはず。しかし通常国会で障害者自立支援法改正案が突如として出された。この法案は、「私たちのことを私たち抜きに決めないで」という大原則を踏みにじり、今の自立支援法を延命させるものである。突然の闘いにもかかわらず、全国から当事者が連日国会に押しかけ、廃案に追い込んだ。しかし、また同じことを繰り返そうとしている。何としても食い止めなければならない。3つ述べたい。1つは、団結を崩さないこと。一部の要求の取り込みで、運動が分断されてはならない。2つめは、障害者問題を政争の具にさせないこと。先の国会では労働者派遣法の採決との兼ね合いだった。他の
法案との取引で議題に上らせてはならない。3つ目に、医療を含め、応益負担を速やかに撤廃するなど、予算措置でできることはすべき。例えば新制度を検討中なのに、2012年3月までに新事業体系への移行を急ぐ必要はない。緊急に小規模作業所と地域活動支援センターへの支援を行うべき。那須塩原の国立視力障害センターや伊東の重度障害者リハビリセンターの廃止統合は逆行である。精神障害者への交通運賃割引を他の障害と同じように実現すること、障害のある子供達は児童福祉法の中で支援を強めるべき。また福祉施設の設置規準の条例委任など、国の責任を投げ捨てる地域主権改革は反対である。そして障害者制度改革推進会議を法的に根拠付けなければならない。

【社民党・福島みずほ・参議院議員】去年の12月に対策本部ができた。1月に制度改革推進会議をスタートさせた。私はその担当大臣だったので、「あの時日本の障害者政策が変った」といわれるよう実現していきたい。今本当に頑張り時。障害者制度改革推進会議を応援して、内閣法制局を説得して、私たちが望む障害者基本法の改正法案を実現しよう。そして障害者権利条約を批准するためには障害者差別禁止法を作りたい。かつてない形で内閣のど真ん中に制度改革推進会議をつくり、当事者・有識者を送り込んでいる。だからこそ今大同団結してこの三つの法律を成立させていこう。障害者自立支援法の改正法案は邪魔である。これにエネルギーを使うより3つの法律を作って障害者の政策を進めたい。私は障害者制度改革推進会議の生みの親だと思っているので、育ての親と成立のたみにも皆さんと一緒にやりたい。

【新党日本・田中康夫・衆議院議員】冤罪になった村木厚子さん。冤罪はとんでもない話だが、障害者自立支援法作成の担当が彼女である。組織の一員だから本意ではないかも知れないが─。その彼女が今内閣府に戻って待機児童の問題を扱っている。それも大事なことだが、私は村木さんに障害者自立支援法を真の意味での改正の担当者になって欲しい。冤罪はけしからんがそれを乗り越えた人が真の意味で人間のために働いていただきたい。

【制度改革推進会議・室長・東俊祐弁護士】推進会議は、今年の1月から1回4時間、多い時には月に4回、既に22回の議論を行ってきた。6月には4項目の当面の重点課題まとめ、また第1次意見をまとめ提出した。政府はこれをベースに閣議決定した。閣議決定は①基礎的な課題、②横断的な課題、③11に渡る個別分野の大きな3つ枠組みの中でそれぞれの工程表が作られている。②の横断的な課題には、障害者基本法の改正、差別禁止法の制定、総合福祉法の制定の3つの法律が問題になっている。基本法改正については「権利」という観点、「監視の機関」を盛り込む。差別禁止法では「合理的配慮」を日本の法制度に根付かせていく。総合福祉法では制度の谷間のないシステム。こうした議論がなされている。制度改革推進の、残り4年の期間の中で、来年には障害者基本法の改正案、再来年には新しい総合福祉法、翌25年には差別禁止法を出すという工程表ができている。障害者権利条約については、「ナッシング・アバウト・アス・ウィズアウト・アス」というスローガンが当事者の声を反映させる大きな力になった。国々の違い、障害種別の違いという二つの大きなハードル乗り越えるために、徹底的に話し合い、違いは違いとして認めながら共通項を模索して統一的な見解を出していく戦略をとった。この努力がスローガンに力を与えた。権利条約が採択され、舞台はニューヨークから各国に移っている。今、日本国内で一番大事なのは小異を捨てた大同団結しかない。


【全日本ろうあ連盟・小中栄一氏】関係6団体一緒で、聴覚障害者制度改革推進中央本部を立ち上げた。目的はコミュニケーション法の制定である。1つは、かつて手話は「手まね」と言って偏見や差別を受けていたが、今は言語として認められている。いつでもどこでも手話が使え、会話ができる社会を作っていきたい。2つめ、音声だけではない情報提供社会を作っていきたい。3番目は、コミュニケーションは社会参加であるから無料であるべきだと法律に明記して欲しい。4番目は手話通訳の設置・派遣、現在の厚生労働省の通達による不十分な方法ではなく、法律で定めてほしい。こうした内容の運動を展開している。私たちの運動をまとめたパンフレットが「ウィ・ラブ・コミュニケーション」。25年前の運動で120万部普及した「アイ・ラブ・コミュニケーション」を発展させたもの。このパンフの普及と、あわせて進めている運動が、情報コミュニケーションの法整備を求める署名。120万筆を目標にしている。私たちは昔仲間がいなくて、手話もわからないという状態で孤立していた。しかし今は沢山の仲間がいる。手話も誇りを持って使うことができる。仲間と一緒にろうあ者であるという誇りを持っている。障害者として生きていく誇りを、運動を後退させないように実現していきたい。

【全国大行動実行委・横山輝久氏】制度の谷間にある人達と共に自立支援法を粉砕する運動を作り上げていくことが大行動としての課題。私は40年間、介助保障問題をやってきた。かつて厚生省の次官の、国民的合意・国民的理解と言う話を聞いて、僕らはずっと差別されてきた、国民的合意はあんたらの仕事だろと思った。僕ら障害者一人ひとりが生き生きとして、自己主張していけば、地域主権のことや制度改革推進会議も頑張れると思う。地域移行は重要。好き好んで施設や病院にいく人はいない。地域で生きていく、みんなで協力して支えあっていく、そういう運動を一人ひとりが自ら作り上げていくことが今大事ではないかと思う。


【日本障害者者協議会(JD)・大田修平氏】障害者自立支援法に替わる新法の制定と、障害者基本法の改正、障害者差別禁止法の制定という、かつてない障害者制度改革向けた機運が当事者参加のもとに今進められている。日本は先進国の中で障害者関連予算が極めて低い。この状況を改善しなければならない。自立支援法の応益負担で悔しい時代を強いられてきた。今総合福祉部会では権利条約の考え方に則り新法づくりを進め、4点に渡る当面の課題をまとめている。自立支援医療の問題、制度の谷間で苦しむ人達のサービス提供などは今すぐ予算措置で是正させたい。日本では未だに親子心中寸前の状況の人達がいっぱいいる。しかし運動の力で政治を動かしていこう。

【日本難病疾病団体協議会・NPO繊維筋痛症友の会・橋本氏】繊維筋痛症、あまり良く知られていない病気だが、日本には200万人、50人に一人いる。ある日突然身体が痛くなる病気。難しい病気なので、診断できる病院は少ししかなく、医師も不足している。原因がわからず「気のせい」と言われ、たらい回しにされる。使える薬はほとんどなく、効く薬も保険の対象外。繊維筋痛症は難病指定されていないので補助が出ない。見た目には障害者と判断されず、手帳を取ることが容易でない。難病の人たちが生活できるように、経済的に助けてほしい。医療費、ホームヘルプサービス、障害者手帳、以上の点を求めたい。

【全国精神病者集団・関口氏】心身喪失者等医療観察法を許すなネットワークの代表でもある。新しい総合福祉法は、精神保健福祉法の改正でなければならない。国策医療から生等な人間関係を築く必要がある。強制入院の権限は厳しく制限する必要がある。つまり強活者の医療に変えるためには、医療基本法が必要。
障害者権利条約の目的は、精神障害者が施策の対象ではなく権利の対象として扱われること。医者の権力を減少させ、患者との対等な人間関係を築く必要がある。強制入院の権限は厳しく制限する必要がある。つまり強制医療の原則禁止が必要。
人身の自由はすべての自由の根幹。監禁はとんでもないこと。治療を続けていくには医者と患者の信頼関係が不可欠。信頼関係が全くないのが医療観察法。刑罰は司法に、治療は医療にとすべき。たった2週間の傷害で2年の入院、3年の保護観察、こんなことは許されない。刑務所長と病院の院長が同じのはおかしい。ベッド数を3分の1にし、診療報酬を他課との差別をなくして3倍にし、人員配置、特に医師の数を増やすことが必要。

【障害乳幼児の療育に応益負担を持ち込ませない会・中村たか子氏】「この子は3年待てない」と主張して、自立支援法改正法案の早期成立を主張している人達がいる。「待てない」の意味が全然違う。子供も親もこの自立支援法の改正法案でさらに夢が奪われる。いくら負担が軽減されても、応益負担の制度が残っている限り負担は残る。契約制度は自分で施設を探さなければならないが、場所そのものがない。全国どこでも療育が受けられるよう施設を作る、国や自治体の姿勢が求められている。責任を放棄させてはいけない。今、国が検討している「子供子育て新システム」は、自立支援法と同じ応益負担・契約制度、日払いで、具体化されたら、障害児は保育所からもはじき出されてしまう。保育分野の人達との連携も必要。

知的障害のある子供の入所施設で働いている上田という。子供の入所施設にとって契約制度は弊害しかない。保護者が契約したということで、行政が子供達に責任を取らなくなった。保護者の金銭負担も大幅に増えた。利用料を払うために仕事増やして月に一度の面会ができなくなった父親がいる。小遣いがもらえない子供も出てきた。国の施設規準は劣悪で子供達とゆっくり話をすることもできない状況だ。現場の声を推進会議に伝えて新法に反映させたい。

【大阪障害フォーラム・楠としお氏】大阪では一昨年、権利条約の批准を求める地域フォーラムが行われ府下の30団体が結集した。去年、正式に大阪障害フォーラムをつくった。推進会議に8つの大阪からの提言をまとめたので、紹介したい。1つ目は地域移行。精神病院・施設に本人の意思に反して長期間閉じ込められている人を地域に帰していく取り組み。2つ目はグループホームケア・ホームの取り組み。誰かに与えられたホームではなく、自ら積極的に住み易いグループホームを作っていきたい。3点目は多様な日中活動の場を絶対に潰さない、閉鎖させないという取り組み。4つ目は就労支援の取り組み。企業と障害当事者をつなぐ、就労支援ワーカー、ジョブサポーターをもっと増やして一般就労への道を切り開いていきたい。5つ目は、精神障害者が地域で安心して暮らせる運動を強めたい。6つ目はコミュニケーション法の制定を目指す運動に連帯していきたい。7つ目、不十分な成年後見制度を改めていく。そして最後は教育。本人や保護者の意見を最重点に、多様な選択肢をそれぞれ充実させていく。以上8つの取り組みを大阪から推進会議に反映させていきたい。

【沖縄ピープルファーストハイビスカス・大川はじめ氏】6年前から関わっている「カリタスの家」虐待事件や、広島県の福山成年後見人事件、そして奈良の大橋製作所事件など様々な事件に関わっている。障害者虐待を無くそうと言っている中、被害が続いているのだろう。あと、沖縄県では障害者の条例作りを行っている。インクルーシブな社会を作ろう、どんな障害を持っていても、一緒に暮らしていけるようにと活動をしている。様々な障害の人達と一緒に活動している。難病者の方々もいる。

【尾上氏】障害者権利条約に基づく制度改革に大きな期待を持ち、地域・現場で自ら改革に取り組むことが語られた。障害種別を超え、あるいは団体の枠を取っ払って、立場を超えて、取り組んできたこのフォーラムが制度改革に結実し始めている。推進会議の動きを面白くないと思っている人達も厳然といるが、私たちの声、運動が推進会議を動かす。私たちの声なしには、この制度改革推進会議や制度改革も進まない。



【司会】この「10・31」は今年で5回目。あの2005年の10月31日を忘れまいというのがこの「10・31」。今年は非常に大事な時期になっている。臨時国会が12月3日までといわれているが、自立支援法の一部法改正、予断を許さない。現段階では法案を出すとも出さないとも言っていない。この法律は改正ではなく、現行の自立支援法に根っこを下ろすような意味を含んでいる。絶対に出させてはいけない。そういう意味のある今日の10・29である。一番信用できるのは、運動ということ、これを異口同音にいわれた。本物の権利、本物の新法は、与えられるものではなく獲得してこそ本物といえる。運動は団結が必要。団結の基本は、違った意見に耳を傾け共通点を見出すこと。運動を大事にしていこう。

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2010年10月18日 (月)

怒りネット通信 No.45

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2010年10月28日発行

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10月29日日比谷大フォーラムに集まろう!

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もくじ
・第二次鈴木行政訴訟に勝利!
・10月29日日比谷大フォーラムに集まろう!
・心神喪失等医療観察法の問題点

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第二次鈴木行政訴訟に勝利!
―大田区による移動介護支給量削減の撤回を勝ち取りました-
鈴木敬治

7月28日勝利判決

 7月28日は東京地裁103号法廷で画期的な判決が言い渡されました。判決で、『考慮すべき事項を考慮しないことにより社会通念に照らし妥当性を欠き、裁量権の範囲を超えたものとして、取り消すべき違法があるといわなければならない。従って、原告の請求は理由がある。』とし、被告大田区の処分の違法を認定して取り消したのです。東京都の不服審査請求手続きについて、および国賠については極めて遺憾ながら却下されました(よって完全勝利には至らずです)。メインである対大田区では全面勝訴の判決主文でした。マスコミも注目し、NHKニュースで当日朝も含め報道され、また翌日の新聞各紙で「支給量削減は違法」の記事が掲載されました。

僕の率直な気持ち

 僕は判決を言い渡された時、「ヤッター!」と心の中で叫びました(実は、判決日が近づくにつれ不安な気持ちが高まって来ていました。前夜は、準備を全部終えてお酒も少し飲みましたが、いろいろ考えているとなかなか寝付けませんでした)。その後、傍聴に駆けつけてくれた60名ぐらいの方一人一人から「お祝い」の声を口々にかけてもらい、喜びが徐々にこみ上げて来て涙が止まりませんでした。こんな嬉しいことは僕のこれまでの人生の中でそう何回もあることではありません。
 僕は、この勝利判決は決して僕一人の力によるものではなく、全国の障害者や地域の労働者の心底からの支え、また弁護団の「身銭を切った」「同志」としてのがんばりの力によってはじめて勝ち取られた「戦果」だと思います。そして、障害者運動の長年の積み重ねの上に勝ち取った判決だと思います。ですから、僕はこの喜びをそのような多くの人々といっしょにかみしめたいと思います。皆さまに勝訴と言う最上の「お礼」ができて本当にうれしいです。

判決の意義

 現在、全国各地で障害者福祉施策における公的支援(自立支援給付での居宅介護、重度訪問介護その他の支援・地域生活支援事業での移動介護)において、自治体では要綱などでそれぞれ「月何時間を標準」などと称して支給量を制限している実態があります。本判決は、介護時間の安易な制限は違法になることを明らかにし、個々の障害者の実状、必要性を勘案して支給量を保障するべき法的責任が行政にあることを明らかにしたものとして大きな意義があると思います。また、障害福祉施策における公的介護の権利を巡る訴訟において、初の原告障害者側の勝訴判決でもあると言えます。その意味で、他の自治体に対する波及力―闘いの「武器」として大いに活用すべき位置を持っていると言えるでしょう。

大田区のプレス発表

 大田区側は、控訴期限ギリギリの8月11日に控訴断念をプレス発表しました。しかし、その中で述べている「控訴しない理由」は怒りなくして読めない代物です。そこでは、大田区は判決文から①『要綱の定め自体に違法性はない』『標準時間を32時間としたことについて一定の合理性を肯認し得る』、②支給量の認定に必要な資料について『本件は、辛うじて認定が可能となった例外的事例』という箇所を引用しています。まったく自分たちに都合の良い一部分のみを引用してきたもので往生際の悪い居直りそのものです。しかし、判決の趣旨はまったく違います。判決文ではっきりと要綱については『32時間が上限としてではなく・・・・・所要の加算を前提とする標準として運用される限りにおいて・・・・・一定の合理性を公認しえるものである』と明示しているのです。判決の重点、趣旨は、あくまで『所要の加算を前提とする』に置かれているのです。まったく判決の趣旨のご都合主義的な捻じ曲げとしか言いようがありません。
 そして何より大田区が長年違法状態を続けて来て僕に対して苦痛を強いてきた現実に対する一片の謝罪もなかったことです。本当に怒りが湧いてきます。はっきり言って、大田区の障害者に対する姿勢自体は全然変わっていないのです。大田区は、裁判所にこんなにはっきりと指弾されているのにもかかわらず、ここに至っても責任逃れにきゅうきゅうとしているだけです。

僕たちの記者会見

 大田区のプレス発表の翌日、僕たちは記者会見を行いました。僕たちとしては、東京都および国賠の敗訴はまったく不当であり悔しいけど、メインの移動介護量をめぐる訴えについては基本的に勝訴であることから控訴はしないことにしました(8月12日判決確定)。なお、弁護士の方からは膨大な判決文の中には行政への配慮からか、大田区が引用している箇所以外にも問題視すべき箇所が結構あると指摘されています。今後の検討課題になると思います。
 会見の中で僕は、大田区のプレス発表に対し「僕の件を『例外的事例』と言っていましたが、僕は僕一人のために闘ってきたのではなく障害者みんなの為に闘って来たのです。要綱をこのまま続けようとしているのもおかしいです。大田区は障害者の生活のことを分かってないのです。僕はこれからも要綱を撤廃させ、大田区の障害者に対する姿勢を根本的に改めさせるための話し合いを続けて行きたいと思います。」と述べました。

※判決確定後、8月23日付けでようやく「判決の趣旨にのっとり」と支給量決定の通知がありました。

僕のこれからの闘い
 僕はこれで闘いが終わったのではなく、これからも闘いを続けて行きます。先に述べたように大田区とはいまだ「決着」はついていないのです。話し合い-運動を続けて行くつもりです。
 僕は今回の裁判闘争を振り返って、やはり障害者自身がはっきりと社会に対して主張することが大切だと思いました。そうでないと世の中は変わりません。
 これからも、更に地域―全国の障害者の仲間、労働組合や市民の仲間と結びついてゆきたいと思います。本当にありがとうございました。これまでは支援されることばかりでしたが、これからは身体の許す限りどんどん障害者や労働者の闘いを支援して行きたいと思います。よろしく。

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◇地域で暮らす権利を勝ち取ろう!
★福祉きりすてはもう許さない!
★10月29日日比谷大フォーラムに結集しよう!
古賀 典夫

 わたしたちは今、重大な岐路にたっています。「障害者自立支援法」を完全に廃止し、地域で暮らす権利を獲得するのか、「地域主権改革」の名のもとに福祉きりすてと国の生存権保障の義務を投げ捨てる動きに飲み込まれていくのか。この生きるか死ぬかの岐路にいると思います。

 わたしたちは、「自立支援法」が成立したあの05年10月31日の悔しさを決して忘れることはできません。心中などで失われた人々の命をけっして忘れません。
 この状況を逆転していく大きな一歩をわたしたちは、06年10月31日の1万5千人が結集した日比谷の大フォーラムで切り開きました。前日まで「自立支援法の見直しの必要はない」としていた厚労省を、大フォーラムの一日後には「見直しを検討する」といわざるを得ないところに追い込んだのです。

 この一年の状況を決するのは、各地での運動を積み重ねながら、どれだけの人々が10月29日の日比谷大フォーラムに結集するかにかかっていると言えます。
今の状況を考えれば、06年を超える結集が必要なのではないでしょうか。全力で共に成功させましょう。

★「自立支援法」改定案をめぐる動き

 自民党や公明党関係者からは、今の臨時国会で「自立支援法」改定案を成立させたい、との意向が示されています。
 他方民主党の「障がい者政策プロジェクトチーム(座長=谷博之・参議院議員)」は、「障害者」団体からヒアリングを行い、この臨時国会でどうするか検討しています。『福祉新聞』2499号は次のように伝えています。
 「週1回ペースでヒアリングを続け、自立支援法改正案を議員立法で臨時国会に提出するかしないか、改正しない場合は現状にどう対応するか、改正する場合はどのような内容の法案にするか、11月ごろまでに判断する方針だ。」
 ここから読み取るべきことは、やはり10月29日の日比谷にどれだけ「自立支援法」撤廃派が集まるか様子を見ている、ということではないでしょうか。この臨時国会は、
12月3日までとされています。11月に法案を提出すれば、通過させる時間は十分にあるのです。
 日比谷への大結集を実現して、法案提出をなんとしてもあきらめさせなければなりません。 

★民主党の「地域主権戦略」とは

 この点についてはすでに『怒りネット通信』44号において、高見さんが指摘されていますが、ここで改めてまとめてみたいと思います。
 この「地域主権戦略会議」の設置を決定したのは昨年11月17日の閣議でした。そのときに決められた「地域主権戦略会議の設置について」という文章では、その目的を次の2点としています。
①「地域のことは地域に住む住民が決める「地域主権」を早期に確立する」こと②「地方分権改革推進委員会の勧告を踏まえた施策を実施する」こと

 ① については、民主党の沖縄に対する姿勢から、それがまやかしであることが判ります。沖縄県民、県議会、名護市民が新基地建設に反対を表明しても、あくまで基地押しつけを行おうとしているのですから。
 では具体的な中身にかかわる②は、何を推し進めようとしているのでしょうか?

 「地方分権改革推進委員会」は、自民党安倍内閣によって2007年4月に発足しました。この委員会の設置根拠となっていたのが地方分権改革推進法です。
この法律は、今年3月に失効しましたので、この委員会も現在は存続していません。昨年、民主党政権に変わっても、この委員会の委員は自民党政権の時から変わらないメンバーで続けられ、第3次と第4次の勧告を出しています。

 民主党は「地域主権改革」を「一丁目一番地」、すなわち、民主党政権にとってもっとも根本的な政策である、としています。ところが、その政策の具体的な中身は、自民党政権の下で目指されていたものと変わらないものなのです。
 07年5月30日に、地方分権推進委員会は、「地方分権改革推進にあたっての基本的な考え方」を発表します。その中身は確かに今年6月に出された「地域主権大綱」に引き継がれていることが判ります。
 安倍内閣は、小泉改革を引き継ぎ、その新自由主義政策をより徹底しようとしていました。そのためこの「考え方」においても、「自己決定・自己責任」、「受益と負担の明確化」、「官から民へ」という言葉が踊ります。これらは、「自立支援法」も含めた福祉きりすて政策を推し進めてきた概念であることをわたしたちはけっして忘れません。
 そして、地方分権改革とは、「地方自治を担うべき地方政府」の確立を目指すものであると位置づけ、さらに、「将来の道州制の本格的な導入の道筋をつけるもの」とされています。そのためには、「国が本来やるべき仕事のみに専念」するとして、国と地方との役割分担が強調されます。
 「住民生活に直結した行政分野(まちづくり、社会保障など)において、徹底した役割分担の見直し」という表現があるのですが、社会保障や街づくりは国が本来やるべき仕事ではないと言いたいようです。この考え方は、「社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進」を国の義務としている憲法第二十五条とは相容れません。安倍内閣は改憲を目指していましたが、民主党もこうした考えを受け継ぐということでしょうか。

 民主党政府が今年の通常国会に提出した「地域主権推進一括法案」は、衆議院で継続審議となり、総務委員会に付託されています。「自立支援法」など福祉関係法の改悪も含まれています。施設・設備・人員・運営の基準を、都道府県の条例に委任しようとするもので、地域間格差をますます広げる内容です。
 6月に出された「地域主権戦略大綱」では、福祉や義務教育関係の予算を一括交付金の対象とすることが打ち出されています。一括交付金は、来年度から実施するとされており、段階的にその範囲を拡大していくとされています。そして、そのための法案を来年の通常国会に提出するとしています。
 仮に、国がこれまで出してきた予算を減らさないとしても、地域間格差は大きく開くでしょう。今でも都市部から離れれば、制度はあっても実際に福祉を受けられない状態が起こっています。そうした地域では、「障害者」などの運動も強くはありません。

 それどころか、「地域主権戦略」は、予算を減らすことが前提とされていると言わなければなりません。昨年12月14日に開かれた「地域主権戦略会議」では、

・「お金がここまで足りなくなってしまっているような状況の中で、必然的にやらざるを得ない」(鳩山、当時の首相)
・「中央集権の統治機構で来たために非常に高コストな社会構造になっています」
(平野、当時の官房長官)
などの発言が行われています。
 他方、この「大綱」では、「全国画一的な保険・現金給付に対するもの」などは、「一括交付金化の対象外とする」と述べられています。生活保護費や医療保険、介護保険、年金などがこれに当たると思われます。

 こうした動きの中で、「障害者も介護保険制度に入ったほうが安全」などというキャンペーンも行われる可能性があり、注意が必要です。何よりも確認しておかないといけないのは、これらが一括交付金の対象外とされるのも当面に過ぎないということです。この9月に行われた民主党の代表選の過程で小沢議員が発表した政策集では、国民健康保険、介護保険、生活保護制度なども含めて「社会保障関係費」として一括交付しようとする構想が記されています。そして、一括交付という形にすれば、国の補助金総額の7割や5割で、自治体は運営していける、と主張しています。
 いずれにしても、社会保障全体がきりすてられる結果になることは間違いありません。社会保障を充実させる国の責任こそ明確にさせなければならないのです。

 そればかりではありません。07年の「考え方」に書かれている税源委譲という言葉は、今年の「大綱」ではなくなっています。それに変わって「地方消費税の充実」や「課税自主権の拡大」という増税路線が記されているのです。この20年あまり、高額の所得については、個人についても法人についても減税してきました。法人税の減税はさらなる推進が語られています。経済的に苦しい庶民に、ますます税の負担を負わせる方向です。
 社会保障をきりすてる「地域主権」関連法に対して、わたしたちは反対を突きつけていかなければなりません。この秋の臨時国会と来年の通常国会は、これらの法案との闘いです。やはり、日比谷の大結集が大きな意味を持ちます。

★菅内閣は、「障害者制度改革推進会議」の第1次意見をありのままに受け止めよ

 「障害者制度改革推進会議」の「障害者制度改革の推進のための基本的な方向(第一次意見)につきましては、『怒りネット通信』44号で若干触れましたが、これを受けた菅内閣の閣議決定の内容は、第1次意見の重要な部分を省いています。閣議決定は、この第1次意見を「最大限に尊重」としながら、実はいかに値切るかが狙われているということだと思います。ここでは、第1次意見の何が省かれているのかについて、主なものをポイント的に紹介します。

●総論的な部分
①「障害者」が政策の決定過程に参加することの重要さ、
②「地域において自立した生活を営む権利」の権利という言葉、
③「24時間介助等を含む支援制度の構築」
④「制度の構築に当たっては、地域間格差が生じないよう十分に留意する」こと、

●労働、雇用について
①「法定雇用率の水準」、「特例子会社」、「障害者雇用納付金制度(納付金の額、助成金の対象と期間等)」が検討対象から外されていること、
② 低賃金除外制度について、検討対象から外している。

●教育について
①「障害の有無にかかわらず、すべての子どもは地域の小・中学校に就学し、かつ通常の学級に在籍することを原則」とすること
②「学校において適切な教育を受けることを保障するためには、教育内容・方法の工夫、学習評価の在り方の見直し、教員の加配、通訳・介助者等の配置、施設・設備の整備、拡大文字・点字等の用意等の必要な合理的配慮と支援が不可欠」であるということ。

●所得保障について
 住宅家賃の減免が検討対象から外されている。

●医療について
①「精神保健福祉法の抜本的な改正」と「精神医療の一般医療体系への編入」

② 第1次意見では、「障害者」が必要とする医療全般の応能負担化の検討を求めているのに対し、閣議決定では、「自立支援医療」のみを検討対象にしている。
③ 障害者や児童に対する受診拒否の実態を把握し、改善のための措置を講ずる」こと

●「障害児支援」
 地域において一般児童と共に育ち合うこと

●「虐待防止」について
 第1次意見では、「虐待行為者の範囲」として、「親族を含む介助者、福祉従事者、事業所等の使用者(従業員を含む。)」、「学校や精神科を始めとする病院等における関係者」をあげている。
 閣議決定では、「速やかに必要な検討を行う」としているのみ。

●「情報アクセス・コミュニケーション保障」について
 コミュニケーション保障の権利など。

●「政治参加」について
 「選挙権、被選挙権に関する成年被後見人の欠格条項については、後見人が付いているかどうかで差別化する人権侵害の側面が強いことから、廃止も含め、その在り方を検討する」こと

●「司法手続」について
 「被疑者取調べの全面可視化」、「手続的な保障がないままに自白がなされた場合には、証拠として採用されないような仕組み」、「非拘禁中の『障害者』への適切な配慮」、裁判傍聴、逸失利益が低く出る問題、などの検討
 また、文科省は、「推進会議」のヒアリングにおいて、現在の「特別支援教育」が「日本型インクルーシブ教育」だなどと発言しています。
 こうした政府の姿勢を強力に正していくためにも、10月29日の大結集を実現しましょう。

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心神喪失等医療観察法の問題点
高見元博

報道されたケース

 最近、立て続けに医療観察法に関する大きな報道が二つあった。一つ目は、8月4日、共同通信。「医療観察法で初の重大再犯/2人殺害容疑で逮捕の男」というもの。医療観察法で入院処遇されていた人が退院後に殺人事件を起こしたという。制度の有効性が問われるケースだ。
 この人は45歳、大阪市で5月、男性2人を刺殺したとして殺人容疑で逮捕されたが、事件の約3カ月半前まで、医療観察法の入院治療を受けていた。2005年の施行以来、医療観察法対象者が重大な再犯の容疑で逮捕されたケースが明らかになったのは初めてだという。この人は08年、大阪市西淀川区のコンビニで客を殴った傷害容疑で逮捕されたが起訴されず、同法対象者として佐賀県内の保安施設(肥前精神医療センターのことだと思う)に入院。その後大阪府内の病院に移り、ことし1月末に裁判所の判断で「処遇終了」となり退院、一般の精神科に通院していた。記事には書いていないが、観察法による強制通院と思われる。

 この人は1997年に全日空機内で乗員に刃物を突き付けたとしてハイジャック防止法違反容疑で逮捕されたが「心神喪失状態だった」と不起訴になった。98年には福岡県での殺人事件で福岡地裁が限定的な責任能力を認定。実刑が確定し服役した。

 医療観察法は、殺人や放火など重大事件の容疑者や被告が心神喪失・耗弱を理由に不起訴処分や無罪となったケースで、検察官の申し立てで裁判官と精神科医による合議の審判を開き、保安施設への強制入院や指定病院への強制通院を命令できる手続きを定めた法律。2001年に大阪教育大付属池田小で児童8人が殺害された事件を口実に成立、05年7月に施行された。「重大な事件」というが全治5日間の傷害事件にも適用されている。

医療観察法の無効性

 医療観察法の推進派は、同法により、「重大な事件を繰り返す『精神障害者』に重厚な医療を施して再犯を防ぐことができる」と言っていた。裏側にあるのは「再犯可能性のない100人を拘禁しても一つの事件が防げればよい」という理屈だ。もっとも表立ってはそこまで言わないが。今までに約1000人が入院処遇とされてきたが、それで1000件の事件が防げたとは誰も言わないだろう。同法国会審議の過程で、「再犯可能性のない多数の人が拘禁される」という事実が明らかになっていた。それでも同法を成立させた理屈が、「重大事件を繰り返す『精神障害者』が実際にいることにどう対応するのか」というものだった。「100人の無実の人を拘禁してでも一つの事件を防がねばならない」という理屈と言われても仕方のない論争だったと思う。
 

ところが今回明らかになったことは、医療観察法では一つの重大事件を防ぐことはできないということだ。1000人の無実の人は何故に拘禁されたのか、まったく無意味に拘禁されてきたということではないか。

 推進派の、日弁連医療観察法部会事務局長の伊賀興一は、「法律は有効だが、誤診があった」と言っている。なんと無責任な言い分か。少し長くなるが記事の全文を引用する。「医療観察法は国が精神科医療に直接責任を持つ初めての制度。その部分で評価すべきで、基本的に有効に機能していると考えている。ただ、今回は医療観察法に乗せるかどうか判断する際、人格の偏りを病気と誤診してしまったケースではないか。入院中の医療や退院の判断に問題があったとの議論にはならないだろう。そもそも裁判所は「責任能力あり」と判断すべきだった。ただ、刑務所に行っても再犯の防止にはつながらず、今回のようなケースに対応するために別の制度の整備を検討する必要がある。」と言うのだ。
 『この人は「人格障害」であり、「精神障害者」ではなく、心神喪失ではなかった。そこに誤診があり、裁判所が医療観察法に乗せたことが間違いだ』と言う意味だ。しかも、新たな保安処分の必要性にまで言及している。この人が国会での論争過程で推進派が示した「重大な事件を繰り返す『精神障害者』」その人であったのかどうかは不明だ。しかし、明らかにこのようなケースがあるから医療観察法は必要だと言ってきたのは間違いない。そのケースに対して同法が無効だと分かったら、今度は刑務所出所者に対する保安処分が必要だというケースにしてしまう。なんとご都合主義な言い分であることか。

 無効な法律は廃止しかないことを示す事件だ。

もう一つの報道

 「心神喪失被告を16年拘置、目にはし刺し死亡」という見出しの事件だ。読売と朝日と東京新聞が報じた。8月8日の事件だ。読売を引用する。
 「精神鑑定で心神喪失と診断され公判が停止された後も、16年近く千葉刑務所(千葉市若葉区)で拘置されていた40歳代の男性被告が死亡したことがわかった。自傷行為とみられる。同刑務所が9日発表した。発表によると、被告は7月30日午前0時過ぎ、両目にはしが刺さった状態で発見され、8日に病院で死亡した。はしは木製で被告のものだった。
 千葉地検などによると、被告は1992年(中略)、強盗殺人罪で起訴された。
精神鑑定で心神喪失とされ、千葉地裁松戸支部は94年12月に公判停止を決定したが、その後も同刑務所に拘置された。(中略) 男性の元弁護人は「裁判所がなぜ放置してきたのかわからない。鑑定書で自傷他害の恐れがあると指摘されていた通りになったのだから裁判所に責任があるのではないか」と話している。(後略)」
 なんと惨い事件であることか。医療観察法に乗せていたらどうかという問題ではなく、「精神障害者」を生かすも殺すも法務省のしたい放題だとということを示す事件だ。明らかに医療が必要なケースだ。もともと刑務所での「精神障害者」への医療はまったく保障されていない。原則無罪推定であるはずの未決の人を拘禁する拘置所でさえ、医療は保障されていない。以前は「精神障害者」が逮捕された場合、外から薬を差し入れすることができた。ところが最近ではそれはできなくなっている。拘置所の医者が必要と認めた場合に処方されるが、必要な量は出ないことが多い。この人の場合は未決で刑務所に拘禁されていたのだから拘置所と同じことになる。
 ずいぶん昔のことになるが、大阪拘置所で闘う「精神障害者」が殺された事件を思い出す。事件を起こして大阪拘置所に収監された「精神障害者」の鈴木さんが、拘置所の医師による反医療行為によって殺された事件だ。遺族とともに拘置所の責任を問う賠償訴訟を起こして勝利した。賠償を取ったからといって亡くなった人が生き返るわけではないが、少なくとも責任を問うことはできた。今回の事件も同様の問題だ。

医療観察法病棟の実態

 今年になって私たちの発行した「保安処分病棟からの生還」という冊子によって、保安病棟の内部の実態を初めて明らかにすることができた。

 この冊子は、今年(2010年)の1月に、3ヶ月前に保安病棟を退院したという人から私に連絡が入ったことから始まる。過去に自殺者が出たことのある保安病棟で、この方自身が自殺未遂を繰り返すほど酷い待遇だったことを告発するものだった。詳しくは同書を読んでほしい。(郵便振替にて00960-1-140519共生舎に400円を振り込んで御注文ください。通信欄に怒りネット通信で見たということと、書名を書いてください。)
 保安病棟はまったく医療的環境ではないことが明らかになっている。入院者は苦痛の大きい環境から一日も早く退院したいため、医者や看護師に対して決して正直な症状を言わない。入院者は毎日毎日「評価項目」で縛られているからだ。
「評価項目」というのはどこまで社会復帰が可能になっているかを点数で評価するものだ。医療者の側がミーティングを開いて患者に点数を付けていく。入院者は良い点を取らないと退院できないとみんな知っている。良い点を取るためには元気なふりをするしかない。しんどい症状があってもそれを言うことはない。そのような環境下で、はたして医療が成立するだろうか。

 この人の場合は途中で薬が効かなくなり、薬を飲むとかえって脳が締め付けられるように苦しい症状が出たのだが、それに対する対応をしてもらえなかった。
苦しさのあまりに自殺未遂を繰り返したのだ。しかし、そのことに対する精神科的医療対応も全くしてもらえなかった。看護師は「あなたが故郷に帰るか死ぬかはあなたの選択の問題だ」と言ったというのだ。これが自殺しようとした人にいう言葉か。

 本書をご一読いただければ、今まで私たちが決して大げさなことを言ってきたわけではないことを、知ってもらえると思う。ぜひ、ご購読をお願いしたい。
(以上)

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2010年9月27日 (月)

怒りネット通信 No.44

怒りネット通信 No.44

2010年8月6日発行

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■もくじ
・「障害者自立支援法」との闘いはなおも続く
・地域主権大綱に反対しよう

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「障害者自立支援法」との闘いはなおも続く
古賀 典夫

 5月の下旬から6月の16日まで、「障害者自立支援法」改定案が国会を通過しそうになる、などと5月の連休辺りに想像した方はいらっしゃいますか?わたしには思いもよらないことでした。

 昨年10月30日、日比谷に1万人の「障害者」とその関係者が集まる中、長妻厚労大臣が「自立支援法」の廃止と新法制定を約束し、山井政務官が涙ぐむ、そんなシーンがありました。
 12月8日には、内閣府に「障害者制度改革推進本部」(以下、推進本部)が設置されることになり、その第1回会合が同月15日に開かれました。
 今年の1月7日には、「障害者自立支援法違憲訴訟原告団・弁護団と国(厚生労働省)との基本合意文書が交わされ、2013年8月までに「自立支援法」を廃止し、新たな福祉法制を実施することが明記されました。
 そして12日には、推進本部に設置された「障害者制度改革推進会議」(以下、推進会議)の論議がスタートします。この推進会議は、「障害者」自身や家族がそのメンバーの多くを占めており、毎年10月末に日比谷での集会を主催してきた団体関係者が論議を主導する状況になって行きます。したがって、24時間の介助保障など、「障害者」の切実な要求を実現する方向で議論は進められていきます。
 こんな経過を知っていれば、なおさらのこと、5月下旬からの経緯は、寝耳に水でした。

 4月27日、自民党と公明党が「障害者自立支援法等の一部を改正する法律案」(以下、自民・公明案)を議員立法として国会に提出しました。
 これは、昨年の通常国会に提出されていた当時の政府(自民党と公明党)の案と同じようなものです。ただし、多少の手直しがされており、この点については、後で述べます。
 しかし、与党は多数を占めており、厚生労働委員会には多くの政府提出法案が上程されていました。常識的には、自民・公明案が審議されること自体が考えられない状態にあったと思います。

 ただ、今の時点から捕らえ返すと、わたしが記述した「自立支援法」をめぐる経過は、物事の一面しか捉えていないことが判ります。
 昨年12月14日には、内閣府に設置された「地域主権戦略会議」の会合がスタートします。そこでは、「自立支援法」をも含む福祉法制の地域間格差を広げていく内容が資料として提出されていました。福祉事業に必要な人員、利用者の定員、施設・設備などを都道府県の条例に任せようという内容です。また、政府が国全体の人々の権利を保障することをやめてしまおうとの論議が交わされていたのです。そうした資料や論議について、「制度改革推進会議」に紹介されることはありませんでした。そして、地域間格差を広げる「地域主権推進一括法案」が国会に提出され、参議院先議で4月28日参議院を通過しました。
 他方、「自立支援法」の自民・公明の改定案が提出される頃、厚労省の障害保健福祉部の官僚が国会に日参する姿もあったと言われます。また、この法案の提出日4月27日とは、推進会議の総合福祉部会の論議がスタートする日でした。「自立支援法」に変わる総合福祉法の案を検討する部会です。
 推進会議の事務局は内閣府なのですが、この総合福祉部会の事務局は、厚労省です。しかも、この部会の委員は、推進会議の委員の人数の2倍を超える55人です。「議論がまとまらないようにするためではないか」との見方もあります。

●雲行きの変化を感じさせた5月中旬

 5月10日、第10回の推進会議が行われました。この日は、政府の各省からのヒアリングの続きで、厚労省、総務省、国土交通省、内閣府からのヒアリングと意見交換が行われました。ここで特に指摘したいのは、厚労省のヒアリングについてです。
 山井政務官の報告に対して、推進会議の委員からは、「地域主権戦略」との関係の質問が相次ぎました。委員からの指摘は、ますます地域間格差を作り出していくことへの懸念です。山井氏は、地方に回す予算がおおければ、問題は起こらない、という趣旨の発言を行っています。しかし、「地域主権戦略」が予算がないことをそもそもの動機としているのであり、今から捕らえ返すと、その場をごまかすペテンであったといえます。
 また、山井氏は、「所得保障には、就労支援が大事」などと自民党と変わらない発言をしており、自民・公明の「自立支援法」改定案についても、「民主党がこれをどう判断するかだ」と否定する姿勢はとっていません。
 また、医療関係の報告をおこなった足立政務官は、「心身喪失者等医療観察法」について人権に配慮しているので問題はない、との趣旨の発言を行い、日本の精神医療体制そのものについても問題はない、との姿勢を取りました。

 さらに5月17日、「障害者自立支援法違憲訴訟全国弁護団」と「障害者自立支援法訴訟の基本合意の完全実現をめざす会」(以下、めざす会)が厚生労働大臣あてに申し入れを行っています。申し入れの趣旨は、「自立支援医療」と「地域生活支援事業」の利用料について低所得者の無料化を実現するための予算措置、及び、「地域主権推進一括法案」の拙速な施行を行わないように要望するものでした。
 山井氏は、低所得者の無料化について、予算は年末に決まるので答えられない、との発言を行っています。上述の基本合意文書で「自立支援医療に係る利用者負担の措置については、当面の重要な課題とする」と書かれているのに、この態度です。
 
●「自立支援法」改定案が動き出したことを知らせたのは、共同通信の記事だけ

 5月20日、共同通信は、この日をもって、与野党が「自立支援法」改定案をこの通常国会で成立させるための協議に入ったことを伝えました。この記事は、その後に衆議院厚生労働委員会を通すための手法まで伝えています。自民・公明案に対して、民主党が対案を提出し、与野党が修正協議を行い、厚生労働委員長提案ということで通過させる、というその後実際に行われたやり方です。民主党の対案というのは、実際には与党の対案でしたが。これだけの内容ですから、20日以前から検討されてきたことは間違いないでしょう。
 そして、26日には、与党の対案が提出されます。そして、実際にはわたしの知る限り、27日には厚生労働委員長提案の文章もできていました。
 この一連の過程で、推進会議には何の連絡もありませんでした。推進会議の担当者でもある福島みずほさんにも連絡はなかったと言います。
 「障害者」団体はこの動きを察知して動き出します。めざす会は24日のニュースで、26日の衆院厚労委員会で、「自立支援法」改定案が通されそうであることを報道し、抗議を集中するように呼びかけます。そして、26日には審議されず、28日の厚労委員会での審議となったのです。
 この遅れは、今から思うと決定的な意味を持ちます。当時与党であった社民党の阿部さんが法案に年限を盛り込むべきことを主張したために、与野党持ち帰りとなり、それで審議日程が遅れたと伝えられています。

 なぜ、民主党がこんな動きを始めたのか、この問題は今後も解明が必要な課題ですが、この頃国会で言われていたのは、労働者派遣法との取引で行われた、とのことです。労働者派遣法を通すために、派遣法の審議に反発していた自民党と取引を行ったということです。しかしわたしは、官僚と組んだ民主党の中心が、推進会議に反映されてくる要求の抑え込みに入ってきた、と考えておく必要があるのではないか、と思っています。

 実は、怒りネットは出遅れました。
 27日までの過程は、新臓器移植法の問題で、厚労省との交渉や国会への働きかけの準備に追われていたからです。
 27日国会に行くと、「障害者」関係者が動いています。社民党の阿部事務所に行き、わたしたちの来た趣旨を伝えていると、阿部議員が通りかかり、「自立支援法のことでしょ」とつかれきった感じで言われます。その後に事務所の方から状況をうかがいました。そこでわたしたちは、議員事務所を訪問する際に、新臓器移植法の問題と共に、「自立支援法」の問題を訴えることにしました。 
 両方の内容を話すというのは難しいもので、事務所によってはほとんど「自立支援法」の話となってしまいました。特に、民主党の福田えりこ事務所では、秘書の方が「自立支援法」改定案について、「賛成している団体もあるんです」と言って、その団体の文章を読み上げたりするもので、どこが問題かを延々話すことになってしまいました。
 
民主党の議員の中でも、「わたしはあんな法案はやめるべきだと思う。総合福祉法までのつなぎなら、予算措置で行っていけば良い」と明快に語られる方もいました。

●5月28日は、民主党の裏切りデー

 この日朝からテレビでは、日米合意で、沖縄の名護市辺野古に新基地を作ることが決められた、との報道が流れ続けました。沖縄への許しがたい裏切りです。そして、この方針にあくまで反対して閣議では署名を拒否するとした福島瑞穂さんを、鳩山政権がどうするのか、ということが話題となっていました。
 そんな中、この日の午前中に開かれた衆院厚労委員会では、400人の「障害者」関係者の国会行動を前にしながら、厚労委員長提案なるものが採決されてしまいます。反対したのは、社民党の阿部さんと共産党の高橋さんだけでした。10時過ぎから始まる審議の途中で、この法案を議員に配り、11時17分に採決したのです。この法案は、200ページを超える膨大なもので、大部分の議員はこの全体を読まずに賛成したことになります。
 国会に集まった「障害者」からは、「05年の自立支援法が成立したときを思い出す」と裏切りへの怒りが語られました。そして、新たな闘いに進むことを決意しました。
沖縄でも、辺野古への新基地建設の政府決定に対して「これは新たな琉球処分だ」との怒りが全島を覆っていました。福島さんは、報道によれば、社民党の又市副党首や重野幹事長などが署名拒否の方針を撤回するように迫る中、あくまでも意志を貫いて大臣を罷免されます。ところがこれが鳩山政権を逆に追い詰め、内閣支持率をさらに大幅に引き下げることになるのでした。

 「自立支援法」改訂案は、直近の衆院本会議にかけられることになりました。それが31日です。
 怒りネットはこの日、ようやく独自のビラを作り、国会行動を行いました。05年に座り込み泊り込んだ場所でビラまきを行いました。通りかかる議員に「先生何とかしてください」と沼尻勝江さんが迫ります。
 前日「日本難病・疾病団体協議会(JPA)」が反対の緊急アピールを総会で採択していましたが、この日は、こうした難病団体の方々が議員への要請に多くの署名を携えてやってきていました。わたしたちのビラを見たそうした方々は「わたしたちと同じですね」と声をかけてくれ、お互いに頑張ることを誓い合いました。
 本会議を傍聴すると共に、参議院の側ではどうなっているのかなど、情報収集も行いました。するとまたあきれた事実がわかってきました。翌日の参院厚労委員会で、12時40分から25分の質疑で採決することが決まっているということです。この事実に一同「自民党より悪質だ」と怒りました。
 この日の本会議は、自民・公明が不信任案を提出しており、中国首相の訪問などもあり、「自立支援法」改定案が採決されたのは、夜中の11時過ぎでした。質疑などは全く行われていません。

 翌日、わたしたちは再び国会行動を行いました。この日は、めざす会の方々も傍聴などを行い、全体で200名の国会行動となりました。
 厚労委員会では、予定よりも早い時間から質疑が始まりました。わたしが議員面会所のテレビの所にいけたのは、質疑の最後となる共産党の小池さんの質問の時でした。答弁にたっているのはあの民主党の園田衆院議員です。採決では、やはり共産党と社民党が反対しただけでした。
 採決後、わたしたちは直ちにシュプレヒコールを上げ、その後、めざす会の方々の行う集会に参加しました。翌日には、参院本会議が予定されており、最後まで結集して闘うことを確認しあいました。
 怒りネットは、こうした行動に備えて、「怒」の1文字を記した紙を用意しており、シュプレヒコールの際に使いました。これは、沖縄や岩国の闘いで使っているということを知ったからでした。わたしたちこそ元祖怒りネットなのだから使おうとの思いでした。それが8日以降になると、めざす会の方々が紙の片側に「怒」、もう片側に「廃案」と印刷して、みんなに配ってくれるようになりました。

 他方、同日開かれた推進会議の総合福祉部会でも重要な決議があげられます。
 「議論をまとめている最中にもかかわらず障害者自立支援法の一部改正が情報提供もなく進められたことに対して、部会構成員一同は強い遺憾の意を表すとともに、推進会議並びに部会の議論が尊重されるよう、推進本部に意見を上げていただきたい」
 実はこの中には、「自立支援法」改定案に賛成している団体も入っています。育成会、日身連、「日本発達障害ネットワーク(JDDネット)」などです。育成会はその支部に対して、民主党への働きかけを行うように支持も出していたようです。それがこの決議には従わざるを得なかったのです。

この決議は要望書として、7日の推進会議に手渡され、推進会議でも同文の決議が行われました。そして、推進本部長である首相に手渡されることになりました。
 
 話を6月1日に戻します。この夜から、鳩山首相辞任問題が焦点化してきます。そして、翌日6月2日の朝、辞任します。その結果、「自立支援法」などいくつかの法案を10分ほどで採決する予定の本会議は流会となりました。
 この日も、めざす会の方々を中心に100名の方々が国会に結集し、廃案まで頑張ることを誓い合いました。

★法案の何が問題なのか

 ここで、法案の中身に触れたいと思います。自民・公明案は、昨年の通常国会に政府案として提出されていたものをもとにしています。与党対案も厚労委員長提案も自民・公明案に手を加えたものです。
 しかし、その法案名と第1条に重要な違いがありますので、この点から述べたいと思います。

 自民・公明案の法案名は、「障害者自立支援法等の一部を改正する法律案」です。その第1条から、「自立支援法」のどこを変えるかについて述べています。
 与党案は、まず法律の名称が違います。「障害者自立支援法の廃止を含め障害保健福祉施策を見直すまでの間において障害者等の地域生活を支援するための関係法律の整備に関する法律案」。
 与党案はその第1条で次のように述べています。
 「第一条 この法律は、平成二十五年八月までに障がい者制度改革推進本部等における検討を踏まえて障害者自立支援法の廃止を含め障害保健福祉施策を見直すまでの間において、障害者及び障害児の地域生活を支援するため、関係法律の整備について定めるものとする。」

  厚生労働委員長提案の法案名は、次のとおりです。
 「障がい者制度改革推進本部等における検討を踏まえて障害保健福祉施策を見直すまでの間において障害者等の地域生活を支援するための関係法律の整備に関する法律案」 
  そして、第1条は次のようになっています。
 「第一条 この法律は、障がい者制度改革推進本部等における検討を踏まえて障害保健福祉施策を見直すまでの間において、障害者及び障害児の地域生活を支援するため、関係法律の整備について定めるものとする。」 

  与党案と厚労委員長提案との間には、決定的な違いがあります。委員長提案には、「障害者自立支援法の廃止を含め」と「平成二十五年八月までに」という言葉が消されているのです。
 この「平成二十五年八月までに」は、社民党の阿部さんが強く主張して与党対案に入れたものだそうです。そして、この語句を除いた厚労委員長提案に対して阿部さんは、「年限の入らない法案には反対します」と質疑の中で宣言したのでした。

 わたしは今問題となっている改訂法案を、「障害者自立支援法」改訂案などと呼んでいますが、法律の本文だけでも、「障害者自立支援法」、児童福祉法、精神保健福祉法、精神保健福祉士法、社会福祉法、社会福祉士及び介護福祉士法が改訂の対象となっています。付則に記されている改訂の対象となる法律は膨大です。これらをわずかな時間で国会を通過させようとしたのですから、全くめちゃくちゃです。
 以下では、わたしの気づいた法案の問題点について述べていきます。

●能力主義、労働至上主義に変化はない

 「能力及び適性に応じ」という表現が削られました。
 しかし、日中活動の体系(就労移行支援、就労継続支援A、就労継続B、生活介護など)という能力主義的な体系は何一つ変わっていません。

●「地域生活支援事業」への更なる事業の盛り込みは、矛盾を拡大する。

そして、「成年後見制度利用支援事業」を、市町村の「地域生活支援事業」の必須事業とすることが打ち出されました。また、昨年の政府案と同様に、「基幹相談支援センター」も「地域生活支援事業」に盛り込もうとしています。
 そうでなくても、市町村の「地域生活支援事業」関係予算は逼迫しているのに、ますます矛盾を拡大することになるのではないかと思われます。国がそのための予算を増やす保障など、どこにもないのですから。

●この時期の「自立支援法」改訂は、総合福祉法実施の妨げとなる

 厚労委員長提案について、民主党は次のように弁護します。
 「障がい者制度改革推進本部等における検討を踏まえて障害保健福祉施策を見直すまでの間において」という言葉が入っているのだから、総合福祉法を作ることが変わってしまったわけではない、と。
 しかし、こうした主張は次の点を忘れています。
 今回の「自立支援法」改訂案の完全実施の時期は、2012年4月。
 「障害者自立支援法違憲訴訟原告団・弁護団と国(厚生労働省)との基本合意文書」によれば、国は「遅くとも平成25年8月までに、障害者自立支援法を廃止し新たな総合的な福祉法制を実施する」としています。「平成25年」は、2013年ですから、2012年の通常国会辺りで総合福祉法を成立させないと、2013年8月の実施は、困難となるでしょう。
 厚生労働委員長案という形で改定案が成立すれば、2012年は、この改定案施行直後によく起こる混乱と総合福祉法の準備の両方に対処しなければならないことになり、それこそ現場は大混乱となるでしょう。そうした結果、総合福祉法の施行は、ますます遅れていくことになるのではないでしょうか。
 したがって、「自立支援医療」などの利用料の減免などを予算措置として行えばいいのであって、法律をいじることは混乱を生むだけになるでしょう。

●1割までは徴収できる「応能負担」

 昨年の通常国会に出された政府案と同様に、応能負担にされたとされる部分は、次のように記載されています。ちょっと判りにくいのですが、引用します。
 「当該支給決定障害者等の家計の負担能力その他の事情をしん酌して政令で定める額(当該政令で定める額が前号に掲げる額の百分の十に相当する額を超えるときは、当該相当する額)」

 ここで、「前号に掲げる額」とあるのは、ホームヘルプなど福祉を提供するにあたって使われた金額、すなわち、報酬単価と考えてください。
 「家計の負担能力その他の事情をしん酌して」利用料が決められるのですから、応能負担にした、とのことですが、1割までは、利用者から徴収できるのです。

●事業者と利用者の管理の強化

 昨年の政府案を引き継いで、事業者の管理を強化する条文が追加されていますが、わたしが特に恐ろしいと思うのは、第四十八条の変更です。
 現行法では「サービス事業所に立ち入り」となっているのですが、改定案では「事務所その他当該指定障害福祉サービスの事業に関係のある場所に立ち入り」と、いくらでも立ち入りの範囲を拡大できる規定としています。場合によっては、ホームヘルプ利用者の家まで立ち入りができるという解釈さえできてしまうのではないでしょうか。ちなみに、このような条文は介護保険法にも見当たりません。なぜ「障害者」関係だけに、このような管理体制を敷こうとしているのでしょうか。

●国庫負担基準以下に、支給する福祉を押さえ込む条文

 これも昨年の政府案を受け継いでいるものですが、市町村は、ホームヘルプなどの福祉の利用を希望を申請した者について、利用計画案の作成を求めることができるようにしようとしています。この利用計画案は、利用者本人が作ることもできるとのことですが、基本は市町村が指定した相談支援事業者です。
 国は、「障害程度区分」に対応したホームヘルプの国庫負担基準を作っています。この国庫負担基準を超えてホームヘルプを支給するような計画案を作れば、それは市町村の持ち出しになりかねません。市町村の認定を受けた事業者にとって、利用者の必要性が判っていたとしても、国庫負担基準を超える利用計画案はなかなか作りにくいことが予想されます。そして、事業者を縛るための管理体制も新たにこの改訂法案には追加されているのです。
 このホームヘルプの国庫負担基準以下に押さえ込まれれば、1日数時間程度の介助しか保障されないようになっていくことでしょう。

●無視された基本合意文書

 「自立支援法」違憲訴訟の和解条項の基礎をなすのが、この基本合意文書なのですが、今回の「自立支援法」改定案とそれを成立させようとするやり方は、この基本合意を何重にも踏みにじるものです。
 「新法制定に当たっての論点」という部分で、原告団と弁護団は、収入認定については本人の収入だけを対象とすること、介護保険優先原則の廃止、国庫負担基準・「障害程度区分」の廃止など重要な論点を記しています。ちなみに、今度の「自立支援法」改定案では、ここに挙げた要求はすべて無視されています。
 これらの要求を受けて国は、① 利用者負担のあり方、② 支給決定のあり方、③ 報酬支払い方式、④ 制度の谷間のない「障害」の範囲、⑤ 権利条約批准の実現のための国内法整備と同権利条約批准、⑥ 障害関係予算の国際水準に見合う額への増額、について「しっかり検討を行い、対応していく」と記しているのです。
 ところで、「自立支援法」改定案には「(検討)」という見出しの付則第二条があります。この条文において、自民・公明案は5年後の見直しを規定しているだけです。つまり、2013年8月を無視し、総合福祉法も無視する意志表示です。
 しかし、与党対案や厚労委員長提案にしても、「難病の者等に対する支援及び障害者等に対する移動支援」の検討だけなのです。基本合意文書に忠実であるならば、上述の6点をすべて記載するか、推進会議の結論を踏まえた法案を作ることを述べるか、どちらかのはずです。
 また基本合意文書の中では、「国(厚生労働省)は、障害者自立支援法を、立法過程において十分な実態調査の実施や、障害者の意見を十分に踏まえることなく、拙速に制度を施行」して「障害者、家族、関係者に対する多大な混乱と生活 への悪影響を招き、障害者の人間としての尊厳を深く傷つけたことに対し、原告らをはじめとする障害者及びその家族に心から反省の意を表明する」と記載しています。この反省もまたうそであったことは明らかでしょう。

★闘いはさらに続く

めざす会は、引き続きファックスなどでの議員への要請を呼びかけると共に、8日の国会行動を訴えました。そして、8日には2000人の人々が結集したのです。衆参全議員への要請行動、議員会館前での行動、院内集会、憲政会館での集会、そして、最後にすべての参加者が議員会館前を埋め尽くしました。
 全員が集まると、議員会館前は、ぎっしりと人が並ぶ状態になります。1列にはとても並べず、前後左右に人が密着する状態になっています。広島、兵庫、福井、北海道など、各地からの参加者の怒りが表明されます。しかし、あのときを超える高揚感もまたありました。
 怒りネットは、この日初めて青木さん製作の旗を掲げました。周囲の人たちから「すてきな旗ですね」との言葉をいただきました。
 この日の議員まわりだって、いつものイメージとは違います。1フロアーに車椅子の人たちも含む何10人かが動くのです。
 憲政会館の集会は、さながら民主党糾弾大会のようだったとのことです。他方、院内集会から最後の全体集会まで参加し、謝罪し泣きながら「障害者」と共に闘うことを誓うかねこ恵美民主党議員もいました。
 
 その後も、ファックスでの要請を続ける一方、太田修平さんをはじめとしてめざす会からは、国会前での14、15、16日の闘いが呼びかけられました。14日は雨の中200人が、15日にはかんかん照りのなか300人が、蒸し暑い16日には500人が結集しました。
 15日夜、参議院の議員運営委員会で、自民・公明は「自立支援法」改定案の採決を求めたそうです。そのときは、西岡委員長(民主党)が拒否したとのことでした。
 16日には、自民・公明が衆議院で不信任決議案を提出し、これが処理されるまで、参議院も含めて国会の公式の動きがストップします。
 その間も結集した「障害者」は必死の訴えを続けました。国会最終日という中で、ほかの陳情者はほとんどおらず、わたしたちだけが行動している状態です。
 午後3時過ぎ、不信任決議案が否決され、参議院の議員運営委員会が動き出します。参議院には、やはり自民・公明が問責決議案を提出することになっていました。議運で自民・公明が、問責決議案を取り上げよ、と迫りました。民主党側は、「問責決議案を取り下げれば、本会議にかけられている法案について、本会議採決を行う」との意向を示したそうです。そして、この民主党の提案について、双方が持ち帰って検討することになりました。
 行動の終了時間と主催者が決めていたのがこの時間帯です。しかし、どちらに転ぶか判らないこんなときに、とても帰ることはできません。いったん休憩に入りますが、怒りネットは民主党の幹部にあって要請をしようと電話をかけますが、ことごとく今会えないと言われます。
 集会が再開されます。何人かの発言が行われたところで、共産党の小池さんが、国会が解散になったとの情報をもたらします。社民党の福島さんもこの情報を確認します。結局民主党の提案を自民・公明は呑まず、民主党も問責決議案は取り上げることができないとのことで、物別れとなり、これで解散となった、とのことです。
 「やった!」どっと喜びがこみ上げます。これで「自立支援法」改定案は廃案です。
 しかし、「地域主権推進一括法案」は継続審議であり、「自立支援法」改定案もまた復活してくるかもしれません。
 太田さんの最後のまとめは実に的を得たものでした。「今日までの第1ラウンドは勝利しましたが、明日から第2ラウンドが始まります。共に闘って行きましょう」。最後のシュプレヒコールも「臨時国会でも闘うぞ」とのフレーズがありました。

●臨時国会を見据えて

 自民党の衛藤誠一議員は、臨時国会で改めて「自立支援法」改定案を提出する、との意向を示しているそうです。臨時国会冒頭からの行動が必要になっています。

 他方、6月7日に推進会議が示した「障害者制度改革の推進のための基本的な方向(第一次意見)」は、「障害者」の置かれた状況を改善していく上で、重要な方向を示したと思います。十分か不十分かという点では、議論すべき点はあると思いますが。
 「すべての障害者が家族への依存から脱却し、自ら選択した地域において自立した生活を営む権利を有することを確認するとともに、その実現のために 24時間介助等を含む支援制度の構築を目指す」
 「障害の有無にかかわらず、すべての子どもは地域の小・中学校に就学し、かつ通常の学級に在籍することを原則とし」
 「精神障害者に対する強制入院等の見直し」、「精神医療の一般医療体系への編入」、「「精神科特例」の廃止」
 こうした言葉が記されています。官僚、企業の利益主義や能力主義を守ろうとする政治家たちは、推進会議の目指す方向をつぶすために動くでしょう。
 わたしたちは、5月下旬以降、闘い続け勢力を拡大し続けなければ、何も守れず何も勝ち取れないことをますます実感させられました。共に闘いましょう。
 そして、10月29日が今年の日比谷の結集の日となりそうです。

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障害者福祉の「規制緩和」による社会保障費大幅削減=地域主権大綱
障害者は民主党の地域主権改革に反対しよう
高見元博

 この問題は、私たちの対応が立ち遅れている内に、どんどんと既成事実化されています。6月22日閣議決定された「地域主権戦略大綱」はこの2~3年の間に実施すべきことを提起しており、11年度からはその根幹を成す一括交付金化が始まります。鳩山首相の時に「地域主権改革は民主党政権の一丁目一番地」と言われていました。菅政権でも所信表明演説で述べられ、民主党政権の重要な政策とされています。民主党政権の参院選での敗北の結果、この攻撃は弱められていません。むしろ前面化されているようです。民主党政権が続く限りいつ実行されてもおかしくないのです。
 まず、いったい何が起きているのかを見ていきたいと思います。
 昨年12月14日、内閣府に「地域主権戦略会議」が設置されました。
 新たな地方自治改革であり、廃藩置県以来の大改革だと言います。しかし、明治維新以来の改革と言いながら、「封建制からの脱却」といった、明確な展望を示せる者はいません。羽仁五郎の「都市の論理」における「都市は自由にする」という労働者階級の立場からの地方自治の提起に比しても、中身のある地方自治の姿は提示されていません。いまの支配階層の地方分権とは、国は国防や外交、治安維持、教育の根幹だけを握り、地方自治体に教育・福祉の大きな権限と予算を譲渡する大改革と言われています。民主党の「地域主権改革」が果たしてそれなのか。民主党は何を変えようとしているのか、本音の部分は、会議のメンバーとその発言から推し測るしかありません。

何が議論されているのか

 会議のメンバーの平野博文(内閣官房長官・当時)は「中央集権の統治機構は非常に高コスト。自立した国、地方、国民であって欲しい。国と地方自治体が最低限しなければならない部分は何か。国民の自立を前提として施策を打っていく。」と第一回会議で発言しています。「国民の自立」というのは、「自助・共助・公助」という考え方で、「自助」を中心にするという意味です。「国民は政府や行政の世話にならず、一人で勝手に生きて行け」と言っているのです。
 国から地方自治体に渡される予算の8割は社会保障と教育予算です。平野の発言から推し測れば、政府の狙いはこれを削減することにあるのであって、決して民主主義の推進や、福祉の増進などではありません。
 また、メンバーの一人である大阪府知事の橋下は、在日朝鮮人や北朝鮮をヤクザ・暴力団だと言って公然と差別し、朝鮮高校を府の補助の対象外とするなどと、まるで右翼団体、「在日特権を許さない市民の会」=在特会かと見間違うほどです。橋下が自らが民主主義とはかけ離れた手法を用いながら地方分権を叫んでいるのは、自らにより大きな権力を要求しているだけです。このことは自治体の長や議員により大きな権力を与えるだけで、真の地方分権でも民主主義改革でもないことを示しています。

真の地方自治ではなく

 沖縄県民、名護市市民の意思に反して、名護市辺野古沖新基地建設を公言し、地方自治を踏みにじっている当の民主党政権が、「地方自治」などという言葉をもてあそぶことは、いったい何を意味するのでしょうか。
 小泉政権の「三位一体の改革」は、地方に権限を委譲し、財源も譲渡するという謳い文句でした。しかし、実際には、地方に仕事は渡したが、譲渡する財源は大幅にカットされました。民主党は、自民党政権でもなしえなかった、憲法の下での戦後民主主義的なもの、民衆の権利意識と価値観を解体し、剥き出しの資本主義の弱肉強食の論理への置き換えに挑戦する「大改革」を狙っているのではないかと思えます。
 現実の地方自治体は、身近だからといって、民主的とは言えません。都市部でも自治体の実体は地域ボスの集合体という地方は少なからず存在するのではないでしょうか。土建屋ボスを中心にした地域支配のところも多いと思います。そういう地域ボス支配に依拠しているのが、いまの支配階層による労働者支配のありようです。会社・職場での支配という半面と対を成すものです。支配階層=会社経営者たちは昼間は職場で、夜は地域で労働者を支配し、労働者家族を日常的に地域で支配しようとします。真の地方自治は、資本主義の社会支配のひっくり返しとしてしか実現できないでしょう。

地域主権戦略大綱

 「地域主権戦略大綱」が10年6月22日に閣議決定されました。
 「地域主権改革」の定義は、「日本国憲法の理念の下に、住民に身近な行政は、地方公共団体が自主的かつ総合的に広く担うようにするとともに、地域住民が自らの判断と責任において地域の諸課題に取り組むことが出来る様にするための改革」だとされています。また、「おのずと地方公共団体間で行政サービスに差異が生じてくるものであり、地方公共団体の首長や議会の議員を選ぶ住民の判断と責任は極めて重大になる。」として、福祉削減の責任を住民に転嫁しています。障害者などのマイノリティの利益が守られるかどうかも地域住民の意思に従うということであり、国による福祉の保障という考え方は捨てられています。障害者福祉に地域間格差は広がるし、福祉予算はより縮小再生産されていくことになります。
 「大綱」は、施設などの設置基準を規制緩和して自治体の勝手にさせることと、国の地方自治体への財源保障である「ひも付き補助金」をなくし、使途を定めない「一括交付金」化するということを柱としています。また、「道州制」についての検討も射程に入れていくとされています。

規制緩和

 小泉改革は主に民間に対する規制緩和で巨額の財政赤字の矛盾を労働者人民に押し付けました。それは貧困を拡大し、大きな貧富の格差を生みました。ワーキングプアといわれる新たな社会層を作り出しました。その規制緩和を、今度は社会保障にも持ち込み、国と地方自治体の間で行おうというのが「地域主権改革」です。「財政再建」を労働者や障害者の犠牲によって、成し遂げようというものです。しかし、財政が破綻しているのは、巨大な公共事業や巨額の銀行救済などの資本家救済策を重ねてきたツケであり、労働者や障害者が責められる筋のものではありません。

「一括交付金の対象・括り方」(別紙資料イメージ図参照)

 「一括交付金の括り方」として、横軸を大まかな政策分野別に、○○分野、△△分野、□□分野と括るとされています。この分野別に交付金を一括して自治体に渡します。この○○分野というブロックは省庁の壁を越えて括る、ともされています。
 生活保護や障害者福祉や介護保険が一括交付金の対象とされ、それらがいくつかの分野として一括でくくられるというイメージのようです。そのなかで障害者福祉と介護保険との統合の問題も再浮上するかもしれません。
 「大綱」は生活保護は始めは対象とならないように読めます。しかし、あの悪名高き「労働者派遣法」でも、最初はもっともらしい事を言って対象を極めて限定して、労働者の利益になるという謳い文句で制定したのです。一度できてしまうと対象をどんどん拡大して、製造業の日雇い派遣までも対象を無制限に拡大していったのです。それが賃金では生きて行けない労働者群を生み出したのです。その轍を踏んではならないと思います。約2兆円の(社会保障費の約10%)生活保護費だけが聖域になるとは考えにくいことです。
 生活保護という国家による生存権保障の要の予算が、自治体の好きなように使える一括交付金化するということであれば、憲法25条(生存権保障)の実質的な改悪です。 
 「大綱」の実体を示す部分を少し長く引用します。

「一括交付金の対象範囲

(1) 基本的考え方
・ 一括交付金化する「ひも付き補助金」の対象範囲は最大限広く取る。
・ 補助金、交付金等を保険・現金給付、サービス給付、投資に整理し、地方の自由裁量拡大に寄与するものを対象とする。
(2) 対象範囲の整理方針
・ 社会保障義務教育関係―――「社会保障。義務教育関係」については、国として確実な実施を保障する観点から、必要な施策の実施が確保される仕組みを検討するとともに、基本的に、全国画一的な保険・現金給付に対するものや地方の自由裁量拡大に寄与しない義務的な負担金・補助金等は、一括交付金の対象外とする。
・ その他~一括交付金の対象としないものは最小限に限定する。具体的には、災害復旧、国家補償的性格のもの、地方税の代替的性格のもの、国庫委託金、特定財源が国費の原資であるもの等に限定する。
(3) 実施手順
投資に係る補助金・交付金の一括交付金化は平成23年(2011年)度以降段階的に実施する。経常に係る補助金・交付金等の一括交付金化は平成24年(2012年)度以降段階的に実施する。」

「障害者」福祉政策は一括交付金化の対象

 一括交付金化で、障害者福祉のどこに重点をおくかは自治体の自由になります。障害者の間が分断されて、より極端に小さくなったパイのなかで、競争と蹴落としあい、予算の分捕りあいに落とし込まれるかもしれません。しかもブロックはより大きく括られているから、障害者予算と他の予算が一つのブロックとされて、障害者予算は削られる一方といったことも想定されます。巨額の財政赤字を抱える自治体では、赤字解消が優先されることになるでしょう。
 法制定の行程表が明らかにされています。「地域主権一括法案」、地方自治法の一部改訂、「国と地方の協議の場法案」は、参議院先議だったので、4月28日に参議院を通過して継続審議とされています。来年の通常国会には本格法案が出されてきます。一括交付金化は11年度から順次始まります。

真の改革とは

 必要なのは労働者や障害者が自由に生きていくための施策であり、その実現のための民主主義です。障害者自らが国政や地方自治に口を出し、手を出し、関与し、政策決定をしていくことが真の民主主義なのです。少数者を排除した多数決原理はファシズムです。
 「地域主権改革」は、逆立ちした、障害者に犠牲だけを押し付ける「規制緩和」です。実施されるとなれば、各省庁の抵抗もあり、「大綱」が単純ストレートに実行されるとは限りません。これからまだまだ紆余曲折を経ることでしょう。だからこそ、私たち障害者は「地域主権改革」に絶対に反対します。

                      

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2010年6月 3日 (木)

怒りネット通信No.43

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 No.43
2010年6月5日発行

障害者運動の40年を語る

 3月22日に、「障害者運動の40年を語る」というテーマで、怒りネットの学習会を開催しました。金子・関根・天野という、30年、40年の運動経歴を持つ、障害者運動の大先輩を講師に、多くの問題提起がなされました。内輪の学習会という当初の予定が、会議室の机を全部片付けなければ入れないほどの参加者があり、熱気がみなぎる4時間半になりました。

【古賀】障害者運動の在り様とか、障害者が健常者と向き合う在り方とか、怒りネットの中でちゃんと話しておくべきという提起を受けて、本日の集まりを設けた。2月に打ち合わせをした際、共通に言われたことは、「色んなことが少しずつ整ってきたが、自分達が提起し目指したものと違っている」との問題意識である。
 では金子さん・関根さん・天野さんという順番でお願いしたい。

■戦後の障害者運動の流れ
【金子】青い芝の金子です。戦後、憲法が作られ、色んな権利擁護運動が大きくなった。障害者運動については、視覚障害者が頑張っていた戦前、僕ら脳性マヒ者は社会から閉ざされた生活を強いられてきた。戦後10年が経った頃、比較的障害の軽い脳性マヒの仲間が、「何とか働く場がないのか」との想いで、職業安定所に行き、全部断られ、その差別的対応を役所に相談に行った。そこで「あなた方にその気があるなら、団体作って運動やったらどうか」と言われ、いくつかの集団が集まった。それが青い芝の始まり。
 何年か経って茨城のマハラバ村に、脳性マヒ者の共同体、生活の場を作ろうとした。ここのボランティア、介護者に、オサラギという坊さんがいた。自分の考えた宗教観を持っていて、社会的に弱い立場の人のことを考えようと思っていた。
たまたまその和尚と考え方が合致したわけだ。「脳性マヒは、身体も悪いけど頭も悪い、全部悪いわけだから、今の社会では弱い立場になってしまう。この人たちを何とか社会に出していかねばならない」と和尚が勝手に思い立った。次第に仲間が集まってきた。横塚さん・横田さん・小山さんなど。あくまで僕らの共同体を作ろうと始まったのがマハラバ村の考え方だった。和尚さんの考えている深い意味はわからなかったが、ここで皆色んな勉強した。マハラバ村が崩壊した後、みんな神奈川に流れていった。和尚から学んだことが頭にあって、横浜の障害者殺しで「何で障害者が殺されることが当たり前なのか」と行動した。そこから青い芝が大きな広がりを開始した。各県に青い芝が作られた。それが集まって全国青い芝ができた。
 その後、優生保護法などに対する反対運動を行ってきて、養護学校義務化問題などが終わった段階で、全国青い芝の初代会長の横塚さんが、青い芝の運動をもっと大きくするには、当時色んな団体が各地に多数作られたが、それらをまとめて運動をやろうと提起して、全障連になった。私は全障連への移行には、時期尚早と反対した。内部が固まっていないし、青い芝の考えもまだ理解されていないので、青い芝が潰れてしまうとの理由で反対した。横塚会長と横塚宅で談判もした。横塚は「金子の言うことも分かるが、今はそこを超えなければ、介助者がいなくなるから枠を広げる」と言った。俺はあくまで反対したので除名された。
 何年か経って横塚さんが亡くなった段階で、俺の意思とは関わりなく、青い芝は全障連から脱退した。健常者とうまくやれない。全障連の中には色んな人やセクト(党派)がいて、障害者運動ではなくなってきた。みんなそれが分かった。
その段階で青い芝はバラバラになってしまった。1976年ころの話。
 その後、青い芝をもう一度頑張ろうと、横田さんが提起して、バラバラになった青い芝を立て直そうと思った。そのころ青い芝の流れは以前とは大きく変って、遺伝子組み替えとか着床前診断、脳死の問題などがテーマになっていた。人数が少ない中で、そういう問題を頑張ってきた。それが今の流れになっている。
 全体の障害者運動は、国際障害者年から大きく変ってきた。アメリカ・バークレーの自立生活運動の流れになっていった。中心テーマは介助保障の問題になった。CILの中西さんとか樋口恵子さんなどが主役。こうした中で、肝心のものが語られなくなってきたと思った。もっと根本的なことを考えていかないと今後の障害者の生活は変ってこない。そういう意味でこれからの若い人に期待している。
【関根】青い芝が青い芝の理念を持って、他の障害者団体をまとめてやって行こうとしたとき、障害者運動が政治党派の運動になってしまい、青い芝の行動綱領が受け入れられなくなった。軒先貸して母屋取られたようなもの。しかし多くの障害者は当時党派の人達に介助をしてもらっていたという問題があり、運動主体のあり様が問題になった。健常者と障害者の関係は昔からあまり変っていないような気がする。

■不便だったが自由、便利になったが不自由
【関根】金子さんがバークレーの自立生活運動を持ち込んだのが今の流れだと言ったがその通りだ。それまでの介助者の獲得方法は、来た者を離さないというやり方だった。来るものを全部捕まえて二度と離さないという根性のある障害者だけが、自分の生活を自分らしく送ることができた。横塚さんや横田さんなどは、「お前ら差別者か」というような攻撃を加えて、介助者を逃げられなくした。僕の場合も、約束の日に来なかった介助者宅に行き、帰宅を待って、「来なかったせいで大変だった」と脅して、介助者を確保していた。それでも、別れは必ず来るが、「月一回でも2ヶ月に一回でも」と言ってつないでいる。30年も続いている人もいる。
 しかし今のCIL運動の流れで、それほど苦労しなくても介助がある程度保障されるようになってきた。いいことではあると思うが、楽な方へ楽な方へ流れていく傾向は見過ごせない。昔は何としても介助者を獲得しなければならなかったため、ヘルパーと利用者という関係ではなくお互いの心に入りこめたが、それがなくなった。
 例えば、一人で駅に行った場合、昔は駅員が手伝わなかった。階段しかないのに、駅員は「俺は今仕事中だ」と断られた。利用者に手を貸すのは仕事ではないのか。そういう状況だった。でも周りの人に声をかけると、結構快く手を貸してくれる。階段の前で「この階段上がりたい」と叫べば、人が寄ってきてくれた。
場合によっては、改札の上を担ぎ上げてもくれた。駅員ではなく周りの一般の人がやった。
 今はエレベータがあってスロープができ、駅員の教育が徹底されていて、回りの人が手を貸そうとすれば、駅員がそれを払いのける。周りの人々との関係性が逆に閉ざされている。今では周りの人に声かけても「駅員呼んできます」という対応になってきた。保障されたがために、かえって健常者との間に大きな溝ができた。
 昔、僕のところには右翼のお兄ちゃんも来ていた。右や左の人がいるので時々大喧嘩になったが、「ストーップ、ここは俺の介助の場だ」と言って、外でやらせた。そういう時代だった。近所の人も雨が降ると洗濯物取り込もうかと気遣ってくれたり、また酒屋やラーメン屋に配達を頼んで、排泄物の始末頼んだりと、地域との密着度が高かった。
 ストレッチャーで四国から単独で東京に来た人もいる。また、あごで電動操作して、キヨスクのおばちゃんに酒飲ましてもらっていた人もいた。あるいは、マクドナルドのお姉ちゃんに、毎回一口大に切ってもらう間柄になることもできた。
そこで生きているという感覚が持てる。ところが今はヘルパーがべったりついているため、社会的な関係が分断されている気がする。地域に住んでいながら、地域という大きな施設に入っているようだ。
 何年も前になるが小笠原に行った。泊まるところを探して片っ端から電話した。
「車イスだが大丈夫か」と。昔は飛び込みで「泊」しようとすると、たまに「布団部屋しかないが、布団部屋でいいか」と泊めてもらったこともある。ところが今は断る名文句がある。「うちはバリアフリーになっていないから」と。「バリアはお前だろ」と思う。「バリアフリー」とはそういう言葉だったのかと初めて知った。
 確かに駅にはエレベータあった方がいいが、無くたっていい。周りの人が手を貸せばいい。手を借りる際には、様々なテクニックがある。アベックを狙うと、たいがい男は応じてくれる。一人じゃ無理だから、周りで見ている人たちも寄って来る。あるいは女高生に声かける。「困ったわ」という顔をしたらラッキーで、男たちがどっと来てくれたりする。楽しかったし面白かった。手を貸した人も車イスの重さを感じると思う。声を出せない人でも、周りの人のズボンやスカートをつかむ方法もある。「何か言いたいのか」と察してくれた。
 CILの流れになって良かったことは、無茶なことができない人のサポートも可能にした。それを繋ぎとめるために有料にした。ポリシーが無くても関われるようになったが、あまりにポリシーがなさ過ぎて、アルバイトになってしまい、何か問題があれば労基署へ飛び込まれてしまう。一人暮らしできる人が拡大したことは事実だが、どういうサポートが欲しいか選べるようになればいいと思う。北欧等へいくと、自分のニーズに合った介助者を募集できる。日本だとヘルパー2級資格を条件にするが、彼らは車の運転、機械いじり、スキーなどで募集する。
介助のテクニックは、学校で教わってきたことより、本人から伝えた方が伝わる。
だから資格なんか要らない。僕らが一番欲しいのは、ヘルパーではなく生活のアシスタント。まさに自立とは何なのか、みんなに問いたい。守られていくことが自立なのか。地域から分断される生活を本当に望んでいるのかと。
 僕は去年の11月でCILを辞めた。相談を受けて不本意にも市役所のワーカーが言うようなことを仲間に言わなくてはいけない。このままだと、自立という概念の大切な部分が崩れて、管理社会の中にどんどん組み込まれていってしまう。何度も言うが、不自由と不便は違うし、自由と便利は違う。昔は不便だが自由だった。今は便利だが不自由。
 昔は家族に障害者がいるとお金がかかったし、ウザい存在だった。今は逆にありがたい存在になった。東京の場合何もしなくても月々18万くらいお金が入ってくる。そのおかげで逆に自立できなくなってきた。昔は「このままだと殺されるかも知れない」という危機感もあり、「こんな家出てやる」と言って出た。若いうちに出ることが肝心、歳とって、家の人が介助できなくなったとか、家の風呂に入れなくなったとか、そんな理由で出るのでは遅い。結局そういう人は簡単に自宅に戻ってしまう。僕はせっかくこの道を掴んだのだから二度と離すかと思う。
施設なんかには絶対戻らない。
 もう一度初心に戻って見ようと思うし、今日のような外出にはできるだけ介助者つけないで出かけようと思っている。システム化された中に生きていて、自由になった、便利になったと思っているが、ちょっと考え直してみた方がいいかなと思った。

■場の共有が必要
【天野】健常者は就職できるが重度障害者は在宅放置、ほったらかしである。障害者と健常者の人生コースの違いを考えると、健常者の一般的な自立は、親元に育って、親元にいる間に就職し、自分で金を稼いで安定するにしたがって、親元を離れ自立生活する。しかし重度障害者は就職できない。多くは家族丸抱え。一部親元から飛び出して生活保護、あるいはCILの職員となって自立を目指す人もいる。そこに在宅のヘルパー制度が展開している。ヘルパーがかなり特別な労働として扱われている。
 いい問題提起をした人が過去にいる。そこに寝たきりの車イスに乗っている遠藤滋さんがその人。遠藤さんは、前は歩けていたがクビの骨がずれて、圧迫して脊髄症になって、今寝たきりの状態。遠藤さんは都内の大学を出て、1974年都内の養護学校に就職した。その当時の遠藤滋さんは下半身は健常者並みの強靭さで、山登りとか電車の駆け込み乗車もできた。しかし腕に重度の障害があった。したがって彼は介助者を必要とする身体障害者であることに間違いはなかった。養護学校の生徒は障害児ばかりだが、同時に教員の遠藤さんも介助を必要とする。教員の多くの主な労働内容は介助。介助しながら読み書き算数を教え、介助の仕方を通じて教育することが職務になっている。そこに遠藤さんのような障害者が就職すると、同僚同士で介助しなければならない。生徒への介助力総体が落ちるので嫌がられいじめられた。しかし、遠藤さんは次のように反論した。養護学校の生徒はやがて卒業し、地域社会へ船出していく。その地域社会は障害者にとって
易しい場所ではない。障害者の教師が地域から出てきて職場にいる。遠藤さんの教員生活を同僚が支えるということは、彼の地域生活も支えることになる。それ自体、擁護学校の生徒の進路保障、地域で生きていく力をつけていく問題提起となっていた。これは障害者運動の中では稀有の問題提起だと思う。障害者が就労することの意義、位置づけをキチンと展開していた。
 文脈がずれるかも知れないが、僕の個人的な体験を述べる。僕の通っていた大学は、静岡県の西部にセミナーハウスがあり、近くの大井川に、橋が架かっていた。その橋は縄でできたつり橋だった。その橋は底に板を敷いただけの簡単な縄のつり橋で、風が吹くだけでゆれる。僕は歩けないので健常者の学生に背負ってもらって渡っていた。背負われている僕は、怖くも面白くもない。なぜかというと、背負われているから健常者の膝・足首・腰などがクッションになって、適度にこの吊り橋の揺れやショックが吸い取られているからだった。したがって、僕はこの健常者学生の背中から下ろしてもらい、直接橋の上の板に立たせてもらった。そしたら怖い怖い、びびった。立っていること自体も至難の業で、落っこち
そうで、全部怖い。そのときひらめいた、これは完全に僕の身体の感じ方だと。
僕の歴史を感じた。僕自身の身体的世界だと思う。何を言いたいかというと、身体障害を丸ごと組み込んで、僕自身の存在だということ。
 この観点と問題意識は僕の重要なこだわりとなっていく。つまり、身体障害も含めて僕自身であり、決して切り離すことができない。その僕自身の身体障害を切り取っていくこと自体無理がある。何が頭にくるかと言うと、身体障害への介助を金に換えて、ヘルパーが介助労働として位置付いている。自分の身体を切り売りしているみたいでいやだ。介助とはもっと自然な人と人とのつながりの中でやることだろうと思っている。介助というのは職場を通じてもどこでも自然なもとして展開して定着して広げて行くべきだと思う。介助労働が特別なものになってしまうのは、多分健常者側の問題。あるべき労働の価値観があって、そこから福祉労働は特別なもの、余分なものと見てしまう。
 昔僕は介助者なしで生活していた。その時、僕は車を運転できるが、銀行に一人で運転して行って、誰もいなくて通行人に声かけてやってもらったり、あらかじめ銀行員に電話かけて駐車場で待っていてもらって、車イスをおろすのを手伝ってもらったり、そんな風に車で移動していたときは面白かった。地域で生きている醍醐味があった。しかし、それ以後は、介助者が徐々に必要となっていく。
それに伴って矛盾した思いも生じてくる。長く付き合って慣れてもらって、介助者として定着してもらいたいという思う一方、多くの健常者に関わってもらって障害者の存在を伝えていきたいという相矛盾した思いをもっていた。介助を通じて運動を広げていくことに精力を注いだ時期があった。70年代のころだった。
 次に、ヘルパー制度についての全体の構造について述べる。まず、お金の回り方について見てみる。税金という財源があって、厚労省がヘルパーの予算を出し、ヘルパー制度が回っている。
 ヘルパーと派遣労働者の問題を述べる。ヘルパーという仕事は、毎月の収入が不安定で、日雇い労働と等しい側面がある。解雇された派遣社員がヘルパー産業に来るかというと、彼らこそ安定雇用とか賃金とか雇用年月とかに敏感で、欠陥が分かるので、多分ヘルパー産業には来ない。
 障害者運動は、労働者とつながり、他の差別の問題と連結しないと視野が狭くなってしまう。単価等の目先の問題だけでなく、国の政策自体の限界と欠陥を突いていかなければならない。
 ニートとヘルパー資格の問題について。最近の若者は社会のシステムに乗らない者が多い。国民を支配する側からはとても気になる動きである。管理を強める動きは、福祉の分野にも貫徹している。東京都は、全身性障害者介護人派遣事業のとき代表者一人か二人を示せばあとは当事者任せで大雑把だった。それが今では一人ひとり身分を明かして、事業所に登録して市役所に報告させ、何をやったか報告させる。相当窮屈になっている。管理したがっているのだと思う。また資格導入によって、資格がなければできない難しい仕事と思わせる作用も大きい。
 最近の若者の資格に対する位置づけについて。資格に関係して、最近の若者はその場その場のステージにあわせて自分を器用に演出することを生き方のスタイルにしている傾向がある。ヘルパーの仕事をしている時は、そういう自分を作るが、仕事が終わった瞬間から全く福祉とは関係ない、極端な場合は差別者に衣替えする。このような報告を、知り合いの福祉現場の三カ所から受けている。これは多分競争社会の激しさが増して、自分の個性や本音を出せず、人間不信になって、資格という衣をまとわなければ自分を守れなくなっている。そういう深い意識構造から、資格導入は支持されてしまう。こうした若者の傾向について、教育改革運動を長年やってる人に聞いたら、「天野君当たり前だよ。小さいから競争させられっぱなしで、自分の本音なんか、失脚するし、足元取られるし、出せな
い。本当は友達欲しいし、かわいそうな存在」と言われた。
 もう一つ、以前は様々な社会問題への関わりの中から障害者の介助に関わってきた人たちが多かった。ところが今は、時給で釣られてくる人が増えている。完全に食いぶち。金目当てできている人は、介助に自分の気持ちが入っていず、長続きしない。
 あと関根さんも言っていたが、地域生活の運動の限界点が見えてきた。例えば僕が街の中で生活して、ヘルパー雇っていると、地域的な関わりがあまりない。
介助者と僕との関係で収束してしまっていて、地域に出たものの、多くの場合、地域の自立生活をしているつもりだが、このような介助者との関係だけに終わっている場合が多い中で、それはあたかも小さい社会的施設にいるようである。したがって、ヘルパー派遣だけを充足させてもまずいと思う。求められているのは「場の共有」。健常者との場の共有と介助者の充足という両方をワンセットでやらないとまずい。遠藤さんの例のように、職場の場を共有しながら介助を自然なものとして解消し、乗りこえて行くような。あるいは町内会なら町内会で、ヘルパー付きでも出て行くことによって人目にさらして、新しい関係を作っていく。
何でもいいから場を共有すべき。ヘルパーシステムだけが先行してしまっては、小さい隔離収容施設ができてしまう。システムだけ先行して、それに乗っかれば楽で便利だが自由がない。関係が広がらない。
 不便だけど自由だった時代がある。和光大の例。1976年車イスの学生が入学してきた。丘の上の大学で、階段だらけだったが、大学は、学外のヘルパーを自分で雇用して、階段等はそのヘルパーさんにやってもらうなら入学を認めると条件をつけた。誓約書まで書かされるというので、僕ら猛反発した。その人は、学内にバリアが張られたような感じで、とても嫌なので撤回して欲しいと言った。学生運動と合体して運動して、結局撤回させた。その結果、当時(70年代~80年代)、階段のあたりでは健常者の学生が自然に声をかける、そういう校風ができた。つまり一緒に存在していればこそできる。場を共有することによって共に認め合って支え合うような感じ。一緒にいる場を共有することが大事。ヘルパー派遣が保障されても、それだけではない共有する場が必要だと思う。
 次に、大きな日本の今までの価値観から見ていきたい。この問題は障害者だけの問題では止まることはないと思う。日本は今まで滅私奉公という価値観が根付いていた。会社に尽くす、家族のために頑張る。個人は関係なく、公に奉仕して生きがいを求めていく。こういうのを滅私奉公という。相手に身を預けて、考え方まで相手に任せていく。ということは、考える力が個人の中に全然育たない。
ところが最近は、その滅私奉公もなくなってきた。人間の価値が縮こまってしまっている。加えて現在は経済状態の悪化に伴って子育て専従者としての母親はその立場が維持できなくなってきている。夫婦共働きをしないと家族が成り立たなくなってきている。したがって子育てという問題が非常に不安定な状況に追い込まれている。そして、一見すると別の問題と思われるかもしれないが前述したように最近の若者たちも一人ひとり分断され追い込まれ、資格という小さな砦で自分を守らざるを得なくなってきている。この事態は昔よりもかなりかなり深刻だと思う。個人が追い込まれている。そういう中で障害者運動がどうやって横のつながりを作っていけるかというのが重要なキーポイントだと思う。

■有料化の誤算
【関根】「場の共有」と言う話が出ていた。支援費制度が始まって以来、自分で集めた介助者が使えないという状況になってきている。使うからにはヘルパー2級以上の資格を持っていなければダメといわれる。措置の頃の方がよっぽど自由だった。今は時間でヘルパーを換えられて、一日4~5時間しかない中で、掃除・洗濯等の時間しかなく会話をする時間がない。人と人との関係性を築けない。
 昔は人が居ないから介助者をクビにできなかった。今の障害者はすぐにクビにする。例えば、ワカメが増えること知らないで鍋をワカメで満杯にした奴。あるいは米を洗剤で洗って炊く奴。コロッケを炭にしてしまった奴など、そういうダメダメな介助者に付き合うことが楽しい。そうした中で相手も自分の悩みを語り出す。ところが今はそれがない。障害者は、介助者のちょっとした失敗で辞めさせてしまう。自分が努力して集めた介助者ではなく、事業所が派遣した介助者だからそれができる。自分が苦労して、街頭に立ち、ビラを撒いて関わってくれとお願いする。ワカメ大造君でも、決してクビにしなかった。今、利用者と介助者の間で人間関係が希薄になっている。場合によっては眠らず討論したことも何度
もある。介助者の問題も自分の問題になってくる。そうやって関係性ができていた。今では、介助を受けていてもつまらない、面白くない。施設にいるような錯覚に陥る。天野さんの話を聞いていて、介助を有料化したことは大きな誤算だったと思う。有料化したのは自分達の介助を守るためには、まず介助者の生活の安定化させなければいけないと思った。だから介助者が介助以外の仕事に行かなくても済むように、自分が見つけた介助者にお金を払っていきたい。そうすることによって自分の生活が安定するし、気心知れた人が介助者として定着できると思って有料化した。それによって、今まで不可能と思われていた最重度の人たちが街で暮らせるようになったことはいいことだが、一方で、関係性が失われてきた。
関係性ができていれば、どんな相手でも、ダメダメ介助者でも、ワカメ大造君でもいい。だけど関係性ができていないで、いきなり「2級ヘルパーを持っています」とか、「何でお前が受かったんだ」と思うような介護福祉士が来て、偉そうに「たまにはこうやって動かして、リハビリしたらどうか」などと余計なこと言われたりして腹が立つ。そこには上下関係があって仲良くなんかなれない。仲良くなるには、話す時間が必要。話していたら洗濯ができない、掃除ができない、色んなことができなくなってしまう。だから悪循環。
 僕らは有料化が必要だと思って始めた。介助者が介助をやっていてもちゃんと生活できるように始めた。これは僕らのポリシーがあって、自分の介助者にちゃんと介助やってもらいたいから、保障してくれとやってきた。そのことは間違いではなかったが、そこには誤算があった。事業所が間に立ち自分の意向が反映されていかなくなった。誤算のもう一つは、資格・資格ということによって、自由に人集めができなくなった。お金が介在することによって、金ありきになってきてしまった。どんどんアルバイト感覚になってしまった。
【金子】誤算というより、介護保険になって、ヘルパー制度の資格化など、介助
を一律に同じものとすることによって管理し易くした。
【関根】そこに障害者が努力せずに介助を受けられるようになった。要するにお膳立てされて、楽な方に乗っかって、あたかも自分が権力を持ったかのように錯覚した。行政の方が巧妙。行政に利用されたという意識がある。
【天野】ヘルパーがちょっと気に入らなかったり、ドジすると、辞めてもらって次を派遣してもらう、チェンジが気楽にできてしまうという感覚が若い障害者に芽生えている。ヘルパーは事業所が育てるべきだと思っている。事業所の責任を追及することが、権利だと思っている風潮に変ってきている。
【関根】それに加えて、ヘルパーも「労働者という意識」が高くなり、何か問題が起きると労基署へ飛び込む。障害者もダメならダメな介助者もはびこっている。
確かに重度心身障害者と言われている人達は絶対的な保障がないと地域で生活できない。それはそれで重要だと思うが、小1と高3が同じ給食を食べているようなもの。
 今、働ける障害者を作ろうと一生懸命だが、できるわけがない者もいる。それをどうするかという方が先決。昔は訓練施設で腕に技術を持てば社会に出られるということで、一生懸命励んだ。68年ころ荒木さんという人が無免許で運転した問題があった。彼は脳性マヒだったが、養護学校出た後、電気に詳しかったのでテレビの修理ができた。荒木さんはそれらを運ぶために、車の免許を取ろうとしたが、教習所で断られた。彼は3年間無免許で運転して、事故や交通違反を一度も起こさなかったが、たまたま検問でつかまった。裁判の中で、免許を取らせない方が悪いと主張した。欠格条項との日本で最初の闘いだと思う。
 そのように、昔の人達は無茶すれば自分で仕事できた。科学や文化が進んで、ここ十年で携帯も機能が高度になって訳が分からなくなった。個人で治せるという次元のものではなくなった。靴屋とか、印刷屋もある。印刷屋で昔は版に一個ずつ活字を入れていって名刺とか作ったが、今はワープロやパソコンの普及で必要なくなったし、名刺なんか自分で作れる。文化が進んだことによって、障害者はどんどん社会参加の場から追い出されてしまった。
【Aさん】必ずしもそう言えないのではないか。コンピュータと通信技術が発達したから、自宅にいて職場に通わなくても、自宅で会社から情報を貰って、就職できている人もいる。

■障害者雇用の実情
【関根】実際何人かそういう人を知っている。企業は雇用促進法によって障害者を何パーセントか雇わなければいけない。雇用促進法を使うとその企業には恩典がある。給料も6割が国から出たり、駐車場を確保できたり、トイレ等の改造費用が出たり、車まで買ってもらえる。そのような恩典が2年か3年ある。そうすると2~3年経つとだんだん居づらい環境にさせられて、新しい障害者に換える。
そうするとまた何億という雇用促進法が使える。前の人が使っていたコンピュータ等はそのままそこに残っている。
【Bさん】3年のスパンではなく3ヶ月。
【天野】しかも別棟を作る。健常者だけの職場を改造するのではなく、別棟を作ってそこに車イスの連中だけを送り込んで働かせる。
【関根】今は特定子会社というテーマがある。昔の特定子会社は、例えばトヨタの特定子会社の場合、トヨタの仕事を障害者だけが集められてしなければいけなかったが、今はそうじゃなくてトヨタの資本でパン屋さんやってもいいし、本屋さんやってもいい。そこに集められて、本社から出向された親分がいて仕事をさせてくれるのだが、それは雇用促進法に則ったものだから回転が速い。すぐ用済みポイ。新しい障害者入れるとまたお金がガバーと入る。
【天野】しかも、ヘタに障害者雇うと保険とか更生医療で大変。3ヶ月毎に入れ替えた方が楽。回転がいいし。無理させるとすぐ病気になって二次障害になっちゃうから、それよりも早期に回転させて職場を維持させるように仕向けているようだ。
【Bさん】天野さんが「場を作る」ことが重要と言った。コンピュータでは場ができるわけがない。私は今、知的障害者の作業所で働いている。国や行政は、就労させろ就労させろと言うが、疑問に思う。知的の場合は周りと話ができないなどで難しい。作業所のほうも、怠けたような人は企業に送れないから、キチンと上司のいうこと聞いて仕事こなすような人しか入所させない。そうじゃないと就労できない。だけど就労しても結局自分で辞めちゃう。作業所の職員と違って話なんか聞いてくれない、みんな忙しいから。
 今のところ一番成功したのは特定子会社。というのは、管理職は健全者、あとは障害者。つまり作業所とどこも変らない。それで、絶対本業やらない。車なんか作らせない。杉並に公民館に喫茶店あるのだが、これはアパレルがやっている。
経団連のホームページを見ると、作業所とは違って(特定子会社の場合)十万払っている、これに年金つけたら18万だから暮らせると書いてある。要するに障害者に対する保障を切り捨てていく、あるいは障害者が自立して納税者になるという意識を、障害者ではなく周りの人に思わせる効果を狙っている。テレビで頑張っている知的障害者の番組やる。そうすると実際に接していない人は素晴らしいと思う。作業所の職員によく行政が言ってくることは、遊ばせないでちゃんと就労させろと。作業所としては、就労率を上げるために、就労に乗らない障害者はお断りする。就労に乗らない障害者というのは、仕事できない障害者ではない。
例えばパニックを起こしてしまう人が作業所から弾かれている。障害者を知らない人はあたかも作業所で専門家がキチンとした訓練をすると、税金まで納めてくれるような人にできるのではないかと錯覚する。
【Cさん】感想。僕は学生のころ寮にいた。恒常的ではないが、身近な人の介助に関わったことがある。当時は言われたらまじめに受け止めて、「やらなければいかん」という感覚が強かった。その後、だんだん関わらなくなって、その間に制度が変って、ヘルパー制度も整えられた。今日のような話を聞くまでは、色々問題や意見もあるだろうが、少なくとも仕事として関わるヘルパーが増えた。これはいいことだと思っていた。皆さんも否定していないし、僕もそう思うが、でもやっぱりその上でというのが出されている。最近若いヘルパーさんとも交流があるが、単に仕事としてではなく、それなりの問題意識をもってやっている人も確実にいる。そういう中で僕ら何を目指していくのかをさらに考えて行きたい。

■養護学校の実態
【里内】僕は養護学校がどうなっているか聞きたい。今の肢体不自由児養護学校では、障害者は主張できなくなったし、欲求が弱くなった。
【関根】以前は、障害児だけの空間であったが、普通学校と中身は同じだった。
しかし今は、養護学校は変った。親が頑固に望めば力のある子は普通学校に行ける。養護学校にいる子は、重度どころか重症のような子が多くなっていて、養護学校自体が保育園の延長のようになっている。学業そのものはほとんどやっていない。一人か二人が特例的に集中教育を受け、大学に行く場合もある。お客様的扱いでもいいなら、僕らレベルの障害だと、普通校にいける。今は脳性マヒの早期発見で、手術を受け、相当良くなる時代になった。
【天野】「今なら、早期治療を受けると、天野君程度の障害では訓練で歩けるようになる」と言われる。里内さんの質問。要するに養護学校の生徒は重度心身障害児だけになっている。特別支援学校でどういう教育を受けているかというと、知的障害児の場合は、治安対策の対象物として扱われている。要するに集団に合わせる、盗みをしない、協調性を保つためだけに教育を注いでいる。その結果、自分の意志がない。ボランティアにくっ付いて、とぼとぼ下うつむいて歩くだけ。
自我が育っていないという問題も起きている。ただこれは前からの問題。
【関根】それは前から。レストランに連れて行かれても、例えば山に行けば山の物を食べ、海に行けば海の幸を食べるというのは、今となっては当たり前だが、海に行っても山に行っても、カレーライス。なぜかと言うと「自分のことは自分でやりなさい」という圧力がかかっていたから、スプーンで食べられるものはカレーライス。海の幸というのは食べるには骨や殻があったりしてややこしい。今の僕らは、「骨全部取って」と頼んだりして食べるようになったが、「自分のことは自分でしましょう」と強調されるために、頼んではいけないのだと思ってしまう。だからどこへ行ってもカレーライスだし、デパートでは金魚のうんこみたいにリーダーの後を付いて行く。
【天野】物を盗まないとか。それに力を注いでいて、本人達は自我が育たない。
養護学校の教員で進路指導をしていた友達がいるが、健常者もそうなのだが、「君はどう考えるの、君は何したいの」という自我を育てたり、自我に対する問いかけが、日本の教育にはないのだと。で、知的障害の子の場合なおのことそうで、自分が何をしていいかわからない。そして彼らには、集団を乱してはいけない、物を盗んではいけないと、協調性だけが求められる。だから暗い顔してとぼとぼ所属集団についていくだけとなる。
【関根】CILに20年位いて、相談業務を担当していて、本当に愕然としたことがあった。一人の子が「自立したい」と相談に来た。高校まで普通校の中を生きてきた。その後リハビリテーションセンターに入所するまで、自分のことをダメな人間だとずっと思っていた。ところがセンターに入って、車も運転できるし、自由に外へ出てもいいし、酒を飲んでもいいんだということを初めて知ったと。あれやっちゃダメ、これやっちゃダメと、明確な裏づけがないのに決め付けられていた。それを信じ込んでいた。これは普通校の中で、いかにお客さん的扱いだったかということだ。いわば障害を持っている子との逆の分断が行われていたということだ。
 普通校行っている子が放課後、色んな学校から学童保育なんかで集まってきたりすれば話は別だが、町田市の例でいえば、良くも悪くも送迎体制がしっかりしている。子供は授業中で社会性や人間関係が身につくわけではない。登下校の過程も重要。ところが送迎体制のおかげで、エスケープもできなければ、不登校もできない。普通校には先輩になりうる人がいない。
【Dさん】若い障害者が運動に参加してこないのはなぜ。
【関根】一つは、今の生活に不満を持っていない。要するに居るだけで金になる。
障害者の子供2人居るだけで、お母さん何もやらなくてもいい。居てくれるだけで食べていける。もう一つは、自分に恐怖を覚えない。親が確実に先に死ぬという危機意識が持てない。
【天野】今は社会資源がそろっている。また養護学校は今すっきり分かれている。
身体障害者だけとか、知的障害者だけとか、重度心身障害者だけとか。異質なものとのぶつかり合いの中で自分の立場を自覚したり、差別を感じたり、いざこざがある中でもまれて育って、自己意識が芽生えるのだが、そのきっかけすらうまくつかめなくなっている。

■「支える、支えられる」をどう超えていくか
【酒井】世田谷で基準該当の小さな事業所をやっている。全員が知的障害をもっている8人ほどの自立生活を応援している。そのうち4人は24時間体制で支援体制を組んでいる。今日の話は参考になり、教えられることもあった。当時は、この社会の中で生きていくために介助者を自分の力で集めなければならなかったし、介助者は、差別に反対し、共に闘う同志にもなった。介助者集めは、そういう人間関係を作ることと同じことだった。介助は労働であると共に同志的人間関係作っていくもの、そこは大事。
 介助は労働、仕事であるという位置づけが今の制度の中でできている。契約制度はそれ自体大きな矛盾があるのだが、少なくとも「介助は労働だ」ということが大きく社会的に位置づけられてきている。介助を保障せよと皆さんが闘ったのは、公的な保障がなかったからであり、やらざるを得なかった。制度がなく何の保障もなかったから、自分でやるしかなかった。今は、それほど苦労しなくても一定の保障が誰でも受けられる。まだ十分ではないが、仕事として確立してきた。
 大事なことは、この社会の中で、介助が必要な人は誰でも介助を受けて、当たり前に生活できるということである。自分で集められない人、自己主張できない人、主に知的な障害を持っている人達とも私たちはこの社会の中で対等に生活していける、介助を全面的に受けながら生活していける、そういう社会になるべきだという考えで、事業所をやっている。それほど努力しなくても当たり前に介助を受けられるという仕組みは必要。
 70年代当時、介助というのは「手足でいい」という考えの人もいた。そういう主張を読んだこともある。その人達が言っていたのは、関根さんや天野さんが言っていたこととは違って、介助はあくまで手足のように自分のやりたいことを受身的にやってくれる人で、そういう人を使って自分は社会に出て行くというもの。
 今私が思うに、やはり知的な障害を持っている人達の介助に入ってもらうためには、どうしてもしっかり介助できる人でなければならないと痛切に思う。そういうことを抜きにしてしまうと、その人の生活を支えられない。その上で、単に手足ではない対等な関係性をどう作るかというのは、難しい課題だと思った。
【天野】両方必要。人間関係・介護技術・労働条件の安定もすべて必要。でもなお、本来的には、人間関係で超えていって欲しい。自己表現ができず、通行人を捕まえることができない人は最低限命の保障が必要だから、システムを充実完備しなければならないが、同時に教育もする、身分も保障していく。将来的には自由選択にして、力のある人はそれに任せるという方向が良いと思う。
【関根】ニーズに合わせて、押し付けられるのではなく、選べるようにできればいい。介助者の方が働きかけなければ生活をつくっていくことのできない人もいれば、自己マネージメントができる人もいる。だからそれぞれが自分で選べるならだいぶ変ってくる。画一的な介助を押しつけられるのであれば、それはまさに施設にいるのと同じになってしまう。決め付けられるのは嫌だけど、自分で選べるようないくつかの素材を作ってもらうなら良いと思う。
 もう一点、これは前々から思っていたことだが、もし健全者がちゃんとポリシーを持ってこの仕事のプロになるのなら、健全者の運動として厚労省にも行って欲しい。要するに僕らが健全者の肩代わりをして運動している部分がある。ここまで高めてきたら健全者は健全者としての自尊心を持って闘うべきだと思う。自分が食うために、好きでこの仕事選んでいるわけだから、障害者運動ということだけではなく、自分の運動でもある。だからその辺をみんなが気づいてくれたらもっと強力な運動になっていくのではないかと思う。
 単なる介助で厚労省に行くのではなく、自分のこととして闘って欲しい。それを今まで肩代わりしてきたのがJILでありDPI。誰かがやらなければできなかったからやってきたが、地域にこれだけの障害者が生きていて、関わっている健全者は多数いるわけだから、障害者に頼らず、それぞれが主体性を持てば、いい共闘関係ができると思う。
【Eさん】職業的になっているという点。今の制度の中では、自立を目指すというのは知的の場合は、目指したくても目指せない。事業所に任せたのではもっとできない。結局(家族が)自分でやる方法も検討しなければならない。
【天野】個人が引き受けなければならないシステム自体がおかしい。知的障害は軽く見られてなおざりにされている。やはり身体障害の人がいかに繋がっていけるか。それはこちらの課題だと思う。

■代筆してくれない銀行
【Aさん】関根さんから便利と自由は違うという話があった。銀行の話が出たので一言。以前は名前も住所も銀行員が代筆して全部処理してくれた。最近は、一切代筆してくれなくなった。どこの銀行でも、同じ断り方をされてしまう。「できません。誰か他の人を連れてきてください」と。「できません」と言われると意地悪されているように感じる。ある銀行に行って、「あなたもきっと答えないのだろう」と、からかうつもりで聞いたら、その人はできない理由を教えてくれた。
「それをやるとクビになるかも知れない。警察が来て逮捕されるかも知れない」だから「勘弁して欲しい」という。金融庁の方からやらないようにというお達しがきているといわれた。ほとんどの行員は、その理由すら知らないまま対応しているのかも知れない。関根さんたちが言ったように、便利なようで不自由な世の中。どうやって打破するか僕も悩まされる。
【関根】セキュリティとかシステムが強化されればされるほど障害者は大変になってしまう。セキュリティを高めることは必要かもしれないが、ある意味、そこまでセキュリティを高めなければいけないというのは、人間関係の崩壊でもある。
【関根】今日は色んな問題が出た。こういう機会は定期的にやらないと磨耗してしまう。今日は一回目だから、多くの問題提起をした。ひとつずつ考える場というのが、なかなかなかった。障害者運動も衰退していく中で、こういう話をする機会というのは今後ますます必要になっていく。たまたま今回はこの3人で行ったが、別の提起者で、また集まる機会を持ちたい。

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